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Volkswagenは100億ユーロ、トヨタは年間1兆円|世界自動車朝刊2026年9月19日

    今日の結論

    9月18日の世界自動車産業では、既存メーカーが抱える「巨大であることのコスト」が二つの形で表面化した。

    Volkswagenは2026年の利益率見通しを従来の4.0~5.5%から最大1%へ引き下げ、約100億ユーロの一時費用を計上する。Reutersによれば、そのうち約60億ユーロはPorscheの中期事業見通し悪化に伴う減損である。

    一方Toyotaは、老朽設備、人手不足、生産自動化への対応として、2028年以降にグループ企業と主要サプライヤーを合わせて年間最大1兆円規模の工場近代化投資が必要になる可能性を投資家へ示した。必要なロボットは既存設備の更新分も含め約40万台と試算する。

    一つは過去に積み上げた資産・ブランドの価値を落とす話。

    もう一つは、将来も巨大な製造能力を維持するため巨額の資本を追加投入する話である。

    共通するのは、年間数百万~1000万台規模の自動車メーカーを維持すること自体が、以前よりはるかに高コストになっていることである。

    1. Volkswagen、利益率「最大1%」へ――Porscheだけで約60億ユーロ減損

    Volkswagenの再編が、ついに巨額の減損と利益警告という形で財務諸表へ表れ始めた。

    Reutersによれば、Volkswagenは9月18日、2026年に約100億ユーロの一時費用を計上すると発表した。

    これに伴い、2026年の利益率見通しを従来の4.0~5.5%から最大1%へ引き下げた。

    100億ユーロのうち約60億ユーロはPorscheに関係する。

    VolkswagenはPorsche株式の75%を保有しているが、中国市場とアメリカ市場を中心にPorscheの中期収益力そのものを低く見積もり直した。

    Porscheの問題は「EVが売れない」だけではない

    Porscheはかつて、自動車産業でも突出した利益率を持つブランドだった。

    ところが2025年の利益率はわずか1.1%まで低下した。

    背景には複数の問題が重なっている。

    中国では外国高級車への需要が急減した。アメリカでは関税負担が増えた。その一方で電動化への巨額投資が必要になった。

    そして世界の高級車市場自体も、中国メーカーの高価格帯進出によって競争が激しくなった。

    VolkswagenはPorscheについて、中国のディーラー網縮小もすでに進めている。

    今回の約60億ユーロの減損は、「一時的に販売が悪い」のではなく、将来稼げる利益そのものを以前より低く評価するという意味を持つ。

    ここが重要である。

    Volkswagen全体にも波及

    問題はPorscheだけではない。

    Volkswagenは、AudiとVolkswagen乗用車ブランドについても中期的な期待値を引き下げた。

    理由として、中国市場の悪化、アジアメーカーの欧州進出、BEVへの需要シフトを挙げている。

    特にBEVは販売が増えても、従来の高収益ICE車と同じ利益を確保できるとは限らない。

    つまりVolkswagenは、販売台数が減るリスクと、売れる商品の利益率が下がるリスクを同時に抱えている。

    2週間前には5万人追加削減

    今回の利益警告は単独の出来事ではない。

    Volkswagenは約2週間前、大規模な変革計画で株主側と合意したばかりである。

    さらに5万人を削減する。組織を簡素化する。工場閉鎖も選択肢に入れる。

    昨日の朝刊では、SEATブランド自体が2030年以降存続しない可能性を取り上げた。

    それらが今日、一本につながった。

    工場を減らす。人を減らす。ブランドを減らす。組織を減らす。そして資産価値も減らす。

    Volkswagenの再編は「コスト削減策」の段階を越え、会社の適正規模そのものを再計算する段階へ入ったと見るべきである。

    2. Toyota、工場自動化に年間最大1兆円――必要なロボットは約40万台

    Volkswagenとは違う方向から「巨大メーカーを維持するコスト」を示したのがToyotaである。

    Reutersによれば、Toyotaは投資家に対し、2028年以降に工場の自動化・近代化を進める場合、Toyota本体、グループ企業、主要サプライヤーを合わせて年間約1兆円の投資が必要になる可能性があるとの試算を示した。

    現時点で年間1兆円の投資を正式決定したわけではなく、何年間続けるかも決まっていない。

    したがって「Toyotaが毎年1兆円をロボットへ投資する」と断定するのは正確ではない。

    重要なのは、その規模感である。

    ロボット約40万台

    Toyotaの試算では、工場自動化を進めるために必要なロボットは約40万台。

    既存設備の更新だけではない。産業用ロボット、自動物流、人間と協働するロボット、さらに将来のヒューマノイドまで含む。

    つまり従来の、溶接する、塗装する、部品を取り付ける、という固定型産業ロボットだけの話ではない。

    工場内物流や、人間が担当してきた変動の大きい作業まで自動化対象を広げる構想である。

    なぜ今、自動化なのか

    最大の背景は人手不足である。

    日本では生産年齢人口が減少する。熟練作業員も高齢化する。工場設備そのものも老朽化する。

    自動車メーカーが現在の生産規模を維持するには、人を増やす、という従来の方法だけでは対応できない。

    そこで機械へ置き換える。

    これは単純な人件費削減とは少し違う。

    人がいなくなるので、自動化しなければ生産能力そのものを維持できない、という問題である。

    Hyundaiとも競争になる

    自動車メーカーの工場ロボット競争ではHyundaiも動いている。

    Hyundai Motor GroupはBoston Dynamicsを傘下に持ち、2028年からアメリカ・ジョージア州の工場へヒューマノイドロボットを投入する計画を示している。

