
【温泉ファンタジー】Sa・Ga3 温泉の覇者 第30話 冷凍食品、完成?
翌日。
スパロウは、また氷の秘湯の前に立たされていた。
白いイエティ風の着ぐるみを脱ぎ、防寒服も外して、腰にタオルだけを巻いている。青白い水面は昨日と同じように静かに揺れていた。二度目だからといって、怖くなくなるわけではない。

スパ子
「今日こそ完成させるわよ!」
スパロウ
「俺は食品じゃねえっ!」
スパ子
「パー美、やれ!」
パー美
「はいは〜い!」
どっぽーん。
スパロウは、昨日と同じように氷の秘湯へ沈められた。
メカ
「肩部マデノ入水ヲ確認。3分計測ヲ開始シマス。」
スパロウ
「毎回ここから数えるな!」
・・・・・・
結果は、2分と少し。
スパロウは再び引き上げられ、毛布に包まれ、岩場の上で冷凍食品になる寸前まで追い込まれた。
パー美
「惜しいね〜。半解凍くらい?」
スパロウ
「分類するな……。」
ぺーすけ
「昨日よりは明らかに伸びていますね。」
スパ子
「じゃあ明日ね。」
スパロウ
「当然みたいに言うな。」
寒冷地作業ユニットの陰から、お雪さんがそっと顔を出した。
雪
「あの……明日も、やるんですか?」
スパ子
「やるわ。」
雪
「はわわ……。」
お雪さんは、もこもこの袖の先を両手でぎゅっと握ったまま、また寒冷地作業ユニットの陰に戻っていった。
さらに翌日。
氷の秘湯の前に立ったスパロウは、今度は逃げなかった。
スパ子
「いいの?」
スパロウ
「3分だろ。」
スパ子
「そう。いつもの3分。」
スパロウ
「だったら、やるしかねぇ。」
スパロウは白いイエティ風の着ぐるみを脱ぎ、防寒服も外した。
冷たい風が肌を刺す。
それでも、今度は誰かに落とされるのを待たなかった。
自分の足で青白い水の中へ入り、息を止めるようにして肩まで沈む。水面が静かに揺れ、白い息が一気に噴き出した。
メカ
「3分計測ヲ開始シマス。」
今度は、誰も茶化さなかった。
歯の鳴る音だけが、小さく続いた。
スパ子の手が、少しだけ動く。
パー美も、いつでも引き上げられるように指を構えていた。
だが、スパロウは震えながら首を横に振った。
スパロウ
「……まだだ。」

氷の秘湯は、何事もないように青白く揺れている。
最後の数秒だけが、やけに長かった。
メカ
「3分経過。」
スパ子
「パー美!」
パー美
「はいっ!」
ざばぁっ!
スパロウの身体が氷の秘湯から引き上げられた。
毛布に包まれたスパロウは、岩場に座り込んだまま、しばらく動かなかった。
スパ子
「太郎?」
スパロウ
「……冷たい。」
スパ子
「でしょうね。」
スパロウ
「でも、来た。」
白い息の奥で、ほんのわずかに熱が揺れた。
いつもの秘湯とは違う。
燃えるような熱ではなく、凍るほど冷たい何かが、身体の芯で静かに目を覚ましていた。
スパ子は小さく息を吐いた。
パー美
「完成?」
スパロウ
「だから食品じゃねぇって言ってんだろ……。」
お雪さんは、青白い水面と毛布に包まれたスパロウを何度も見比べた。
雪
「人間の方って……大変なんですね。」
スパ子
「太郎だけよ。」
スパロウ
「俺だけにするな……。」
冷たい風が岩場を抜けた。
その日のうちに、お雪さんの案内で一行はイエティの住処へ戻った。
洞窟の中では、白い毛の塊たちが相変わらずぎゅうぎゅうに詰まっている。
長
「そとのひと、もどったか。」
スパロウは毛布を置き、白いイエティ風の着ぐるみを着込み直してから、震えながら前に出た。
スパロウ
「戻った。」
長
「ならば、あす。」
洞窟の奥から、低いうなり声のような歓声が響いた。
長
「さむさ、みせよ。」
大会は明日。