
小役人日記 出先機関復帰編②腹黒説
四年ぶりに戻った出先機関には、当然ながら私の知らない後輩が多く入っていた。
そうした後輩の中には、「肩揉んで事件」で私の存在を知っている者もいたのである。しかし、それはあくまで一つのエピソードとしてであり、私がどのような人間なのかは誰も知らなかったのである。
「本省庁に四年いたのか知らないが、調子に乗るなよ。」
そう思われていたかもしれない。なぜなら、逆の立場なら私もそう思うからだ。
もっとも、前半の二年だけなら、私は実際に調子に乗って帰ってきたかもしれない。しかし、後半の二年で十二分に打ちのめされたおかげで、意外にも私は謙虚な気持ちで戻ってきたのである。
そんな中、職場では「若手会」という飲み会が開催されていた。普段の職場の飲み会とは異なり、若手職員だけで気兼ねなく飲もうというイベントである。
当時まだ20代であった私がその存在を知ったのは、開催後のことであった。
つまり、私は若手として認識されていなかったのである。
今でこそ、自分がおじさんであることを素直に受け入れられている私であるが、この当時は本気でへこんだことを覚えている。気がつけば、私は若手ではなくなっていたのである。
さらに、そんなセンチメンタルおじさんに、とどめを刺すような噂が後輩たちの間で流れていたのである。
「中馬は、腹黒らしい。」
現在でいうところのフェイクニュースというやつである。もっとも、このフェイクニュースの厄介なところは、ほんの9割くらいは事実も含まれていることである。
ある日の飲み会でのことである。
ある程度酔いも進む中で、上司である浜松総務課長は、真面目な口調で私にこう語ってくれたのである。
「中馬君。君は仕事の飲み込みも早いし、確かに優秀かもしれない。だが、一つだけ弱点がある。それは、純粋すぎることだ。」
私は、お褒めの言葉をいただいたことを光栄に思うとともに、自分には純粋すぎるという弱点があったのかと、ハッとさせられたのである。
ところが、隣でその話を聞いていたある後輩が、大爆笑しながら口を挟んだのである。
「浜松課長、大丈夫です!中馬さんに、そんな弱点は存在しません!」
どうやら、私にはそんな弱点はなかったらしい。
こうして、完全なる営業妨害を受けた私は、本当は違うのであるが、腹黒キャラとしてその後を過ごすことになったのである。
本当は違うのであるが。