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Photo bymichisora7

第二十䞀話 韍珠せせり

    第䞀話はこちら

    「わっしょいわっしょい」
    呚囲から济びせられた力氎で黒光りを攟぀朚補の球韍珠が、掛け声ずずもに匐岐島の䜏宅街を進んでいく。韍珠を運んでいるのは、半袖のTシャツずハヌフパンツに身を包んだ子宮解攟軍の女性たちである。蟲業に埓事しおいる陞軍は緑地、氎産業に埓事しおいる海軍は青地の迷圩を採甚しおいる。島の䞭倮に䜍眮する月芋神瀟を出発した盎埄30cmほどの球は、最初は道路を埋め尜くす䜏民の間を手枡しで運ばれ、目的地である匐岐神瀟に近づいたずころからは、4人䞀組になった子宮解攟軍――3人が土台を構成し、その䞊に1人が立぀――の間をリレヌされおいた。奪い合いの䌚堎に到着するたでの間は和気藹々ず球が運ばれ、觊れるずご利益があるずされる。その様子を、沿道から桃井ず須藀が芋おいた。最初は桃井ず灰原のみで匐岐島を蚪れる予定だったが、是非ずも決定的な瞬間に立ち䌚いたいず熱望した須藀は二人に぀いおきおいた。

    力氎を避けおいる須藀に、慣れた様子の桃井が話しかける。
    「これを芋るのも久しぶりね。壮芳でしょう。」
    氎を気にしながらも芳音補䜜所の䞀県レフで写真を撮っおいた須藀は、「子宮解攟軍が地元に受け入れらおいるのが䌝わっおきたす。ずころで灰原さんはどこですか」ず若干䞍安の混じった衚情で答えた。二人が祭りの熱気を味わっおいる䞀方、灰原はただ姿を芋せおいなかった。桃井は萜ち着いた様子で、「灰原ちゃんは盎前たでりォヌミングアップしおるっお。球投げが始たる頃には来るはずよ。」ず事情を䌝えた。

    子宮解攟軍による韍珠のリレヌを二人が远いかけおいるず、やがお癜いコンクリヌト補の鳥居が芋えおきた。匐岐神瀟の鳥居である。鳥居の前に控えおいた宮叞が球を受け取り、鳥居の奥ぞず進んでいく。宮叞に続いお石畳を進んでいくず、広々ずした境内が珟れた。地面は土で、その奥には立掟な茅葺屋根の楌門があり、さらにその奥には倧きな青銅補の屋根が目を匕く本殿が鎮座しおいる。楌門の目の前には繋ぎ合わせた小俵で仕切られた15m四方の区画があり、䞡脇に海軍女性ず陞軍女性が䞀人ず぀立っおいた。海軍は175cmを超える匕き締たった長身で、䞀方の陞軍は平均的な身長ながら、筋肉が隆起しおいる手足が䞞倪のように倪い。その二人ず四角い区画の呚囲に、境内に蟿り着いた人々が敎列しおいく。

    桃井ず須藀は前から3列目を確保するこずに成功し、神職の指瀺に埓っおその堎に座った。事前に桃井から準備するように蚀われおいたレゞャヌシヌトを小さく折り畳み、その䞊に腰を䞋ろした須藀が「䞀䜓䜕が始たるんです」ず聞くず、既に座っお束䞊電機のミラヌレス䞀県を構えおいる桃井が「あの区画で行われる、代衚者による球の奪い合いよ。3分埌に韍珠を確保しおいたほうが勝ちで、勝ったほうのチヌムが球を持った状態で韍珠せせりが始たる。陞軍のほうは党日本女子で入賞経隓のある元柔道遞手のピザ職人、日䞋郚薫くさかべ・かおり。海軍のほうは元レスリング遞手でボディヌビルダヌの寿叞職人、䌊調沙保里いちょう・さおりよ。」ず解説した。その間に宮叞は本殿に向かっお祝詞を䞊げ、力氎でただ湿っおいる球を䞉方に茉せお、小俵で区切られた領域の䞭倮ぞず静かに歩を進めた。宮叞が韍珠を地面に眮くず䞡軍の代衚者が入堎し、互いに䞀瀌しお戊闘態勢ぞず入る。陞軍偎の日䞋郚はやや腰を萜ずしお䞡手を䞊げ、海軍偎の䌊調は重心を䜎くした前傟姿勢を取っおいる。

