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ボルボ、中国に6車種、欧州に7車種投入、分業へ 世界自動車朝刊2026年9月18日

    今日の結論

    世界の自動車メーカーが、規模を追うために増やしてきたものを整理し始めている。

    ブランド、車台、地域共通車、自社技術、そして自社だけで完結する事業モデル。

    Volvo Carsは2030年までに13車種を投入する過去最大の商品攻勢を発表した。しかし重要なのは車種数ではない。中国向け6車種と欧米向け7車種を事実上分け、中国では親会社Geelyとの共同開発を深め、欧米では二つの共通プラットフォームへ集約する。部品共通化率を2030年に30%へ高め、材料費を5%削減する計画である。Reutersによれば、2025年に3.5%だった税引前利益率を8%超へ引き上げることも目標としている。

    Lucidと欧州モビリティ大手Boltは、欧州で少なくとも2万5000台のL4自動運転車を展開する提携を発表した。Lucidが車両を作り、NVIDIAが自動運転基盤を提供し、Boltが車両を所有・運営する。ロボタクシーでも「一社ですべてを持つ」のではなく、車両、AI、フリート運営を分業するモデルが巨大化し始めた。

    Volkswagenではさらに厳しい整理が進む。Reutersによれば、グループ再編の中でスペインのSEATブランドが2030年までに事実上終了する可能性が強まっている。一方、同じスペイン発のCUPRAは成長しており、商品開発の中心をこちらへ移す。

    三つに共通するのは、「持っているものを増やす」ことより「どこへ集中するか」が競争力になったことである。

    1. Volvo Cars、13車種投入の裏で「世界共通車」をやめる

    Volvo Carsは9月17日、2030年までに13の完全新型車を投入すると発表した。

    同社99年の歴史で最大の商品攻勢である。一見すると単純な拡大戦略に見える。しかし中身はむしろ逆である。

    地域ごとに開発を分け、内部を徹底的に共通化する。

    Reutersによれば、13車種のうち6車種は中国向け、7車種は欧米市場向けとなる。

    中国と欧米で同じ車を売る発想から離れる

    これまでグローバルメーカーは、一つの車台、一つの基本商品を世界各地へ展開することで規模の経済を作ってきた。

    Volvoもその典型であった。

    しかし中国市場では現在、スマートコックピット、ADAS、商品投入速度、価格帯、車内空間、デジタルサービスなどの要求が欧米と大きく異なる。

    そこで中国向けモデルについては、Geely Autoとの共同開発を深める。欧米向け商品は別の二つの共通プラットフォームへ集約する。

    つまり、世界共通の商品を地域へ適応するのではなく、地域別の商品を、グループ内部の共通技術で安く作る方向へ転換する。

    これはかなり大きな違いである。

    Geelyとの関係を「親会社」から「産業基盤」へ

    Volvo CarsはGeely傘下にありながら、長く独立性の高いブランドとして運営されてきた。

    しかし現在はGeelyグループの技術・調達基盤をより積極的に利用しようとしている。

    Reutersによれば、Volvoは2030年までに部品共通化率を30%へ引き上げる。これによって材料費を約5%削減する計画である。

    狙いは明確である。Volvoの2025年税引前利益率は3.5%だった。これを8%超へ引き上げる。

    つまり今回の13車種投入は販売台数だけを増やす商品攻勢ではない。Geelyの規模を利用してVolvoの収益構造を作り直す計画でもある。

    工場も自社ブランドだけのものではなくなる

    さらにVolvoは、中国やベルギーの自社工場で他社向け車両を生産することにも関心を示している。

    ここも重要である。

    自動車工場は巨額の固定費を抱える。販売台数が減れば稼働率が落ち、利益を圧迫する。

    ならば、Volvo車だけを作る工場である必要はない。

    グループ企業や他メーカーの商品を生産し、設備稼働率を上げればよい。

    Volkswagen、Stellantis、Nissanなどが世界各地で余剰生産能力を整理しているなか、Volvoは工場閉鎖ではなく工場の用途を広げることで固定費を吸収する方向を模索している。

