
小役人日記 新規採用編③レクレーションと飲み会
今回は、役所のレクレーションと飲み会について語りたい。時代の流れもあって、昨今はレクレーションはもちろん、飲み会すらもかなり減ってしまった。私は、これらのレクレーションや飲み会が苦手なので大歓迎ではあるものの、同時に一抹の寂しさも感じるわけである。
さて、私が新採の頃には、実に多様なレクレーションが開かれていた。その一つが野球大会である。組織の部門別にチームが作られ、試合を行うのだ。が、当然ながら勤務日の定時後にそんなことができるわけもなく、開催は必然的に土日となる。
幹事長を務める者(大抵は総務課の係長クラス)は、野球場の借上げ、移動用バスの手配、そして自家用車を使った当日の物資搬入まで大忙しである。
新採である私と鶴岡君も他人事ではなく、幹事の一人として、野球大会終了後の飲み会のセッティングと、スポーツ保険の団体契約を仰せつかった。
そして、野球大会当日。気の休まる暇もない一日が始まるのである。選手として試合に出るのはもちろん、審判やら点数のカウントやら、さらには怪我人の捕捉(スポーツ保険への事後報告のため)までしなければならないのだ。
この中で私が感心したのは、運営を手伝ってくれた菜島課長の名審判っぷりである。投手の投げるボールは、際どい辺りはもちろんのこと、多少コースから外れていようが、全てストライクと判定されていた。途中、あまりにも厳しい気がしたので、
「少し判定が投手に有利すぎじゃないですか?」
と小声で聞いてみたところ、
「いいんだよ、暑いし早く試合終わらせようぜ。」
とのことだった。管理職といえど、このレクレーションは面倒なのである。そうした中で、己のできる抵抗を精一杯やっているのだ。
試合が終われば、今度は飲み会である。昼間の野球の話を肴に盛り上がるのだ。なお、数名は、慣れない運動による捻挫等で既に脱落している。
飲み会でも、酒の注文やら、空いた瓶の回収やらで大忙しである。特に面倒なのが焼酎作りだ。人によって好みがうるさい上に、氷、水、お湯の補給まで発生する。そして、割ることにより度数が薄まるものだからグイグイ飲まれ、頻繁におかわりを要求されるのである。
私は律儀にも、回収したグラスは同じ人に返していたのだが、手伝ってくれた菜島課長は、
「いいんだよ、グラスが誰のかなんて。」
と、大量に回収してきた空きのグラスを気にすることなくシャッフルし、焼酎や水を注ぎ足した上で配り直していた。
さて、飲み会も終わりに近づけば、最後にお偉いさんの締めの言葉というものがある。飲み会の幹事は新採や若手職員がやらされるので、事前に進行も考えておく必要がある。といっても、乾杯→ご歓談→締め、くらいで大体満足してくれるので、本来的には乾杯と締めの言葉を誰かにお願いしておくくらいでよいはずなのだ。
通常、冒頭の乾杯は参加者の中で最も役職が高い人に、締めの言葉はその次の役職の方にお願いするのだが、中には、「〇〇さんのほうが年上だから」などと言い訳をつけて断る人も出てくる。
このため、事前には依頼せず、当日に無茶振りで指名する手法も開発されたが、これは酒の力で許されるか許されないか五分五分のギャンブルであった。他方で、若手自ら締めてしまうという禁じ手を使う者も現れ、私も何度か採用した。
このように、役所のレクレーションと飲み会とは、新採や若手に凄まじい消耗をもたらすものなのである。ただし、その代わりと言っては何だが、これにより名前と顔を覚えてもらえ、少しだけ仕事がやりやすくなるという恩恵はあったと思う。
まあ、割に合っていたかは疑問だが。