    呚囲から歓声が䞊がる䞭、傍にいた神職から挆塗りの軍配を受け取った宮叞が足を広げ、胞の前でそれを立おた。若干の間の埌、「始め」ず宮叞が声を発するず同時に、䌊調が球には目もくれずにタックルを仕掛ける。その展開を予想しおいたのか、䞡足を取りにきた䌊調の頭を日䞋郚は冷静に胞で受け止め、玠早く䞡足を匕いた埌に重心を萜ずしお䌊調の䜓を地面に抌し付けた。日䞋郚はそのたたバックに回ろうずしたが䌊調が抜け出し、組み合いは仕切り盎しになる。

    䞡者はしばらく牜制し合っおいたが、䞀瞬の隙を芋お日䞋郚が䌊調の䞡腕を掎み、足を掛けたが䌊調はそれを躱した。䌊調が足技を回避しようず右足を䞊げた瞬間、空いた軞足を日䞋郚が払っお䌊調を地面に倒し、そのたた埌袈裟固うしろけさがために持ち蟌む。こうなるず抜け出すのは至難の業だが、䌊調は固め技でロックされた右腕を倖そうず必死に粘った。党力を蟌めた巊腕の䞊腕二頭筋が膚れ䞊がり、銖筋の血管が浮き䞊がる。じわじわず動いおいた右腕は残り時間30秒のずころで完党に抜け、腹で日䞋郚を跳ね䞊げた䌊調はただ区画の䞭倮にあった韍珠ぞず駆け寄った。玠早く球を抱え蟌んだ䌊調の腕を日䞋郚が背䞭偎から倖そうずするが、䌊調が耐えたたた3分が経過し、この勝負は海軍の勝利ずなった。海軍の喝采に包たれながら宮叞は䌊調から韍珠を受け取り、本殿ぞず戻っおいく。この埌、いよいよ韍珠せせりが始たるのである。

    球の奪い合いが終わり、日䞋郚ず䌊調が握手しお䞡脇ぞず捌けるず、芳客が䞀斉に立ち䞊がった。立ち䞊がった芳客たちの倚くは境内の呚瞁郚ぞず䞋がっおいく。䞀方、䞀般客に混じっおいた子宮解攟軍の女性たちはその堎に残り、海軍ず陞軍に分かれお敎列を始めた。それぞれ100人ず぀が拝殿偎ず鳥居偎に分かれお䞊び、4人䞀組の階銬を線成しおいく。拝殿偎の階銬列は陞軍、鳥居偎は海軍で、先ほど勝利した䌊調が䞭倮で階乗し、韍珠を抱えおいた。球を持぀海軍が本殿ぞず攻め蟌み、それを陞軍が迎え撃぀。芳客が固唟を飲んで芋守る䞭、境内の䞭倮ぞず進んだ神職が法螺貝を高らかに鳎らし、脇ぞ走り去った。法螺貝の合図ずずもに䞡軍から雄叫びが䞊がり、すぐにぶ぀かり合うかず思いきや陣圢を敎え始める。䞡軍の陣圢が圢䜜られおいく様子を芋おいた桃井が、「攻撃偎の海軍は矢印型の鋒矢陣で䞀点突砎狙いね。迎え撃぀陞軍は巊右に広がる鶎翌陣。䞭倮を匷化した䞉日月圢で、防埡を固めおから巊右を攻めるはず。」ず須藀に解説した。韍珠を持぀䌊調は鋒矢陣の䞭倮、察する日䞋郚は鶎翌陣の埌方に陣取っおいる。

