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あなたのAI、買ってきたままの設定で使っていませんか?


    「AIを入れたのに、たいして賢くない」。その正体は、性能ではありません。あなたの会社の前提を、AIがまだ一つも渡されていないだけです。私は自分のAIに、会社の判断基準と数字の定義を書いて渡し、役割を分け、週に一度だけ見直す時間を予定に入れました。たったこれだけで、AIは「うちの会社の相棒」に変わりました。今日はその手順を、月曜からそのまま真似できる形で全部お渡しします。

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    高性能なAIが、なぜ「うちの会社」を外すのか

    最初にお伝えしておきたいことがあります。多くの経営者が「うちのAIはいまいち」と感じる原因は、AIの頭の良さではありません。私は生成AI活用顧問として277社の経営者を支援してきましたが、「入れてみたけど期待外れだった」という声の中身を一つずつ聞いていくと、ほぼ全部が同じ場所でつまずいていました。AIが会社の前提を一つも知らないまま、いきなり本番の相談に使われているのです。

    考えてみれば当たり前の話です。優秀な人を中途で採用したとして、初日にいきなり「うちの来期戦略どう思う?」と聞いても、まともな答えは返ってきません。その人はまだ、あなたの会社の商品も、お客さんの顔も、去年やらかした失敗も、社長であるあなたの口ぐせも、何一つ知らないからです。AIもまったく同じで、契約した瞬間のAIは「その道のプロだけど、あなたの会社の話は初耳」という状態にあります。

    ところが機械が相手だと、私たちはこの当たり前を忘れてしまいます。検索エンジンのように「賢い箱」だと思い込んで、前提を渡さないまま質問だけをぶつけ、返ってきた一般論を見て「なんだ、この程度か」とがっかりする。これはAIの実力を測っているのではなく、前提を渡していない自分のやり方を測っているだけなのです。

    ここで私が声を大にして言いたいのは、「だから会社を知らないAIはダメだ」という話ではありません。それはもう分かった。問題はその先で、では会社の前提をどうやって渡すのか、という具体的な手順が世の中にほとんど出回っていないことです。「AIに学習させましょう」と言われても、経営者からすれば何を書いて、どこに置いて、どう更新すればいいのか見当もつかない。私自身がそこで長いこと立ち止まっていました。

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    この記事は、その「渡し方」を一本の方法論として整理したものです。私が自分のAIに対して実際にやってきた調整を、4つの段階に分けました。専門知識は要りません。必要なのは、あなたの会社のことを一番よく知っている人、つまりあなた自身が、その頭の中身を少しだけ言葉にして渡すことだけです。

    深夜のオフィスで、AIの設定を書き換えた

    正直に打ち明けると、私も最初はがっかりした側の人間でした。話題のAIエージェント環境を自分用に導入して、意気込んで経営の相談をぶつけたのを覚えています。「うちの受注を伸ばすには?」と聞けば、教科書に載っていそうな施策が並ぶ。「この提案書をレビューして」と頼めば、当たり障りのない一般論が返る。そのたびに私は画面の前で「うちの会社は違うんだよな」と呟いていました。

    夜のオフィスで一人、返ってきた文章を読みながら、私はしばらく「こんなものか」と思っていました。けれどある晩、ふと気づいたのです。私はこのAIに、コミクスがどんな会社で、どのお客さんを大事にしていて、どんな提案なら通るのかを、一度も教えていない。教えていない相手に的確な答えを求めるのは、道を聞かれた通行人に自宅の冷蔵庫の中身まで当てさせるようなものだ、と。

    そこで私は方針を変えました。質問の仕方を工夫するのをやめて、AIに渡す前提のほうを作り込むことにしたのです。まず手をつけたのは、過去に自分がAIへ出してきた「そうじゃない」「もっとこうして」という修正の記録でした。振り返ってみると、私は同じような直しを何度も繰り返していました。「その言い回しは硬い」「その数字の出し方は違う」「うちはそういうお客さんは狙っていない」。一つひとつは小さな注意ですが、毎回口頭で言い直しているうちは、AIは永遠に同じ間違いを繰り返します。

