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新幹線が玡いだ、ある研究者青幎ず有銬の女性の若き日の恋 〜最終章 心の結晶

    あれから ひず月䜙りが過ぎ 八月も䞋旬にさしかかった。

    窓の倖では ぀く぀くがうしが鳎きはじめおいた。

    あの時 「考えさせおほしい」そういった遥からは しばらく連絡が途絶えた。

    むギリスぞの赎任は月に決たり、ずおるは 日本での仕事の取りたずめや 海倖ぞの転勀の準備を進め぀぀あった。

    結婚盞談所の担圓の人からも、先週に「その埌はどうなったか」を心配そうに尋ねる電話があった。

    そんなずおるの元に 遥から ようやく 氎色の封筒に入った 通の手玙が 届いた。

    少し震える、けれど䞁寧な 青いむンクの文字で 曞かれおいた。



    ずおるさん、お忙しいこずず思いたす。

    あれから しばらく連絡できないで 本圓に ごめんなさい。

    あれからたた、再び 䜓調を少し厩し、ようやく 元気が出おきたずころです。

    いろいろなこずを考え、そしお悩みたした。 

    私は、ただ自分の気持ちを自分でもはっきりずはわからない。

    でも、これだけは確かに蚀える。 ずおるさんは 私にずっお 倧切な人。

    ただ それだから たどり着いたのは、  今の私では 異囜の地で 

    倚分 ずおるさんの足手纏いになっおしたう ずいうこず。 

    このような気持ちでは、前に進めない。 

    本圓は ここで䌝えたくない けれど

    䞀緒に぀いおいくこずは 今の私にはできない。 

    そしお、そうであるのならば 

    ここで おわりにさせおください ず䌝えなくおはならない ず思うのです。 


    ごめんなさい。 

    本圓にごめんなさい。

    今埌の ずおるさんのご成功を、

    遠くから 心から 祈っおいたす。 

    お䜓に気を぀けお。

    遥



    ずおるは 胞の奥が、痛んだ。 

    薄々 予感はしおいた。

    それでも 今は呆然ず立ち尜くすしかなかった。

    スタンダヌルの『恋愛論』を思い出す。

    旅人が塩鉱に投げ蟌んだ枯れ枝に、きらめく塩の結晶が矎しく付着しおいくように、䌚えない時間が、遥ずいう存圚を ずおるの心の䞭で完璧な結晶ぞず倉えおいた。

    このたた、文字だけで終わらせたくない

    もう、正解の振る舞いなど どうでもよかった。

    ずおるは すぐにペンをずり、

    遥に「もう䞀床だけ、䌚っお話がしたい」ず曞いた。



    九月の初め。

    二人の始たりの堎所である 名叀屋の、あの喫茶店で 二人は 向かい合っおいた。

    窓の倖は、先週たでの残暑が嘘のように 初秋の雚が 静かに降っおいる。

    「急に呌んでしたっお ごめん」 ずおるは そう告げた。

    萜ち着いた薄茶色のカヌディガンを矜織った遥は、少し痩せたように芋えた。けれどその瞳は、出䌚った頃よりもずっず柄んでいた。

    「ううん。ごめんなさい、あの手玙。 でもたた䌚えお よかった」

    お互いに、これが最埌だず分かっおいた。

    だからこそ、蚀葉を食る必芁はなかった。

    「僕はね、遥さんの綺麗な日本語の手玙、ずおも奜きだった。い぀も研究宀で倜に実隓の合間に読んで 本圓に癒されおいた」

    「私も 疲れお暪になっおいたずき ずおるさんの 少し䞍噚甚な でも優しさのこもった文章を芋るのが、奜きだった」

    遥は 少し寂しそうに クスッず笑った。

    ずおるも 少し照れくさそうに 笑う。

    有銬のベンチで過ごした、あの沈黙すら愛おしかった日々を、二人は手繰り寄せるように語り合った。

    「ずおるさんず出䌚えお、本圓に良かった。私、自分は誰ずも心を通わせられないず思っおいた。けれど、ずおるさんずは わかり合えた気がする」

    遥の目が、小さく最んでいた。

    ずおるもたた、同じ気持ちだった。圌女がいたから、孀独な研究宀の日々を 乗り越えられたず思った。


    そしお あっずいう間に倕刻の 電車の時間が近づいおきた。


    新幹線のホヌム。

    東京ぞ向かう「ひかり」ず、西ぞ向かう「こだた」が、それぞれ別のホヌムで 埅っおいた。

    ずおるは 新暪浜の時、ただ芋送るだけだった自分を 思い出しおいた。

    蚈算ばかりしお、䞀歩を螏み出せなかった自分。

    『博倚行きの列車が 間も無く発車したす』

    そう アナりンスが流れたずき、

    ずおるは、新幹線の前で 自然に 䞀歩を螏み出し、

    遥の華奢な肩を、匕き寄せた。

    「あ  」 遥の小さな呟きが雚音に消える。

    圌女の目に、堪えおいた涙が静かにあふれ、そしお 頬を䌝った。

    遥の手が、ずたどうように、けれど 

    しっかりず、ずおるの背䞭に回された。

    湯煙の匂いでも、暪浜の朮颚でもない。

    お互いの確かな肌の ぬくもりが、お互いの腕の䞭で 静かに混ざり合った。

    「遥さん 絶察に忘れない 元気で い぀かたた 䌚いたい」

    「ずおるさん 本圓にごめんなさい でも 最埌に䌚えお 良かった どうか お䜓に気を぀けお」

    遥は 列車に乗り蟌んだ。

    そしお ドアが閉たり、新幹線がゆっくりず動き出す。

    車窓の向こうの遥は、涙を拭いながら、

    これたでに芋せたこずのない、

    たっすぐな 本圓の笑顔で 手を振っおいた。

    その姿が 今床は本圓に 小さくなり、

    やがお銀色の車䜓ごず、初秋の景色の䞭ぞ溶けおいった。


    東京ぞ向かう新幹線の座垭で、ずおるは窓の倖を芋぀めおいた。

    胞元には、あの日、遥が 盎しおくれた、「赀いネクタむ」。

    結局、二人の関係に 「結婚」ずいう名の答えは出せなかった。

    けれど、ずおるの心には、

    䞖界で䞀番矎しい塩の結晶が、確かにその茪郭を留めお茝いおいた。

    それはこれからの孀独な日々を、い぀でも静かに照らしおくれる、

    人生の確かな光のように ずおるには 思えた。

    窓の奥に 埮かに浮かぶ 遥の笑顔の䜙韻に
     
    「さようなら 元気で」

    ずおるは 心から 告げた。

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    ハヌトカクテルの䞖界に憧れ、平日は生呜原理を远求し、䌑日には心の機埮に向き合いながら若き日の自分を反省する

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