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リハビリはゲーム感覚で!11:願い《脳梗塞(脳卒中)の“前向き”闘病記 第二部開始》

    第一話はこちらからご覧ください

    はじめに

    ある朝、突然倒れた和泉大輝(45歳・会社員)。
    診断は、脳幹部の梗塞。
    体は動かず、声も出ず、世界は一変した。

    不安と絶望のなか、支えてくれたのは、
    最愛の妻・花菜と3人の娘たちだった。
    「家族のために、絶対に立ち上がる」
    そう誓った男が始めたのは、
    “ゲーム感覚”のリハビリ生活だった。
    目の前に現れるボス。
    迫りくる“緊急ミッション”。
    果たして彼は、それをクリアできるのか。
    そして大輝にはまだ知らないことがあった。
    彼自身が最後まで気づかなかった“真実”とは。


    本作は、実際の経験をもとにしています。

    ※本編には、病気、身体の麻痺、生命への不安などセンシティブな描写が含まれます。
    心身に負担を感じる可能性のある方は、無理のない範囲でお読みください。
    🧠この話には、別記事で医学的見地からの解説があります。
    📘 この物語と解説記事を読むことで、脳梗塞の理解がより深まります。
    ぜひご確認ください。

    • 脳卒中リハビリの雰囲気と工夫を、物語を通して追体験できる

    • 発声・嚥下・歩行などの課題を、解説記事で医学的に理解できる

    • 患者と家族の両方の視点から、前向きに乗り越えるヒントを得られる


    それでは、本編をどうぞ。



    第二部 声か鼓動か ― 言葉を超えて、届いたぬくもり


    笑いながら言葉を交わしたい。
    声で、文字で、目線で・・・

    もう一度、思いを“かたち”にして届けられるようになりたい。

    夢から覚めて、現実を受け入れたとき、
    最初に願ったのはそれだった。


    第十一話 願い

    2025年3月4日
    体温計の数字は、37度を少し超えていた。
    風邪のような違和感はなかったが、
    体は重く、思うように動かすことが出来ない。
    それでも、予定していた自主トレ(レベルアップメニュー)を始めることにした。


    右手のグーパー
    五十音の発声練習
    そして“目”の焦点合わせ

    今の俺にできることだ。



    『この際、脂肪燃焼してもらわないとね!
     基礎体温上がってるついでに』

    花菜から届いたLINEに、自然と口元がゆるんだ。

    動けなくなってしまった俺に対しても、花菜はいつもと変わらなかった。

    そのおかげで、少し気が楽になる。




    しかし、心の奥にはどうしても消えない不安があった。

    この自主トレメニュー・・・
    自分で考えて組んだ“仮”のメニューだ。


    (本当に、これでええんか?
     やる回数、足りてる?
     ・・・やる意味、あるやんな?)

    そんな疑問が、ずっと頭の中でうずまいていた。
    リハビリをゲームのレベル上げのように思っていることと、そのメニューに対する悩みを、
    四苦八苦しながら花菜にLINEをした。
    すると、すぐに返信がきた。

    『ゲームいいじゃん。大輝っぽいね。
     せっかくだから、ボスとか作って楽しんでやってみてね』
    (さすが花菜やな、面白いこというわ。
     それなら、当面の目標を作って、
    それを“ボス”ってことにするか。)

    そして、現状を振り返ってみる。
    声は聞こえる。
    だが、伝えたいことは山ほどあるのに、声はかすれて、思うように返事ができない。
    視界はぼやけて、片目しか使えない。
    両目を開けると焦点が合わず、LINEを読むだけでも時間がかかる。
    手も震えて、思うように動かない。
    スマホのタップもひと苦労だ。

    (ってことは、今の俺が倒すべき最初のボスは、
    ・・・気持ちをちゃんと伝えられるようになることや!?)

