見出し画像

お墓参りと、母からの卒業


「旦那さんのほうのお墓参りはいつ行くの?」


この時期になると、いつもそう聞いてくる私の母。

「まだ決めてないけど、お彼岸の間には行くつもり」


私がそう答えると母は、

「旦那さんのお父さんなんやから、こんなにほったらかしにしてたらあかんもんな。
旦那さんもお父さんのお墓参りなんやから、行ってあげたいやろ」


そう言ってくる母の言葉に、私は、なんだかモヤモヤした気持ちが湧いてきた。

『まるで、私がほったらかしにしてるみたいじゃないか』



義父の眠るお墓は、私が住んでいるところから片道3時間近くもかかる。


私は、お盆やお彼岸、年末などになるべく墓参りに行くようにしていた。

ちなみに、母は、自分の義実家のお墓参りは一切していない。


母の言い方が私を責めているように感じてカチンときて、私は思わず、こう言い返した。

「お母さんだって、お父さんの実家のお墓参り全然してないやん」

そう言うと母は、

「お父さんは、両親とそんなに仲良くなかったから、つむぎの旦那さんのところとは親子の関係性が違う」

と、堂々たる言い訳をした。

その霊園には偶然、私の母の妹である私の叔母のお墓もあるのだが、母は彼女のお墓参りにも納骨式の時以降、約20年間、一度も行っていない。


その事に対しても、

「つむぎが私の代わりに参ってくれてるようなもんやから、それでいいんや。
あんな遠い山道の先にあるお墓は、よう行かれへんわ」

と、母は私に攻撃されてると感じている様子で、不機嫌に答えた。



『母は、なんて自分に都合のいい考え方をする人なのか。
しかも私の気遣いや労力はいつもいつも軽視、いや、無視されている』


私はそう感じて、とても腹が立ってきて母へ向かって、あえてこう言ってみた。

「すごく遠くて、正直めちゃめちゃしんどいんだよね。今回は旦那さんとお義母さんだけで行ってもらおうかな」

その言葉に対して母は、私の硬くなった声色に気を遣いながらも、こう言った。

「それでも旦那さんのお父さんのお墓なんやから、行かないとあかんやろ」

私は母のため息から、私の事をまるで思いやりのない嫁だと責めているように感じた。

そこで、私は学歴に強い劣等感と執着がある母にこう言ってみた。



母親を黙らせる唯一のカードは、孫の学業だ。

「娘の定期テストが近いから、お墓参りで1日潰れるのは厳しいかも。」

私のその計算された言葉に対して、母は、案の定、すぐにこう答えた。

「あぁ。そうなんや。テスト前なら、仕方ないなぁ。

ところで、義弟さんは、お墓参り、たまには代わりに行ってくれへんの?」

責任の矛先を、夫の弟である私の義弟に移した母。


「仕事が忙しいみたいだから仕方ないやん。今の人はみんな忙しいねん。」

私は、そう義弟を庇いながらも、なんだか腹立たしさと悲しみで一杯になった。


それにしても、なぜこんなに私は、母に対して腹が立ったんだろう。

それは、母が自身もできていないことを棚に上げて、それを私に当たり前にすべきだと言ってきたからではないだろうか。

そして、私なりに日頃から気遣いをしているのに、ほったらかしてるなんて、私のことを信頼してないのではないか。



正直に言えば、私だって行きたくないのだ。


片道3時間、往復で丸一日が潰れる疲労感。


今の私には、その負担が重すぎて、「行かなければ」という思いと「もう休みたい」という本音が、
いつも心の中で綱引きをしている。


そのギリギリのところで踏ん張っている私の心に、母は土足で踏み込んできた。


自分は一度もその道を歩もうとしないくせに、安全な場所から「ほったらかしにするな」と正論だけを投げてくる。


本当は義父の事を偲びたいのに、母のその言葉のせいで、義務感ですべて塗り替えられていく気がした。

お墓参りに対して『真心』ではなく、『果たすべき義務』かの様に、私の行動をコントロールしようとしてくる母に、私は嫌気がさした。

そして何よりも、80代の母親の言葉に50代の私が、いちいち心を掻き乱されていることに、情けなさでいっぱいになったのだ。


思い起こせば、その感情は、私の心の中に幼い頃からずっと張り付いている。

言葉にするなら、義務感、罪悪感、そんな重い鎖で繋がれている様な感覚だ。

私の腹立たしさは、お墓参りに行きたくないという単純な思いなのではなく、『母からの呪縛への抵抗感』でもある事に、私は気づいたのだった。




娘が学校から帰ってきた。

「今日さ、中間テストの範囲の発表が出たよ!」


と教えてくれる娘。

テスト範囲の問題集を、テスト最終日に提出するらしい。

娘の問題集を見せてもらったら、なかなかのページ数で、テストまで1週間しかないのに全く進んでいないではないか。

私は思わず、


「こんなのもっと前からコツコツやってないと、間に合うわけないやん。
テスト一週間前からは、問題集は解き終わって見直すぐらいの状態じゃないと厳しいで」

と上から目線で言ったものの、自分が中学のテストの前日は、毎回泣きそうになりながら、焦ってテスト勉強していた事を思い出した。

『ああ。結局、私も自分ができていなかった事を、娘に当たり前のように要求しているよな』



とハッと気づき、落ち込んだ私なのだった。


そんな私の気持ちには全く気づかずに、

「ねえねえ!せっかくの連休だから、ショッピング行きたい!狙ってる靴があるんだ。ねえ、見て。可愛すぎるでしょ!
テスト勉強は、電車でするからさ。お願い!」


と興奮して目をキラキラさせて、懇願してくる娘。

そのオシャレへの熱い情熱を、ほんの少しだけでも、勉強にも向けて欲しいものだ。



⭐️こちらの記事もおすすめです!


いいなと思ったら応援しよう!