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世界各国で「作り直し」中国ではトヨタが大型再編か 世界自動車朝刊2026年9月16日

    今日の結論

    9月15日の世界自動車産業では、次世代技術を巡る競争が「できるか」から、既存制度の中で正式な商品・事業として成立させられるかへ移った。

    ドイツではスウェーデンのEinrideと小売大手Lidlが、運転席を持たないL4自動運転トラックを通常物流へ投入した。ドイツ連邦自動車交通局KBAから正式認可を取得したもので、同国では初めてのケースである。(Reuters)

    一方アメリカでは、NHTSAがTeslaに対し、ステアリングホイールやペダルを持たないCybercabをどのような根拠で連邦安全基準へ適合すると自己認証したのか、9月30日までに説明するよう命じた。焦点の一つは、認証時に一時的な人間用操作装置を取り付けていたのかである。(Reuters)

    中国ではToyotaの事業再編が新しい段階へ入った。GACがFAWの一汽トヨタ持分の一部取得を検討している案件は、一汽トヨタと広汽トヨタの販売・サービス機能を統合する方向と報じられており、外国メーカーが中国で国有メーカー2社と別々のJVを持つ従来モデルそのものを見直す可能性がある。

    三つは別々の話に見える。

    しかし共通しているのは、技術や企業構造が先に変わり、制度が後から追いつこうとしていることである。

    自動運転車に運転席は必要なのか。

    メーカー自身による安全認証はどこまで認めるのか。

    中国市場で二つのJVを維持する意味はまだあるのか。

    2026年の自動車産業では、20~30年前に作られた制度や産業構造そのものを作り直す局面が増えている。

    1. ドイツ初、運転席のないL4トラックが「実験」ではなく通常配送へ

    EinrideとLidlは9月15日、ドイツで運転席を持たないL4自動運転トラックを通常の物流業務へ投入した。

    走行するのは、Lidlの物流センターと店舗の間である。

    重要なのは公道を走ったこと自体ではない。

    ドイツ連邦自動車交通局KBAから正式な運行許可を取得し、日常の商用物流として商品を運んでいることである。(Reuters)

    ドイツでこの種の許可が出たのは初めてである。

    「無人化」の意味がTesla SemiやBYDとは違う

    今週のIAA Transportationでは、Tesla Semi、BYD ETT 44、中国pony.aiのL4トラックなど、大型商用車の電動化・自動運転が相次いで話題になっている。

    Einrideはさらに設計思想が違う。最初から人間が運転することを前提としていない。

    そのため通常のトラックにある、運転席、ステアリング、ペダルを必要としない。

    これは単に「自動運転機能を付けたトラック」ではなく、ドライバーという存在を前提にした車両設計そのものを捨てる発想である。

    ここまで行くと、最大の問題はAI性能だけではなくなる。

    道路交通法、車両安全基準、保険、事故時の責任、遠隔監視、物流会社の運行管理。

    こうした制度全部を通過しなければ商用化できない。

    ドイツで認可された意味

    ドイツは世界有数の自動車・商用車産業国である。

    Daimler TruckやTratonなど巨大メーカーを抱え、車両安全規制にも強い影響力を持つ。

    そこでKBAが、運転席を持たないL4車両を通常物流へ使うことを正式に認めた。

    これはEinride一社だけのニュースではない。

    今後、港湾間輸送、物流センター間輸送、工場内外の定期輸送のようなルート固定型物流では、「人間が運転するトラックを自動化する」必要すらなくなる可能性がある。

    自動運転の経済性は乗用車より分かりやすい

    ロボタクシーでは、自動運転によって利用者がどれだけ増えるかはまだ分からない。

    物流では計算しやすい。ドライバー不足。人件費。休憩時間。連続稼働時間。これらを直接削減できるからである。

    昨日取り上げたpony.aiも、欧州進出先として人件費が高くドライバー不足が深刻な地域を狙うとしていた。

    Einrideはその仮説を、ドイツで一歩先に実際の商用物流へ移した。

    欧州大型商用車の競争は、ディーゼルかBEVかだけではなく、有人トラックか無人トラックかというもう一つの軸を持ち始めた。

    2. Tesla Cybercab、NHTSAが「どうやって適合認証したのか」と正式照会

    アメリカでは、TeslaのCybercabを巡る規制問題が具体化した。NHTSAは9月15日、Teslaに対してCybercabの連邦安全基準への適合認証について一連の質問へ回答するよう命じた。回答期限は9月30日である。(Reuters)

