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短線「胡桃ず僕のありふれた日垞」第䞀話 〜雚䞊がりに蒲公英〜

    匘生


    抂芁

     日垞を元気いっぱい生きおいるクリニック勀務のナヌス「胡桃」。
     圌女は持ち前の明るい笑顔ず劙な真剣さで、冗談のような日頃の困難を乗り切っおいる。
     そんな「胡桃」を愛しお止たない「僕」こず「楜」。
     胡桃の倧真面目に頑匵る、正盎ゆえに面癜すぎる日垞を経お、二人の恋愛から結婚、第䞀子誕生たでをほのがのずコメディヌタッチで描くシリヌズ。
     ショヌトストヌリヌで䞀話ごずでも読むこずができたすが、時系列に第䞀話から物語は展開したす。



    「胡桃ず僕のありふれた日垞」


    第䞀話 〜雚䞊がりに蒲公英たんぜぜ


     僕の圌女は、なんずいうか、ベテランナヌスなのではあるけれど、冷や冷やするほどおっちょこちょいなのである。
     もちろん職堎でのナヌスずしおの倱敗などはしない。けれども、それ以倖のこずがどうにもずれおいるのだ。いや、本人は倧真面目なのであるから笑っおはいけないのだが、どうにも圌女を芋おいるだけで吹き出しおしたう。

     圌女の名は胡桃くるみ。
     笑顔が可愛いから、䜕を仕出かしおも蚱しおしたう僕がここにいた。
     䞀緒に暮らすようになっおたもなく二幎。
     ぀い先日のこずである。僕が倜勀明けでマンションに垰った朝、その日が䌑日であった胡桃は案の定ただベッドの䞭であった。
    「ただいた」
     胡桃は、眠たそうに片目を開け、
    「楜がくくん、お垰り  お疲れさた」ず蚀い、䞀瞬の間をおき、ハッず䞡目を開けお、
    「逃子を倜䞭に䞋拵えしたの」ず元気よく続けた。
     ちなみに、楜ずは僕の名前だ。
    たさか朝から逃子を食べさせる気なのか  
     内心そう思いながら胡桃を芳察しおいるず、
    「今起きるから  ね  」ずごろりず寝返りをう぀ず、たちたち倧きな錟を立おお再び寝始めおしたった。たたか  
     ベッドからはみ出た右足に、指郚分を持お䜙した五本指゜ックスの巊足甚が装着されおいた。
     そんな胡桃が面癜くお愛おしい。

     さお、䞉月のある土曜日、その日は生憎の雚だった。
     胡桃の職堎であるクリニックの倖来は、昌過ぎに終えるはずだ。
     近くに新しいむタリアンの店を芋぀けたので、食いしん坊の圌女を連れおいこうず、ランチを予玄しお埅ち合わせをしおいた。
     終了間際に来院した骚折患者の凊眮をしおいた胡桃は、予定よりも少し遅くなったせいで、焊りながら店に飛び蟌んできた。雚で滎る黒い氎玉の傘をくるくる閉じお、店の傘立おに突っ蟌んでいる。傘を差しおきたのにどうしお ず思うほど党身が濡れおいる。
    「楜くん、ごめんね。遅くなっちゃった」
    「倧䞈倫だよ。それよりも、なんでそんなに濡れちゃうの 川に萜ちたみたいじゃないか」
    「そうなの、溺れそうだった 傘もそろそろ替え時かしら」
    「いや、傘のせいじゃないず思うよ」

     僕達はランチのコヌスずコヌスをそれぞれ泚文した。食いしん坊の胡桃は、僕のパスタやメむンディッシュを「お味芋」ず蚀っお、ずいぶんず暪取りをしおいた。
     矎味しいランチに満足しお満面の笑みを浮かべる胡桃。
     けれど、ご満悊な圌女の䞍機嫌を呌び芚たしおしたう小さな事件が、垰り際に起こったのだ。

    「あ 私の傘がない 」
    「どうされたした」
    「私の傘がないんです。䌌おる傘がここにあるから、誰かが間違えお差しおっちゃったんです」
    「この傘ではないのですね」
    「そうです 䌌おるんですけど党然・・違うんです  ショック、気に入っおいたのに」
     矎味しいランチで幞せいっぱいだった胡桃から笑顔が消えた。
    「傘が戻りたしたらご連絡臎したす」ずいうスタッフに、すっかり機嫌を損ねおいた圌女は、
    「もういいです 芁りたせん」ず、やや捚お台詞的な蚀葉を吐いお、雚の䞭、店の倖ぞ出た。
     僕はプンプンしおいる胡桃に傘を差し掛けお、お互いの巊右の肩を濡らしながら、久しぶりに盞合傘をしお駅に向かった。

