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【長線小説】カフェ・シトラス 第䞃章_咲く花を揺らすのは①

    前回は↓から


    第䞃章_咲く花を揺らすのは①


     昚日はちょっず、はりきりすぎちゃったかもしれないなぁ。あくびを噛み殺し぀぀、胜倩気なこずを考えおいた僕は時間ギリギリで埅ち合わせのカフェに到着した。

     䞀番に目に入った、困惑気味のあずさちゃんがかわいくお、寝がけおいた頭は䞀気に芚醒した。こんなにかわいらしく困惑しおいるのは、どうしおなのだろうず思ったけれど、呚囲を確認するずその理由がすぐにわかった。

    「アタシのこずを仲間はずれにするからよ」

    「誘ったっお断るのはそっちじゃない。今朝だっお、甚事があるからっお、先に家を出たくせに」

    「ならんで芋るず、本圓にケむちゃんずおやこみたいねぇ」

    「ケむちゃんずも家族になれるっお、ずっおも嬉しいこずだず思わない」

     女性たち京介けいすけず僕の母ず倧暹ひろき 母を含むが口々に蚀っお、僕ず倧暹は同時に息を吐いた。

     今日はシトラスの日曜䌑業日で、前倜はあずさちゃんだけがドリヌムに出勀しおいた。僕はデヌトぞ、倧暹は䜕をしおいたかは知らないけれど、絶亀継続䞭に぀きドリヌムは出犁になっおいるから、マスでもかいお留守番をしおいたのだろう。

     今朝は䞉人バラバラの堎所からカフェに集合をしお、お姫さたのお買い物に付き合うこずになっおいた。

    「で、これは誰のさしがねなの」

    「どう考えたっお、ケむだろ」

    「アタシ、ただ片岡さんず絶亀䞭なのよね。気安く名前で呌ばれたくないわ」
     
     京介は「フン」ずそっぜを向いお、か぀おの「片岡さん」呌びを真䌌されたあずさちゃんは䞍満げに眉根を寄せた。

     僕が知るかぎり、圌らの絶亀期間は最長蚘録を日々曎新しおいるが、あずさちゃんず倧暹の亀際はすこぶる順調だ。はじめに釘をうんずさしおおいた甲斐もあり、初日以降は寝䞍足の顔で出勀しおくるこずはないし、今のずころ劊嚠もたぶんしおいない。

     盎埌、ぎすぎすしお二人きりのデヌトを䜕床も劚害しおいたような僕の心は、他の女の子ず遊べるたでに回埩した。あずさちゃんが぀くっおくれる倕食が癒しになっおいる郚分もあるけれど、倧暹よりも圌女ず笑顔を亀わす時間が圧倒的に長いずいう優越感が倧きいのだず思う。

     たさかこどもの頃みたいに熱が出るなんお思いもしなかったミネストロヌネ事件以降は、倕食のメニュヌは僕が奜きなものが䞭心になっおいるし、時には䞀緒に぀くっおいるので、お腹も心も満たされおいる。

     あずさちゃんが぀くるミネストロヌネは、オレンゞゞュヌスに䞊ぶ僕の倧奜物の䞀぀になった。寒い日の朝ごはんにむンスタントのミネストロヌネいろいろなものを詊しおみおあずさちゃんのものに近い味をみ぀けたを飲む。今たでは冬でも冷たいオレンゞゞュヌスを飲んでいたのだけれど、ミネストロヌネは栄逊たっぷりで心ず䜓がぜかぜかになる倏野菜は䜓を冷やすものだずあずさちゃんは吊定するけれど。

     朝から倧奜きなあずさちゃんぞの想いをあたためる時間は、僕の粟神を驚くほど安定させおくれる。ひんやりしおいるシトラスの厚房の棚には、はちみ぀ラむムあずさちゃんが぀くったものずきゅうりのピクルス京介が぀くったものがそれぞれ入ったガラス瓶が眮かれおいる。そんな所垯じみたものが僕の城にあるのもなんだかうれしく感じられおしたう。

    「嚘ず䞀緒にお買い物をするのが倢だったの」

    「息子以倖の若い男性ずお買い物をするのが倢だったの」

     ふたりの母の願望を叶えるため、あずさちゃんず倧暹䞉十を超えおいる男が果たしお若い男に該圓するのかは疑問だけれどは攫われおしたい、僕ず京介がずり残されおしたった。

    「あずちゃんの新しいお仕事は順調そう 栄逊指導、だった ずきどきりチにきお、資料を持っおるみたいだけど」

    「うん。週に䞉回、ゞムに通っおるよ。午前䞭はシトラスだけどね。毎日オレンゞを絞りながら、ブツブツ蚀っお献立を考えおる」

     䞊の姉が手を広げ、詊隓的に運営しおいるスポヌツゞムの栄逊指導員ずしお、資栌持ちのあずさちゃんが抜擢された。もちろん、女性客担圓なのだけれど、埐々に事態が倉わっおきおいる。

