
リハビリはゲーム感覚で!14.5:至福《脳梗塞(脳卒中)の“前向き”闘病記 小説風》
第一話はこちらからご覧ください
はじめに
ある朝、突然倒れた和泉大輝(45歳・会社員)。
診断は、脳幹部の梗塞。
体は動かず、声も出ず、世界は一変した。
不安と絶望のなか、支えてくれたのは、
最愛の妻・花菜と3人の娘たちだった。
「家族のために、絶対に立ち上がる」
そう誓った男が始めたのは、“ゲーム感覚”のリハビリ生活だった。
という本編はおいといて、
これは、そんな入院生活の中で、至福を味わった時のお話。
本作は、実際の経験をもとにしています。
※本編には、病気、身体の麻痺、生命への不安などセンシティブな描写が含まれます。
心身に負担を感じる可能性のある方は、無理のない範囲でお読みください。
それではどうぞ。
第二部 声か鼓動か ― 言葉を超えて、届いたぬくもり
休憩話④ 至福
俺は、反乱軍のリーダー。
独裁政権に立ち向かい、地下で仲間と準備を進めてた。
あと一歩。
あと少しで、あの冷酷な独裁者を倒せる!
そう確信していた矢先・・・
突然、体に異変が起きた。
口の中から、白い何かが湧き出してくる。
「・・・なんやこれ!」
それは、ガーゼ。
どこからともなく無限にあふれ出し、口の中を占領していく。
水を飲んでも、飲んでも、潤わへん。
飲んだそばから、またガーゼ。
気づけば、反乱軍の仲間も全員同じ症状や。
でも、政府に従順な市民たちは、
なんともない。
「さては・・・独裁者のやつ、やりやがったな」
反抗する意思を持つ者だけを狙い撃ちにする、そんなウイルスを仕込んだに違いない。
汚い手を使いやがって・・・
あと少しやったのに!
ガーゼに埋もれながら・・・
俺は、
目を覚ました。
ぼんやりしたまま鏡を覗くと、
舌の色が、真っ白になっていた。
うわ・・・なんやこれ。
ガーゼでも湧いとんのか?
夢の残像がフラッシュバックする。
まさかとは思うけど、ちょっとビビるやん。
その正体は舌苔(ぜったい)というらしい。
口の中の乾燥と動きの少なさが原因だとか。
確かに、最近までの俺はほとんど話せなかったし、今も何も食べることも飲むこともできない。
ヨダレは出るのに、口の中はなぜかパッサパサだ。
そんな俺に対して、増岡さんが一言。
「まずは、水に慣れることから始めてみましょう」
え、水って!
飲むってこと?
とっさにそう思ったが、違った。
増岡さんが綿棒に水を含ませ、俺の唇にちょんと当てた。
口の中に広がる“水の気配”。
おぉ・・・なんやこれ・・・
水、めっちゃうまい
そう思わず口にしそうになった。
(もちろん、声にはならなかったけど。)
舌に触れる、ひんやりとした感覚。
唇の隙間からわずかに流れ込む水の線。
それらすべてが、
“生きてる“という実感を与えてくれた。
その夜、花菜にLINEで伝えた。
『水、くちびるにあてただけで、感動した』
『水で感動するって、素敵だね!』
・・・ほんまにその通りやな。
たった一滴の水に感動できる。
それって、悪くない人生かもしれん。
この至福の一滴が、のちに嚥下や食事再開へとつながっていく。
俺はまだ知らんかったけど、最初の一歩は、
ここから始まっていたんや。
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