
賢くなったAIほど、いつもの頼み方が通じない。──Opus 5活用テクニック20選
新しいAIに切り替えた最初の週、私の手直しは増えました。性能が落ちたわけではありません。むしろ逆です。こちらが言わなくても深く考え、自分で確かめ、頼んでいない先まで走ってくれる。その結果、返ってくるものが長い、広い、そして私の狙いから少しだけずれる。悪いのはAIではなく、去年のまま止まっていた私の頼み方でした。この記事は、賢くなったAIに合わせて頼み方を更新するための、20個の具体策です。

なぜ「いつもの頼み方」が通じなくなったのか
腕のいい職人が中途で入ってきた最初の1ヶ月を、思い出してみてください。前の職場で相当やってきた人です。「これ、やっといて」と言うと、言った以上のことをやってくれる。頼んでいない工程まで先回りする。聞かなくても、自分で図面を確認してくる。ありがたい話です。それでも最初のうちは「そこまでは頼んでいないんだけどな」と思う場面が必ずあります。腕が悪いからではありません。こちらの指示が、前の人向けのまま止まっているからです。
2026年7月に出たClaude Opus 5を使い始めてからの数週間、私が味わったのはまさにこれでした。公表されている性格を、経営者の言葉に置き換えるとこうなります。
- 黙っていても、考えてから口を開きます。以前のモデルは「よく考えて」と言われてから深く考え始める設定でしたが、Opus 5は最初から思考がオンになっています
- 自分の仕事を、言われなくても自分で検証します。だから「ダブルチェックして」という念押しは、この世代では逆効果になります
- 返事が長くなりがちです。短くしてほしいと最初に伝えれば、約2割は短くなります
- 頼まれていない範囲まで、作業を広げることがあります
- 部下役のAIを多めに使いたがります。前の世代とは逆の傾向です
- 一度に読み込める分量が100万トークンあります。トークンはAIが文章を数える単位です。社内の資料をひと抱え分そのまま渡しても入る、と思ってください
- 考える深さを5段階で切り替えられます。浅いほうから、low、medium、high、xhigh、maxです
一つひとつは「賢くなった」という話です。ところが現場では、賢くなった分だけこちらの手間が増えます。前の世代は放っておくと浅く考えたので、私たちは「よく考えて」「必ず確認して」と念を押す癖をつけました。その癖を、自分で考えて自分で確認する相手に向けたまま使っている。念押しは二度手間になり、範囲を切らない依頼は際限なく広がります。
道具の性能を上げる話ではなく、こちらの頼み方を更新する話です。
私が最初の一週間でやらかしたこと
最初の失敗は、月曜の朝でした。
顧問先に出す提案書の下書きを頼みました。いつもの癖で、依頼文の最後にこう書き添えました。「内容に間違いがないか、必ずダブルチェックしてから出してください」。数分後に返ってきたのは、たしかに間違いのない文章でした。ただ、読みにくい。「この数字については、前段の記述との整合を確認しました」「ここは断定を避け、表現を調整しています」。確認した過程が、本文のあちこちに顔を出しているのです。私はそれを一つずつ削りました。削り終えて、はたと気づきました。この人は、言われなくても確認する人だった。私が念を押したせいで、確認したことを報告する仕事まで増やしてしまったのです。
火曜は、分量でやられました。
社内会議用に、直近3ヶ月の顧問先の傾向を「まとめて」と頼みました。長さを言わなかった。返ってきたのは、章立ての効いた読み応えのある文書です。内容は悪くない。むしろ良い。ただ、私が欲しかったのは会議で配るA4一枚でした。夜、椅子に沈み込んでスクロールしながら、「この中のどこを使うか」を探している自分がいました。AIに任せたはずの仕事の続きを、私が手でやっている。何のために頼んだのか分からなくなる時間でした。数えてみたら、私が頼んだつもりの分量のおよそ3倍ありました。3倍を読んで3分の1を選ぶ。これは要約という作業で、しかも私がやっています。頼む前より仕事が増えているじゃないか、と口に出しそうになりました。

