
AIを採用したのに、机も就業規則も渡していなかった。──Claude Codeの性能を最大化する10の設定
同じClaude Codeを使っているのに、片方の会社では朝までに資料ができていて、もう片方は「思ったほど使えない」と止まっている。私はこの一年、その差をずっと見てきました。差の正体は、AIの賢さではありません。設定です。優秀な人を採用したのに、机も就業規則も引き継ぎノートも渡さないまま「なんでもできるらしいから、やっといて」と言っている。それがAIの入社初日に、多くの会社で起きていることです。

いま差がついているのは、導入した会社としない会社の間ではありません
二年前なら、「AIを入れた会社」と「入れていない会社」を比べれば話が済みました。いまは違います。私が顧問先で毎週見ているのは、どちらも入れている会社同士の差です。しかもその差が、月を追うごとに開いていく。
面白いのは、開いている側の会社が特別なことをしていない点です。エンジニアを雇ったわけでもない。高度な使い方を覚えたわけでもない。やっているのは、道具に前提を渡すという地味な作業だけです。
素のままのAIは、あなたの会社について何ひとつ知りません。何を売っているか、誰が顧客か、社内でどんな言葉を使っているか、どのファイルに触ってはいけないか。知らないまま気を利かせようとするので、毎回どこかを外します。外すたびに人が説明を足す。説明を足す時間が積み上がって、三週間後には「聞くより自分でやったほうが早い」という結論に着地する。
これは能力の問題ではなく、受け入れ準備の問題です。新入社員が初日から成果を出せないのは、その人が無能だからではありません。会社のことを知らないからです。だから私たちは、机を用意し、就業規則を渡し、前任者の引き継ぎノートを読ませます。AIに対してだけ、それを飛ばしている。

もうひとつ、経営者として見逃せない点があります。設定は一度書けば効き続けます。人の教育と違って、翌月も来年も同じ前提を読み続けてくれる。手間のかかり方が違うのです。最初の数時間を惜しんだせいで、その後の数百時間を失っている会社が、実際にあります。
この構図が見えにくいのには理由があります。設定を渡していない会社でも、AIはそれなりに動くからです。文章はきれいに出てくるし、質問にも答える。うまくいっていないのではなく、六割の出来で止まっている。六割は、放っておくと合格に見えます。だから誰も困らないまま、残りの四割を毎回人が埋め続ける運用が定着してしまう。
私が顧問先で最初にやっているのは、この四割を見つける作業です。「AIに頼んだあと、あなたが必ず直しているところはどこですか」と聞く。返ってくる答えは、たいてい三つか四つに収まります。宛名の書き方、数字の出し方、社内用語の使い方、触ってほしくない場所。全部、設定に書けることばかりです。裏を返せば、毎回直しているものの一覧が、そのまま設定の下書きになっている。
「素のまま三週間」で止まったK社長と、私が任せて帰った夜のこと
ここから先の会社の話は、複数の支援先を1社のモデルケースとして再構成しています。数字もあくまで一例として読んでください。
K社長は、産業用包装資材の販売と加工をされている会社の代表です。社員は24名。段ボール、緩衝材、工業用のフィルムなどを仕入れ、顧客の製品サイズに合わせて加工して納める。見積の一本一本に、原反の幅や加工の手間が絡む、細かい商売です。
K社長がClaude Codeを入れたのは、私との面談の翌週でした。飲み込みは早い方です。初日に議事録の要約を試し、二日目に見積の下書きを書かせ、三日目には社内の案内文を作らせていました。「これは変わりますね」と、電話口の声も明るかった。
失速したのは三週目です。
「毎回、うちの見積の書き方を一から説明しているんですよ」とK社長は言いました。原反の幅で単価の刻みが変わること、加工賃は別建てで書くこと、得意先ごとに掛け率が違うこと。全部、毎回説明している。説明が終わるころには、自分で書いたほうが早い時間になっている。
二つ目の不満は、範囲でした。ある日、案内文の作成を頼んだら、AIが関係のないフォルダのファイルまで開いて読み始めた。悪意はないし、実害も出ていない。それでもK社長は「勝手に触られるのが怖い」と感じた。怖いと感じた翌日から、任せる仕事が小さくなりました。
三つ目が決定的でした。「先週うまくいったやり方が、再現できない」。ある日の議事録の要約がとてもよかった。同じものをもう一度出したいのに、あのとき何をどう頼んだのか、誰も覚えていない。会話は流れて消えていました。