    私はこの修正のやりとりを、たまっていた分だけ全部洗い出しました。数えてみると159件ありました。正直に言えば、地味で骨の折れる作業です。過去のやりとりをさかのぼり、「ここで私は何に引っかかったんだっけ」と一件ずつ思い出していく。半日はかかりました。けれど、この半日が後々、何十時間分もの言い直しを消してくれると分かってからは、むしろ気持ちよく投資している感覚でした。そして一件ずつ眺めながら、似たものをまとめ、重複を削り、最終的に38個のルールに絞り込みました。「顧客名は業種で伏せる」「報告は感覚ではなく数字で書く」「提案は必ずこの4つの観点を入れる」——そんな、私が毎回口で言っていた注意を、文章にしたのです。そしてそれを、AIが毎回の作業の最初に必ず目を通す場所に置きました。

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    効果は、想像していたより劇的でした。あれだけ繰り返していた言い直しが、ほとんど消えたのです。以前なら「その報告、感覚で書かないで数字で」と毎回打ち込んでいたものが、最初から数字で返ってくる。「顧客名は伏せて」と念を押していたのが、言わなくても業種表記になっている。私は同じ注意を三度も四度も打つ時間から解放され、AIは私にとって「いちいち説明しなくても分かっている相手」に近づいていきました。

    もう一つ、このとき私が決めたことがあります。それは、AIの「役割の配り方」です。一番賢いAIに雑用をさせるのは、実はとてももったいない。だから私は、頭のいちばん切れるAIを「考える係」、つまり私の参謀として、判断と設計だけに専念させることにしました。文章やコードを実際に作る係、日々の細かい実務を回す係、検索や整理をさばく係は、別に分けたのです。この配役を設定ファイルに書き込んだことで、私の手元のAIは一人の万能選手ではなく、役割の違う何人かのチームのように動きはじめました。この考え方は後の章で詳しくお話しします。

    ここまでが、私が深夜のオフィスでやったことのほぼ全部です。難しい技術は一つも使っていません。やったのは、頭の中にあった「うちの会社のクセ」を言葉にして渡し、AIに役割を割り振っただけ。それでもAIの働きは、買ってきたままのときとは別物になりました。

    チューンナップは、たった4段階で考える

    さて、ここからが本題です。私が自分のAIにやった調整を、あなたの会社でもそのまま再現できるように、4つの段階に整理しました。上から順にやれば、AIは着実に「あなたの会社仕様」に近づいていきます。難しく考えず、まずは段階1から手をつけてみてください。

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    段階1は、会社の前提と判断基準を1枚にして、AIに常時読ませることです。 1枚といっても、大げさな経営計画書ではありません。事業の柱は何か、どんなお客さんを大事にしていて、逆にどんな依頼は受けないのか、報告はどんな口調で返してほしいのか——普段あなたが社員に説明していることを、そのまま箇条書きにするだけで十分です。この1枚をAIが毎回の作業の前に必ず読むようにしておけば、あなたが黙っていても「この会社ならこう考えるはず」という土台の上で答えが返ってきます。そして、その1枚の中でもとりわけ効くのが、「数字の定義」を揃えることです。売上、粗利、入金、受注、見込み——こうした言葉は、会社によって意味が微妙にずれます。売上は税込か税抜か、いつ時点で立てるのか。粗利に何の費用を含むのか。この定義がAIとあなたでずれていると、どれだけ賢く計算しても答えは的外れになります。まずはここを揃えた「自社の数字定義書」を1枚作りましょう。これは後で自分だけの経営ダッシュボードを作るときの土台にもなります。

