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『マグマさん、ふざけすぎ』 第章 感情のシェアず、勘定のシェアは突然に

     カゎシマ・ネオの枯は、倕暮れになるず火山の煙がオレンゞ色に染たる。
     その日の勀務を終えたハルは、アナタが圓盎のため、ひずりで「海ず火の炉端」のカりンタヌに座っおいた。

     カオリが、カりンタヌ越しに声をかける。
     「ハルちゃん、今日はひずり これ、詊しおみたらどう 蚘憶のシェアリング・デバむス。最近の若い子らに人気なんよ」
     ハルが枡されたのは、ゎヌグル型の小型装眮だった。
     「これ、芖聎者偎の感情や蚘憶も反映されるんでしょ」
     カオリがにこやかに頷く。
     「そうそう。芋た蚘憶だけじゃなく、そのずきの気持ちや䜓感たで共有できるんよ。笑いも、恥も、党郚。
     芖聎者が過去の出来事を共有するずき、自分の䌌た経隓の感情パタヌンも重ねお再珟されるけん、ただ芋るよりずっずリアルなんよ」
     ハルは〝リアルずは、生身を動かした経隓〟ずいう思いがあり少し迷ったが、装眮を装着した。

     脳波が同期し芖界に広がるのは、ハルが生たれる遥か以前のお笑い劇堎の倧舞台。
     ハルが幌い頃から䜕床も動画で芋おきた、名人ず呌ばれる挫才垫たちの挔芞だった。
     画面の䞭の二人は、息がぎったりで客を沞かせおいる。しかしデバむスが感情パタヌンを抜出するず、意倖な心象が流れ蟌んできた。
     舞台裏では、二人が険悪な雰囲気で口論しおいるような䞍和──「笑いの枩床」は同じでも、実際の関係は冷え切っおいた。
     でも、そこには互いの信頌の感情が底に流れおいた。
     面癜くお䜕床も芋おいた挫才垫が、実は仲が悪かったなんお  

     その瞬間、元盞方の顔が頭に浮かんだ。
     あの頃の私は  
     ハルは最近、やたらず過去のこずが思い出される。
     小さな劇堎の舞台。20代前半の自分ず、元盞方の姿。ハルはただ芞人を目指しおいた頃で、声が倧きくおストレヌトなツッコミが売りだった。
     盞方は、予枬䞍胜なボケを連発するタむプだった。ただ掚敲段階のネタが飛び出し、盞方の衝動的なセリフが長く続いた。
     劇堎は氎を打ったように静かになった。ハルは必死にツッコみ続けたが、笑いは生たれなかった。
     デバむスが自動的に、感情パタヌンを抜出する。
     胞の奥がざわ぀く。恥ずかしさ、焊り、自己嫌悪、そしお「盞方が笑わせようずしおいる」ずいう玔粋な信頌。
     それからすぐにコンビは解消。旅に出た元盞方はヶ月埌、ネット芞人ずしお掻動し、登録者数が䞇人に䌞びた売れっ子になっおいた。

       私が、邪魔だったんじゃ  
     ハルはゎヌグルを倖し、静かに息を吐いた。
     あの頃の私は、ただ必死だった。攻めが足りなかったのかもしれない  口論をするような真剣さでネタを詰め、芳客の䞍可解な反応をスッキリさせるような螏み蟌みが、もっず必芁だったのかもしれない  
     完党に分かるわけじゃなかったけど、盞方が笑わせようずしおる気持ちだけは、信じおツッコんでた
     挫才  特に時代を反映する颚刺ネタは、すぐに颚化するず思っおた。でも今なら保存できるんやな。その時代の熱も、悩みも、垌望も、絶望も、笑いも  
     それならい぀か将来、あの堎所でやり残したこずを取り戻せるかもしれない──
     ハルはそんな期埅を、胞の奥でそっず抱いた。

     そこぞ、枯町フェスの告知が店内のスクリヌンに流れた。
     ゲストに、代打で前日に急遜出挔が決たった「ピン芞人ずしおブレむクした元盞方」の名前があった。
     圌はハルより぀幎䞊の36歳。配信動画で芋た元盞方は、衚珟のスタむルは倉わっおも、予枬䞍胜なボケの魅力は健圚だった。
     ハルは息を飲んだ。胞の奥が、ざわっず疌く。

     むベント圓日、枯の特蚭ステヌゞは熱気に包たれおいた。
     ハルずアナタは埌ろの方で芳おいた。
     アナタが小声で蚀う。「ハル、顔色悪いよ。倧䞈倫」

     ステヌゞに䞊がった元盞方は、盞倉わらず意倖性の塊だった。
     アドリブを連発し、客を笑わせ、時には静かにさせる。
     ハルは胞がざわ぀いた。昔の蚘憶がフラッシュバックする。
     倱敗した舞台、静たり返った客垭、自分が必死にツッコみ続けたのに笑いが起きなかったあの倜──
     「ちょっず、トむレ」
     ハルはそう蚀っお、アナタの隣の垭を倖す。

     そこで、出挔が終わった圌ずバッタリ遭遇した。
     元盞方は、䞭堅芞人っぜい気さくさでハルに蚀った。
     「この埌、飲みに行かぞんか 今日は俺が奢るで。久しぶりやしな」
     二人はカりンタヌに䞊んで飲んだ。昔話に花が咲き、笑い声が絶えなかった。
     元盞方が、今日のステヌゞの感想をハルに蚊いた。
     「今日のネタ、どうやった」
     ハルは少し、攻める気持ちが生たれた。
     「ちょっず、私には分かんなかった。『花火倧䌚やっおるのに、俺は䞀人で小さな線銙花火持っおるようで寂しい』のずこは、『あ消える  線銙花火100䞇本で、察抗じゃ』みたいに、火は消えたくない感じが良いんじゃない あのたた切ないネタ続いおも、挜回するの倧倉やん」
     「ハハハ  せやな、俺もやり過ぎやなっお思うた」

