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トランプ氏「中国車も米国で造ればよい」、しかし中国メーカーは日本企業にはなれない

    [無料]米国のドナルド・トランプ大統領が、中国自動車メーカーによる米国内での自動車生産を容認する考えを改めて示した。

    「中国が米国に来て工場を開き、ここで自動車を造りたいのであれば、私は構わない」。トランプ氏は2026年9月11日に放送されたFOXニュースのインタビューでこう述べた。そのうえで、「日本もそうしている。重要なのは米国人を雇うことだ」と説明した。

    一方、中国メーカーがメキシコで安価に生産し、米国へ輸出する形については明確に否定した。中国製完成車をそのまま米国市場へ入れることと、中国企業が米国に投資して米国人を雇用することを、別の問題として扱っている。

    ただし、この発言を「トランプ政権が中国車に門戸を開いた」と受け取るのは早い。

    トランプ氏が中国メーカーによる米国現地生産を容認する考えを示したのは今回が初めてではない。2026年1月にも、中国メーカーが米国に工場を建設し、米国人を雇用するのであれば歓迎するとの趣旨を述べている。米自動車業界はその後、中国企業が米国内に工場を設けることで既存規制を迂回することにも反対してきた。

    今回の発言が出たタイミングも重要である。

    トランプ氏と習近平国家主席は9月24日にワシントンで首脳会談を予定している。米中は現在、相互の一部関税引き下げなどについて協議しており、自動車市場へのアクセスを巡っても米国内では警戒が強まっている。

    したがって今回の発言は、具体的な中国メーカー受け入れ政策を発表したものというより、首脳会談を前にした対中メッセージとしての意味合いが大きいと考えるべきである。

    中国車を無条件で入れるつもりはない。しかし、米国に投資し、米国人を雇用するなら話は別である――。

    中国側には市場アクセスの可能性を示しながら、同時に「メキシコ経由では認めない」「米国内に投資せよ」という条件を突き付ける。融和的なリップサービスであると同時に、対中投資を米国内へ誘導するけん制でもある。

    今回やや新しい「日本もそうしている」

    今回の発言で注目したいのは、中国メーカーの米国進出そのものを容認したことより、トランプ氏が日本メーカーを比較対象として持ち出したことである。

    日本メーカーは数十年をかけて米国内に完成車工場を整備し、米国人を大量に雇用し、現地サプライヤー網を形成してきた。

    トランプ氏の論理は極めて単純である。

    中国メーカーも日本メーカーと同じように米国へ来て、工場を建て、米国人を雇えばよい。

    政治指導者のメッセージとしては非常に分かりやすい。

    しかし、自動車産業の実態から考えると、中国メーカーが「日本メーカーと同じこと」をするハードルは非常に高い。

    むしろ、それを完全に実行すると、中国メーカーが海外市場で発揮してきた競争力そのものを削る可能性がある。

    中国メーカーは工場だけを海外へ持っていくわけではない

    第一の問題は、工場建設そのものにある。

    中国メーカーの海外進出では、中国国内で構築してきた建設会社、設備会社、エンジニアリング企業、人員まで含むネットワークを利用するケースが見られる。

    BYDのブラジル工場建設では、中国の建設会社・金匠集団(Jinjiang)が請負業者として参加していた。同社は中国国内でもBYDの複数の工場建設に関与してきた企業である。ハンガリーでも中国系建設企業や中国からの労働者がBYD工場建設に参加していることが確認されている。

    これは単なる「中国企業同士の付き合い」ではない。

    中国メーカーが猛烈な速度で工場を立ち上げられる競争力の一部だからである。

    中国国内ですでに仕事の進め方を共有している建設会社、設備メーカー、エンジニアリング企業を海外プロジェクトにも投入すれば、中国国内に近い速度と仕様で工場を立ち上げられる。

    つまり中国メーカーの海外工場とは、完成車メーカー一社だけが海外へ移動するのではなく、場合によっては中国で完成した製造システムの一部を丸ごと海外へ持ち出すものなのである。

    ところが米国が求めるものが、米国への投資と米国人雇用、さらに米国企業への発注まで含む本格的な現地化であれば、この強みをそのまま使うことは難しくなる。

    第二の問題は、さらに巨大な中国サプライチェーンである

    より根本的なのが部品である。

    中国メーカーの価格競争力と開発速度は、完成車工場だけから生まれているわけではない。

    電池、モーター、インバーター、電子部品、車載ディスプレー、センサー、鋳造部品、内外装部品など、中国国内に極めて密集したサプライチェーンを最大限利用することで成立している。

    IEAによれば、2025年時点で中国は世界のEV生産の約70%、電池セル生産の80%超、正極材の約85%、負極材の90%超を占める。中国メーカーが海外生産を始めても、現地サプライチェーンが十分に育っていない地域では、中国からSKD・CKDキットや部品を送り、現地で最終組み立てする方式が依然として重要である。2025年には長城汽車とSAICの輸出台数のおよそ半分がこうしたノックダウン方式だったとIEAは推計している。

    BYDのブラジル工場も象徴的である。

    BYDは2026年末までに部品の50%をブラジルで調達・生産することを目標としている。裏返せば、工場を造っただけで中国サプライチェーンから切り離されるわけではなく、現地化には時間が必要ということである。

