
立ち止まった時間は、無駄じゃなかった。
58歳で仕事を失った。
そしてあと2ヶ月で59歳。
「これからどうしよう。」
その言葉が、何度も頭の中を巡っていた。
働かなければ生活ができない。でも、この年齢で新しい仕事は見つかるのだろうか。
焦りと不安でいっぱいだったあの頃の私は、「立ち止まる」ということを受け入れられずにいた。
でも今、あの時間を振り返ると、少し違う景色が見えている。
4月の終わり、私は会社都合で退職した。
気持ちは決して晴れやかではなかった。離職票が届くのを待ち、ハローワークで失業保険の手続きをした。
最初の給付までには時間がかかり、毎月の支払いは待ってくれない。
少しでも家計の足しになればと、人生で初めて単発バイトにも挑戦した。
「この先どうなるんだろう。」
そんなことを何度も考えながら過ごした毎日だった。
それまでの私は、仕事と家事、そして子育てに追われ、自分のためだけに時間を使うことがほとんどなかった。
退職して初めて、自分の時間ができた。
ずっと行きたかった図書館へ通い、本を借りて静かな時間を過ごす。近くの公園や遊歩道を歩き、季節の花や木々を眺める。
何気ない時間なのに、少しずつ心がほどけていくのを感じた。
思い切って、一人で松本へも旅をした。
美術館を巡り、城下町を歩き、気になっていたカフェでのんびり過ごす。時計を気にせず、自分のペースで歩く一日は、とても新鮮だった。
「こんな時間の使い方もあるんだ。」
仕事をしていた頃には気づかなかった、自分を大切にする時間だった。
もちろん、不安が消えたわけではない。
求人票を見るたびに「59歳」という年齢が頭をよぎり、応募しようか迷う日もあった。
それでも、少しずつ前を向けるようになった私は、新しい仕事に応募し、面接を受けた。
まだ結果はわからない。でも以前の私とは少し違う。
ただ働ければいいのではなく、「自分に合った働き方をしたい」と考えられるようになった。
この数ヶ月を振り返ると、不安だった日も、焦った日も、何も進んでいないように思えた日も、決して立ち止まっていただけではなかった。
図書館で本を読み、散歩をし、旅に出て、人と出会い、少しだけ働いてみる。
その一つひとつが、知らないうちに私の心を整え、次の一歩を踏み出す力をくれていた。
あのときは立ち止まることが怖かった。
周りは働いているのに、自分だけ時間が止まってしまったような気がしていた。
でも、立ち止まったからこそ見えた景色があった。
家族と過ごす時間の大切さ。 最近では、家族の間で「今度はみんなで旅行に行こうよ」という会話がよく出るようになった。これまでは忙しさに追われてそんな余裕もなかったけれど、今の私にはその言葉がとても温かく響く。
何気ない日常のありがたさ。
そして、自分自身をいたわることの大切さ。
今日までの時間は決して無駄ではなかったと思う。
人生はときどき立ち止まることがある。
でも、その時間があるからこそ、また歩き出せる日が来る。
私は今、そのことを少しだけ信じられるようになった。
この数か月で感じたことは、一つひとつnoteにも残してきました。よろしければ、こちらも読んでいただけるとうれしいです。
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