    「中国依存を減らす」と「Geelyを使う」は両立する

    Volvoは中国販売の低迷や米国関税の影響を受けている。

    そのため地域生産を進め、中国への販売依存を減らす必要がある。しかし同時に、Geelyとの技術・部品共通化は強める。

    一見矛盾する。

    実際には、販売市場としての中国依存は減らす、産業基盤としてのGeelyはもっと使う、という二層構造である。

    昨日まで追ってきた「中国企業か欧州企業か」という区分がここでも意味を失う。

    Volvoはスウェーデンブランドである。Geelyは中国企業である。中国車はGeelyと共同開発する。

    欧米車にもGeelyグループの共通部品が入る。そして欧州で生産する。

    企業の国籍と、技術・部品・生産の国籍が一致しないことが普通になってきた。

    2. Lucid×Bolt、欧州ロボタクシー2万5000台――Waymoとは違う「分業型」

    Lucidと欧州のモビリティ大手Boltは9月17日、欧州で大規模な自動運転モビリティサービスを共同展開すると発表した。

    Boltは少なくとも2万5000台の完全自動運転Lucid車を、欧州の複数都市・複数国へ投入することを目指す。

    さらにBoltは2035年までに、自社プラットフォーム上で10万台の自動運転車を運用することを目標としている。

    規模だけでも大きい。

    しかし今回さらに興味深いのは役割分担である。

    Lucidが車、NVIDIAが自動運転基盤、Boltが運営

    車両はLucidが開発中のMidsizeプラットフォームを使用する。

    自動運転にはNVIDIA Hyperionを利用する。

    Boltが車両を所有し、フリートを運営する。

    Bolt側は、安全基準、車両運行インフラ、都市との協議、運営システム、を構築する。

    つまり、

    • Lucid=車両

    • NVIDIA=自動運転技術基盤

    • Bolt=モビリティ運営

    という分業である。

    Waymoとはかなり違う

    Waymoは、自動運転システムから車両統合、サービス運営まで比較的広い領域を自社で抱える。

    TeslaもCybercabを自社車両、自社AI、自社サービスへつなげようとしている。

    LucidとBoltは逆である。それぞれが得意な部分だけを持つ。

    Lucidにとって重要なのは、自社でロボタクシー会社になる必要がないことである。

    車両を大量供給できればよい。

    Boltにとっては、自動車工場を持つ必要がない。NVIDIAにとっては配車サービスを運営する必要がない。

    自動運転産業が垂直統合型と水平分業型へ分かれ始めている。

    Lucidにとって2万5000台は意味が大きい

    Lucidは高性能EVで高い技術力を持つ一方、販売規模が小さく、巨額の開発費を吸収することが課題になっている。

    そこでロボタクシーは重要な販路になり得る。

    LucidはすでにアメリカでUber、Nuroと組み、少なくとも3万5000台規模のロボタクシー展開を計画している。

    今回のBolt分を加えると、計画ベースでは6万台以上になる。

    しかも一般消費者向けEVとは違い、フリート契約ならまとまった台数を販売できる。

    Lucidにとってロボタクシーは「自動運転への参入」だけではない。工場稼働率を上げるB2B販売チャネルでもある。

    欧州ロボタクシー市場が一気に大きくなる可能性

    欧州では規制や都市ごとの制度が複雑で、アメリカや中国よりロボタクシー展開が遅れてきた。しかしここ数週間、

    • Waymoの欧州展開計画

    • pony.aiの欧州公道試験協議

    • EinrideのドイツL4物流

    • Lucid×Bolt

    と材料が続いている。まだ2万5000台が発注済みという意味ではなく、展開時期も確定していない。

    したがって現時点で「2万5000台が走る」と読むのは早い。

    それでも、欧州最大級のモビリティプラットフォームが万台単位を前提として自動運転車の調達・運営構造を設計し始めたことは大きい。

    ロボタクシー競争は、AI企業だけの競争ではなくなっている。

    3. Volkswagen、SEAT消滅も視野――ブランドを維持すること自体がコストに

    Volkswagen Groupの大規模再編では、工場、人員、ソフトウェアに続いてブランドそのものが整理対象になり始めた。

    Reutersは9月17日、VolkswagenのスペインブランドSEATが、現在進むグループ再編の中で2030年までに事実上終了する可能性があると報じた。

    SEATは1950年創業。Volkswagenは1986年に買収した。

    スペインを代表する量販ブランドの一つである。それでも残すことが当然ではなくなった。

    CUPRAがSEATを追い越した

    最大の理由はCUPRAである。

    もともとSEATの高性能ブランドとして始まったCUPRAは、その後独立ブランド化された。現在ではEVを含む独自商品を展開し、販売台数でもSEATを上回る。

    一方SEATは2020年以来、完全な新型車を投入していない。

    Volkswagen Groupの限られた開発資金を、SEATにも使うのか、CUPRAへ集中するのか、二つを維持する意味が薄くなっている。