    中国メーカーが米国へ進出する場合にも、最も合理的なのは中国製部品を大量に送り込み、米国工場で組み立てるモデルである。

    しかし米国が最も警戒しているのも、まさにそこなのである。

    米国で組み立てれば「米国車」になるわけではない

    さらに米国の場合、一般的な関税問題だけでは済まない。

    米商務省のコネクテッドカー規制では、中国と一定の関係を持つVCS(車両接続システム)やADS(自動運転システム)のソフトウェア、さらに段階的にハードウェアについても規制対象となる。

    より重要なのは、中国と一定の関係を持つメーカーについては、車両そのものを米国内で製造しても、新しいコネクテッドカーを米国で販売できない規定がすでに存在することである。ソフトウェアおよび対象メーカーに対する規制は2027年モデルから適用される。

    したがって、「BYDが米国に工場を建て、米国人を雇えばBYD車を販売できる」というほど単純な話ではない。

    現在の規制体系を維持したまま中国メーカーの米国生産を認めるのであれば、どの規制を変更するのか、中国本社との資本・技術関係をどう扱うのか、車載ソフトウェアをどうするのか、中国製通信部品をどうするのか、自動運転技術をどうするのか、といった問題を一つずつ解かなければならない。

    トランプ大統領が政治的に「工場を建てて米国人を雇えばよい」と言えても、実務レベルには無数のハードルが存在する。

    しかも米自動車業界側は、中国車の米国生産そのものに反対している。2026年9月にも主要自動車メーカーを代表する業界団体は、中国系自動車メーカーを恒久的に米国市場から排除する法案の成立を議会に求めている。

    さらに皮肉なのは、トランプ政権内部でも中国依存への警戒が強いことである。

    9月8日にはダフィー運輸長官がフォードに対し、CATLとの電池技術関係や吉利汽車など中国企業との協業を問題視し、中国への依存を減らすよう公然と要求したばかりである。

    中国メーカーには米国進出を歓迎すると言いながら、米国メーカーには中国技術への依存を減らせと要求する。

    この二つを両立させる制度設計は簡単ではない。

    日本メーカーが数十年かけたものを、中国メーカーはショートカットしてきた

    そして最も重要なのは、中国メーカーと日本メーカーでは海外展開の歴史そのものが違うことである。

    日本メーカーは長い時間をかけて、米国内に完成車工場を建設し、現地サプライヤーを育成し、研究開発機能を置き、販売網を構築し、地域社会との関係を形成してきた。

    結果として現在では「日本企業の米国工場」というより、米国自動車産業の一部と呼べるほど深く組み込まれている。

    中国メーカーの強みは、ある意味でその逆である。

    中国国内に完成した巨大なサプライチェーン、極めて速い商品開発、設備会社まで含めた工場立ち上げ能力、低コストの部品調達、電池からソフトウェアまでの垂直統合を使い、従来の自動車メーカーが数十年かけて築いてきた海外事業を短期間でショートカットする。

    それによって東南アジア、中南米、欧州などへの進出速度を高めてきた。

    ところが米国から、工場は米国で建てる、米国人を雇う、部品も現地化する、中国製の通信・自動運転技術には制約をかける、中国の既存サプライチェーンへの依存も認めない、という「フルスペックの日本企業化」を求められれば、中国メーカーは自らの最大の競争優位のかなりの部分を手放さなければならなくなる。

    これは単なる工場建設の問題ではない。

    「米国に工場を建てればよい」は入口にすぎない

    トランプ氏の今回の発言は、中国メーカーにとって一見すると明るい材料に見える。

    しかし現時点では、中国車の米国市場参入を具体的に認める政策転換が決まったわけではない。従来からトランプ氏が示してきた「輸入ではなく米国内で生産せよ」という考えを、米中首脳会談を前に改めて示したものと見るべきである。

    今回わずかに新味があるのは、そこに「日本メーカーのように」という具体的な成功モデルを持ち出したことである。

    だが、それこそが中国メーカーには難しい。

    中国メーカーの競争力は、日本メーカーと同じ道を歩くことによって形成されたのではない。むしろ日本、米国、欧州の自動車メーカーが何十年もかけて構築してきた開発・生産・海外展開のプロセスを、中国国内の巨大な産業集積によって圧縮し、ショートカットしてきたことにある。

    米国市場へ入るために、その仕組みを捨てて日本メーカー型の完全現地化を求められるのであれば、中国メーカーにとっては自己否定に近い部分さえ出てくる。

    もちろん巨大な米国市場には、それでも挑戦する価値がある。

    しかし問題は「米国に工場を建てられるか」ではない。

    中国メーカーは、中国メーカーとしての競争力をどこまで残したまま、米国企業になれるのか。

    トランプ氏が示したのは市場開放の答えではなく、むしろ中国メーカーにとって極めて難しい、この新しい問いなのである。

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    急速に進む中国のCASE(Connected&Cabin,Autonomous,Shared&Service,Electric)やAIについての最新情報。2018年から1日1本以上のレポート配信。毎朝8:00日刊中国モビリティレポートと適時号外レポート

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