
時空を超えて‥‥小説(世流寝狐69)
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「――そうさ。あいつ、熊本の父親に会ってくれと言ったんだよ」
「それだけ」
良子がつげなく言う。
「事件と関係無いじゃない」
「かも知れない。でもただ単に父親を思って呼ぶんなら、父さんって言うんじゃないか。苦しくて堪らない時に俺に向かって、熊本の父と言ったんだぜ。どんなに親友でも友人に向かって、父親を頼むなんて言いやしない。絶対に何かあるよ、絶対に」
良子はガラガラ声で話す合志の入れ込みように圧倒され、それ以上否定はしなかった。
第五章
1
日曜とあって駅前は旅行客で賑わっていた。観光バスもいつもより多く停まっていて、その間から春を待てない学生達の甲高い声が聞こえていた。
合志と良子はその中をホームへと向かう。駅独特の冷たい風が階段から下りていた。
午前中二人は署に顔を出し、係長に熊本出張の許可をもらった。合志についてはすんなり許可されたが、流石に良子の同行には係長は渋い顔をした。合志も良子をどうしてもという確固たる理由は用意してなかった。それが許可されたのは、内野が三井の告別式に代理で出席する条件を提示したからだった。告別式は明日の午前に行われるというのだ。
その内野は誘拐事件の渦中で、ほとんど休みが取れずにいる。特に犯人を取り逃がしてからというもの記者の目と世論に縛られ、身動きがとれない状態にあった。あれから一週間が経とうとしているが、幼児はまだ保護されていない。捜査本部から何らかの責任を執らされるだろう。やはり身代金さえ渡せば、子供を返してくれるほど甘くはなかったようだ。
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*週末に少しずつ投稿する予定です。作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
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揺音(ゆりね)
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