三週間で、K社長のClaude Codeは「たまに使う賢い検索窓」になっていました。導入は成功しているのに、使われていない。導入したのに使われないAIというのは、だいたいこの形をしています。
私が気になったのは、K社長がひとことも「AIが悪い」と言わなかったことです。むしろ「自分の使い方が下手なんでしょうね」とおっしゃった。私はここが、いちばんもったいないところだと思っています。使い方が下手だったのではありません。渡すものを渡していなかっただけです。
私はこの話を聞きながら、自分のオフィスのことを思い出していました。
半年ほど前のある晩、私は翌朝の会議資料を用意しないまま、事務所を出ることになりました。夜の会食が入っていて、戻る時間がなかった。以前の私なら、帰宅後に一時間かけて自分で作っていたところです。その日は、Claude Codeに一行だけ頼んで帰りました。何をどの形式で作るか、どこに保存するか、誰宛てか、どこまでは自分で判断してよくてどこからは私に聞くのか。それらは全部、すでに設定として書いてあった。だから頼む文は一行で足りました。
翌朝、事務所に着いて画面を開いたら、資料ができていました。表紙の宛名も正しい。社内用語の使い方も合っている。数字の出典も、私がいつも見ている場所から取ってきている。直したのは二箇所だけでした。ひとつは言い回しの好み、もうひとつは順番の入れ替えです。どちらも、間違いではありませんでした。

あのとき私が感じたのは「AIはすごい」ではありませんでした。「あ、これは受け入れ準備の差だ」でした。同じ道具を、K社長は素のまま使い、私は前提を渡してから使っていた。それだけの違いで、片方は検索窓になり、片方は朝までに仕事を終える同僚になっていた。
そこで私は、K社長に技術的な説明を一切せず、まず一つのことをお願いしました。AIに向かって話す前に、AIに会社のことを聞かせてください、と。使ったのが次のプロンプトです。パソコンが得意でなくても、音声入力で答えていけば終わります。
あなたは当社の「引き継ぎノート」を作るインタビュアーです。
私は会社の代表です。これから私に質問して、社内の前提を聞き出してください。
【ルール】
・質問は1問ずつ。私が答えてから次の質問に進む
・評価・感想・提案は書かない。聞くことに専念する
・専門用語は使わず、私が話し言葉で答えられる質問にする
【聞く内容】
1. 会社概要(事業・顧客・従業員数・拠点・繁忙期)
2. 社内でよく使う言葉と、その意味(社外の人には通じない言い方)
3. 触ってはいけないもの・やってはいけないこと
4. 文書の書き方の決まり(文体・宛名・保存する場所)
【最後に】
すべて聞き終えたら、私の回答を「CLAUDE.md」にそのまま貼れる箇条書きに整理して出力してください。K社長はこれを、移動中の車の後部座席で二十分ほどかけて答えたそうです。出てきた箇条書きを見て、ひとこと。「これ、うちの新人研修で最初に教えている内容そのままですね」。
そして、こうも言われました。「二十分でよかったんですね」。三週間かけて毎回説明していたことが、二十分の聞き取りで一枚に収まった。惜しかったのは時間ではなく、その一枚を先に作らなかったことだ、と。
そのとおりでした。AIの入社初日に渡すものは、人の入社初日に渡すものと、ほとんど同じです。
AIの入社初日に渡すもの——書く、つなぐ、回す
任せてよい範囲の決め方や、完了条件の書き方については以前の記事で詳しく書きました。今日はその手前、道具そのものの設定の話に絞ります。

私が自分の環境で入れていて、顧問先にもそのまま勧めているものを、書く・つなぐ・回すの三段階に並べます。上から順に効きます。
1|CLAUDE.md──会社の引き継ぎノートを一枚置く
Claude Codeは、作業するフォルダに「CLAUDE.md」というファイルがあると、毎回それを読んでから仕事にかかります。ここに会社の前提を書いておく。事業の中身、社内でしか通じない言葉、触ってはいけないもの、文書の書き方の決まり。書くのはそれだけです。
効く理由ははっきりしています。K社長が毎回口で説明していた「原反の幅で単価の刻みが変わる」という一文が、ファイルに書いてあるだけで、説明の往復がまるごと消えるからです。変わるのは指示の長さです。「いつもの形式で」が通じるようになる。
最初から完璧に書こうとしないでください。私も最初は十行ほどでした。使っていて「また同じ説明をしたな」と思うたびに一行足す。半年もすれば、会社の輪郭が勝手に出来上がります。
最初の一枚は、この形で足ります。【】を自分の言葉で埋めるだけです。
