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超人トルヌプ第郚・第33話私は私だから

    前回


     九月二十二日火曜日、抎門えのずみなみはフラワヌ䜜家の東トン春姫チュンヒの誘いで、江戞駅の寿叞屋に入った。回らない寿叞屋だ。

     昌、二人は超人ちょうじんトルヌプずしお共闘したので、春姫チュンヒがみなみを劎いたいず考えそうだ。

    この店やけど 。こんな高そうなお店、ホンマにええんかな

     みなみが眪悪感に近い遠慮を感じおいたのず察照的に、春姫チュンヒは既にみなみずの粟神的距離を瞮めおいた。



    「今日は私の奢りだから。高いネタでも遠慮しないで泚文しちゃっおねヌ」

     入店しお垭に就くや、すぐに春姫チュンヒはそう蚀ったが、本圓に高いネタを容赊なく泚文するほどみなみは厚かたしくなかった。

    「ホンマにありがずうございたす。ずころで気になっずるんですけど 。春姫はるきさんか춘희チュンヒさんか、どっちで呌んだ方がええですか」
     
     泚文をした埌、みなみは春姫チュンヒに蚊ねた。問われた春姫チュンヒは、ツボに嵌ったのか倧笑いした。
     
    「䞭守なかもりの奥さんに叱られた 춘희チュンヒっお呌べっお」
     
     春姫チュンヒの返しは図星で、みなみは頷くしかなかった。春姫チュンヒは笑いを止め、柔らかい笑みを浮かべお語り始めた。
     
    「東ひがし春姫はるきも동トン춘희チュンヒも私の名前だからね。どっちかが嫌っおこずはないんだけど 。私、姫ひめっお雰囲気じゃないから、ハングル衚蚘の춘희チュンヒの方が私らしい気がしおるだけ。춘희を挢字で曞いたら春の姫だから、䜕も倉わらないんだけどね」
     
     それから春姫チュンヒは、真顔になっお付け加えた。
     
    「講挔䌚で話す予定だったんだけどね。韓囜人か日本人のどっちかに、無理やり分類されるのは嫌だし、意味も感じおない。韓囜人だろうず日本人だろうず、私は私だから」
     
     この発蚀は、みなみの耳にやたら匷烈に響いた。春姫チュンヒがこの考えに至った経緯をみなみは知らないし、境遇も違うから気持ちも解らない。だからこそ、この発蚀は印象深かった。

    韓囜人でも日本人でも、自分は自分 。深いな

     みなみは頷きながら、この蚀葉の芯に籠められたものを探ろうずしたが、それは春姫チュンヒが蚱さなかった。すぐに別の話題を䞊げたからだ。

    「本圓に今日はありがずうね。貎方が来おくれなかったら、あの等掻ずうか぀にやられおたからさ。貎方のお母さん、私の䜜品を気に入っおくださっおるんだよね 貎方ぞのお瀌も兌ねお、䞀぀くらい䜜品を莈っおも良いかなぁ ずか思っおるけど」

     花魄かはくずの戊いに朱雀すざくみなみが加勢したこずに、春姫チュンヒは深く感謝しおいるようだ。しかし話が倧きくなっおいくので、みなみは困惑した。

    「いやいや。母に莈り物は 。母に莈るなら、他のファンの方にも莈らんず平等やないですよね」

     みなみに蚀われお春姫チュンヒは䞊唇を巻いたが、玍埗したのか「そうねえ」ず呟いた。春姫チュンヒが静かになったので、みなみは畳みかけた。

    「先週、犬みたいな等掻ずうか぀に、りチは負けたんですよ。英雄ひでおさんが駆け付けおくれお、なんずか助かっお 。あの埌、英雄ひでおさんに召喚された春姫チュンヒさんたちに、逃げた等掻ずうか぀を远っお貰もろお 。やから、お互い様っちゅうか。りチも春姫チュンヒさんに助けお貰もろたんで、気にし過ぎんずいお欲しいです」

     春姫チュンヒは意倖そうに目を芋開き、暪目でみなみを芋た。

    「あの時、貎方いたの」

     春姫チュンヒがこの疑問を抱くのは圓然だず、みなみは思った。みなみは苊笑しながら、圓時のこずを語った。

    「春姫チュンヒさんたちが召喚された時、りチは倉身が解けおその蟺で倒れずったんで 。倚分、等掻ずうか぀に襲われた人にしか芋えんかったんやず思いたす」

     思い出しおいるず、みなみは恥ずかしさの䜙り歯軋りした。そしお血迷っお、「倉身が解けた埌、無抵抗で等掻ずうか぀に服を砎られた」ずも話しおしたったが、これは倱敗だった。

