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『共生者——戊略資産ずしおの人狌——』①

あらすじ

 千葉の雑朚林で芋぀かった、頭蓋骚を玠手で割られた遺䜓。刑事課に配属されたばかりの䞉䞊陞は、譊察䞊局郚による䞍自然な事件の揉み消しに違和感を芚える。
 䞀方、䞭孊生の真壁朔は、父から衝撃の事実を告げられる——自分たちは「人狌」であり、数幎に䞀床、人間の脳を喰らわねば理性を倱う捕食者だず。

「駆陀するより、飌ったほうが埗だ」

 囜家が怪物を戊略資産ずしお秘匿し、匱者を生莄ずしお差し出す共生瀟䌚。朔は同族の「始末屋」ずしお初任務ぞ向かい、その裏で䞉䞊の運呜ず冷酷に亀差しおいく。
 捕食する者ず、飌い慣らす者、そしお間匕かれる者。
 二぀の芖点が亀わるずき、䞖界の前提が静かに厩れ萜ちる。

『共生者』

※本䜜は䞀郚に暎力・流血・グロテスクな衚珟が含たれたす。苊手な方はご泚意ください。


プロロヌグ

䞉䞊陞の捜査メモ日付20××幎6月22日
『垰っおこない。なぜだ。俺が粟神病患者だっお狂っおるのは俺じゃねえ。アむツらの方だ――』

 ――ペヌゞはそこで乱暎に砎り取られおいる。

   。

   。


第䞀話 䞉䞊陞①

 この地球には人間がいる。

 初倏のぬるい颚が、生い茂る雑朚林の青臭さず、錻を突く濃厚な鉄錆の匂いを運んでくる。

 芏制線の黄色いテヌプをくぐり、ぬかるんだ土を螏みしめながら、亀番勀務から刑事課ぞ配属されたばかりの䞉䞊陞みかみ りくは口元を手で芆った。

 ブルヌシヌトの隙間から芗くものを盎芖した瞬間、胃の䞭にダむレクトにレモン汁を搟り萜ずされたかのように、胃の奥がきゅっず瞮み䞊がる。

「䜕すか、これ」

「これが䜕かっお 仏さんだよ。お前、違う䜕かに芋えるか」

 ベテラン刑事の倉橋巌くらはし いわおは、衚情ひず぀倉えずにそう答えた。

「いえ、倉橋さん  仏さんっお。刑事っお本圓にドラマみたいな蚀い方するんすね」

 倉橋はその問いには答えなかった。答える䟡倀すら芋出しおいないようだった。

 その代わりに、しゃがみ蟌んで遺䜓を芳察しながら倪い眉をわずかに動かした。癜髪亀じりの短髪に、深く刻たれた眉間の皺。四十代埌半の無骚な暪顔には、凄惚な珟堎に慣れすぎた男特有の、どこか退屈そうにも芋える冷めた静けさがある。

「うわっ  ひどいやこりゃ。頭が割られお、䞭身がごっそりなくなっおるじゃないですか。熊にでもやられたんすかね」

「千葉県に熊はいねえよ」

 倉橋は即座に吐き捚おた。

 スヌツのポケットに手を入れる。か぀おタバコをねじ蟌んでいた堎所だが、嚘が生たれお犁煙しおからもう十幎以䞊、䞭に入っおいるのは気䌑めのハッカ风だけだ。銀玙を匄びながら、遺䜓の頭郚を顎で指す。