# 当社の前提(CLAUDE.md)
### 会社概要
- 事業:【何を、誰に、どう売っているか】
- 顧客:【主な取引先の業種と規模】
- 体制:【人数・拠点・繁忙期】
### 言葉の定義
-【社内用語】=【意味】
-【略語】=【正式名称】
### 禁止事項
- 顧客名を伏せずに社外向けの資料へ書かない
-【触ってはいけないファイル・フォルダ】
-【使ってはいけない表現】
### 出力の規約
- 文体: です/ます調・日本語
- 保存先:【フォルダ名】
- 迷ったら作業を止めて私に確認する2|permissions──触ってよい範囲を先に線引きする
permissions(許可リスト)は、AIがどこまで自分の判断で操作してよく、どこからは人に確認を取るかを決める設定です。読むのは自由、書き換えは確認、この種の操作は禁止、というふうに線を引きます。
線がないと、確認が毎回飛んできて手が止まるか、逆に触ってほしくないところまで触るか、どちらかに振れます。K社長が「怖い」と感じたのは後者でした。就業規則を渡さずに新人を現場へ立たせる会社はありません。AIにだけ、それをやっていたわけです。
線を引いた瞬間から、確認の数が減り、安心して任せられる幅が広がります。細かく決める必要はありません。「見るのは自由、書き換えは声をかけて、この場所には入らない」。この三行があるだけで、現場の空気がずいぶん変わります。
3|カスタムスラッシュコマンド──毎週やることを一語にする
同じ指示を毎週打ち直しているなら、それは設定にできます。カスタムスラッシュコマンドは、決まった指示文に短い名前を付けて、次からは一語で呼び出せるようにする仕組みです。
効くのは、指示の品質が固定される点です。忙しい週に指示が雑になって出来が落ちる、という揺れが消えます。そしてこれは、社長以外の人が使えるようになる設定でもあります。長い指示文を書けなくても、名前さえ知っていれば呼べるからです。
K社長の会社では、週次の数字まとめを最初のコマンドにしました。
週次の数字を、下の形式でまとめてください。
【ここに今週の数字を貼る】
【出力形式】
| 項目 | 今週 | 先週 | 増減 |
|---|---|---|---|
(項目は貼られた数字にあるものだけ。無い項目は行を作らない)
【制約】
・判断やアドバイスは書かない。数字の整理だけを行う
・貼られていない数字を推測で埋めない。欠けている項目は「未記入」と書く
・単位は貼られたとおりに揃える4|スキル──うまくいった手順を、その日のうちに資産にする
スキルは、一度うまくいったやり方を手順書として保存し、次から同じ品質で呼び出せるようにする機能です。K社長が三週目にぶつかった「先週うまくいったやり方を再現できない」は、これで解けます。
会話は流れて消えますが、保存した手順は残ります。人が入れ替わっても残る。属人化していた「あの人の頼み方」が、会社の持ち物になる。私は、同じ作業を三回頼んだら手順にする、と決めています。三回目に「またこれか」と思ったら、その瞬間が資産化の合図です。
中小企業にとっての意味は、引き継ぎです。ベテランの頭の中にしかなかった段取りが、文章になって残る。退職や異動のたびに品質が落ちる、という長年の悩みに、静かに効いてきます。
5|フック(hooks)──決まったタイミングに、自動チェックを差し込む
フックは、「ファイルを保存する直前」「作業が終わった直後」といった決まったタイミングに、自動で処理を挟み込む設定です。書き込む前に機密情報が混ざっていないか検査する、終わったら通知を飛ばす、といった使い方をします。
人の注意力に頼らないのが利点です。忘れる人がいても、疲れている日でも、同じ検査が同じように走る。品質のばらつきを減らす設定は、経営者にとって、いちばん静かに効くものです。
私が最初に入れたフックは、機密が混ざっていないかの検査でした。事故は、忙しい日の夕方に起きます。忙しい日の夕方こそ、人の注意力がいちばん落ちている時間だからです。そこに機械の目を一つ置いておく。就業規則を貼り出すだけでなく、出入口にチェックを置くのと同じ発想です。
6|MCP連携──いま使っている道具に、そのままつなぐ
MCPは、AIを外部のサービスや社内のデータにつなぐための共通の接続口です。メール、カレンダー、チャット、データベース。すでに毎日使っている道具に接続すると、AIが「聞けば答える相手」から「見て動く相手」に変わります。
新しいシステムを導入する話ではありません。既存の道具の前にAIを一枚かぶせる話です。K社長の会社では、まずカレンダーとチャットだけをつなぎました。それだけで、朝の段取りを人が集めて回る作業が消えました。