    CybercabはすでにAustinで有料運行を始めている。しかし通常の量産車とは大きく違う。

    ステアリングホイールがない。ペダルがない。従来型のサイドミラーもない。

    Teslaは、それでも適用される連邦自動車安全基準に適合すると自己認証している。

    NHTSAが今回確認しようとしているのは、その自己認証が何を前提としていたのかである。

    一時的にステアリングやペダルを付けていたのか

    特に興味深いのが人間用操作装置である。

    NHTSAはTeslaに対して、一時的に取り付けた人間用運転装置やその他の設備が、Cybercabを安全基準へ適合すると判断した根拠に含まれていたのかを説明するよう求めた。(Reuters)

    Cybercabはステア・バイ・ワイヤ、ブレーキ・バイ・ワイヤを採用しているため、物理的な機械接続を大幅に減らしている。

    技術的には試験時だけ操作装置を追加することも考えられる。

    しかし、量産時には存在しない装置を使って適合性を確認してよいのかという新しい問題が生まれる。

    アメリカの「自己認証制度」が試されている

    アメリカでは原則として、政府が一台ずつ型式認証してから販売を認める方式ではない。

    メーカー自身が連邦安全基準への適合を確認し、自己認証して市場へ投入する。

    NHTSAはその後、調査・リコール命令・罰金などによって監督する。

    この仕組みは従来型自動車では長年機能してきた。

    しかしCybercabのように、運転席がない、人間が運転しない、従来の操作装置がない、という車両が登場すると、既存基準そのものの前提が揺らぐ。

    今日のEinrideと実は同じ問題である。

    ドイツではKBAが個別に正式許可を出した。

    アメリカではTeslaが自己認証して先に市場へ出し、その後NHTSAが確認する。

    同じ無人車でも、規制思想がまったく違う。

    Waymoとの違いもここにある

    WaymoやZooxは、自治体・州当局との調整を重ねながら都市ごとにサービス地域を拡大している。

    Teslaは大量生産できるCybercabを作り、既存の自動車販売・認証制度を利用して一気に普及させようとしている。

    成功すればスケール速度は圧倒的に速い。

    しかし既存制度との摩擦も大きくなる。

    Cybercabを見るうえで、これから重要なのは走行距離だけではない。

    Teslaの「自動車として自己認証して市場へ出す」という方式を、NHTSAがどこまで認めるか。

    9月30日の回答は、その重要な節目になる。

    3. Toyota、中国の「2つのJV」を整理へ――30年来の外資モデルが曲がり角

    Toyotaの中国事業再編について、9月15日に重要な背景が明らかになった。

    GACはFAWが保有する自動車JV持分の一部取得を検討している。

    対象は正式には公表されていないが、一汽トヨタを巡る再編であると中国国営メディアなどが報じている。

    中国ではなぜToyotaが二つあるのか

    中国では長年、外国メーカーが単独で完成車事業を展開できなかった。

    そのため外国メーカーは中国企業とのJVを作った。

    Toyotaの場合、FAWとの一汽トヨタ、GACとの広汽トヨタという二つの巨大な合弁事業を持つ。

    Volkswagenも同様に複数の中国国有メーカーとJVを形成した。

    中国市場が毎年成長していた時代には合理的だった。

    パートナーを増やせば、工場を増やせる、販売網を増やせる、中国各地域との政治関係も作れる。

    問題は市場環境が完全に変わったことである。

    成長市場では「二つあること」が強み、縮小市場では重複コスト

    Toyotaの中国シェアは地場メーカーの急成長によって低下している。

    BEV、PHEV、スマートコックピット、ADASなどでは中国勢との競争も激しい。

    その状態で、二つの販売会社、二つのディーラー網、二つの商品企画、二つの組織を維持すれば、かつての「市場カバレッジ」が現在は重複コストになる。