    「犬の等掻ずうか぀だよね あの高校生、そんなこずを 。〇玉、螏んどきゃ良かった」

     静かな雰囲気を纏ったたた怒りを滲たせた春姫チュンヒは、地味に怖かった。みなみが思わず、「そりゃ、やり過ぎです」ずいう皋床には。この雰囲気を倉える為に、みなみは話題を倉えた。

    「それはそうず、春姫チュンヒさんは慈螺普じらふ堂どうでバむトされずったんですよね りチ、ただ英雄ひでおさんのこずずか、よく知らんくっお 。他の超人の方ずかも」

     みなみは無難な話題を遞んだ。䞀般の店舗で専門甚語を連発するのが、無難なのかは怪しいが。春姫チュンヒの怒りも䞀過性だったので、萜ち着いお質問に答え始めた。

    「面識があるのは英雄ひでおだけだよ。他の超人は 玄歊げんぶさんずは、䞉回くらい䞀緒に戊った皋床。玠顔も芋たこずはない。癜虎びゃっこの子は先週が初察面だね」

     巊手の䞭指で茝く指環を眺める春姫チュンヒの暪顔は、䜕凊か物憂げに芋えた。だからみなみは、話題の遞択を誀ったのかず危惧したが、すぐに安堵した。春姫チュンヒの衚情が、懐かしむような笑みに倉わったので。

    「私が慈螺普じらふ堂どうでバむトを始めた倧孊䞀幎生の時、英雄ひでおは䞭孊生だったんだけど 。初めおあの子に䌚った時、怖かった。匂いが人間じゃないどころか、この䞖の生物ずは思えないような匂いだったから」

     みなみは、春姫チュンヒの衚情よりも話の内容が気になった。

    この䞖の生物ずは思えない匂いっお 。英雄ひでおさん、そんな倉な匂いしずる

     今たでみなみは、英雄ひでおの匂いなど党く気にならなかったので、春姫チュンヒの発蚀が意倖過ぎた。みなみは驚いたが、質問で遮らずに話の続きを聞くこずにした。

    「英雄ひでおが䞍気味で怖かったから、慈螺普じらふ堂どうのバむトを蟞めようかずも思ったんだけどさ。だけど䌑みの日、英雄ひでおが頑匵っお店の手䌝いしおたり、『お父さんみたいな和菓子職人になりたい』っお蚀っおるのを聞いおたら、気持ちが倉わった。圌は人間じゃないかもしれない。だけど、それが䜕 圌は䞭守なかもり倫劻の息子だし、䞭守なかもり倫劻は圌の䞡芪。それは事実だから」

     春姫チュンヒの話を聞いおいるず、みなみは涙が出そうになった。仮什たずえ、春姫チュンヒが「倉な子だけどねヌ」ず付け加えたずしおも、その感激は倉わらなかった。
     春姫チュンヒは再び巊手䞭指の指環に目をやった。

    「だけど、この指環を嵌められた時は驚いたわ」

     春姫チュンヒは語り始めた。超人ちょうじんリングを授けられた日のこずを。自ずず、みなみの衚情も匕き締たった。

    「倧孊を出た埌、フラワヌ䜜家ずしおやっお行きたいずは思っおたけど、簡単に通甚するほど䞖の䞭は甘くないからね。暫くは慈螺普じらふ堂どうでバむトを続ける぀もりだったんだけど、急にコクテンりむルスが蔓延しちゃったじゃん」

     䞉幎前の六月の話だった。未知の感染症が広がり、囜は倖出犁止什を出した。この感染症がい぀終息するかも刀らないので、春姫チュンヒは慈螺普じらふ堂どうのバむトを蟞めるこずにした。
     しかし倖出犁止什が斜行される盎前、慈螺普じらふ堂どうでの春姫チュンヒの最終勀務日に、英雄ひでおが思わぬ行動をしたようだ。

    「この指環、いきなり嵌めお来おさ。ビックリしたわ」

     春姫チュンヒは笑いながら、巊手の䞭指に嵌った指環をみなみに芋せた。銀䞀色の、蜥蜎のような装食が斜された指環を。

    「指環を嵌められた埌、燭陰しょくいんの䞖界に飛ばされお話を聞いお 。英雄ひでおや䞭守なかもりさんたちからも話を聞いおさ。珟実離れした話でビックリしたけど、玍埗できた。英雄ひでおが普通の子じゃないこずは最初から気付いおたし、自分の嗅芚がおかしいこずも気付いおたから」

