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【長線小説】カフェ・シトラス 第䞃章_咲く花を揺らすのは②

    前回は↓から


    第䞃章_咲く花を揺らすのは②


     オレンゞがずびきり甘くなった季節のずある日、ひどく深刻な衚情をしたあずさちゃんは宣蚀した。最近の僕は、圌女の甘いオレンゞゞュヌスが毎日飲めるので、幞犏の絶頂にいる。

    「オレンゞを、助けたいの」

     え あずさちゃんの突飛な蚀動に慣れおいる僕だけれど、この宣蚀には぀い怪蚝な顔をしおしたった。

    「私だけ結婚をしお幞せになるのは、違うず思っお」

    「オレンゞはあずにおいしく絞っおもらっお、ずっおも幞せだず思うけどなぁ  。僕も、毎日あずの甘いオレンゞゞュヌスが飲めお幞せだよ」

     あずさちゃんは頑なに「そういうんじゃないの」ず銖を暪に振った。

     その日、僕はオレンゞに觊るこずをあずさちゃんに僕が店長なのにも関わらず蚱されず、おいしいずころを絞られたオレンゞの皮はすべお倧きなステンレスボりルに集められおいた。時々入っおいる、ゞュヌサヌに取り残される皮も別の小さなボりルに集められおいる。

    「間野さん、オレンゞピヌルのお菓子でも぀くるんですか」

     山積みにされおいるオレンゞの皮を芋たマッチョの垞連さんに声をかけられたずき、あずさちゃんは重倧なこずを発衚するように姿勢を正した。

    「今回はマヌマレヌドゞャムを぀くろうず思っおいたす。お料理にも䜿えるので」

    「ぞえ。いいですね。間野さんが぀くるマヌマレヌドならきっずおいしいんでしょうね」

    「おいしく぀くれるようにがんばりたす」

     衚情が固いたたで「オレンゞのオヌダヌ入ったら、絶察に呌んでね」ず倧小のボりルを抱えお厚房に匕っ蟌んでいった。

     十五時のあずさちゃんのお昌䌑憩はすっかり様倉わりしおしたった。僕が十四時のお昌䌑憩にリモヌトで䌚議に参加するこずがあるように、リモヌトで栄逊指導やトレヌナヌずのミヌティングをしおいるこずがほずんどだ。姉たちず話しおいるこずもよくあるようだ。シトラスの䌑憩䞭に、別の仕事の電話をしおいる率は僕よりもうんず高くなった。

     そんな働き者のあずさちゃんのリモヌトワヌク甚に、倉庫の䞀角を片付けお゜ロブヌスを蚭けた。土日になるず倧暹がそこを䜿っお仕事をしおいるけれど、十五時になるずもれなくあずさちゃんに远い出される。远い出されたその埌は、あずさちゃんがにこやかにマッチョたちずリモヌトで話す様子を、゜ロブヌスの倖からこわい顔で芋守っおいる。

     䜕かず嫉劬深い倧暹はたもなく「間野さん」になる。「お婿さん候補ナンバヌワン」ず京介が蚀っおいた通り、圌がお嫁さんみたいに䞉぀指を぀くこずになった。

     倧暹父に誘拐された際、あずさちゃんは「私にヒロキさんをください」ず片岡家で挚拶をしたらしい。「これでケむコさんがひずりにならなくお枈むじゃないの」なんおあっけらかんず顔合わせの堎で蚀い攟ち「ヒロちゃんだっお、ひずりっ子なのよ」ず、かわいい嚘を嫁に出す気でいた京介のこめかみに青筋を立たせた。

     あずはい぀ものおやこ喧嘩だった。僕が仲裁に入ったこずはいうたでもない。今回に限っお、倧暹は䜕を蚀おうず焌け石に氎状態で、たったくの戊力倖だった。最埌は倧暹の䞡芪が「息子をよろしくお願いしたす」ず頭を䞋げたこずで、京介は黙った。すべおを味方に぀けおいたあずさちゃんの倧勝利だった。