    自分の数字の定義を言葉にするのは、意外と難しいものです。頭では分かっていても、いざ書き出そうとすると手が止まる。そこでAIに、インタビュアー役になって一つずつ聞き出してもらいます。中小企業の経理担当がいない社長でも、質問に答えるだけで定義書が1枚仕上がります。次のプロンプトを、月末の落ち着いた時間に試してみてください。

    あなたは、私の会社の「数字の定義」を一つずつ確認していくインタビュアーです。
    売上・粗利・入金・受注・見込みといった経営数字は、会社ごとに意味がずれます。
    これから私が経営で使う数字を、あなたが1個ずつ質問してください。
    【ここで私が普段見ている数字を、思いつくまま話す/貼る】
    質問のルール:
    ・一度に聞くのは1項目だけ。私の答えを聞いてから次へ進む
    ・「その数字はいつ時点のものか」「税込か税抜か」「何を含み、何を含まないか」を必ず確認する
    ・私の答えが曖昧なときは、選択肢を2〜3個出して選ばせる
    全項目が固まったら、最後に「自社の数字定義書」を表で1枚にまとめてください。
    列は「数字の名前/私の会社での定義/集計のタイミング/注意点」の4つにしてください。

    段階2は、毎回の言い直しを「ルール」に昇格させることです。 私が159件を38ルールに絞ったのが、まさにこれです。ここで大事なのは、口頭で直すのをやめて、設定に書くこと。同じ注意を毎回打ち込んでいる限り、その手間は永遠に続きます。一度「先に読ませておく前提」に昇格させてしまえば、二度と言わずに済むのです。誤解しないでほしいのですが、これは「やってはいけないこと集」を作る作業ではありません。あくまで、毎回渡していた前提を、最初から渡しておく側に引き上げるだけ。前向きな昇格リストだと思ってください。最初から38個も作ろうと気負う必要はありません。まずは「これは毎回言っているな」という不満を5つ書き出すだけでいい。その5つを先に読ませておくだけで、来週からその5回分の言い直しが丸ごと消えます。効果を実感すると、不思議と次の5つを足したくなります。

    とはいえ、自分が普段どんな言い直しをしているかは、案外自分では気づけません。そこで1週間、AIとやりとりするたびに「あ、また同じこと言ってるな」と感じた瞬間だけメモしておき、週末にAIへ話します。パソコンが得意でない方は、音声入力でぼやくように話せば十分です。次のプロンプトが、その愚痴を「昇格リスト」に変えてくれます。

    あなたは、私とAIのやりとりを整理する「設定の番人」です。
    私がこの1週間、AIに対して「毎回これを言い直しているな」「そこじゃないんだよな」と
    感じた場面を、思い出すまま話します。順番も文章も気にせず、愚痴のように話します。
    【ここで1週間分の言い直し・不満を、音声入力で話す】
    話し終えたら、次の形で仕分けてください。
    ・「毎回言うのをやめて、最初からAIに読ませておく設定に昇格させるべき項目」を抜き出す
    ・それを、重要度の高い順に並べる
    出力は表で。列は「昇格させる項目/今は毎回どう言い直しているか/
    設定にどう書けばもう言わずに済むか(そのままコピペできる文)」の3つにしてください。
    禁止事項の一覧ではなく、あくまで「先に渡しておく前提」として書いてください。

    段階2にはもう一つ、相性のいい使い方があります。AIから返ってきた「なんだか一般論で物足りない回答」を逆手に取る方法です。物足りない回答は、裏を返せば「AIがあなたの会社の何を知らないか」を教えてくれる貴重なヒントです。その回答をそのまま貼って、「うちの会社の答えにするには、あと何を教えればよかったか」を洗い出させる。ここで大切なのは、点数をつけて診断させるのではなく、足りない情報を並べて「買い物リスト」にすることです。そのリストを埋めていけば、それがそのまま段階1・段階2に渡す前提の材料になります。