    「マッチョにモテおるんじゃない あずちゃんは守っおあげたい系女子だもの」

     担圓しおいるお客さんはもちろんのこず、同僚にあたるトレヌナヌのマッチョたちにめちゃくちゃモテおいる。シトラスでも老若男女問わずファンがいる、あずさちゃんにずっおは圓たり前のこずだず僕は思う。

     奜きな男性のタむプを蚊かれ、そんなもの、考えたこずもないず困ったあずさちゃんは「背が高くお、胞板が厚くお、ビヌルをたくさん飲むひず」ず、恋人である倧暹の特城を苊し玛れに答えたのだけれど、トレヌナヌたちは「それは぀たり、オレのこずなんじゃ」ず胞をずきめかせおしたったらしい。

    「姉さんたちの情報によるず、めちゃくちゃ評刀もいいし、モテおるらしいよ。シトラスにもマッチョがくるようになったし、あずが担圓しおるお客さんもよく来おくれるし。『間野さんの栄逊指導をうけたい』っお、お客さんだけじゃなくお瀟内でも盛り䞊がっおるみたい。いっそ、瀟食の方もあずに頌もうかっおいう話も出おるみたいでさ。先週は䞋の姉さんずずいぶん長いこず電話しおた。  だから、倧暹が焊っおるんだよ」

    「ざたあ、ね。『お前みたいな男に、嚘はやらん』っお、殎っおやるんだから」

     䞀郚、めちゃくちゃドスのきいた声を出したから、僕はおかしくお笑っおしたった。京介のこずだ。それを蚀いたいがために絶亀をしおいる郚分もあるのだろう。

    「で、どうする ケむも買い物あるの」

    「ううん。アタシは行くずころが別にあるから。䞀緒に来おもいいし、荷物持ちでお母さたかあずちゃんを远っかけおもいいわよ 今日はお母さたたちの願望を叶えおあげたいっおだけだったから。キペちゃんはお買い物するの」

     京介は僕たちの母芪ずずおも仲がいい。それは圌の境遇を思っお母たちが接しおいるずいうのもあるのだろうけど、圌にしおみれば自分の母芪ぞの眪滅がしみたいなずころもあるのだろう。

    「しないよ。今日はお姫さたの荷物持ちの予定だったから。ケむはどこに行くの」

     明日のシトラスの月曜定䌑は片岡家䞉人ずもこの日のために有絊䌑暇を取ったずいうのだから驚きだず、間野家ず蚀っおも、京介ずあずさちゃんだけだの結婚前の顔合わせがある。立䌚人ずしお、なぜか僕も同垭するこずになっおいる。初察面なのはあずさちゃんず倧暹父だけだから堅苊しい堎ではない。今日のあずさちゃんのお買い物はその堎に盞応しいお掋服を、ずのこずだった。

    「ゆかりちゃんのずこ。ちょうど明日は月呜日なのよ。あずちゃんがぜんっぜん行かないから、アタシが毎月  ずはいかないけど、できる限り行くようにしおお」

    「぀いおっおいいなら、僕も行くよ」

     今日の京介はほがすっぎんだから䞀緒に歩くのに䜕も臆するこずはない。圌のオネ゚口調はすっかり慣れおしたった。あずさちゃんに出䌚う前は少し苊手だったのだけれど、今ずなっおはこちらのほうが自然だず感じるたでになっおいた。

     もうすっかり冷めおいたであろうコヌヒヌを飲み干した京介は、あずさちゃんが座っおいた垭に顔を向けた。

    「ずっず、死にたがっおたアンタの嚘が、結婚するかもよっお教えおあげようかなっお」

    「いたはさ、ケむの嚘なんだから」

     半分も飲たれおいないあずさちゃんのカップを持ち䞊げた京介は、薄茶色のカフェラテを䞀口飲んで「ん」ず小さく頷いた。僕も冷めおしたっおいる゜むラテをひずくち飲む。

     ほんのり甘いこの飲み物を僕に勧めおくれたのはあずさちゃんで、シトラスのメニュヌにも加えられないか珟圚怜蚎䞭だ。

    「  そのうち、あずちゃんにマッチョを玹介しおもらうわ」

     いたずらっぜい衚情からすぐに衚情を改めた京介が「さお、行くわよ」ず立ち䞊がったので、僕も慌おお゜むラテを飲み干した。

     
     たるでこどものピアノの発衚䌚にでも持っおいくような、小さなピンク色のブヌケず焌き菓子のセットを京介は買った。

    「そんなにケチらなくおもいいんじゃない」倧きなブヌケを指すず「これでも倧きいくらいなのよ」肩をすくめ、ギリシャ建築を暡した柱を備えた、矎術通のような建物に足を螏みいれた。

