
時空を超えて‥‥小説(世流寝狐68)
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十文字原でのことが、また浮かんでくる。三井とは独身同志で悩みも似ていた。皮肉にもこんな辛い時こそ、その三井と別府の夜景を眺めたくなるのだ。車があれば今の自分なら良子を誘っていたかも知れない。
「本当に私たちのこと恨んでなかった」
「あぁ、俺に話しがあると言っただけだよ。良子たちには何も無いさ」
「遺書も無いんでしょ」
それが無いことを勿論良子は知っていたが、確認するように聞く。
合志は無いと応えた。
「何だったのかしら? 今思うと最近元気が無かったような気はするけど」
「さぁ――? ダイイングメッセージはあるけどね」
「え、何て言ったの」
「ダイイングメッセージ」
「違う、その内容よ」
どうやら受話器の奥で、良子の推理の回路が動き始めた。
「ウマオトチッチ」
合志は言っても仕方ないと投げ槍に言う。腰掛けているとはいえ、長電話に少しうんざりし始めていた。喉も気持ちが悪い。
「クマモトチッチ、何それ?」
「違うよ。クマモトじゃなくって、ウマオ」
――ん、ク・マ・モ・ト・・・?。くまもと、熊本ちっち。そうか熊本だ、熊本。チッチは?
電話の向こうでは良子が何か話しかけてたが、それどころではなかった。
チッチ? チッチ? 合志は言葉を伸縮させ、丸めたり尖らせたりしながら、生前の三井の言葉と重ねた。頭の中でぐるぐる回転させる。
――ちちだ。熊本の父だ。
「分かったよ、良子」
「何が分かったの」
「ダイイングメッセージだよ」
何故だか分からないが、三井は熊本にいる父親のことを告げたのだ。それもこの俺に。間違いない。行けば、行けば何か分かるかも知れない。
「良子、明日熊本へ行ってみないか」
喜びの中でつい良子を誘った。自分でもどうしてなのかはっきりとは理解できなかったが、とにかくその理由を良子に話す。
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*週末に少しずつ投稿する予定です。作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
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