水曜は、範囲でした。
見積書のテンプレートを直したい、と頼みました。返ってきたのは、直った見積書のテンプレート。それに加えて、請求書のひな形、入金が遅れたときの督促文、さらに「これらを社内で運用するための手順書の目次」まで付いていました。全部それなりの出来です。捨てるのが惜しい。でも今日必要なのは見積書だけで、残りは読む時間も判断する時間もない。善意でできあがった成果物が机に積まれていく感覚は、実のところ人を疲れさせます。
もうひとつ、水曜には妙なことがありました。少し重い調査を頼んだところ、返事が来るまでにいつもより時間がかかり、そのあいだに「担当を分けて進めています」という趣旨の報告が挟まったのです。Opus 5は、部下役のAIを何人か立てて手分けさせるのを好みます。前の世代は一人で抱え込む傾向でしたから、逆になりました。出てきた成果物は、たしかに広く目配りが利いていました。ただ、こちらが「一人でさっと調べてくれればいい」と思っていた仕事に、小さなチームが編成されていたわけです。速い仕事を頼んだつもりが、丁寧な仕事が返ってくる。この食い違いも、こちらが何も言わなかったせいでした。
同じ週、顧問先の社長からも電話がありました。従業員32名で、自動車の整備と鈑金をやっている会社です。社長は整備士上がりの二代目で、油の匂いのする現場から上がってきた人ですから、道具の目利きには自信がある。その人が、少し困った声で言いました。
「先生、これ、気が利きすぎて怖いんですけど」
聞けば、車検の入庫案内のはがき文面を作らせたのだそうです。返ってきたのは、はがきの文面と、待合室に貼るキャンペーンのチラシ案と、LINEで送る短い配信文と、来年一年分の販促カレンダーでした。「頼んでないもんが出てくると、断っていいのか分からんくなる」。二代目はそう言いました。「捨てたら、せっかく作ってくれたもんが無駄になる気ぃがして」とも言っていました。整備士の感覚が出た言葉だと思います。使える部品は使う、直せるものは直す。その人が、使い道の決まっていない成果物を前にして手を止めているのです。私はこの一言で、自分の水曜日の正体が分かりました。頼んでいないものが出てくると、人は判断を迫られます。判断は疲れます。だから「賢いのに疲れる」という、妙な状態が起きるのです。
なお、この記事に出てくる整備・鈑金の会社の話は、複数の支援先での出来事を1社の物語として再構成しています。
転機は木曜でした。私は依頼文に、たった1行を足しました。
「A4一枚、800字以内。見積書のテンプレートだけで止めてください。請求書や手順書は今回は不要です」
返ってきたのは、A4一枚の、見積書のテンプレートだけでした。手直しはゼロ。所要は数分です。前日の私が1時間かけて削っていたものは、この1行で消えました。

金曜、私は二代目社長に電話をかけ直して、この1行の話をしました。彼は翌週、はがきの文面を頼むときに「はがきの文面だけ。80字前後。チラシもLINEも今回は要りません」と書いたそうです。「一発でした」と、笑い混じりの報告が来ました。
新しく入った職人に、こちらの段取りを教え直す。それだけの話です。ただ、そこに気づくまでに私は一週間を溶かしました。その一週間で拾ったものを、頼み方・渡し方・任せ方・判断の4つに分けて並べます。
頼み方を変える5つ
1. 「ダブルチェックして」を消す
念押しは、相手が確認しない前提の言葉です。Opus 5は自分の仕事を自分で検証します。そこに「必ず確認して」と足すと、確認そのものではなく、確認したことの説明が増えます。まず、依頼文の定型から念押しの一文を削ってみてください。心配なら、代わりに「確認した過程は書かず、結果だけ出してください」と書く。これだけで本文が締まります。
2. 長さを先に決める
放っておくと、返事は長くなります。逆に言えば、短くしてほしいと最初に言えば約2割は短くなります。「まとめて」ではなく「A4一枚で」「600字で」「箇条書き5個で」。長さを決めるのは内容を決めるより簡単で、効き目は内容の指定よりはっきり出ます。