「それに、熊は生きたたた腹を裂いお内臓から食う。こい぀は熊よりもずっずタチが悪い」

 猟奇的殺人事件。

 そう呌ぶにはあたりにも凄惚な珟堎だった。

 しかし、情報過倚の珟代をリアルなホラヌ映画やネットの悪趣味な動画を芳お育った䞉䞊にずっおは、奇劙なほど「想像の範疇」に収たっおもいた。

 そのため、ドラマの新人刑事にありがちな「ちょっずすいたせん」ず蚀っお朚陰で吐いお先茩に「珟堎を荒らすな」ず怒られるようなヘマはしなかった。

 むしろ、䞉䞊は初めお扱う倧事件の匂いを嗅ぎ取り、パチスロで確定ランプが点灯したずきのような、堎違いな高揚感を芚えおいた。

「それじゃあ、宇宙人でも珟れたんですかね。それずも怪獣ですか ゎゞラ的な」

「あながち間違えおもいねえかもな」

 䞉䞊は拍子抜けした。倉橋が倧真面目な顔で冗談に乗っおきたこずを意倖に感じたのだ。

「倉橋さん、やめおくださいよ。眉間にしわを寄せおオカルトなんお䌌合わないっすよ」

「オカルトなんおのはな、真面目に語らねえず面癜くねえんだよ」

 倉橋はフッず自嘲気味に息を挏らし、手袋越しに遺䜓の硬盎し始めた銖筋を芋぀めた。

「だがなぁ、䞉䞊。オリンピックの重量挙げ遞手がバヌルを持っおきおも、こんな割れ方はしねえ。道具で叩き割ったんじゃねえぞ。䞡手で頭蓋骚を鷲掎みにしお、果物の皮みたいに無理やりこじ開けおやがる。こんな芞圓ができるのは、巚人か宇宙人くらいのもんだ」

「  玠手で、頭蓋骚を」

「ああ、そんな颚に芋えるな」

 そう蚀っお、倉橋は立ち䞊がり、膝に぀いた泥を無造䜜に払った。

 そしお柄みゆく空を芋䞊げた。

「芋おみろ、この広い空を」

 ぀られお䞉䞊も顔を䞊げた。初倏の倕暮れ。ただ星は䞀぀も芋圓たらない。だが、空はどこたでも氞遠に続いおいた。

「ほら、こんなに広いんだ。地球の人間以倖に知的生呜䜓がいたっお、おかしかねえだろ」

「  それもそうっすね。......おか、倉橋さん、意倖ずロマンチストなんすね」

 倉橋は倧きく息を吐き、銀玙を剥いおハッカ风を口に攟り蟌んだ。

「たあな。嚘の圱響でプリキュアも毎週録画しおるぜ。  なんおな。冗談はここたでだ」

 鑑識の人間が機材を片付け、頭を䞋げお䞋がっおいく。

「鑑識が退くぞ。捜査開始ずいくか」

「はい、埅っおたした」

「そうだ䞉䞊。ひず぀だけ芚えずけ。この事件は、じきに捜査打ち切りになる。あんたりのめり蟌みすぎるなよ」

 歩き出そうずした䞉䞊が、匟かれたように足を止めお振り返った。

「ハハハ、倉橋さん、今床は預蚀者ですか たすたすオカルトっすね」

「違げえよ。刑事の勘  いや、経隓則だ。䞉十幎前も  いや、やめたやめた。捜査だ捜査」

「䜕すかそれ、めちゃくちゃ気になるじゃないっすか」

 䞉䞊は倉橋の顔を芋た。そこにはさっきたでの冗談めかした笑顔はかけらも残っおいなかった。

「䞖の䞭にはな、若造は知らねえ方がいいこずっおのがあるんだよ」

 倉橋はそれ以䞊振り返らず、ぬかるんだ獣道を倧股で䞋りおいく。その広い背䞭に、䞉䞊は軜口を重ねるこずができなかった。

 普段の皮肉混じりの声ずは違う、どこか底知れない冷たさが、ベテランの暪顔に匵り付いおいたからだ。



次回予告第二話「真壁朔①」

 䞀転しお次の舞台は、蝉の声が響く初倏の野球堎。倪陜が照り぀けるグラりンドには、䞀床も本気を出したこずのない少幎が立っおいた。

 捕食する者ず、間匕かれる者。

 二぀の䞖界の歯車が、ここから静かに噛み合い始める。

【第二話はこちら】


【こちらのマガゞンに党話掲茉予定】

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