     日曜日、胡桃の機嫌はすっかり回埩しお、い぀も通り居るだけで僕を面癜がらせおいた。
     そんな圌女は実はものすごく几垳面で、朝から冷蔵庫の敎理やそこたでやるかずいうようなゎミの分別に粟を出しおいた。よく芋るず、今床は片方の足に僕のく぀䞋を履いおいるのだった。

     月曜日雚が降った。ずいうこずは傘の出番である。ずいうこずは土曜日の事件を思い出さずにはいられない。仕方なく別の傘を差しお出勀した胡桃は、開口䞀番先茩ナヌスの杏子あんずさんに、
    「土曜日ランチしおたらお気に入りの傘、持っおかれちゃったの 䌌おるけど、党っ然違うのに くるみプンプンなの」ず頬を膚らたせお蚎えたらしい。
     杏子さんは、そういえば  ず、
    「そういえば土曜日の垰りに花生かおちゃんも、傘がないっお蚀っお折りたたみ傘で垰っおたよ」
    「えヌ 職堎でなくなるなんおありえなヌい」
     そう蚀っお胡桃が傘立おを芗くず  果たしおそこに胡桃自身の黒い氎玉の傘があったのだ。
     倢を芋おいるような䞍思議なパニック状態に陥った胡桃は、杏子さんず同僚の桃乃もものさんに土曜日の顛末を語っお、ようやく頭の敎理が出来たようだ。そう、あの傘は胡桃自身が職堎から間違えお差しおいった、玛れもなく同僚花生さんの傘だったのである。
     今すぐにでも店に行っお、あの傘を取り戻しおこなければ。
     その時の胡桃の固たったあずの焊り隒ぐ姿を想像するず、僕は䜕床でも吹き出すこずができるのである。
     しかも、傘を差した時点で気づくだろ、普通  いや、胡桃に普通ずいう蚀葉は通じない。花生さんには悪いが、どうにも面癜くお仕方がない。
     胡桃はそわそわしながら昌䌑みになるのを埅った。そしお、午前䞭最埌の患者の凊眮を終えたあず、癜衣を着替えもせずに、むタリアンの店に脱兎のごずく駆け出した。しかし店は䌑み。暗い店内をガラスに顔をくっ぀けお芗く、怪しい癜衣姿の女性  我が圌女である。
     店内の傘立おにはビニヌル傘が䞀本あるだけで、花生さんのものず思われる傘は芋圓たらなかった。
     ガックリず肩を萜ずし、胡桃は近くのファッションビルで花生さんぞのお詫びの぀もりで倉わりの傘を買ったそうだ。

     花生さんが出勀しお、傘立おに自分の傘が戻っおきおいないこずを確かめるず、
    「でも、いずれにしおもスタッフの誰かだからそのうち戻っおくるよね」ず、杏子さんに話しおいる。
     杏子さんず桃乃さんは目を合わせおくすくす笑っおいる。
    「これから面癜い話が聞けるかもしれないよ」
     杏子さんがそう蚀い終えるが早いか、ものすごい勢いで胡桃が曎衣宀に飛び蟌んできた。真新しい傘を手に肩で息をしお、
    「ごめんね、花生ちゃん これあげるから蚱しお」
    「う」
    「あたしが犯人なの。もう花生ちゃんの傘はないの」
    「胡桃ちゃんが持っおっちゃったのか」
    「そヌなの ごめんね」
    「いいよ、い぀でも」
    「違うの もうないの」
    「 電車の䞭に忘れた たた癜目剥いお寝おたんでしょ」
    「違うの 楜くんずランチしたお店なの」
    「じゃ、あずで芋に行けばいいよ」
    「違うの 」
     そのあずは、身振り手振りで䞀所懞呜䌝える面癜い胡桃の姿があったはずだ。
     その日胡桃は、傘の持ち䞻の花生さんをはじめ、杏子さんずも桃乃さんずも目が合う床にぷッず吹き出され、さらなる揺るぎなき面癜キャラが確立されたのであった。
     なんずいっおも、本人は倧真面目なのであるから。

     翌火曜日。
     土曜日に捚お台詞を吐いた店の扉を開けた胡桃は、䞊目遣いにそれたでの顛末を、笑いを堪こらえるスタッフに正盎に告げ、実は保管されおいた花生さんの黒い氎玉の傘は、無事に持ち䞻の元ぞ戻ったのである。
     二本の黒い氎玉の傘を䞊べお、
    「党っ然違うじゃんねぇ、氎玉の倧きさも違うし。なんたっお、楜くんにもらった蒲公英たんぜぜのチェヌンホルダヌを぀けおいたのに気づかないっおありえなヌい」ず、䞀番倧笑いしおいたのは、玛れもなく胡桃なのであった。

     そろそろプロポヌズしおもいい頃かな。


     第䞀話 完


     第二話に぀づく

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