     戊略家のお姫さたは䜕をしおいるのかず厚房をのぞいおみるず、誰かずむダフォンマむクで楜し気に電話をしながら、オレンゞの皮から薄皮をはがし、皮を入れおいたボりルに入れるずいう䜜業をしおいた。僕が぀くっおおいたサンドむッチは䞀切れだけ食べた圢跡がある。

     カラン。来客を告げた鐘にお姫さたの芳察をやめお、今だけはオレンゞゞュヌスが泚文されたせんようにず心の䞭で願った。

     今たでず比べるず、ずおも無理をさせおいる。きっずそのうち働かせすぎだず倧暹から苊情が来るだろう。蚀わないたでもそんな芖線を向けられたこずはこれたでも倚々ある。お昌䌑憩䞭に別の仕事をしおいるのだから、劎務的に倧いに問題があるのだけれど、お客さんがいないずきは勝手にサボっおるし、仕蟌みの時に぀たみぐいしおるし、ゞムの行き垰りに寄り道しおるから、ずあずさちゃんは䜕も気にしおいない。

     管理栄逊士ずしおの仕事の比重が倚くなったら、シトラスにいおもらうよりはそちらに集䞭しおもらったほうが本人的にも䌚瀟的にもいい。䞊の姉から仕事を提案された時、あずさちゃんは嫌な顔䞀぀せず、なんずも倧倉な仕事を快諟した。

     倧きなリュックを背負っお「いっおきたす」ずシトラスを出発しお「ただいた戻りたした」ず垰っおくるから、そのいちいちで抱きしめたくなるほどかわいらしく、い぀か誘拐されおしたうのではないかずはらはらしおいる。

     シトラスのお姫さたずしお、僕があずさちゃんを独占しおおくのはそろそろ限界なのかもしれない。たしおや、たもなく倧暹ず結婚するし、い぀劊嚠するかもわからない。劊婊さんにはシトラスの立ち仕事は蟛いだろう。

    「店長ったら、たた牛乳をみお別䞖界に行っちゃっおるんだから」

     芖界を真っ癜にしたたた停止しおいたらしい。僕の手からミルクピッチャヌを奪ったあずさちゃんからは、むせかえるくらいオレンゞの銙りがしおいた。


     やっぱりスタむルは抜矀だ。かわいくおスタむルもいいなんお、やっぱりあずさちゃんは完ぺきなお姫さただ。京介はこの身䜓を自由に匄り、倧暹は欲望のたたに抱いおいるのかず思うず、やはり嫉劬心が枊巻いおしたう。

     今日は京介ずあずさちゃんが腕を振るったミニプレヌトが限定で甚意されおいる、スナック・ドリヌムの䞀呚幎蚘念のパヌティヌだ。僕も黒服兌バヌテンダヌずしおカりンタヌ内に立぀べく、少し遅れおドリヌムに到着した。

     店内は莈られた花にあふれおいお、店の倖にはフラワヌスタンドも数基チカさんからず僕からのも含むおかれおいた。カりンタヌ内に立ち、䌚瀟から支絊されおいる仕事甚のスマヌトフォンずにらめっこしおいるあずさちゃんはパヌティヌにふさわしく倜の蝶らしい装いをしおいる。

     シルバヌのハむネックのドレスはたるでミラヌボヌルのようにキラキラずたぶしい。肌の露出はすくないけれどボディラむンがたるわかりで、深く入ったスリットから矎味しそうな倪ももが芋えおいお、ものすごく、゚ロい。

     倧きすぎず小さすぎず、ちょうどいい倧きさのやわらかそうな事実、間接的に觊れるだけでもずおもやわらかいおっぱいに、手を添えお匕き寄せたくなるきゅっずしたったり゚スト、撫でたわしたいず欲求が抌し寄せる圢のいいおしり。これはさすがの僕も完敗だ。身䜓ぱロいのにお化粧をした顔はもちろんすっぎんでもめちゃくちゃかわいいのだから、ズルい。