つなぐ順番にはコツがあります。「毎朝、人が複数の画面を開いて情報を集めている」ところから先につなぐ。集めるだけの作業は、そもそも人がやる必要がありません。逆に、判断が絡む場所は後回しでかまいません。
7|サブエージェント──一人にやらせず、班を作る
大きい仕事を一人に丸投げすると、人でもAIでも精度が落ちます。サブエージェントは、調べる係、作る係、確認する係というふうに役割を分けて、それぞれに別の作業をさせる仕組みです。
大事なのは、作った本人に確認させない点です。人の組織でも、書いた本人が自分で承認する運用は危うい。AIでも同じで、作成と確認を別の担当に分けるだけで、見落としがはっきり減ります。
もうひとつの効き目は、時間です。調べる作業と作る作業を並行して走らせられるので、待ち時間が短くなる。人を増やさずに班を作れる、というのが、この設定のいちばん経営的な意味だと思っています。

8|コンテキスト管理──話題が変わったら、会話を新しくする
長い会話をだらだら続けると、精度が落ちます。前の話題の残骸が判断を濁らせるからです。Claude Codeでは `/clear` で会話をまっさらにできます。
私は、テーマが変わったら必ず切ります。午前の資料作りと午後の議事録を同じ会話で続けない。人間の会議でも、議題が変わったら一度ホワイトボードを消しますよね。あれと同じ意味の操作です。無料でできて、効き目は大きい。
「急に精度が落ちた気がする」という相談の何割かは、これで解決します。道具が壊れたのではなく、会話が長くなりすぎているだけです。設定というより習慣に近い項目ですが、覚えることが一つしかないので、社内に広げるのがいちばん簡単でもあります。
9|planモード──走り出す前に、段取りを見せてもらう
planモードは、実際の作業に入る前に「これからこういう順番でこうします」という段取りを先に出させ、こちらが確認してから着手させるモードです。
やり直しがいちばん高くつくのは、AIでも人でも変わりません。段取りの段階なら、違和感は一行で直せます。私は、初めて頼む種類の仕事と、影響範囲の大きい仕事では必ずこれを使います。逆に、毎日やっている定型作業には使いません。全部に段取り確認を挟むと、今度は確認が仕事になってしまうからです。
新人に「まず進め方を紙に書いて持ってきて」と言うのと同じです。書かせてみると、こちらの伝え漏れも一緒に見つかります。
10|定期実行──人が起動しなくても、仕事が始まっている
最後は自動化です。毎朝、毎週、決まった時刻に決まった仕事を走らせておく。人が「やろう」と思い出すことに依存しなくなります。ここまでの九個は「頼めばやってくれる」でしたが、十個目だけは「頼まなくても始まっている」に変わります。
ここに置くのは、判断の要らない定例だけにしてください。朝のブリーフ、週次の集計、月初の棚卸し。判断が要るものを自動で流すと、確認していない結論が積み上がっていきます。
私の一日は、この一枚から始まります。朝の段取りを人が作らなくなると、経営者の午前中の質が変わります。
今日の朝のブリーフを1枚にまとめてください。
【材料】
・今日の予定
・未返信のメッセージ
・今週が締切のもの
【出力形式】3つの区分に分けて、各項目1行
■ 今日やる
■ 今日でなくてよい
■ 確認したいこと(私の判断が要るもの)
【制約】
・材料から読み取れないことを書くときは、行頭に【推測】と付ける
・長い説明は書かない。1行に収める三ヶ月後、K社長は「AIが遅い」と言わなくなりました
K社長は、一度に十個を入れませんでした。最初の週にCLAUDE.mdとpermissions。次の週に、週次の数字まとめのコマンド。そこから一つずつです。
三ヶ月後の面談で、K社長がこう言いました。「指示が短くなりました」。以前は一回の依頼に前置きが五行付いていた。いまは一行で通る。前提はもうファイルの中にあるからです。
見積の下書きは、社内の書き方どおりに出てくるようになりました。得意先ごとの掛け率の扱いも外さない。もちろん最後は人が見ます。見る時間が短くなった、というのが正確なところです。K社長の感覚では、以前の三分の一ほど。あくまで一例ですが、その分だけ社長の時間が現場に戻りました。
変わったのは時間だけではありませんでした。社員の方が使い始めたのです。理由を聞いたら、「勝手に変なことをしない、と分かったから」でした。permissionsで線を引いたことが、社長ではなく現場の安心につながっていた。私はここがいちばん面白いと思っています。設定は、AIの性能ではなく、人の心理的な障壁を下げていたわけです。