3. 「ここから先はやらなくていい」と1行で線を引く
広がるのを止めるには、やっていい範囲を示すより、止まる場所を示すほうが確実です。「見積書のテンプレートまで。請求書は不要です」「今日は現状の整理まで。改善案はまだ要りません」。一行足すだけで、机に積まれる善意の成果物が消えます。
4. 答えの形を先に決める
「良い感じにまとめて」は、形の設計まで相手に任せる言い方です。形は、頼む側が決めたほうが早い。見出し名を並べる、項目名を指定する、行数を決める。たとえば「①事実 ②私が判断すべき点 ③次の一手、の3見出しで」と書けば、返ってきたものをそのまま会議に持ち込めます。
5. 「じっくり」と「さっと」を仕事で切り替える
Opus 5は、考える深さを5段階で切り替えられます。ただ、経営者が覚えるべきは段階の名前ではありません。「この判断は腰を据えて考えてほしい」「これは流れ作業なので手早く」と、仕事の重さに応じて言葉で伝える習慣のほうです。値決めや人の配置は前者。定型文の下書きは後者。同じ相手に同じ調子で頼み続けると、どちらかが必ず割を食います。
この5つは、慣れるまで意識しないと抜けます。私は最初の1ヶ月、自分が書いた依頼文をAIに直させていました。整備工場の二代目社長にも同じものを渡しています。彼は今も、はがきや案内文を頼む前に一度これを通しているそうです。
あなたは私の依頼文を整える編集者です。私はこれからAIに仕事を頼みますが、
長さ・範囲・出力の形を指定し忘れる癖があります。
【ここに私が書いた依頼文をそのまま貼る】
上の依頼文に対して、次の3点だけを補ってください。本文の書き直しはしないでください。
1. 長さの指定(1行。「◯◯字程度で」または「箇条書き◯個で」の形)
2. やらなくていい範囲の指定(1行。「◯◯までで止めてください」の形)
3. 出力の形の指定(1行。見出し名または項目名を並べる)
最後に、この3行を足した完成版の依頼文を、そのままコピーできる形で1つだけ出してください。
解説や補足は不要です。出てきた完成版を、そのままコピーして本番の会話に貼るだけです。何度か通すうちに自分で書けるようになるので、その頃には使わなくなります。それでいいと思っています。

渡し方を変える5つ
6. 要約せずに、資料を丸ごと渡す
Opus 5は一度に100万トークン分を読み込めます。渡す前に人が要約する必要は、ほとんどありません。ところが多くの人は、いまだに「AIに渡せる分だけ」に自分で削ってから渡しています。この削る作業が、一番もったいない。落ちるのは、たいてい判断に効く細部のほうだからです。議事録も、見積の履歴も、クレームのやり取りも、生のまま渡してください。
7. 去年の同じ資料も一緒に渡して、比べさせる
今年の数字だけを渡すと、返ってくるのは今年の解説です。去年の同じ資料を並べて渡すと、変化の指摘に変わります。整備工場の二代目社長は、今期と前期の入庫データを一緒に渡して、「どの車種の再入庫が減ったか」を出させました。減っているという事実は、今期のデータだけを見ていた頃は誰も口にしていませんでした。
8. 数字には「いつの・どこの数字か」を1行添える
これは相手のためというより、自分のためです。「6月の、鈑金部門だけの、値引き後の数字です」と書き添えると、返ってくる分析の前提がぶれません。加えて、数ヶ月後に自分が読み返したとき、その数字が何だったのかが分かります。私は一度、前提を書かずに渡した数字をもとに判断しかけて、冷や汗をかきました。
9. 移動中は、音声で長く話して渡す
きれいな文章にする必要はありません。言い直しても、脱線しても構いません。Opus 5は長い入力を苦にしないので、車の中で5分喋ったものをそのまま渡すほうが、後でパソコンの前で3行にまとめるより情報量が多くなります。整備工場の社長は、工場から自宅までの15分でこれをやっています。
10. 1つの会話に1テーマ。話題を混ぜない