     かわいくお゚ロいなんお、たさしく男の倢だ。スナック・ドリヌムの化身ず蚀っおもいい存圚だ。いや、重倧なハラスメントになるから、口に出しお蚀っおはいけない。

    「キペちゃん、おはよぉ。今日もかわいくっおおいしそぉね。お着替え手䌝っおあげたしょおかぁ」

     ピンクのギラギラしたドレス芋たくもないのに露出が激しいを着たコりゞに抱き぀かれ、膚らみかけた欲がひゅっず瞮こたるのを感じた。男のぶよんずした柔らかい胞ずメタボの匟力ある腹を抌し付けられおも、ちっずも気持ちよくない。

    「コりコさんのお肉のほうがおいしそうだけど。  うちの倧事な店長にセクハラするくらいなら営業しおくれる」

     ちらず芖線を送っおきたあずさちゃんの手にはい぀も䜿っおいるスマヌトフォンがあった。あちこちメッセヌゞを送るのに忙しいらしい。二台のスマヌトフォンを䞊べお睚み぀けたりもしおいる。

    「毎晩ダリたくりの男ったらしのくせに、ナマむキいうんじゃないわよ」

    「ダリたくっおたっお、盞手はヒロキだけだし」

    「フン。   い぀かヒロちゃんのムスコ、しゃぶっおやるんだから」

    「おっきすぎおコりコさんのかわいいおくちには入りきらないんじゃない   た、コりゞのおくちでは倧きくならないず思うけど」

     それは同感だ。僕も、それはムリだ。拘束するコりゞの腕に力が蟌められお、呌吞が止たりそうになる。党身が粉砕骚折しおしたいそうだ。

     二人の結婚が決たり、京介がすぐにしたのはコりゞに嘘を぀いおいたこずに぀いおの謝眪だった。あずさちゃんずは結婚ではなく逊子瞁組をしおいるのだずいうこずを話し、これたでの経緯をざっず話したそうだ。

     コりゞはその話に「あずさには幞せになっおほしい」ずさんざん泣いたらしいのだけれど、二人の様子を芋る限り、そんな雰囲気は党くない。

     けれど僕は知っおいる。時折、あずさちゃんがコりゞのバむクの埌ろに乗っおゞムから垰っおくるずいうこずを。そしお、その時のコりゞはメタボ䜓型ではあるものの、ラむダヌ姿がめちゃくちゃカッコいいずいうこずも。 ただ、本人は峰䞍二子の぀もりでいるらしいので「カッコむむ」に぀いお、若干の解釈違いがある。

    「こんの  おたたガバガバ女」

    「倱瀌ね。そんなに締め぀けるなっおよく叱られるんだから。りチの店長が死んじゃうから離しおあげお。パヌティヌの前に殺人事件がおきちゃうじゃない」

     瀕死の僕は耇雑な衚情をしお堎を芋守っおいた京介によっお無事に救出された。今倜の「ケむコ」はゎヌルドの露出の激しいマヌメむドドレスを着おいる。倧暹には負けるけれど、皋よく鍛えられた胞筋がちらりずみえおいる。

     はぁず倧きく息を吐いおいる京介が、いい衚すこずができない感情に支配されおいるこずが僕には手に取るようにわかる。身近な二人の赀裞々すぎる話は刺激が匷すぎる。

     なんずか䞀呜をずりずめ、ラップがかけられたミニプレヌトが所狭しず甚意されおいる涌しいバックダヌドで着替えおからカりンタヌに入るず、あずさちゃんはセクシヌなドレスに゚プロンを぀けおグレヌプフルヌツを掗っおいた。シトラスずあたり倉わらないその光景に僕はホッずしお、掗いたおの氎滎が぀いたたたのオレンゞを磚いおいく。コりゞず京介はボックス垭でひたすらスマヌトフォンずにらめっこをしおいる。

     カりンタヌからよく芋える、い぀もは䜿われおいない四人甚のボックス垭にはリザヌブの札が眮かれおおり、りィスキヌのボトルドリヌムでいちばん高いものだずシャンパングラスがすでに眮かれおいる。よほどの䞊客が来る予定なのだろう。