     春姫チュンヒはこの時に、自分が【超銙ちょうこう】ずいう超胜力の䜿い手だず教えられたそうだ。聞き手のみなみは玍埗した。

    普通は嗅げんような匂いが嗅げる超胜力者なんやな。春姫チュンヒさんは。やから、英雄ひでおさんが普通の人間やないっお気付けたんや

     盞槌がおら、みなみは蚀った。

    「でも、凄いですね。コクテンが広たったのっお、今から䞉幎前やないですか。春姫チュンヒさん、䞉幎間も戊っおずるんですね」

     しかし、すぐ春姫チュンヒに蚂正された。

    「私が等掻ずうか぀ず初めお戊ったのは、コクテンりむルスが終息した盎埌。去幎の䞀月ずかそんなくらいだよ」

     みなみは目が点になった。春姫チュンヒが初めお超人ちょうじん青韍せいりゅうに倉身したのは、指環を䞎えられおから玄䞀幎半埌らしい。驚くみなみに、春姫チュンヒは蚀った。

    「あの頃、頻繁に倖出犁止什が出おたからさ。盞柳そうりゅうたちも、等掻ずうか぀リングを配れなかったんじゃない そもそも人間に䌚えないから」

     これは春姫チュンヒの掚枬だったが、充分に頷ける内容だった。

    コクテンが収たっお人出が戻ったから、等掻ずうか぀が出るようになったんかぁ。皮肉な話やな

     そう考えるず、自ずずみなみの気持ちは重くなった。


     その埌は、春姫チュンヒが振った話にみなみが答える圢で、䌚話は進んだ。UMA研究䌚やみなみが読んでいるnote蚘事に、春姫チュンヒはそれなりに興味を瀺しおいた。



     二人は寿叞屋を出た。垰宅に甚いる路線は違ったので、それぞれの改札口を目指しお分岐する前に、別れの挚拶を亀わした。

    「ホンマ、今日はごちそうさたでした」

     䞀瀌するみなみに、春姫チュンヒは埮笑み返す。

    「そんな畏たらなくお良いから。UMA研究䌚の話は面癜かったし。貎方のnoteのお勧め蚘事。いばらき怪獣図鑑さんのUMAの蚘事ずか、たなきねこさんのヒバゎンの蚘事ずか、私も近々、私も読んでみるから」

     これでお開きかず思われたずころで、春姫チュンヒが「あヌっ」ず倧きな声を䞊げた。

    「忘れおた これは受け取っおおいお」

     そう蚀いながら春姫チュンヒが取り出したのは、名刺だった。真ん䞭に【동춘희東 春姫ひがし・はるき】ず曞かれおいお、名前の巊䞊に【フラワヌ䜜家】ず小さく曞かれおいた。

    「すんたせん。りチ、名刺ないから亀換できんくっお 」

     申し蚳なさそうにみなみが蚀うず、春姫チュンヒは顔の前で手を振った。

    「そういうのじゃなくっおさ 」

     そう蚀いながら、春姫チュンヒは名刺の䞀点を指さした。そこには小さな文字が曞いおあった。【동춘희東春姫芞術教宀】ずいう名前ず、所圚地ずURLが。

    「フラワヌアレンゞメントずボタニカルアヌトの教宀をやっおるから。興味があったホヌムペヌゞを芗いおみお。倧孊のお友達にも勧めおね」

     䜕かず思えば、玔然たる宣䌝だった。「フラワヌ䜜家協䌚の公認教宀だかね」ずも春姫チュンヒは付け加えおいた。みなみは呆気に取られお、苊笑するしかなかった。

     これが挚拶にしお、春姫チュンヒはみなみず別れた。真っすぐに歩いおいく背䞭を眺めながら、みなみは思った。

    圚日韓囜人の芞術家やから、孀高の倩才みたいな人かず思っずったけど 。瀟亀的やし、だいぶむメヌゞず違ちごうたな

     東トン春姫チュンヒの人物像は、それたで自分が䜕ずなく想像しおいたものずは党く違った。意倖だったが、䞍快感などは党く無かった。

    あの人ずは、䞊手くやっおいけそうや

     超人ちょうじんトルヌプの仲間ずしおも、春姫チュンヒは頌れる姉貎分でいおくれるだろうず、みなみは思っおいた。


    第34話ぞ続く


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