もうひとつ、K社長の言葉で印象に残っているものがあります。「導入したときより、いまのほうが期待していない」。悪い意味ではありません。魔法の道具だと思うのをやめて、前提を渡せば渡した分だけ返してくる同僚として見るようになった、という意味でした。期待の置き方が変わると、任せ方も変わります。丸投げが減って、渡し方が具体的になる。結果として、出てくるものが良くなる。
三ヶ月で入ったのは、十個のうち七個だそうです。残りの三つは、まだ必要になっていないから入れていない。それでいいと思います。全部そろえることが目的ではありません。

いま御社のAIに何が入っていて何が入っていないかは、AI自身に聞くのがいちばん早い方法です。次のプロンプトを貼って、質問に答えてみてください。
私のAIの使い方について、1問ずつ質問して現状を聞き出してください。
質問が全部終わったら、下の10項目の設定状況を表にしてください。
【10項目】
1 前提を書いたファイル/2 触ってよい範囲の取り決め/3 定型業務の呼び出し
4 手順の保存/5 自動チェック/6 既存ツールとの接続/7 役割分担
8 会話の切り替え/9 着手前の段取り確認/10 定期実行
【出力形式】
| 設定 | 状況(入っている/一部/未設定) | いま実際にどうしているか |
【制約】
・点数をつけない。優劣や良し悪しの評価も書かない
・最後に「次に入れるならこれ1つ」だけを、理由1行付きで挙げる経営者の仕事は、操作を覚えることではなく前提を整えることです
ここまで読んで、「結局は技術の話じゃないか」と思われたかもしれません。私は逆だと思っています。
十個のうち、社長本人にしか書けないものがあります。会社の前提。使ってよい言葉と使ってはいけない言葉。触られたくない場所。判断を人に戻す境界線。これらは、社内の誰にも代われません。逆に、書きさえすれば、あとは詳しい人が形にできます。
AIの入社初日に、社長がやるべきことは操作の習得ではありません。「うちはこういう会社で、こういう決まりで動いています」と言葉にすること。それだけです。私が顧問先で最初にお願いしているのも、いつもこの一点です。
そしてもうひとつ。設定は、一度書いて終わりではありません。会社が変われば前提も変わる。私は月に一度、自分のCLAUDE.mdを読み返して、古くなった行を書き換えています。十分もかかりません。この十分が、翌月の数十時間を守ります。
社内に広げるときも、順番は同じです。全社員に操作を覚えさせる前に、会社の前提を一枚にする。前提が共有されていれば、誰が使っても出てくるものが似てきます。教育のコストがいちばん下がるのは、実は道具の使い方を教えるところではなく、前提を先に配っておくところです。
これは、AIに限った話ではないのかもしれません。人であれAIであれ、受け入れる側の準備が整っていない組織では、誰が来ても同じところでつまずく。そう考えると、この十個は、AIの設定というより、会社の受け入れ体制の点検表に近いのだと思います。
明日の朝、御社のAIは何時から働き始めますか
差がついているのは、能力ではなく受け入れ準備です。同じ道具を、素のまま使うか、机と就業規則と引き継ぎノートを渡してから使うか。それだけの違いで、片方は検索窓になり、片方は朝までに仕事を終える同僚になる。
十個を一度に入れる必要はありません。K社長も一つずつでした。今週やるなら、CLAUDE.mdを一枚書くところからで十分です。二十分の音声入力で、たたき台はできます。順番を迷ったら、上から順でかまいません。上にあるものほど、効き目が早く出ます。

明日の朝、事務所の扉を開けたときに、もう終わっている仕事がある。その景色は、特別な会社だけのものではありません。入社初日に、渡すものを渡したかどうかです。
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「全部私が確認する」が、いちばん危ない。
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AIは「やっておいて」では動かない。人も同じだった。
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トークン数、私の14分の1。──「うまくできない」の正体は、それだけでした
https://note.com/comix_ceo162230/n/n08ed9c635b96
鈴木章裕
株式会社コミクス 代表取締役