
時空を超えて‥‥小説(世流寝狐72)
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ここにはツツジの名所が多く、四月には伝統行事の一つとして、ツツジ祭が二週間ほど開かれるという。この時は各地から多くの客を集めるそうだ。近くには都市公園や県指定文化財の遺跡、御茶屋などがあり、芭蕉、牧水の歌碑も見れるということだった。釣り好きなら急流の白川で充分堪能でき、今週は白川ラインマラソンも行われるんですよと、仲居は付け加えた。
釣りか……。海釣りは、沖縄にいるころ何度かやったが、川釣りには興味は無かった。もともとそれほど釣り自体を好まなかったため、別府に来てからもよく係長や畑山に誘われたりしたが、一度もやっていない。
合志はそうですかと、咳払いをしながら頷いていると、
「風邪ですか、もしあれでしたら近くの病院を紹介しますけど」
と仲居が言ってきた。
「日曜の夜に悪いですよ」
「いえいえ、そんな心配はいらないんですよ。この辺りの病院はいつでも診てくれますから」
「親切な方が多いんですね」
と言って、合志はテーブルに並ぶ料理に目をやる。
「年寄りが多いからですね、いつでも診てくれる病院でないと。ちょっとでも悪い評判がたつとすぐに潰れますの」
ゆったりと話す仲居の言葉が、合志には心地よく感じた。旅館は新しくないが、ホテルなどでは味わえない一時だった。
料理はすべて整ったようだ。
「紹介致しましょうか」
もう一度仲居が聞いてきた。合志が風呂で温まれば大丈夫です、と言うと大きな盆を重ねて出ていった。
良子と入れ代わりで合志も風呂を終えた。加熱温泉だったが、体は充分温まった。
良子と向かい合って食事をしていると、いつもの良子とは別人に見える。浴衣のせいだろうか。
「おいしいわね、お風呂も気持ち良かったし。言うこと無しね」
サツマイモを箸に刺したまま、良子がおどけた。
「でもどうして私を誘ったの?」
と良子が訊いた。
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*週末に少しずつ投稿する予定です。作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
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