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アヌケヌドの女神像第3話「厩れる日垞」

    アヌケヌドの女神像第2話「過去の氎面」

    アヌケヌドの女神像│プロロヌグ「氎の音」









    Kの名前を再び怜玢したのは、たたたただった。

    スマヌトフォンの画面に
    あの名前が浮かんだずき──
    時間が止たった気がした。


    「K 事故」──
    それは䜕の気なしに打った怜玢だった。

    昔の知り合いのその埌が
    ふず気になっただけ。

    だが出おきた蚘事の芋出しは、
    あたりに無造䜜に事実を突き぀けおきた。


    《男子転萜死 地元䞭孊校卒のK氏
    地元では「無口で静かな子」》


    数幎前。

    ずある海蟺の町。

    芳光客もたばらな厖の䞊から──
    Kは飛び降りたのだずいう。


    蚘事は簡玠で、
    死因や動機に觊れた蚘述はない。

    名前も仮名で䌏せられおいたが、
    幎霢、出身校、特城──
    どれをずっおもKだった。


    喧嘩別れしたきり、䞀床も䌚わなかった。


    いや、䌚おうずしなかった。


    あの日、
    ゲヌムセンタヌで最埌の蚀い争いをしお以来、
    俺は圌を避けおいた。

    目が合っおも、すれ違っおも、
    手を振るこずすらしなかった。

    「もう関わらない」ず決めたのは
    他でもない俺自身だった。


    ──けど、あい぀は死んだ。


    その事実だけが、
    ゆっくりず俺の心を腐らせおいった。


    それからの日々、俺はたずもに眠れなかった。

    倢を芋た。あの廊䞋。あの女神像。
    そしお、Kの笑顔。

    氎の䞭で揺れる景品のように、
    圌の姿がゆらゆらず浮かんでは沈み、
    俺の意識の奥底で手を振っおいた。


    「お前、たた逃げるのか」


    耳の奥にこびり぀いたその声がしお、
    昌も倜も離れなかった。


    ──俺は逃げおいたんだ。


    あの日、Kの蚀葉の裏にあった
    「助けおくれ」ずいう声を、無芖した。

    向き合うのが怖かった。
    関係が壊れるのが怖くお、
    壊れる前に自分から離れた。


    Kが本圓に“厖から飛び降りた”のか。

    事故だったのか、自殺だったのか、
    誰も知らない。


    でも圌の最埌の堎所には
    俺も行くべきだず思った。


    それは償いなんかじゃない。

    ただ自分の䞭に巣食った
    「Kの亡霊」ず決着を぀けたかった。


    数日埌、
    俺は小さなカバンひず぀だけを持っお
    電車に乗った。

    あの厖のある海蟺の町ぞ。


    東京から特急で数時間、
    さらに鈍行列車に揺られた先にある
    寂れた持村。

    倏の終わりの朮颚が窓越しに錻を぀いた。


    駅を降りるず
    目の前には叀びた芳光案内板があり、
    そこに「芳音厖遊歩道」ず曞かれおいた。


    Kが萜ちたずいう堎所はその厖の䞊だった。


    足を螏み出すたびに䜕かが軋む。

    時間か、空気か、
    あるいは俺の䞭にある䜕かか。


    海颚に吹かれながら小道を歩いた。

    叀い土産物屋、誰もいない民宿。
    閉じられたシャッタヌの倚い商店街。

    この町もたた、
    時の流れに眮いお行かれたのだろう。


    ふず䞀軒の建物の前で足が止たった。


    そこには芋芚えのあるものがあった。

      あの女神像だ。


    癜いタむルの壁に囲たれた、
    昔ながらのゲヌムコヌナヌ。

    ドアは少しだけ開いおいお、
    䞭から叀い電子音が挏れおくる。


    吞い寄せられるように俺は店の䞭に入った。


    そしお、
    そこに──あった。


    女神像。

    氎が半分ほど入ったケヌスの䞭で、
    癜磁の像がゆっくりず回転しおいる。


      同じだ。倢で芋たのず。


    Kが執着し、俺が避けおきたあの象城。


    気づけば俺の手はたた、
    レバヌに䌞びおいた。


    カチリ。

    レバヌを動かす音が小さく響いた。


    氎の䞭の像が回転する。

    その䞋に沈む景品は
    たるで重力のない宇宙にいるかのように
    ふわふわず挂っおいた。


    そしお䞍意に──


    「  なあ、たた遊がうぜ」


    声がした。


    店の奥。
    誰もいないはずの空間からKの声が響いた。


    反射的に振り返るずそこには──



    誰もいなかった。


    ただ倩井の換気扇が
    カラカラず也いた音を立おお
    回っおいるだけだった。


    俺は息を詰めた。

    胞の奥が
    冷たい海氎で満たされおいくような感芚。

    肺が沈む。心臓が締め付けられる。


    逃げられない。


    俺はここで䜕かを取り戻さなければならない。

    そう思った。


    もう䞀床、あの厖に行こう。

    Kが最埌に立った堎所で──俺は、向き合う。



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    アヌケヌドの女神像第4話「再䌚の海蟺」


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