    そこで一汽トヨタと広汽トヨタの販売・サービス機能を整理する。

    これは単なる人員削減ではなく、約30年間続いてきた中国外資自動車産業の基本構造を変える話になる。

    中国政府側にも統合する理由がある

    興味深いのは、Toyotaだけが効率化を必要としているわけではないことである。

    中国自動車産業自体が過剰生産能力を抱えている。

    国内需要が弱い。値下げ競争で収益性が低下する。輸出への依存度が高まる。

    そのため中国政府もメーカー再編・統合を促している。

    つまり、外国メーカーはJVを減らしたい、中国国有メーカーも余剰能力を整理したい、双方の利害が一致し始めた。

    Toyotaだけでは終わらない可能性

    この再編が実現すれば、次に見るべきはToyotaではない。

    Volkswagen。Honda。その他、中国に複数JV・複数工場を持つ外国メーカーである。

    中国市場が年率二桁で成長していた時代に作った産業構造を、現在の市場規模と競争環境へ合わせ直す必要がある。

    今週Volkswagenでは、ドイツ国内の工場、人員、車種を減らす大規模再編を追ってきた。

    中国でも似たことが始まる。

    ただし削減対象は工場だけではない。

    30年前に作った合弁会社という企業構造そのものである。

    今日の小さな変化

    原油高はさらに進んだ。

    9月15日は中東情勢の緊迫化を背景に原油価格が再び上昇し、Brentは1バレル106ドル超、WTIも102ドル超の水準へ上昇した。米ディーゼル先物も過去最高値を付けた。(Reuters)

    燃料価格についてはここ数日の朝刊で継続して扱っているため、本日は主軸に戻さない。

    ただし大型商用車では意味が大きい。

    昨日は欧州トラックメーカーが「BEVはまだ物流会社にとって経済合理性がない」と主張した。

    ディーゼル価格が高止まりすれば、その計算は変わる。

    EVトラックの価格が高くても、電力価格、ディーゼル価格、年間走行距離の組み合わせ次第でTCOの損益分岐点が前倒しされる。

    したがって今後は「原油が何ドルか」より、物流会社が実際に支払うディーゼルと電力の1km当たりコスト差を観測する必要がある。

    今日の読み筋

    9月16日版のキーワードは、「制度の作り直し」である。

    Einrideは、運転席を持たないトラックを作った。

    技術的に走れるだけなら、それほど新しいニュースではなくなりつつある。今回重要なのは、ドイツ当局がそれを正式に認め、Lidlの普通の商品配送へ入ったことである。

    TeslaもステアリングのないCybercabを作った。

    しかしアメリカでは逆に、それを従来の自動車安全基準へどう適合させたのかと規制当局から問われ始めた。

    Toyotaも似ている。

    中国で二つのJVを持つ構造は間違いだったわけではない。巨大な成長市場へ進出するには合理的だった。

    しかし市場が成熟し、中国メーカーが強くなり、販売台数と利益率が下がれば、その制度は重荷になる。

    そこで企業構造を作り直す。

    自動車産業では今、EV、自動運転、SDV、地域生産という新しい技術・戦略が急速に進んでいる。

    一方で、それを受け止める、車両安全基準、型式認証・自己認証制度、道路交通制度、合弁会社制度、販売網の多くは、旧来型の自動車を前提に作られている。

    技術が制度より先へ行くと、最後に詰まるのはAI性能でも電池性能でもない。

    「それを社会の中で何として扱うのか」である。

    運転席のない機械を「トラック」として認める。ステアリングのない車を「量産乗用車」として認める。30年前の成長市場向けJVを現在の成熟市場へ合わせて統合する。

    9月15日は、ドイツ、アメリカ、中国という三つの巨大市場で、自動車産業の新しい現実に合わせて古い制度・企業構造を組み替える動きが同時に見えた一日である。

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