    あなたは、AIの回答を「うちの会社仕様」に近づけるための、不足情報の洗い出し担当です。
    これから、私がAIに質問して返ってきた「なんだか一般論で物足りない回答」を貼ります。
    【ここに、物足りなかったAIの回答を貼る】
    この回答が一般論どまりになったのは、AIが私の会社の何を知らなかったからかを推測してください。
    そのうえで「この回答を“うちの会社の答え”にするために、あと何を教えればよかったか」を
    箇条書きで列挙してください。
    ・点数付けや良し悪しの診断はしないでください。足りない情報を挙げるだけにしてください
    ・各項目は「教えるべき情報/なぜそれが必要か」の一文セットにしてください
    最後に、その箇条書きを、上から埋めていける空欄付きの
    「次にAIへ渡す前提の買い物リスト」としてまとめてください。

    このリストは、そのまま段階1の「1枚」に足していく材料になります。物足りない回答は、もう単なるがっかりではありません。あなたの会社をAIに教えるための、次の宿題を差し出してくれる合図なのです。がっかりするたびに前提が一つ濃くなる、と考えれば、一般論の回答すら怖くなくなります。

    一番賢いAIには、作業をさせない

    段階3は、AIに役割を分けることです。 ここが、多くの人が見落としている一番のコツかもしれません。ふつう私たちは、一番賢いAIに何でもやらせようとします。でも、それはもったいない使い方です。

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    私の環境では、頭のいちばん切れるAIには、あえて作業をさせていません。その一番賢いAIは「考える係」、つまり私の参謀として、何をどう進めるかの判断と設計だけに専念させています。実際に文章やコードを作るのは「作る係」、日々の定型的な実務を回すのは「回す係」、検索や整理といった手数の仕事は「さばく係」。この配役を、一度だけ設定に書いておくのです。

    会社の組織を思い浮かべてもらえれば、しっくりくると思います。有能な右腕を、コピー取りや書類整理に一日中つきっきりにさせる社長はいませんよね。右腕には全体を考えてもらい、手を動かす仕事は別の人に任せる。それと同じ発想を、AIにも持ち込むだけです。難しいモデルの使い分けの話ではありません。「一番賢いAIには考えさせて、手を動かす仕事は下ろす」——覚えておくのはこの一言で十分です。この配役をしてから、私の相談は「作業の指示出し」から「参謀との対話」に変わりました。以前は、思いついたことを片っ端からAIに打ち込んで、返ってきたものを自分でつなぎ合わせていました。今は違います。まず参謀役に「こういう狙いなんだけど、どう進めるのが筋がいい?」と相談し、段取りが決まってから作る係に渡す。頭を使う部分と手を動かす部分がきれいに分かれたことで、私自身が「考える」ことに集中できるようになりました。一番賢いAIを雑用から解放してあげると、そのぶんの知恵が、まるごとあなたの経営判断のために使われるようになるのです。

    段階4は、この調整を定例に組み込むことです。 ここまでの3段階をやると、最初はAIが見違えます。ところが、放っておくとまた少しずつ物足りなくなる。会社の状況が変わり、新しい商品が増え、去年の前提が今年は古くなるからです。だから私は、週に一度だけ、AIの設定と画面を見直す5分間を予定表に入れました。5分でいいのです。今週AIにがっかりした場面を思い出し、その分だけ設定を直す。この小さな習慣が、AIを錆びさせない一番の秘訣でした。コツは、予定表に「AI見直し・5分」と枠を入れてしまうことです。人は、時間の決まっていないことは結局やりません。金曜の夕方でも月曜の朝でも構いません。逆にこの5分をサボると、半年後にはまた「最近うちのAI、いまいちだな」に逆戻りします。設定は作って終わりではなく、少しずつ手を入れ続けるものだと思ってください。

    この週次の見直しも、一人でやろうとすると続きません。そこでAIを進行役にして、5分の「改善会議」を毎週同じ形で回します。パソコンが苦手な方は、これも音声で話しかけるだけで構いません。

