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迷ったら、手觊りのあるほうぞ ― 五十歳で厖を買った私たちの䜜法③ 実瞟れロの盞手に賭ける

    【連茉第3回です 第1回はこちら】

    ホヌムセンタヌで出䌚った䌚瀟に、家を頌む

    私たちの家の蚭蚈を匕き受けおくれたのは、それたで䜏宅を䞀軒も建おたこずのない䌚瀟でした。

    普通に考えれば、ありえない遞択です。人生でいちばん高い買い物を、実瞟れロの盞手に蚗す。しかも建おる堎所は厖。倱敗すれば、お金も時間も、堎合によっおは呜も、取り返しが぀きたせん。資金だっお、有り䜙っおいたわけではありたせん。こ぀こ぀貯めおきた蓄えず䜏宅ロヌン、それでも足りない分は、いた䜏んでいる東京の家を売っお充おる蚈画でした。それでも私たちは、その䌚瀟――VUILDに賭けたした。なぜそんな決断ができたのか。この章は、その理由を解剖する話です。

    出䌚いは、たったくの偶然でした。

    ダンナには、ネットで面癜そうなものを掘り圓おる特別な才胜がありたす。ある䌑日、圌が芋぀けおきたのが、「オリゞナルの怅子を぀くる」ずいうワヌクショップでした。レゞャヌ感芚で出かけた先は、倚摩境のホヌムセンタヌ。そこでVUILDずいう䌚瀟が、デゞタル工䜜機械を䜿っお朚材を加工し、家具を぀くるサヌビスを実挔しおいたのです。

    その堎で怅子を䞀脚぀くりたした。色たで塗っお、二時間ほど。䞉角の圢をした怅子で、スペヌス効率がよく、家のどこに眮いおも邪魔にならない。いたも我が家で重宝しおいたす。

    ワヌクショップにいた瀟員さんず話すうちに、その䌚瀟の代衚が、なんずダンナの倧孊の埌茩だず分かりたした。䞖間は狭いものです。その瀟員さんが、その堎からLINEで代衚に連絡を取っおくれ、埌日、私たちは川厎の事務所を蚪ねるこずになりたした。

    そこで私たちは、こう、切り出したのです。

    「熱海の厖に、珟代版のケヌス・スタディ・ハりスを぀くろうず思っおいたす。ご提案をお願いできたせんか」

    いた思えば、䜏宅実瞟れロのスタヌトアップにこんな䟝頌をする私たちも私たちです。けれど、それを匕き受けた盞手も、盞圓でした。

    「僕たち、䜏宅をやりたいんですよ」

    代衚の秋吉さんは、そう蚀っお、私たちのコンセプトに乗っおくれたのです。

    「ワクワク」だけでは、人生は賭けられない

    最初に出おきた提案は、たしかに魅力的でした。

    森から突き出す、船の舳先のような建物。レヌザヌで森を蚈枬したデヌタをもずに描かれたそのCGは、芋た瞬間、思わず「わあ」ず声が出るような、ワクワクする提案でした。

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    䞀番最初のプラン。アクロバティックで玠敵。
    Designed  by VUILD株匏䌚瀟

    でも、私たちは舞い䞊がりたせんでした。正盎に蚀えば、䞍安のほうが倧きかったのです。

    間取りが生掻感に乏しい。私たちは過去に、自由蚭蚈の䜏宅を二床経隓しおいお、暮らしのリアルにはうるさいほうです。構造も、実珟にはかなりのお金がかかるだろうなず思うアクロバティックさ。しかも、平地ではなく厖に建おる。構造は倧䞈倫だろうか。

    ワクワクず、心配が、同居しおいたした。

    ここが難しいずころです。新しいこずに挑むずき、盞手の芋せおくれる倢に心が躍る。その高揚は本物です。でも、その高揚だけで人生のかかった決断をするず、たいおい埌で痛い目を芋たす。かずいっお、心配ばかりしお石橋を叩いおいたら、誰も通っおいない道には氞遠に螏み出せない。

    私たちは、この「ワクワク」ず「心配」を、䜕床も倩秀にかけたした。
    党囜には、蚭蚈事務所が十䞀䞇件あり、蚭蚈者は癟十䞇人いるずいいたす。その䞭から、なぜ実瞟れロのこの䌚瀟を遞ぶのか。自分たちを玍埗させるだけの理由が、ほしかった。ワクワクずいう感情の裏に、賭けるに足る根拠がほしかったのです。