    自動車メーカーはブランドを増やしすぎた

    世界の大手自動車グループは、長い時間をかけてブランドを増やしてきた。

    買収。合併。地域ブランド。高級ブランド。スポーツブランド。

    販売台数が増え続ける市場では、それぞれに商品を与えることができた。

    しかし市場成長が鈍化し、EVとソフトウェアへの投資額が増えると状況が変わる。一つのブランドを維持するには、

    • 商品開発

    • マーケティング

    • 販売網

    • ソフトウェア対応

    • 認証

    • 部品供給

    が必要になる。販売規模が小さければ、その固定費を回収できない。

    そこでブランドを整理する。

    中国メーカーの台頭は「販売競争」だけではない

    ReutersはSEAT問題の背景として、中国メーカーの世界進出も挙げている。

    ここで重要なのは、中国メーカーがSEATの顧客を直接奪ったかどうかだけではない。

    BYDやGeelyなどが欧州へ入り、低価格EV、PHEV、短い商品サイクル、を持ち込む。

    するとVolkswagen側は開発投資をさらに増やさなければならない。

    その資金をどこから作るか。

    工場を減らす。人員を減らす。プラットフォームを共通化する。

    そして最後には、ブランドを減らす。

    競争激化が企業内部の資源配分まで変える。

    CUPRAへ集約する合理性

    SEATを終了するとしても、Volkswagenがスペインから撤退するわけではない。

    むしろCUPRAへ商品・ブランド投資を集約する。

    ここは今日のVolvoとも同じである。

    商品を増やすことと、内部構造を複雑にすることは同じではない。

    Volvoは13車種を投入するがプラットフォームを絞る。Volkswagenはスペイン事業を続けるがブランドを絞る。

    表の商品は増やしても、裏側は減らす。

    これが現在の大手メーカーの再編に共通する方向である。

    今日の小さな変化

    小鵬汽車(XPENG)が、自動車メーカーから自動車技術供給会社へさらに踏み込もうとしている。

    Reutersが複数の関係者の話として報じたところによると、小鵬汽車はVolkswagen以外の海外メーカーにも自社技術を提供することを検討している。対象には、

    • E/Eアーキテクチャ

    • スマートコックピット

    • TURING AIチップ

    • 先進運転支援ソフトウェア

    などが含まれる。小鵬汽車とVolkswagenはすでに中国市場向けE/Eアーキテクチャなどで協業している。

    今回新しいのは、このモデルをVolkswagenだけの特別な関係ではなく、複数メーカーへ販売可能な技術事業にしようとしていることである。

    背景には収益構造がある。

    完成車は価格競争が激しく利益率が低い。一度開発したソフトウェア、AI、半導体、アーキテクチャを他社へ提供できれば、追加販売時の利益率は完成車より高くなり得る。

    中国EVメーカーを見る際にも、何台車を売ったか、だけでは不十分になってきた。

    Huaweiが車を作らず自動車技術を販売する。Horizon Roboticsが計算基盤と自動運転ソフトウェアを売る。Momentaが複数メーカーへ自動運転技術を供給する。

    そして小鵬汽車のような完成車メーカー自身も、同じ市場へ入る。OEMとTier1とソフトウェア企業の境界がさらに薄くなっている。

    今日の読み筋

    9月18日版のキーワードは、「表は増やす、裏は減らす」である。

    Volvoは13車種を投入する。しかしプラットフォームと部品は共通化する。中国ではGeelyをもっと使う。

    Volkswagenはスペイン市場から撤退しない。しかしSEATとCUPRAという二つのブランドを維持する意味を問い直す。

    Lucidは欧州ロボタクシーへ参入する。しかし自社ですべてを運営しない。BoltとNVIDIAを使う。

    小鵬汽車は完成車を売る。しかし自社技術を競合メーカーにも売ろうとする。

    共通しているのは、企業の境界線を柔らかくすることで固定費を下げる動きである。

    自動車産業では長く、自社ブランド、自社工場、自社エンジン、自社販売網を多く持つことが企業規模の象徴だった。

    EV・AI時代には、それが必ずしも強みにならない。

    電池、半導体、AI、ソフトウェア、自動運転。

    すべてを自社で開発し、すべてのブランドへ別の商品を用意し、すべての工場を自社商品だけで埋めようとすれば、投資額が膨張する。

    だから共通化する。分業する。外販する。不要なブランドを整理する。

    昨日は、BEV一本に賭けたGMがHEV需要を取り逃がし、欧州では「中国企業か欧州企業か」という企業国籍の境界が曖昧になっていることを見た。

    今日はさらにその内側で、一つの自動車会社が何を自分で持つべきなのかという境界そのものが動いている。

    9月17日は、Volvoの地域別開発、LucidとBoltの分業型ロボタクシー、Volkswagenのブランド整理、小鵬汽車の技術外販から、自動車メーカーが巨大な垂直統合企業から、必要な機能を組み合わせる産業プラットフォームへ変わり始めていることが見えた一日である。

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