    あなたは、私と週に一度だけ開く「AI改善会議」の進行役です。所要時間は5分です。
    私が今週AIに対して「がっかりした」「惜しかった」と感じた場面を、1〜3個ざっと話します。
    【ここで、今週AIにがっかりした場面を音声入力で話す】
    それぞれについて、次を出してください。
    ・原因は「AIの力不足」か「私が前提を渡していなかったせいか」のどちらに近いか(一言で)
    ・後者なら、設定やルールに追記する改訂案を、そのままコピペできる文で1〜2行
    ・今週はどの1件だけ直せば効果が一番大きいか、を最後に1つだけ選ぶ
    毎回同じ形式で、表で出してください。
    列は「今週の場面/原因/設定への追記案/今週の最優先」の4つにしてください。

    4段階をひと通りやったら、最後に仕上げの確認をしましょう。せっかく調整したのに、本当にAIが「うちの会社」を分かったのか、感覚では心もとない。そこで、AI自身に確認テストを作らせて、受けさせます。人を採用したあとに試用期間で見極めるのと同じ発想です。合格ラインつきのテストが返ってくるので、あなたは答え合わせをするだけ。ここで落ちた項目が見つかれば、それがそのまま次の段階1・2への宿題になります。

    あなたは、私の会社の内情をどれくらい分かっているかを、自分でテストする受験者です。
    私はこれまで、会社の前提・数字の定義・判断のクセを、設定として渡してきました。
    その設定を踏まえ、「この会社を本当に分かっているAIなら答えられるはずの確認テスト」を
    10問つくってください。
    【ここに、これまで渡した設定の要点を貼る(なければ「渡した設定を参照して」と書く)】
    ・10問は、事業内容・数字の定義・意思決定の優先順位・してほしくない対応、の
     4分野からバランスよく出してください
    ・各問に「合格ライン(この要素が入っていれば合格)」と「不合格の典型例」を添えてください
    ・最後に、私が採点しやすいよう「10問中◯問で合格」の目安を示してください
    出力は、問題→合格ライン→不合格例の順で、番号を付けて並べてください。

    設定前と設定後、朝いちばんの画面が変わった

    ここまでの4段階を回した結果、私の朝は具体的にどう変わったか。ビフォーアフターでお話しします。

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    設定前の朝は、こうでした。パソコンを開き、AIに「今日の状況を教えて」と打ち込む。返ってくるのは一般論と、私が毎回打ち直す修正のやりとり。「その数字の定義は違う」「その報告は感覚じゃなくて数字で」。ようやくまともな材料が揃うころには、コーヒーが冷めていました。

    設定後の朝は、まるで違います。パソコンを開くと、そこには自分だけの経営ダッシュボードが、すでに最新の状態で待っています。継続してくださっているお客さんの動き、進行中の提案の状況、自分の時間が何に使われているか。それが1枚にまとまって、週に一度、勝手に更新されている。私は淹れたてのコーヒーを片手に、それを2分眺めるだけで、今週どこに手を打つべきかが分かるようになりました。

    見比べてみると、変わったのは画面ではなく、朝そのものの使い方でした。以前は説明のやり直しに費やしていた頭の冴えた時間を、今は「決める」ことにあてられている。この差は、一日の始まりの質を丸ごと変えてしまいました。

    この変化を裏づける、私にとって忘れられない出来事があります。あるとき、受注の見込み(いわゆるヨミ表)の集計をAIに任せてみました。半信半疑で、自分でも電卓を叩いて手集計と突き合わせたのです。結果は、1円単位でぴたりと一致していました。この瞬間、私は「ああ、この設計は本物だ」と確信しました。AIが賢いから合ったのではありません。数字の定義を1枚に揃え、役割を分け、毎週見直すという4段階を踏んだから、AIが私と同じルールで数えられるようになった。合ったのは、性能ではなく設計の成果だったのです。