これは技術の話ではなく、後で読み返す自分のための話です。採用の相談と値上げの相談を同じ会話でやると、結論がどちらの文脈のものか分からなくなります。会話は分けてください。分けるコストは数秒、混ぜたコストは後から数十分になって返ってきます。
資料を丸ごと渡すときは、最初の一言が効きます。いきなり貼ると、相手はいきなり感想を言い始めるからです。整備工場の社長が月初に前月の入庫データと日報をまとめて放り込むときに使っているのが、次の前置き文です。運転中に音声で話しても通ります。
あなたは私の会社の資料を初めて読む、外部から来た分析役です。
これから資料を何本かまとめて貼ります。要約はこちらでしていません。生のままです。
【ここに資料をまとめて貼る/音声で話す。何の資料か、いつのものかを最初に一言だけ添える】
読み終えたら、まず次の4つだけを返してください。感想や提案はまだ要りません。
1. この資料から読み取れる事実(箇条書き5個。数字には元の資料名を添える)
2. 資料どうしで食い違っている点(箇条書き3個。なければ「なし」)
3. 判断するには足りない情報(箇条書き3個)
4. 私に確認したい質問(3つまで)
この4つを出したところで、いったん止まってください。改善案はまだ書かないでください。効いているのは、最後の「いったん止まってください」です。これがないと、読み終えた勢いのまま改善案まで書き始めます。

任せ方を変える5つ
11. 3行の依頼をやめて、その場で「1枚の指示書」を書く
私たちが3行で頼めるのは、社内の人間には前提が共有されているからです。AIには共有されていません。任せたい仕事があるときは、その場で4つだけ書き足してください。前提、目的、使う相手、避けたいこと。この4つが埋まっているだけで、返ってくるものの精度が変わります。立派な仕組みとして保存しなくて構いません。その仕事のために、その場で1枚書けば十分です。
12. 途中で報告させるタイミングを、自分で決める
長い作業を丸ごと任せると、出来上がってから方向違いに気づきます。「章立てができた時点で一度見せてください」「事実の整理が終わったら止まってください」。途中で止める場所を決めるのは、頼む側の仕事です。人に任せるときと同じで、任せきりと放置は違います。
13. 全部やり直しでなく「ここだけ直して」と差分で言う
気に入らない箇所があると、つい「もう一回作り直して」と言いたくなります。作り直すと、良かった部分まで変わります。「3つ目の見出しの中身だけ、現場の言葉に寄せて書き直してください。他はそのままで」。直す場所と、触らない場所。両方を言うのがコツです。
14. 「どこを見れば良し悪しが分かるか」を、本人に説明させる
出てきたものを評価する基準を、こちらが毎回考えるのは骨が折れます。「この文面が失敗するとしたら、どこで失敗しますか。見るべき点を3つ挙げてください」と聞いてください。返ってきた3点が、そのまま自分のチェック項目になります。しかも、自分では思いつかなかった観点が混ざります。
15. 途中で気が変わったら、その場で正直に言い直す
会話の途中で「やっぱり方向が違うな」と思うことがあります。そこで黙って作り直させると、相手は前の指示を引きずったまま作ります。「さっきの依頼は取り下げます。方向を変えます。今度は◯◯です」。はっきり言い直したほうが、結果は早く良くなります。人相手なら気を使う場面ですが、ここは遠慮の要らない相手です。
11の「1枚の指示書」は、慣れるまで自分では書けません。私も最初はAIに書かせていました。次のプロンプトは、任せたい仕事を3行で放り込むと、足りない前提を1問ずつ聞いてくれるものです。整備工場の社長は、新人整備士向けの作業手順書を作らせるときにこれを使いました。
あなたは私の秘書役です。私はこれから仕事を1つ任せますが、頭の中にしかない前提を
書き落とす癖があります。私に質問して、任せるための「1枚の指示書」を作ってください。
【ここに、任せたい仕事を思いつくまま3行で書く/音声で話す】
進め方:
まず、次の4点のうち私の説明で埋まっていないものだけを、1問ずつ聞いてください。
一度に全部聞かないでください。
- 前提(この仕事の背景。社内の事情を含む)
- 目的(これができたら何が前に進むのか)
- 使う相手(誰が読むのか。その人が何を知っていて、何を知らないか)
- 避けたいこと(こう来たら困る、という失敗の形)
4点が埋まったら、「今回の指示書」という見出しで、上の4項目と私の依頼内容を1枚に
まとめてください。今回のこの仕事のための1枚で結構です。汎用の書式にはしないでください。質問は1問ずつ来ます。答えるのに5分ほどかかりますが、その5分で、3行では絶対に伝わらなかったことが伝わります。
経営判断で使う5つ
ここまでは、作業を頼むときの話でした。ここからは、社長にしかできない仕事、つまり決めることの周りでどう使うかです。決めるのは社長です。AIに決めさせる話は一つも出てきません。
16. 決めた後に、反対意見を5つ出させる
決める前に相談すると、判断が鈍ります。決めた後に反対意見を出させると、決断は残したまま穴だけが見つかります。順番が大事です。整備工場の二代目社長は、鈑金部門の稼働時間を延ばすと決めた後にこれをやって、5つのうち1つ、夜間の受付電話を誰が取るかという点を見落としていたことに気づきました。決定は変えず、段取りだけ足しました。
17. 会議の前に「詰められそうな質問」を作らせる
銀行、幹部会、株主。誰の前に出るかを伝えて、「この資料で、相手から出そうな質問を厳しい順に10個」と頼んでください。10個のうち、答えられないものが1つか2つ出てきます。会議の前にそれが分かることの価値は、資料を1枚増やすことの比ではありません。
18. 数字を見せるときは、解釈まで言わせて自分の読みとぶつける
数字を渡して集計だけさせるのは、もったいない使い方です。「この数字から読み取れることを3つ、確度の高い順に」と頼み、自分の読みと突き合わせてください。一致したら自信を持って進めばいい。ずれたら、そこが自分の思い込みか、相手の見落としのどちらかです。どちらにせよ、確かめるべき場所がはっきりします。
19. 言葉にならないモヤモヤを、質問で引き出させる
社長業でいちばん厄介なのは、はっきりした問題ではなく、名前のついていない引っかかりです。「なんとなく、あの部署が気になる」。この状態のまま人に相談すると、相手は具体的な話を求めてきます。AI相手なら、まとまっていない話をそのまま出せます。答えを求めず、質問で掘らせてください。
20. 的外れな答えが返ったときの言い直し方を、自分の型として持つ
賢い相手でも、こちらの前提を取り違えれば的外れなことを言います。そこで「違う」とだけ返すと、相手は当てずっぽうを繰り返します。私の型はこうです。「今の答えがずれた原因は、私の説明の◯◯が足りなかったからだと思います。◯◯という前提を足すと、答えはどう変わりますか」。原因をこちらが引き受けると、次の一手が具体的になります。これは人間相手でも同じでした。
16の反対意見は、私が毎月かならず通しているものです。決めた直後に、決定文を1行から3行で書いて放り込みます。整備工場の社長にも渡しました。彼は設備投資の判断のたびにこれを使っています。
あなたは私の会社の社外取締役です。私に気を使う必要はありません。
私はすでに次のことを決めました。決定をひっくり返すためではなく、決定の穴を
先に見つけるために意見が欲しいです。
【ここに、決めたことを1〜3行で書く。決めた理由も一言添える】
次の形で返してください。
1. この決定に対する反対意見を5つ(1つ2行以内。強い順に並べる)
2. 5つのうち、私が見落としている可能性が最も高いものを1つ選び、その理由を3行で
3. その1つに対して、私の側から出せる反論を3つ
4. 反論しきれずに残るリスクを1行
「総合的には妥当な判断です」のようなまとめは要りません。出てきた5つのうち、読んで腹が立つものが本命です。腹が立つのは、たいてい図星だからです。