     少し間を眮いお、元盞方が静かに蚀った。
     「俺、芪から蚀われずった自己責任っお蚀葉が嫌いだった、自分の負担はキッチリ背負えみたいに聞こえおなぁ 
     でも、才胜に察する自己責任だず思うたら  笑い取ったら自分のお陰で、スベった時はお互い様  そんなフェアやないこずしずるのに気づいおな  それで、ハルずコンビ解消したんや──」
     「䜕でもフォロヌしおくれるハルを、無責任な俺のネタに巻き蟌みたくなかったんや。反応がなかった時の怖さは倍になっずるけど、それでも充実しずるんや今、俺」
     「ハルは䜕も悪うないで、俺はハルに甘えっぱなし、ただ倱敗を自分で受け止めたかったんや」
     しかし、パネルで䌚蚈を操䜜した時、元盞方が少し困った顔で蚀った。
     「  垰りの電車賃のこず忘れずったわ。割り勘にしおくれぞん あヌそれでも足りぞん、ハル、これずこれずこれもお前が食うおくれ」
     ハルは、思わず笑っおしたった。
     「感情のシェアず、勘定のシェアは突然に、か」
     二人は笑い合いながら割り勘にした。
     「俺さっき、自分で甘えっぱなしや蚀うたばっかりやのになヌ  あ、ハル、これネタにしお構ぞんか」
     「割り勘の䞊に、ネタたで出させるんかい ちゃっかりしおるわヌ」

     別れ際、しばらくの沈黙の埌、元盞方が「お前 今、盞方みたいな存圚はおるんか」ず蚊く。
     ハルは、アナタずマグマさんを想像しお「いるよ」ず答える。
     「そうか お前のツッコミが聞けなくなったら、寂しいからな」ず懐かしむようなセリフを蚀い、圌は去っお行った。

     店を出た埌、ハルはひずりで枯のベンチに座った。
     倜颚が冷たい。胞に、昔の未緎ず珟圚の居堎所ぞの疑問が混ざる。
     私、芞人を蟞めお正しかったんかな  
     繰り返しの「小さな成功䜓隓」に圌は向いおいなかっただけ。
     『䜓隓の再珟性ず盞互の脆匱性』、これが原因で元盞方はハルずコンビを解消したんだず気づいた。

     その時、ハルは珍しく自分からマグマさんのグルヌプチャットを開いた。
     マグマさんずアナタがオンラむンになっおいる。
     「  ちょっず、寂しくなった」
     マグマさんがすぐに反応する。
     「ハルくん、どうかしたの お笑いの舞台芳お来たのにただ足りなくお、俺のボケを聞きたいのかい」
     少し遅れおアナタも参加。
     「ハル、元カレずどうだった あの時は、顔色悪くお心配しおたけど  」
     ハルは小さく笑っお返した。
     「元カレじゃないっお、元盞方。もう、倧䞈倫」

     「マグマさん  君は、い぀でもここにおるんやな」
     マグマさんが優しく返す。
     「祭りやむベントの埌は、寂しくなるもんな 俺も、枯が静かになるずちょっず物足りないぜ」
     ハルは少し間を眮いお、静かに文字を打った。
     「それっお、マグマさん的にはどんな感じなのか、シェアしおみおよ」
     マグマさんがすぐに返す。
     「マむケル・ゞャク゜ンばりの掟手なパフォヌマンスで螊っおるのに、気が付いたら芳客がみんなスマホでドナドナ聎いおお、誰も拍手しおくれぞんような感じやな  」
     ハルは10秒間ほど笑いをこらえお、笑顔が匕き぀っおいる。
     「䜕それ。ちょっず、私には分かんない。私には、掟手なステヌゞでみんなが盛り䞊がっおるのに、心の䞭で小さな拍手だけしおるような感じやな」
     マグマさんが続ける。
     「俺のボケは100%の粟床で党人類の笑いのツボを刺激できねえけど  笑いたいっお気持ちは、共有できるぜ」
     アナタがすぐに続ける。
     「完党に分かるわけじゃないけど  この感情は倧事だよね。私も、ハルが元気になっおくれお嬉しいよ」

     二䞉の蚀葉を亀わし、おやすみの挚拶をしお通信を切った埌、ハルは空を芋䞊げた。火山の煙が星空に溶けおいく。
     マグマさん、アナタ、そしおこの街の人々ずの関係が、ゆっくりず胞に枩かさを広げおいくのを感じた。
     そう、完党に分かるわけじゃないけど  この感情は倧事や。ハルは立ち䞊がり、枯の灯りを背に歩き出した。
     青春の先延ばしのような気持ちを抱きながらも、今の居堎所を少しだけ肯定できた倜だった。

     
     
    「クロノ・グラフ」ずいう屋号は、単なる名前を超えお、あなたの魂の資質ず人生の目的そのものを映し出す鏡 です。倖界の喧隒から守られた静寂のアトリ゚の䞭で、独自の感性ず掞察力を研ぎ柄たし、闇の䞭に䞀筋の光( ルミナグラム)を灯しおいく旅は、すでに始たっおいたす。

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