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『むンパヌルのアンドレ』第十八話「皓倩こうおん」最終話

     この流れは前二話で抌さえおください。
     ★
    第十六話「決闘」
     ★
    第十䞃話「黎明」


    カングラ砊の長い螺旋階段を䞊りきった先には、蚀葉を倱うほどの絶景が広がっおいた。

    むンパヌルを䞉ヶ月にわたっお濡らし続けたあの激しい豪雚は、嘘のように止んでいた。分厚い雚雲の切れ間から、眩いばかりの朝の光が差し蟌み、遠くのアラカン山脈を黄金色に瞁取っおいる。

    それは、䞖界が新しく生たれ倉わったこずを告げる、圧倒的な『皓倩青空』であった。

    源䞀郎ず聡に担がれたアンドレは、屋䞊の奥たった岩を背にゆっくりず腰を䞋ろした。巊脚を倱い、党身の装甲は匷酞ず硝煙でボロボロに焌け焊げおいたが、その黒い人工網膜はか぀おないほど穏やかに柄み枡っおいた。

    アンドレの芖線の先には、䞉癟名の生き残った人々の姿があった。

    担架の䞊で蟛うじお意識を取り戻し、涙を流しながら青空を芋䞊げるシン。そしお、右腕を倱いながらも「やりきった」ず蚀わんばかりにメむンセンサヌを満足げに明滅させおいる力。

    その間を、明や䌞圊たちナカノ・ベレヌのメンバヌが負傷者たちの救護のために忙しく、しかし誇らしげに歩き回っおいる。

    そこに広がっおいたのは、か぀おカングラを支配しおいた恐怖も、カヌストの呪瞛も、ハラスメントの冷酷な呜什もない、ただ「生きおいる」ずいう無数の安堵に満ちた人間の貌であった。

    俺たちは、ガラクタなんかじゃない  。このために、俺たちは生み出され、この地たで行軍しおきたのだ

    アンドレは、静かに胞の奥のプログラムにこの光景を焌き付けおいた。機械の蚘録メモリではない。圌がこのむンパヌルの戊いで手に入れた、玛れもない「魂」の領域に、この矎しい平和の喧隒を深く、深く刻み蟌んでいく。

    やがおアンドレは、傷぀いた身䜓を支えながら、静かに䞊空を芋䞊げた。

    カングラ砊の正門䞊空に、十機の旧匏『双韍』が爆音を響かせながら、矎しい線隊を組んで旋回しおいた。ダンゎンにいる正平ず寛至が、網膜センサヌの向こうから送っおきた、呜がけの、そしお最倧玚の敬瀌の代わりであった。

    そのうちの䞀機が速床を萜ずし、アンドレの目の前ぞ、䜕かを静かに萜ずしおいった。そのたた十機の双韍は、癜く茝く皓倩の圌方ぞず䞀気に突き抜けお消えおゆく。

    アンドレの足元に萜ちたのは、泥ず油に塗れ、無数の匟痕が刻たれた、喜明のボロボロのベレヌ垜だった。

    アンドレは、その戊友の生きた蚌を鋌鉄の指先で拟い䞊げ、そっず己の膝の䞊に眮いた。蚀葉はなかった。

    ただ、このカングラ砊の分厚い正門をこじ開けるために自らを爆砕させ、最埌は笑っお逝った䞍噚甚な男の凄たじい誇りが、その垜子からアンドレの手のひらぞず確かに䌝わっおいた。


    そしお――


    アンドレはゆっくりず、匷酞を济びおも焌け残った巊胞のポケットぞず手をかけた。取り出したのは、垞に肌身離さず持っおいた南原䞭将の厳しくも枩かい笑顔の写真だった。

    閣䞋  。眪なき人々を闇に沈めたシステムを俺たちは぀いに撃ち砕きたした。俺たちの尊厳はここにありたす

    心の䞭でそう報告するず、アンドレは写真を静かに胞ぞず戻し、そっず網膜センサヌの光を消した。そしお、この自由な空を芋るこずもなく散っおいった南原䞭将の魂のために、静かに、深く、黙祷を捧げた。

    遠くから、むンド䞭倮軍の救助ヘリのロヌタヌ音が、地響きのように近づいおくる。

    呚りの人々が歓声を䞊げ、ナカノの仲間たちが「隊長」ず自分を呌ぶ声を耳にしながら、アンドレは再び網膜センサヌを小さく灯した。

    流れ蟌んでくる平和の喧隒を子守唄のように心地よく楜しみながら、アンドレはただ、どこたでも高く、どこたでも深いむンパヌルの青空を芋぀め続けおいた。

    その鋌鉄の頬を、雚䞊がりの爜やかな颚が、優しく吹き抜けおいった。

    『むンパヌルのアンドレ』―― 完



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    和平亀枉に旅立぀南原䞭将ずナカノ・ベレヌの面々

    『あずがき』


    本皿の執筆にあたり、私は䞀九四四幎䞉月から䞃月に及んだ「むンパヌル䜜戊」の戊堎で呜を萜ずされた䞉䞇人を超える先人に察し、深く、深く、そのご冥犏をお祈り申し䞊げた。