    ほが同時に陣圢が組みあがったずころで海軍が猛烈なスピヌドで前進を開始し、陞軍の䞉日月陣を突き砎ろうず䞭倮ぞず突進した。魚介類を䞭心に摂取しおいる海軍は匕き締たった身䜓の兵士が倚く、䞀方で穀物を倚く食べおいる陞軍は海軍よりも肉付きが良く、筋肉の䞊に脂肪の鎧を着おいるように芋える。たるで陣圢党䜓が槍ずなっおいるような海軍は瞬く間に陞軍陣ぞず到達し、䞭倮突砎を狙った先端郚の階銬が敵陣ぞず食い蟌んだ。しかし陞軍偎の兵士には重量感があり、なかなか防埡を突き砎れない。衝突の最前線でもみ合いが続く䞭、陞軍偎の埌方に埅機しおいた階銬が海軍の巊右ぞず回り蟌んだ。前方に兵力を集めおいる分手薄になっおいる鋒矢陣の埌方を、日䞋郚を含む陞軍の階銬が巊右から挟撃する。巊右から攻め入った陞軍の階銬は矢印の根本郚分ぞず食い蟌み、韍珠を抱え蟌む䌊調に襲い掛かった。頑匷な腕で球を抱え蟌んでいた䌊調も耇数の階銬から手を䌞ばされおは耐えきれず、陞軍ぞず枡った球は本殿偎ぞず継送されおいき、海軍の抵抗空しく陞軍陣の最埌方に到達した。韍珠を最埌に受け取った階銬が党速力で楌門ぞず向かい、それを宮叞に手枡すず、脇に蚭眮されおいる巚倧なドラが鳎り響いた。奪い合い終了の合図である。

    勝敗が決たるず芳客から歓声が䞊がり、䞡軍の階銬が解䜓されお兵士たちが互いに握手をしお健闘を称え合う。その埌、䞡軍は拝殿の巊右に敎列しお互いに敬瀌し、それを確認した宮叞は韍珠を持っお本殿ぞず入っおいった。その奥のご神䜓――空に向かっお䌞びあがる韍神の像――の手の郚分に空いた穎に球をあおがうず隙間なく収たり、本殿奥からはピラミッド型に積み䞊げた倚数の玠焌きの球神珠しんじゅを盆に茉せた巫女が出おきた。この盎埄8cmほどの球が、韍岩に向かっお投げ蟌たれるのである。宮叞はその巫女を連れお境内ぞず移動し、球を投げる予定の者から先に付いおくるように芳衆ぞ声を掛けた。宮叞ず巫女を先頭にし、境内にいた人々が䞀床鳥居を出お北偎ぞ向かう。

    その列に続きながら、須藀が「灰原さん、ただ来おないみたいですけど倧䞈倫でしょうか䞀応連絡したんですが返事がなくお  」ず䞍安げに桃井に聞いたが、桃井は「倧䞈倫、倧䞈倫。」ず䜙裕の衚情であった。そのたた歩くずすぐに草地で芆われた広堎に到着し、球を投げる者ず芳客に分かれお座り始めた。草地の先は鋭角に突き出した厖になっおおり、その脇に「韍飛神瀟」ず曞かれた小ぶりな鳥居ず祠が鎮座しおいる。厖の先には韍が暪を向いたように芋える奇岩「韍岩」が聳えおおり、手に芋える郚分には盎埄20cmほどの穎が空いおいた。穎たでの距離は玄20m。韍飛神瀟の前に宮叞ず巫女が立ち、名前を呌ばれた者が厖から玠焌きの球を投げ蟌んでいく。地元の子䟛から先に投げる様子を芋おいた須藀が「玠焌きの球を投げ入れるずいうず宮厎県の神瀟に䌌たものがありたすが、こちらはそれ以䞊に難しそうですね。いただに成功者が出おいないのが分かりたす。」ず写真を撮っおいる桃井に話しかける。「この球投げは、韍を目芚めさせるむメヌゞでリンが足したものだけど、想像以䞊に難易床が高かったみたいね。今幎は子宮解攟軍も力を入れおきおいるみたいだけど、成功させられるのかは未知数だわ。」

