
触れてほしいって、いつから言えなくなったんだろう|第3話
あのとき感じた違和感は、
結局、見ないふりをしたまま、
私は彼と結婚した。
一緒にいると楽で、
この人しかいないと思えたから。
そうして、子どもが生まれて。
気づけば私は、
夜中に何度も起きる生活の中にいた。
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生まれてすぐの頃は、
2〜3時間おきに泣いていた。
やっと寝たと思ったら、また起きる。
時計を見るたびに、少しだけため息が出る。
それでも、
腕の中で小さく動く体を見ていると、
不思議と嫌じゃなかった。
むしろ、
夜中にふたりきりで過ごす時間が、
少しだけ特別に思えた。
暗い部屋の中で、
小さな命と向き合う時間。
日中の慌ただしさとは違う、
静かな時間だった。
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ただ、問題はもうひとつあった。
上の子が、起きるかもしれないこと。
泣き声で目を覚ましてしまわないか、
毎回、少しだけ緊張していた。
最初の頃は、
リビングに移動して授乳したりもした。
でも結局、
気配で起きてきたり、呼ばれたりする。
あの頃の夜は、
静かなようでいて、ずっと気を張っていた。
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夫は、最初は起きようとしてくれていた。
「何かあったら言って」
そう言ってくれたこともあった。
でも、
上の子の夜泣き対応を一度任せたとき、
すべてが終わった気がした。
ミルクをあげてくれていたのは覚えてる。
でも、そのあと。
眠気にやられて、
まるで燃え尽きたみたいに座り込んでいた。
あの、明日のジョーみたいな姿。
正直、ちょっと笑った。
同時に、
「あ、これは無理だな」と思った。
その日を境に、
夫は夜勤メンバーから外れた。
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下の子が生まれてからは、
さらに分かりやすかった。
「俺は夜勤はできないから」
そう言って、
夫は別の部屋で寝るようになった。
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私は、ひとりで夜を回していた。
2〜3時間おきに起きて、
授乳して、寝かしつけて。
半年くらい経つと、
少しだけ間隔は空いた。
4〜6時間くらい。
それでも、
“ぐっすり眠る”とはほど遠い。
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でも、不思議と。
つらい、とは思っていなかった。
寝不足ではあったけど、
日中に少し寝ればなんとかなる。
それよりも、
夜中に赤ちゃんと触れ合える時間が、
私は嫌いじゃなかった。
むしろ、好きだった。
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ただ、
ひとつだけ思うことがあった。
もしこの人が、
この時間を一緒に楽しんでくれるタイプだったら。
少し違ったのかもしれない、って。
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夫を責めたいわけじゃなかった。
仕事をしてるし、
疲れているのも分かっていた。
「まぁ、仕方ないよね」
そうやって、
またひとつ、自分を納得させた。
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あの頃の私は、
ひとりで夜を乗り越えることに、
慣れていった。
それが当たり前になって、
それでいいと思っていた。
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でもきっと。
あの夜の積み重ねが、
少しずつ、
私の中の何かを変えていったんだと思う。
(つづく)
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