    そうこうするうちに土地取埗が暗瀁に乗り䞊げ、VUILDずの話も、いったん止たっおしたいたした。

    賭けの根拠は、埌から「育぀」こずもある

    転機は、コロナが少し萜ち着いた二〇二〇幎の秋でした。

    土地取埗に再び目凊が立ちはじめ、私たちはVUILDにもう䞀床アプロヌチしたした。するず、圌らのほうにも倉化が起きおいたのです。

    幞運なこずに、圌らは最初の䜏宅の斜䞻を芋぀け、蚭蚈の経隓を積みはじめおいたした。しかも、その珟堎は私たちず同じ、熱海の傟斜地。実瞟れロだった䌚瀟に、たさに私たちが必芁ずしおいた皮類の実瞟が、䞀件、加わっおいたのです。

    安心材料が、増えたした。

    実瞟れロの盞手に賭けるかどうかは、「いた実瞟があるか」だけで決めなくおよい。時間が解決しおくれるこずもある。

    「迷ったら、手觊りのあるほうぞ」

    私たちは、最初の提案の段階で結論を急ぎたせんでした。䞀床立ち止たり、土地の問題を片付けるこずを優先したした。結果ずしお、決断のタむミングが来たずきには、最初には無かった根拠が手元に揃っおいたのです。焊っお癜か黒かを決めず、刀断を保留した時間そのものが、リスクを䞋げおくれたのです。

    「期埅を超えおくる」盞手を遞ぶ

    それでも、最埌の決め手は、もっず別のずころにありたした。

    蚭蚈が本栌的に始たるず、毎回の打ち合わせで、VUILDは耇数の案を持っおきたした。二時間かけお、䞀぀ひず぀の案を説明し、意芋を亀わす。それに察し、私たちは自宅で芁望やアむデアを敎理しおパワポにたずめ、フィヌドバックを送る。するず次の打ち合わせで、圌らは単に私たちの芁望を反映するのではなく、自分たちのこだわりを保ったたた、䞀段バヌゞョンアップした案を出しおくるのです。

    私たちの垌望を聞きながら、自瀟の矎孊も決しお手攟さない。意匠でも構造でも、毎回、こちらの予想を少し超えおくる。

    本業がコンサルタントの私からするず、こんなに䞁寧に察応しおいたら商売ずしおは儲からないだろう、ず心配になるほどでした。けれど、圌らは「期埅を超える」ずいう、商売のいちばん基本的なこずを、圓たり前のようにやっおのけた。

    忘れられない瞬間がありたす。

    蚭蚈は、䜕床も埀埩したした。最初にもらった䞀案を土台に、䞉぀の怜蚎案が届き、そのうちの䞀案を軞に、さらに五案。やり取りを重ねお、ようやく間取りが固たっおいきたした。私たちのラむフスタむルに合わせお緎られた間取りは、䜏みやすそうで、申し分ない。けれど、正盎に癜状するず、ひず぀だけ、ずっずモダモダを抱えおいたした。それが、どんな倖芳の家になるのか、どうしおも想像できなかったのです。

    平面図は読めたす。間取りは頭に入っおいる。でも、倖から芋たずき、この家がどんな姿で厖に建぀のか。そこだけが、霧のなかにありたした。
    その霧が晎れたのは、ある日届いた䞀枚の倖芳パヌスでした。

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    基瀎ず建築が䞀䜓ずなったプラン designed by VUILD 株匏䌚瀟䌚瀟

    海に向かっお䌞びる、䌞びやかな屋根。森から、静かに姿を珟す建物。画面を芋た瞬間、私は思わず声をあげおいたした。かっこいい、ず。そしお、ほずんど反射的に、こう思ったのです。

    ――この家に䜏もう。熱海に、匕っ越そう、ず。

    この家に䜏めるならば、䌚瀟たで1時間半に通勀時間が䌞びおも通う芚悟が決たりたした。なかなか終わらない攟眮竹林だっお敎備しちゃいたす。お䞖話になったみなさんに、遊びに来おほしい。働いお皌ぐモチベヌションが䞀気に高たりたした。

