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本当はいつも寂しいなんて、気づきたくなかったけれど。

私には友達が一人もいない。


数年前までは、娘もまだ小学生で、いわゆるママ友もいたが、今は交流も途絶えている。


私は、なぜか仲良くなった人から愚痴や誰にでも言えないような本音や、深刻な悩みを打ち明けられることがとても多い。


それは私が相手を否定せず話を聴いていて、共感しているふりをし続けているせいだろうか。


それが、だんだん、ずしっと心に重くのしかかり、次第に私はその人に苦しめられているような気がしてくる。


なぜなら、私の時間を奪われて、相手のネガティブな気持ちの渦に巻き込まれるからだ。


そして、限界がきたら、私は心を閉ざして、何も言わずに、その人から急に距離を取る。


それが、私の交友関係が途絶えるお決まりのパターンだ。


そう。私は、そんなひどいやつだ。


そんな中、私は1つ気づいたことがあった。


私に愚痴や本音を言ってきた人たちが、いつも私の中で私の母と重なったということだった。


母は、私が小さい頃から、父への不満や祖母の愚痴、姉の悪口などを毎日のように言ってきた。


今思えば、本当にそれが嫌だったが、いつしか、母親の聞き役になることで、私は家庭内での自分の居場所を守ろうとするようになった。


『母の愚痴に共感するふりをしないと、父や祖母や姉みたいに、私も母から批判されるに違いない』

と怯えていたからだろう。


ただ共感するだけでなく、私は時には一緒になって、言いたくもない家族の悪口を母親と一緒に言うようになっていた。


それなのに、母は、私が幼い頃から悩みや弱音を打ち明けると、いつも煩わしそうにして話を聞いてくれなかった。


それでも何とか聞いてもらおうとすると、私の事を心が弱いネガティブな人間扱いをして、

『お母さんはポジティブに考えられる人間やからな』

と自画自賛をして、
『もっと前向きに捉えなさい』
の一点張りでいつも私を突き放した。

『母は私に愚痴やネガティブな感情を吐き出すくせに、私のネガティブな気持ちは無視する』


私の心の中には、いつもそういう恨みにも似た気持ちがある。


そして、私に愚痴を言ってくる人たちの姿が、母と重なって見えるから、私は、きっとその人たちと距離を置きたくなるのだろう。



あれから何十年も経った今、母にもまた、友人が1人もいないことにふと気がつく。


「いろんな人が私には寄ってくるけど、人付き合いは煩わしい」

母は何故か、いつも上から目線でそう言う。


「自分の悪いところが、ばれそうで気を使うから、疲れるしな」

その母の言葉を聞いて、私は母もまた自分の母親から自分のネガティブな感情を受け入れてもらえなかったのではないかと気づいた。


ずいぶん前に母から聞いたエピソードを思い出した。


戦後すぐ、祖父は戦死し、祖母は1人で、母と母の妹の2人の娘を必死で育てていた。

食料難の中で、母が『芋ばっかり食べたくない』と言うと、母は祖母からめちゃくちゃ怒られたそうだ。


祖母の義母が、

「この子は、あんたを助けるために一生懸命頑張ってるんやからそんなに怒ってばかりしたらあかん」

と母を擁護し、祖母に説教したんだという話を、私は母から何度も何度も聞かされていたものだ。


母もまた私と同様、自分の気持ちを大切にしてくれなかった祖母と他人が重なることで、人との距離を取る癖が付いてしまったのかもしれない。



そして、ハッと気づく。


『私に愚痴や弱みをさらけ出してきた人たちは、もしかしたら私自身の姿なのかもしれない。』


『私は今も本当は、誰かに愚痴や弱みをさらけ出して受け入れて欲しいんだ。』


『弱さを受け入れてもらえなかった私に、『私の弱さをわかってくれ』だなんて、これ以上もう言わないで!』


『弱みを受け入れて欲しいのは、私の方だよ!』


そんな自分の心の中の声が、はっきりと聞こえたのだった。



娘が部活から帰ってきた。

「今日、Aちゃんから誕生日プレゼントと手紙をもらったよ!」

Aちゃんは娘の1番の親友だ。


そう言って、娘は、とてもうれしそうにプレゼントの可愛いポーチと手紙を見せてくれた。

『お誕生日おめでとう。いつも仲良くしてくれて本当にありがとう。

いつも話を聞いてくれるけど、困ったことや悲しいことがあったら、私にも何でも相談してね!

私もたくさん相談するからね。そうやってもっともっと仲良くなろうね。大好きだよ。

辛い時は相談してくれたら、本当にうれしいんだからね。絶対相談するんだよ!』

小さな可愛い紙に、そうびっしりと書かれていた。

『はぁ。子供は純粋で羨ましいよな』


私はその素直で愛情いっぱいの手紙を見て、そんなひねくれた言葉を頭の中でつぶやいていた。

なのに、なんでだろう。
なんだか泣きそうだ。


『ああ、寂しいな』


私は心の中でそう言って、自分をギュッと抱きしめた。



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