19のモヤモヤのほうは、プロンプトの形にしておかないと、まず使えません。整理してから話そうとして、結局話さずに終わるからです。次のものは、整理しないまま話しかけるための入り口です。これも運転中に音声で話して成立します。
あなたは経営者の相談相手です。私はいま、うまく言葉にできない引っかかりを
抱えています。答えを出すのはまだ早いので、質問で引き出してください。
【ここに、モヤモヤしていることを言葉のまま話す/書く。整理しなくて構いません】
進め方:
- 1回に1問だけ聞いてください。まとめて聞かないでください。
- 私の答えが抽象的だったら、「具体的にはいつの、誰との場面ですか」と聞き返してください。
- 5往復したら、いったん止めて、次の3つを出してください。
1. 私が本当に引っかかっている点(1文で言い切る)
2. その裏にありそうな不安(2つまで)
3. 私が次に決めるべきこと(1つだけ)
励ましや、前向きなまとめは要りません。5往復で止めているのは、そこから先が自分で考える時間だからです。
20個ぜんぶやらなくていい
正直に言えば、20個を一度に始めるのは無理です。私自身、最初に定着したのは2つでした。念押しを消したことと、長さを先に決めたこと。この2つだけで、手直しの時間ははっきり減りました。約2割短くなるという公表値は、私の実感ではそれ以上でした。
整備工場の二代目社長のほうは、範囲を切る一行から始めました。次に、資料を丸ごと渡すこと。3ヶ月目に、決めた後に反対意見を出させる習慣が加わりました。今の彼は、AIが出したものを直す時間より、何を頼むかを考える時間のほうが長くなっています。先日、こんなことを言われました。
「昔は、出てきたもんを直しよったんです。今は、頼む前に考えとるんですわ」
これが、この20個で起きる変化のすべてだと思っています。手直し中心から、設計中心へ。作業の重心が、後ろから前に移る。前に移った分だけ、社長の時間は本来の仕事、つまり会って、決めて、売ることに戻っていきます。

私自身の変化も同じ方向でした。以前は、上がってきた原稿や資料の後始末に夜を使っていました。今は朝のうちに「何を、どの範囲で、どの形で頼むか」を決める時間を10分ほど取っています。その代わりに、夜の1時間が空きました。空いたのが夜の1時間だという点が、私にとっては大きい。これはあくまで一例として読んでください。会社によって、詰まっている場所は違います。
ここまでの20個に、設定をいじる話は一つもありません。全部、こちらの言葉づかいの話です。だから今日から始められます。
経営者へ
これは、AIの性能を上げる話ではありません。こちらの頼み方を更新する話です。
腕のいい職人が入ってきたとき、私たちは教え方を変えます。前の人に言っていたことをそのまま言い続ける社長はいません。「この人は言われなくても図面を見る」「放っておくと隣の工程まで手を出す」。相手の性格が分かれば、指示の出し方が変わる。それを、AIに対してもやればいいのです。
難しいのは、相手が機械だと、性格があると思えないことです。設定を変えれば済むと考えてしまう。ところが実際に効いたのは、依頼文の最後に足す一行のほうでした。長さ、範囲、形。この3つだけで、返ってくるものが変わります。設備投資も、契約の切り替えも要りません。
新しい人が入ったら、教え方を変える。もう何度もやってこられたことのはずです。
おわりに
今日、次にAIに何かを頼むとき、依頼文の最後に一行だけ足してみてください。
「600字以内で。◯◯までで止めてください」
これだけです。20個のうちの2つですが、効き目がいちばん早く出るのもこの2つです。うまくいったら、次は資料を丸ごと渡すところへ進んでください。順番はそれで十分だと思います。
賢くなった道具に振り回されるか、賢くなった分だけこちらが楽になるか。分かれ目は、道具の性能ではなく頼み方の側にありました。少なくとも、私の場合はそうでした。

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鈴木章裕
株式会社コミクス 代表取締役