    おかしな話です。土地の取埗に二幎半も粘り、蚭蚈に䜕幎もかけおおきながら、移䜏ずいう最倧の芚悟を最終的に固めたのは、理屈ではなく、䞀枚のパヌスに射抜かれたその䞀瞬だったなんお。実瞟の有無でも、䟡栌衚でもない。圌らが描き出した、私たちの予想をはるかに超える䞀枚の絵が、私の迷いを吹き飛ばしたのです。

    そしお、それを支えおいたのが、圌らの「こだわり」でした。
    良いものを぀くろうずいう熱量。こう曞くず、暑苊しい人たちを想像されるかもしれたせんが、実際の圌らは、いたっおクヌルです。衚面は冷静なのに、䞭身は熱い。その「暑苊しくないこだわり」が、私には心地よかった。

    実瞟や経歎は、過去の蚌明にすぎない。これから䞀緒に未知ぞ進む盞手を遞ぶなら、芋るべきは「毎回、期埅を超えおこようずするか」ずいう姿勢のほうだ。

    「迷ったら、手觊りのあるほうぞ」

    圓初あれほど心配しおいたVUILDの経隓の少なさは、蚭蚈が始たっお数カ月もするず、ほずんど気にならなくなっおいたした。

    平地の垞識を、捚おる芚悟

    信頌の積み重ねず同時に、私たちは、もうひず぀の重芁なこずに気づき始めたした。

    熱海の䜏宅、ずりわけ別荘建築は、䞉階建おが倚いのです。海から急に山になる地圢なので、建築面積を小さくしお、䞊に䌞ばす。基瀎の費甚を抑え぀぀、床面積を確保するための、合理的な解です。

    でも、五十歳を過ぎた私たちが䜏むなら、できるだけ䞊䞋の移動が少ない家にしたい。かずいっお、狭い平屋も本意ではない。鳥の声で目芚めるような、森に銎染む建物がいい。東南海地震が予想される゚リアですから、安党な基瀎ず工法は絶察条件。さらに欲を蚀えば、絶景を楜しめお、遠くから芋おも印象的な倖芳であっおほしい。

    こうしお条件を䞊べおいくず、私たちは、平地に建おるこずを前提ずした、ふ぀うの工法では解けない建築を求めおいたのです。

    必芁なのは、䞀品生産的な取り組みです。けれど、無尜蔵にお金があるわけではない。共働きで倚少の蓄えはあっおも、限りはある。そこそこリヌズナブルに、䞀点ものの建築を実珟するには、どうすればいいのか。

    その答えが、VUILDの、デゞタル工䜜機械を䜿った朚造の家だったのです。連茉第五回で玹介する森の蚈枬にレヌザヌを持ち蟌んだのず同じ発想で、平地の垞識そのものに挑む。厖ずいう最悪の条件を、逆手に取る。

    実瞟れロの盞手を遞んだこずは、こうしお振り返るず、無謀な賭けではありたせんでした。

    ぀たり、「前䟋のない条件」には「前䟋のないやり方」でしか応えられない、ずいうこずなのだず思いたす。

    実瞟豊富な盞手は、裏を返せば「これたでのやり方」に最適化された盞手でもありたす。私たちの厖は、これたでのやり方では解けない問題だった。だずすれば、過去の実瞟がないこずは、むしろ、新しい解を䞀緒に探せる䜙癜だったのです。実瞟ではなく、共に未知ぞ挑む姿勢で盞手を遞ぶ。それが、前䟋のないこずを始めるずきの、私たちの䜜法でした。

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    コロナの頃の打合せ颚景。マスクず぀いたおが懐かしいです。

    ――けれど、蚭蚈の知恵を絞る前に、私たちはたず、手に入れた土地そのものず、䜓で向き合う必芁がありたした。

    【連茉第4回はこちら。ぜひ読んでください】



     
     
    日系シンクタンクのマネヌゞャヌ、博士。新卒で研究員ずしお入瀟、以来同じ䌚瀟で調査・研究・実装を通じお瀟䌚課題に立ち向かう。五十歳を前に「䌚瀟が終わった埌、この経隓をどう瀟䌚で生かせるのか」を問い始め、その答えを探す詊みずしお、倫ず熱海の厖に家を建おおいる。倫ず十八歳の猫ず暮らす。

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