    Toyotaもロボティクス研究を長年続けてきた。ここで自動車メーカー同士の新しい競争が生まれる。

    これまでは、何台車を作れるか、1台を何秒で組み立てられるか、工場稼働率をどこまで上げられるか、が製造競争だった。

    これからは、工場そのものをどこまでソフトウェア化・ロボット化できるかも競争になる。

    自動車会社からロボット需要企業へ

    約40万台という数字にはもう一つ意味がある。

    Toyota自身が巨大なロボット市場になる。

    Toyota本体だけではなく、Denso、Aisin、その他グループ企業、主要サプライヤーまで自動化するなら、その需要は一つの産業を形成できる規模になる。

    そして工場で実証したロボティクス技術を外部産業へ展開できれば、自動車メーカーにとって新しい事業にもなる。

    昨日は小鵬汽車(XPENG)が、自動車向けAIや半導体を他社へ外販しようとしている動きを取り上げた。

    Toyotaの場合は逆側から、巨大な自動車製造現場そのものをロボティクス技術の実証・量産市場に変える可能性が出てきた。

    今日の小さな変化

    アメリカでは、中国メーカーの市場参入を巡る対立がさらに鮮明になった。

    Reutersによれば、GM、Toyota、Volkswagen、Ford、Hyundai、Stellantis、Teslaなどが加盟する6つの自動車・部品・販売関連団体は9月18日、トランプ大統領に対し、中国メーカーによるアメリカでの車両販売、輸入だけでなく、米国内での生産も認めないよう求めた。

    ここには新規性がある。

    トランプ大統領は前週、中国メーカーについて「アメリカで工場を建設し、アメリカ人を雇用するなら受け入れる」との考えを示していた。

    業界側はそれに対して、現地生産ならよい、では困る、と明確に反対した格好である。

    現在のアメリカでは、中国製EVに100%前後の関税がかかるだけでなく、コネクテッドカー規則によって中国メーカーによる乗用車販売・生産も事実上難しくなっている。

    争点はもはや輸入関税ではない。

    中国メーカーが、工場をアメリカへ建てる、アメリカ人を雇う、部品を現地調達する、としても市場へ入れるのか、という問題である。

    これは昨日取り上げた欧州の「Made in EU」と対照的である。

    欧州では、中国企業でも域内生産・域内付加価値を増やせば「欧州産業」として扱う余地を作ろうとしている。

    アメリカの業界団体は逆に、現地生産しても中国メーカーである限り参入を認めない方向を求めている。

    同じ中国自動車への対応でも、欧米の産業政策がかなり違う方向へ進む可能性が見えてきた。

    今日の読み筋

    9月19日版のキーワードは、「規模の経済から、規模のコストへ」である。

    20世紀の自動車産業では、大きいことは基本的に強みだった。

    たくさん車を作る。たくさんブランドを持つ。世界中に工場を持つ。巨大な販売網を持つ。

    規模が大きくなるほど1台当たりの開発費や部品費を下げられた。現在は、その裏側が見え始めている。

    Volkswagenは巨大である。

    しかし、中国工場、ドイツ工場、Porsche、Audi、SEAT、Volkswagen、巨大な組織。

    そのすべてを維持する固定費が重くなった。結果として100億ユーロの一時費用を計上し、利益率見通しは最大1%まで落ちる。

    Toyotaも巨大である。

    世界最大規模の生産ネットワークを持つ。しかし、その工場を今後も動かし続けるためには、人手不足と設備老朽化へ対応しなければならない。

    そのための自動化投資は年間最大1兆円規模になり得る。

    両社の状況は同じではない。

    Volkswagenは余分なものを減らすためにコストを払う。

    Toyotaは現在の強みを維持するためにコストを払う。

    しかし根本は共通している。

    自動車メーカーの競争力は、単に「何台作れるか」では測れなくなった。

    巨大な産業資産を、環境変化に合わせてどれだけ低コストで作り替えられるか。

    9月18日は、Volkswagenの100億ユーロとToyotaの年間1兆円という二つの巨大な数字から、自動車産業の規模が「強み」であると同時に、作り替え続けなければ維持できない巨大な負債にもなり得ることが見えた一日である。

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