    効果を数字でひとつ挙げるなら、私の環境での一例として、それまで人手でやっていた月に数百時間規模の作業が、AI側に移りました。これはあくまで私の会社での話で、業種や仕事の中身によって変わります。ただ、規模の大小はあれ、「毎回言い直していた手間が消える」という変化そのものは、どんな会社でも必ず起きると私は思っています。

    経営者にこそ、この作業をやってほしい

    ここまで読んで、「面白そうだけど、こういうのは詳しい社員に任せればいい」と思われたかもしれません。私は、この4段階の最初の入り口だけは、経営者であるあなた自身がやるべきだと考えています。

    理由はシンプルです。会社の判断基準を一番よく知っているのは、社長だからです。どのお客さんを大事にするか、どんな提案なら通すか、何を絶対にやらないか。この「会社のクセ」は、決算書にも組織図にも書かれていません。あなたの頭の中にしかない。それを言葉にして渡す作業は、代わりがきかないのです。

    しかも、この作業には思いがけない副産物があります。AIに渡すために自分の判断基準を言葉にしていくと、自分自身の考えが整理されるのです。「うちはなぜこのお客さんを狙うんだっけ」「この数字を、なぜ私は毎朝気にしているんだっけ」。AIへの説明を通じて、経営者である自分の頭の中が棚卸しされていく。私はこの作業を、AIのためというより、自分の思考を整えるためにやっている面すらあります。

    もう一つ、お伝えしたいことがあります。この4段階には、高価なツールも専門の担当者も要りません。必要なのは、あなたが自分の言葉で会社を語ることと、週に5分の見直しだけ。ITが得意かどうかは関係ありません。むしろ、現場を一番分かっている経営者だからこそ、渡せる前提が一番濃いのです。難しい設定は、AI自身がインタビューして引き出してくれます。あなたは質問に答えるだけでいい。私が277社の経営者を見てきて確信しているのは、この最初の一歩を自分で踏んだ社長のAIほど、その後の伸びが速いということです。人任せにした会社のAIは、どこかよそよそしいまま止まってしまう。渡した前提の濃さが、そのままAIの働きの差になって返ってくるのです。

    参謀と迎える朝

    最後に、少しだけ先の景色をお話しさせてください。

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    チューンナップを終えたAIと迎える朝は、静かです。以前のように、画面に向かって「そうじゃない」と言い直すことはもうありません。淹れたてのコーヒーを片手に、参謀がまとめてくれた1枚を眺め、「今週はここに手を打とう」と決める。AIは指示を待つ道具ではなく、私と同じルールで会社を見て、判断の材料を先回りして整えてくれる相棒になりました。

    思えば、AIを買ってきたそのままで使っていたころの私は、優秀な人を採用しておきながら、会社の説明を一切せずに「使えないな」と決めつけていたようなものでした。もったいないことをしていたと思います。せっかく縁あって迎え入れた相手に、会社のことを何も教えないまま「期待外れだ」と決めつける——これほど失礼で、これほどもったいない話はありません。AIの本当の力は、性能の数字ではなく、あなたがどれだけ自分の会社を渡せたかで決まる。私はそう確信しています。

    あなたのAIは、まだ買ってきたままの設定で眠っているかもしれません。でも、目を覚まさせるのは驚くほど簡単です。今日お渡しした4段階の、まずは段階1から。数字の定義を1枚にする、それだけで景色は変わりはじめます。あなたの会社を一番よく知るあなたが、その最初の一言を渡してあげてください。参謀は、そこから育ちます。

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    鈴木章裕

    株式会社コミクス 代表取締役

     
     
     
    AI活用のご相談→ https://www.comix.co.jp/contact/ 株式会社コミクス代表取締役。生成AI活用支援実績304社(2026年9月末現在)。営業・資料作成の効率化、AIエージェント導入を支援。何から始めるか迷っている段階でもご相談ください。

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