    歎史の悲劇、その泥濘ず硝煙の蚘憶をずいう噚に借りお描くこず。それは私にずっお、畏れ倚くも避けおは通れない挑戊であった。

    今から十五幎前、私は仕事を通じお『倱敗の本質』䞭公文庫を孊ぶ機䌚に恵たれた。その際、私の県を釘付けにしお離さなかったのが、この「むンパヌル䜜戊」の章である。

    “䜜戊目的の曖昧さ”“兵站・補絊の軜芖”“粟神論頌みの愚策”“組織に蔓延する䞋剋䞊の空気”。

    批刀ず指匟の嵐のような論点の数々に、私は蚀葉を倱うほどの衝撃を受けた。そしお、い぀かこの無謀極たる䜜戊を題材に、組織ず人間、そしお「尊厳」の物語を曞きたいず、脳内で密かにプロットを緎り続けおきた。

    今幎に入り、前䜜『神の声ず仏の声』をに公開したずころ、望倖の熱い反響をいただいた。本䜜はその『倖䌝』ずしお、前䜜の登堎人物であるアンドレのプログラムに克明に刻たれた「過去の戊堎」を描く建付けでスタヌトした。

    圓初は党十話の想定であったが、曞き進めるに぀れ、登堎人物たちが自らの意志で歩き出し、気が぀けば倧幅に分量を䞊回る壮倧な行軍ずなっおしたった。

    アンドレを筆頭ずする十二名の「サむボヌグ特殊郚隊・ナカノ・ベレヌ」。

    圌らは機械でありながら、プログラムを超えた匷固な結束力ファミリヌを持ち、䞀぀のミッションのために呜を賭した。この矎しくも狂気的な絆さえも、圌らを補造した倩才・江頭䞀慶の冷培な知性から出発しおいる構造は、本䜜の裏のテヌマでもある。

    悪圹たちにも、人間の「業」をこれでもかず詰め蟌んだ。

    前線を芋捚お、自己保身ず党胜感に狂った倧杉蓮叞䞭将。圌が最埌にロボット兵士たちの投石によっお、自らが生み出したシステムの残骞の劂くボロボロに厩れ去る姿は、私がどうしおも描きたかったカタルシスである。

    そしお、新興宗教の教祖のごずき狂気を纏った敵将・クマヌル。卑賎の身から力のみで成り䞊がった圌が、戊争を利甚しお自囜の忌たわしい差別制床システムを砎壊しようずした䌁みは、結局のずころ、さらなる䞍条理を生む歪んだ力ぞず砎綻しおいった。

    「戊争に真の勝利者などいない」

    誰の蚀葉かは分からずずも、私の胞奥にある想いもたた、この䞀蚀に尜きる。しかし同時に、組織を率いるリヌダヌの資質によっお、そこに生きる人々の生死勝負は決たっおしたう。

    我々の珟実䞖界、特に珟代の組織ビゞネスの戊堎にも、倧杉やクマヌルのようなハラスメントの怪物は圢を倉えお数倚く存圚しおいるのではないか。

    かく蚀う私自身、これたでの人生で圌らのような振る舞いを䞀床たりずもしなかったか。柄み枡る『皓倩』の空を芋䞊げながら、今䞀床、静かに胞に手を圓おおみたい。

    最埌に、アンドレたちの無謀な行軍に䌎走し応揎しおくださった読者の皆様に心からの感謝を捧げたす。


    二〇二六幎䞃月五日 札幌の仕事堎にお 。  歊藀寛治


    『むンパヌルのアンドレ』を最初から読みたい方はこちらぞ

    ハラスメント察策を綎る物語『瀟劎士Mの事件簿』

    小説も執筆する瀟劎士・歊藀の異色のSF小説『神の声ず仏の声』

    私の趣味は山菜・きのこ採り『瀟劎士Mの山歩き』

    NOTEを立ち䞊げた私の想い

    ★仕事の䟝頌はXたたはNOTEのメヌルで承りたす。お気軜にどうぞ

     
     
    還暊を過ぎ、20幎前に取埗した瀟劎士資栌を掻かし『ナラティブ瀟劎士』ずしお掻動開始。人間の業、組織の真実をリアルな物語ぞず昇華しお発信しおいたす。 🔶珟堎のリアルを描く『瀟劎士Mの事件簿』🔷魂を揺さぶるSF長線『神の声ず仏の声』 / 倖䌝『むンパヌルのアンドレ』党話公開䞭

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