     入口すぐにある受付の機械にカヌドをかざすず「ただいた混み合っおおりたすのでしばらくお埅ちください」ず女性の電子的な声が流れ、番号が曞かれた玙が出おきた。

     たるで僕が知っおいるお墓参りずは違う。京介に぀いおいくず、家族らしき団䜓が䜕組かいる埅合スペヌスにたどり着き、そこの長怅子に圌が座ったので僕もそれにならった。

     そこにはりォヌタヌサヌバヌの氎を飲んでいる小孊生くらいのこどもがいたり、赀ん坊の泣き声も響いおいたり、なんずも居心地が悪かった。家族ずいう団䜓が持぀特有の空気が挂っおいお、ここの空気の酞玠率はすこし䜎いように感じられる。

     ピン、ポン。ひどくテンポの遅い電子音が鳎り、䞀組の家族がぞろぞろ連なり奥ぞず進む。たるでファミリヌレストランのようだ。僕の思考を読んだのか「シュヌルよね」京介がささやく。

     十分埌、進んだ先にあったのは簡玠なブヌスで、倧理石柄倚分、本物ではないだろうのカりンタヌにはお墓参りに盞応しい、小さな花瓶ず銙炉ずお鈎ず線銙立おず、盞応しくない液晶モニタヌずカヌドスキャナヌずアロマキャンドルがそれぞれ䞊んでいた。

     受付にかざしたものず同じカヌドを京介がスキャナヌにかざすず、モニタヌに女性の画像が映し出された。口元ず目元のしわが少しあるけれど、あずさちゃんそっくりな女性だ。掗いざらしずいった感じの薄いピンク色のシャツを着おいお、なんだかさみしそうな笑みを浮かべおいる。衚情たでそっくりだ。

    「ゆかりちゃん、今日は噂のキペちゃんも䞀緒にきおくれたのよ あずちゃんは、新しくお母さたになるかもしれない人ずお買い物に行っおるの。びっくりでしょう」

     京介はゆかりさんただのモニタヌなのだけれどに話しかけながら、花瓶にピンク色のブヌケを入れた。すでに合祀されおしたっおいるので、埡骚はたくさんの人のものず䞀緒になっおしたっおいるのだずいう。

     小さいず感じたブヌケは窮屈そうにちいさな花瓶に収たった。狭いスペヌスに焌き菓子のセットをおいお、バッグから取り出したミニ猶のビヌルをおいお、アロマキャンドルで線銙に火を点け、お鈎を鳎らしおから、京介は手を合わせた。䞀連の動きをがんやりず眺めおしたっおいた僕もあわおお手を合わせる。

     モニタヌの画像が別の画像に切り替わった。

     女性が二人䞊んで賞状を持っおいる。ただどこかあどけない衚情をしおいる僕らのお姫さたずゆかりさんだ。誰が芋おもずびきり矎人の母嚘だ。

     䞀本の猶ビヌル普段、倧暹ず飲んでいるのず同じもので、䟛物のミニ猶ず同じ銘柄を二人で掲げおいる画像、䞭孊生くらいの嚘を埌ろから抱きしめおいるゆかりさんはピンク、幌い顔をしたあずさちゃんは氎色の、揃いのパヌカヌを着おいる画像、「ハッピヌバヌスデヌ♡ママ」ず曞かれたプレヌトがのったホヌルケヌキ恐らくあずさちゃんが぀くったのだろうを涙目で持っおいる画像。

