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『共生者——戊略資産ずしおの人狌—— 』③

第二話たでのあらすじ

 千葉の雑朚林で芋぀かった、玠手で頭蓋骚を割られた無残な倉死䜓。新米刑事の䞉䞊陞が䞍可解な隠蔜の気配を远う䞀方、初倏の野球堎には䞊倖れた身䜓胜力を持ちながら、䜕事にも執着しない平熱の䞭孊生・真壁朔がいた。亀わるはずのなかった二぀の運呜が、少しず぀匕き寄せられおいく。

『共生者』

第䞀話はこちら


第䞉話 真壁朔②

 カヌテンの隙間から、倕方の橙色の光がフロヌリングに现長く䌞びおいた。

 詊合終わりの気だるい空気ず、瀬戞明莉せず あかりの制服から埮かに銙るシャンプヌの匂いが、六畳間の空気をじっずりず満たしおいる。

 明莉は朔ず同じクラスの溌剌ずした女子だ。朔が告癜されたのは四月のこずだった。五月の修孊旅行では、クラスの男子の半数が明莉のこずを奜きだず蚀っおいた。

 だから、朔は明莉ず付き合っおいるこずは誰にも蚀わなかったし、明莉も球堎に応揎に来るこずはしなかった。掟手に噂されるこずを嫌っお、こうしお詊合埌に二人で䌚うこずにしたのだ。

 互いの唇が觊れ合い、離れる。明莉の癜い頬が、倕日よりも赀く染たっおいた。

「ダメだよ、朔。ただ早いよ  」

 抌し戻すように胞元に圓おられた、明莉の小さな手。

 普段の朔なら「そうか、無理匷いはいけないな」ず、あっさり身を匕いおいただろう。䜕事にも執着しないのが、朔のい぀もの生き方だった。

 しかし――その瞬間、胞の奥の、肋骚のさらに深いずころが、突然焌けるように疌いた。

「かはっ」

 呌吞が荒くなる。明莉の最んだ瞳、薄い唇、现い銖筋に走る青い血管。そのすべおが、異様な解像床で芖界に飛び蟌んでくる。

 明莉のすべおが矎しかった。

  食べおしたいたい

 指先から急速に枩床が匕いおいく。

「あれっ」

食べたい たさか、僕はそう感じたのか

 小孊生の頃にはただの同玚生だった女子が、䞭孊に入っお急に「異性」に芋え始める。そういうものなのか。この、内臓を玠手で掎たれるような激しい飢枇感が、䞖間で蚀う「性欲」ずいうや぀なのか。

 朔は無意識のうちに、明莉の胞の膚らみに指先を䌞ばし、぀んず突いた。

「いやっ  」

 短く息を呑んだ明莉の身䜓が、埮かに匷匵る。胞元を抌し戻そうずしおいた小さな手は宙で圷埚い、拒絶するでも受け入れるでもなく、行き堎を倱っお震えおいた。䜕が起きおいるのか分からないずいった衚情で、最んだ瞳が朔の顔を芋぀めおいた。

 朔の喉が、生唟を飲み蟌んで倧きく鳎った。噛み぀きたい。喉笛を裂いお、その奥にある熱いものを飲み干しおしたいたい――。

コンコンコンコン。

 芏則正しい、也いたノックの音が郚屋に響いた。

「えっ、父さん   なんで、今日は泊たりの孊䌚じゃ  っ、明莉、早くクロヌれットに――」

 朔が立ち䞊がるよりも早く、ドアノブが静かに回った。

 開いた扉の前に立っおいたのは、仕立おの良いスヌツを着た父、真壁修吟たかべ しゅうごだった。手にはアタッシュケヌスを提げ、県鏡の奥の瞳は凍り぀くように凪いでいる。

「危なかったな。朔、お前はいた、圌女ずセックスをしようずしおいただろう」

「は  っ」

「今、お前はセックスをしようずしおいた。そうだろう。だが、こんな堎所でそれは非垞にたずい」

 修吟は「今日も孊校で友達ず仲良くできたか」ず小孊生の子䟛に尋ねる父芪ず党く同じ枩床感でそう蚀った。

 そしお、すっず郚屋に螏み蟌み、ベッドの䞊で呆然ずしおいる明莉の前に屈み蟌んだ。

「――なぁ、圌女さん」

 明莉の瞳を真っ向から芗き蟌む。

 修吟の黒目が、䞀瞬だけ金色に濁った。

「今日はもう倕方だ。君は朔の家に寄らず、䞀人でたっすぐ家に垰った。今すぐ鞄を持っお垰りなさい」

「父さん、䜕を  」

 明莉の瞳からふっず焊点が倖れ、芋えない糞で吊り䞊げられたかのように、すっず立ち䞊がった。

 朔の蚀葉は圌女の耳を玠通りしお䜕も届いおいないようだった。

「  うん、垰らなきゃ」

 感情の消えた声で呟き、明莉は朔の暪をすり抜けお、足音もなく郚屋を出おいく。玄関のドアが閉たる重い音が響いた。

「ふぅ、間䞀髪だったな」

 修吟が独り蚀のように぀ぶやいた。

 静たり返った郚屋で、朔は呆気にずられたたた父を睚み぀けた。

「  父さん。息子の郚屋に勝手に入っおきお『お前いたセックスをしようずしおいただろう』なんお邪魔しおくる父芪、芋たこずも聞いたこずもないよ。たぶん人類史䞊で最も最䜎な郚類に入る父芪だ」

「ああ、すたないず思っおいる」

 修吟はさしお悪びれる様子もなくそう答えた。そしおアタッシュケヌスを床に眮き、䜕事もなかったかのようにネクタむを緩めた。

 その無機質な顔に、ふっず酷薄で、どこか枩かい笑みが浮かぶ。

「だが、止めなければここが血の海になるずころだった。思春期の未熟な脳は、性欲ず捕食衝動を混同しやすいからな。  だが、今日がその日だったか。おめでずう、朔。父さんは嬉しいよ」

「今日 その日」

「ああ」

 修吟の顔には満足げな、それでいお䜕か倧切なものを倱っおしたったずきのような寂しげな衚情が浮かんでいた。

(あの日の俺には、止めおくれる誰かがいなかった)

 その呟きは、朔の耳には届かなかった。


次回予告第四話「真壁朔③」

 曞斎の奥、開かれた隠し扉。䞋りた先に広がっおいたのは、病院の凊眮宀のような冷たい地䞋宀だった。

 「肉じゃない。人間の脳だ」

 父から淡々ず告げられる怪物の真実。

 少幎はもう、ただの人間には戻れない。

【第四話はこちら】


【こちらのマガゞンに党話掲茉予定】

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