    頭に文字が浮かぶ。
    ―― ボス出現 ――
    【魔王:発信障害】

    撃破条件:
    ・目→LINEを苦も無く読める
    ・手→素早く返信できる
    ・口→会話がスムーズにできる

    報酬:
    気持ちを、ちゃんと伝えられるようになる

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    (お、それっぽくなったな、面白いやんけ)

    そんなことを思いながら、花菜に伝えようとスマホを触る。

    しかし、誤ってインカメラを起動してしまい、
    思いがけず自分の顔が映った。
    久しぶりに見る、自分の顔・・・



    思わず、息が止まった。

    右目と左目が、まるでカメレオンのように、
    それぞれ違う方向を向いていた。

    (・・・だから焦点、合わへんのか)



    わかってしまった。
    自分の体が、思っていたよりもおかしくなっていたことを。


    焦点が合わないのは、ただのぼやけや疲れ目なんかじゃない。

    もっと根っこから、狂っている・・・



    そう確信した。

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    もしこのズレが治らなかったら?

    家族の顔をまともに見られず、LINEの文字も早く見れない。

    仕事の資料だって読めないし、
    車の運転もできない。


    (それは、さすがに嫌やなー)


    そんなことを思っていても先へは進まない。
    目に力を込めて、焦点を合わせようとしてみる。


    すると・・・

    ほんの一瞬、
    目の向きがピタッと揃い、スマホの中の自分と目が合った。


    (・・・さっそくボス攻略のヒント、掴んだかもしれんで)



    ついさっきまで持てなかった、自主トレメニューへの自信が湧き出てくる。

    (“目”の焦点合わせ・・練習する価値あるやん。)



    午後。

    さっきの発見を早速伝えたくて、花菜に電話をした。
    スマホスタンドを使って、20分間。
    花菜は、何度も「え?」と聞き返してきた。

    ちょっと悔しい気もしたけど、
    それだけ、ちゃんと聞こうとしてくれてるんだ、と思い、嬉しかった。
    たびたび聞き返されながらも、ちゃんと会話になった。

    (五十音練習、やってたかいがあったな。
    ちょっとずつやけど、言葉が前よりはっきり出るようになってきとる)



    「今日は昨日より声が聞き取りやすかったよ」と花菜に言われ、

    昨日と違う自分に、
    少しだけ誇らしさを覚えた。

    ボスはまだ倒せていない。
    でも、たしかにダメージは入った。

    そう思えたことが、今日の自分の“勝ち”だった。

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    明日もまたやる。
    迷っても、揺らいでも、先が見えなくても、
    俺はやる。

    この不安を、行動で塗りつぶす。

    ゲームは、
    ここからが本番だ。



    【ステータス:2025年3月4日】
    • 首:LV1(左右には動く/上下はまだ)
    • 右手:LV2(指のグーパーが可能。肘から先は少し反応あり)
    • 左手:LV0(反応なし)
    • 右足:LV1(足先がかすかに動く)
    • 左足:LV0(反応なし)
    【スキル】
    • 見る:LV1(片目のみ焦点が合う)
    • 聞く:LV10(正常)
    • 話す:LV1→LV2(五十音の発声が改善し、短い会話が成立)
    • メール:LV1(スマホ固定時、短文入力に10分以上)
    【その他状態】
    • ヨダレ:あり
    • 発熱:微熱


    その頃の花菜

    家中がさ
    大輝の思い出ばかり

    家具や棚、たくさん作ってくれたね

    わたしのおねがいを聞いて
    苦手な細かい作業もしてくれてたね



    今更ながら
    家族やわたしのために
    いろいろ動いてくれてたんだね


    ありがとうね
    大輝さん



    作者コメント


    ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
    第二部では、気持ちを届けることの大切さをテーマに、いよいよゲーム感覚でのリハビリが本格化していきます。

    大輝の前にたちはだかる壁、そして新たに現れる試練・・・
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    📖 第12話はこちら

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    45歳で脳幹梗塞になり、重度の両麻痺を負うという超激レア症例。現在はリハビリにゲーム感覚で挑戦し、悪戦苦闘中 闘病の中で試される、自身の覚悟、夫婦の愛、そして家族の絆・・ 実際にリハビリをしながら描く、ほぼ実話、涙あり笑いありの小説風闘病記をご覧下さい

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