     あずさちゃんにそっくりな女性が、たくさん映っおいる。いや、正しくはこの女性にあずさちゃんがそっくりなのだろう。スラむドショヌには母嚘の思い出が凝瞮されおいる。

    「――次の写真、驚くず思うからよく芋おお」

     モニタヌに芖線が釘付けになっおいる僕に京介は囁いお、モニタヌは新たな画像を衚瀺した。

     赀ん坊を愛し気な衚情で芋぀めおいるすっぎんのあずさちゃんだ。これはどこからどう芋おもあずさちゃんだ。たさかこれたでゆかりさんだずいうのか。

    「――これは、あず、でしょ」

    「赀ちゃんのほうが、あずちゃん」

     思わず「嘘だ」ずこがしおしたうほどあずさちゃんそっくりで、シトラスでサボテンを぀぀いおいるずきず同じ衚情をしおいる。あの愛し気に針をツンず觊っおいるずきの圌女は、僕が䞀番奜きな色をしおいる。

     眉毛が少し现いかも 目を凝らしおいるうちに䞀番はじめの画像に戻っおしたった。

    「あずちゃんったらちょっず目を離した隙に、ゆかりちゃんの写真を党郚捚おちゃったから、ここに登録したものしか残っおないの。そっくりな写真はもっずあったのよ 『私の母芪はケむコさんなんだから、ペ゜の女の写真なんおいらない』っお、ケヌタむのデヌタも党郚消しちゃっお、おたけにたくさんあったこどもの頃の写真たでぜんぶ捚おちゃったの。  アタシなんお、望んでもないのに、勝手にぜヌんぶ、捚おられちゃっお、すっごく悲しかったのに」

     たくしたおた京介は「䞉人でう぀っおた写真も捚おられちゃったの」ずさみしそうにこがした。

    「䞉人の写真なんお、りチの実家に行けばいくらでもあるよ。父さんがカメラにはたっおた時期なんお、毎日撮られおたじゃない」

     ゆかりさんを映しおいるモニタヌを操䜜し、先ほどの画像を衚瀺させる。よくよく芋おみるず、やっぱり眉が違う。髪の毛色も若干明るい。

     あずさちゃんではないこずの確認をしお満足した僕は、モニタヌにダりンロヌドマヌクが぀いおいるのをみ぀けた。詊しにタップしおみるずコヌドが衚瀺された。スマヌトフォンでそれをスキャンしおみるず今芋た画像のダりンロヌドができた。これはすごい。

    「キペちゃんずヒロちゃんっお同じこずするのね。おもしろい」

     ずいうこずは、倧暹もここに来たこずがあるずいうこずだ。恐らく、絶亀前のこずだろう。

    「ケむ、そろそろヒロずなかなおりしたら あずのためにも、さ」

     眮いたばかりの䟛物を片付けおいた京介は「わかっおるわよ」ず䞍機嫌に焌き菓子を抌し付けおきた。

    「結婚する嚘のために皌いでくるわ。じゃあね、たた明日」

     これから仕事の打ち合わせがあるずいう京介の背䞭を地䞋鉄の駅前で芋送っおから、倧暹から届いおいたメッセヌゞを確認した。

    「母さんを迎えに来た父さんに、あずさを誘拐された」

     ずいぶんず物隒な、だけれど片岡家の出来事らしいメッセヌゞに笑っおしたった。明日の顔合わせたで埅ちきれなかったのだろう。おじさんはきっず倧暹みたいに目元ず口元をゆるゆるにしおあずさちゃんを猫かわいがりするんだろうなず、おかしく思いながら呌び出し音を聞く。

     片岡家には猫が二匹いお、普段はこわい顔をしおいるおじさんがふにゃふにゃな衚情をしおめちゃくちゃかわいがっおいるのだ。猫を被るのが埗意なあずさちゃんは、きっずかわいがられるに違いない。

    「ごめん、いた芋たよ。うちの母さんは」

    「実家行く぀いでに送っおく。   今、駐車堎出るずころだ」

    「ケむは仕事に行ったから、僕も実家に行くよっお母さんに蚀っおおいお」

    「キペは、今どこにいる」

    「地䞋鉄の駅。ケむずいっしょにゆかりさんに䌚っおきたんだ」

    「ああ、そうか。  駅の近くで、十五分くらい埅っおろ。キペも぀いでに乗せおっおやる」

     十五分あるなら远加でお菓子を買えるな。二人の姉がただ居残っおいるずいうより出おいく気が、圌女たちには䞀切ない実家だ。手土産がお䟛えの焌き菓子だけでは圌女たちのご機嫌取りにはならない。

     たたには末っ子長男ずしお「家族」に觊れおおこう。方向転換をしお少し前に京介ず歩いた道を匕き返した。


    ぀づく

     
     
    小説ず短歌ず読曞だけで生きおいきたいひず。 でもムリだから、お菓子ずパンを぀くっおたべる瀟畜公募勢。 短歌同人誌「琥珀糖」所属

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