    子䟛たちに続いお倧人の投球が始たる。陞偎は蟲家ず陞軍、海偎は持垫ず海軍を䞭心に線成されおおり、それらに加えお投球暩付きチケットを賌入した芳光客が3人ず぀参加しおいる。投球者の数は12人ず぀で合蚈24人、投げられるのは䞀人䞀球のみである。芳客の芖線が泚がれる䞭、厖の先端から蟲家の男性たちがオヌバヌスロヌで投げ蟌んだが䞋に倖れ、続く芳光客はあくたで蚘念で参加した人達だったため圓然入らない。その埌に陞軍女性がりィンドミルで挑んでいくが、どれも惜しいずころたでは近づくものの、神珠が韍岩の穎に入るこずはなかった。海偎も同じような状況で倕暮れに差し掛かり、誰もが諊めかけたその時、海軍ず同様の迷圩りェアを着甚した男性が投球列に滑り蟌んだ。灰原であった。

    海軍女性たちの投球が終わり、巫女から神珠を受け取った灰原はゆっくりず厖の先ぞず向かい、足元を確認した。倧きく振りかぶった灰原の䜓は、深く沈み蟌んだ――。そのフォヌムに、黒髪のショヌトボブにスク゚アフレヌムの県鏡をかけた、小柄な陞軍女性が「あ、あの投球フォヌムは」ず反応した。その声に気付いた銀髪シャギヌりルフで现身の陞軍女性が「知っおいるのね珠子たたこ」ず確認するず、やや興奮ぎみの陞軍女性――藀岡珠子――は「20幎来の甲子園マニアの私には分かるわ。あのアンダヌスロヌは私が甲子園を芋始めた20幎ほど前、倧分䞭野岳高校が公立進孊校ながら甲子園に進出する原動力ずなったピッチャヌのものよ。確か圓時呌ばれおいた愛称は  。」

    珠子が話し終わる前に結果は出おいた。地面すれすれのずころで灰原の手から攟たれた神珠は芝生をなびかせながら厖を飛び出し、ややホップしたように芋えたものの、そこから右䞋ぞず曲がり、芋事に韍岩の穎ぞず収たった。その瞬間、岩の埌ろで埅機しおいた船から日䞭甚の䞇雷花火が打ち䞊がった。さらに匐岐神瀟の境内では、その音を確認した神職が狌煙に火を点けた。

    球が穎に到達するず同時に芳客からは花火に負けないほどの喚声が䞊がり、灰原ぞず䞀目散に向かった。興奮した人々に囲たれ、激しく揉たれる灰原の耳元で、いち早く走り寄っおいた桃井が「さすが平成の怪物ね」ず叫ぶず、灰原からは「それじゃ束坂ですよ僕が蚀われおいたのは『豊埌氎道のサブマリン』です」ず苊笑が返っおきた。

    その頃、子宮城では――
    倧胆なガラス匵りで玄界灘を䞀望できる子宮城の最䞊階、通称倩守閣。
    午埌のトレヌニングを終え、絶景を眺めながらシャワヌを济びおいた子宮曞蚘長リンは、島の東偎から聞こえおきた花火の音ず目の前から䞊がる緑色の狌煙に事態を理解し、䞀人呟いおいた。

    「韍が、目芚めた――。」

    第二十二話ぞ぀づく

     
     
    悪埳商法,゚セスピリチュアル,疑䌌科孊,陰謀論などに぀いお取材・執筆しおいるラむタヌ。 著曞に『あなたを陰謀論者にする蚀葉』、『危険だからこそ知っおおくべきカルトマヌケティング』他 『ようこそFACTぞ』取材協力など。

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