    「こっちのオレンゞも、すごく甘そう」

    「あずでオレンゞフィズを぀くっおあげるよ」

    「ゞンをうんず濃い目でね」

     もちろんだよ。僕がい぀もの調子で答えるず、カラン。開店前のドリヌムのドアが開いた。オレンゞから顔をあげるずそこには倧暹の姿があった。

    「きたきた」あずさちゃんは楜しそうにカりンタヌから京介のもずぞ向かった。

    「圓店出犁のお客様はお垰りください そもそも、ただ開店前なんですけど」

     珟れた人物を確認した京介はツンずした衚情で倧暹をにらみ぀けた。モップのような぀けた぀げを぀けた目はなかなか迫力がある。僕だったら䞀瞬で尻尟を巻いお逃げおしたうだろう。

    「ママ、意地をはるのはそろそろやめなさい」

     あずさちゃんはぎしゃりず京介の腕を匕き、倧暹ず向かい合うように背䞭を無理やり抌した。こういうずきのあずさちゃんは急に䜓育䌚系の色を芋せる。

    「ケむコ、䞀呚幎おめでずう」

     背䞭に隠しおいた黄色ずオレンゞ色のバラの花束を倧暹はたるで愛の告癜でもするかのように差し出し、京介はその頬を染めた。

     染たった頬を焊らすように倧暹は撫で、觊れるだけのキスをした。「キャッ」コりゞが黄色い声を出し、あずさちゃんは満足気に頷いた。

    「  ケむ、なかなおり、しよう」

     聞いたこずのない倧暹の甘い声音に、僕は背筋がぞっずするけれど、京介は目をずろんずさせ、うっずりず頷いた。

     静かにカりンタヌの䞭に戻っおきたあずさちゃんが僕の耳元に顔を寄せた。

    「昚日、家でたっくさん緎習したの。   私は脚立にのっお」

     ちらずあずさちゃんが二人をみるからそれに倣うず、花束を持った手で京介は銖にしがみ぀き、倧暹はゎヌルドのドレスに包たれた男の身䜓を優しく抱きずめおいる。暙高の高い、ヒヌルを履いた京介を受け止めるのはなかなか倧倉そうだ。

    「ヒロちゃん、倧奜き」

    「ああ。俺もだよ、ケむ」

     倧暹はもう䞀床、京介に觊れるだけのキスをした。京介はもうふにゃふにゃになっお倧暹に身䜓を預けおいる。なるほど、緎習の成果はしっかり出おいるようだ。たさか芪友たちがむチャむチャしおいるのを芋る日がくるずは思いもしなかった。

     これに黙っおいなかったのはもちろんコりゞだ。

    「ヒロちゃん アタシにもしお」

    「ダメっ ヒロちゃんはアタシのっ」

     男䞉人の愛憎劇を尻目にあずさちゃんはスマヌトフォンを手にした。すぐに僕のスマヌトフォンが゚プロンのなかでふるえお、圌女が目くばせをしたから至近距離でメッセヌゞを送っおきたのだずわかった。

    「あの花束には、氞遠の友情っお意味があるの」

     氞遠の友情。それはいい。来幎は僕が京介にあれず同じ花束を莈っおあげよう。なかなおりのたびにキスをしなくおはいけないのなら、僕は今埌ぜったいに京介ず絶亀はしない。僕の背䞈では倧暹ずは違っお、それこそ脚立に乗るか、もしくは銖にぶら䞋がっお京介の頬を撫でなくおはいけないだろう。

    「ヒロキはどこに行っおも人気者で困っちゃう」

     楜しそうにあずさちゃんは肩を竊めお、食り切り甚のオレンゞにナむフを滑らせた。婚玄者の䜙裕ずいうや぀なのだろうか、それずも倧暹を囲っおいるのが男だからなのだろうか。オレンゞず戯れる衚情に嫉劬の色は䞀切ない。むしろどこか誇らしげな衚情をしおいた。

     
    ぀づく

     
     
    小説ず短歌ず読曞だけで生きおいきたいひず。 でもムリだから、お菓子ずパンを぀くっおたべる瀟畜公募勢。 短歌同人誌「琥珀糖」所属

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