メインコンテンツへスキップ
見出し画像

銀河フェニックス物語<出会い編>  第一話 永世中立星の叛乱 (26)

    ・第一話のまとめ読み①(1)~(10)   ②(11)~(20)
    ・ 永世中立星の叛乱 (21) (22) (23)  (24)   (25) 

     窓のない部屋。

     男が食い入るようにテレビを見つめていた。
     中心部で起きたデモ隊と警備隊の衝突の様子を生中継で放送している。

     大通りでは催涙弾と火炎瓶が飛びかい、商店の焼き打ちが始まっていた。
     店の割れた窓から侵入し略奪する者まで現れた。 

     一律税への不満が暴力という形で一気に噴出している。学生デモは今や一般の民衆を巻き込んだ暴動に発展していた。

     我が祖国でこんな事態が起きるとは。
     俺は拳を握りしめた。

    「表は随分と大変なようですね」
     長髪の若い男が俺に話しかけた。

    n30アーサースーツ口微笑

     銀河連邦軍のアーサー・トライムス少佐。
     ただの将校じゃない。天才軍師。そして、連邦軍の次期元帥。

    「この後は王室の円卓会議が開かれるでしょう」
     彼の読み通りに事態が動いていた。

    *

     連邦軍の特命諜報部を率いるトライムス少佐の動きを俺は探っていた。

     だが、尾行中に捕らえられた。
     手荒な真似はされなかった。拘束具も付けないとは、天才軍師は随分甘い。

    「あなたはどちらの所属ですか?」
     尋問に俺は一言も話さなかった。

     これまで俺は何度も修羅場をくぐり抜けてきた。
     目隠しされて連邦軍のアジトまで連れてこられたが、俺にはわかる。ここは三十二ノ丸だ。仲間に何とか連絡しなくては。

     その時だった。ニュースが学生と警備隊の武力衝突を伝えたのは。
     俺は映像から目が離せなくなった。

     テレビを見つめる俺の前にトライムス少佐が座った。
    「私は交渉がしたいのです」
     静かなその声を聞いた瞬間、俺の身体は金縛りにあった様に動けなくなった。

     オーラというのは生まれながらに持つものなのか。幼いころから帝王学を学べば身につくものなのか。
     すべてを見通すその瞳に吸い込まれそうだ。

     連邦軍将軍家の跡取りに俺は畏怖の念を抱いた。 
     

    「こちらの手の内を貴殿にお伝えします」
     彼の真摯な話ぶりに嘘は感じられなかった。

     俺はどうするのが正解なのか。

    「黙っておられるのもいいでしょう。ただ、あなたが今何をなすべきか、ご自分で判断してください」

     俺のなすべきこと。
     アーサー・トライムス少佐を監視すること。
     連邦軍の特命諜報部が何のためにこの星に来たのか。その目的を探ること。

     いや違う。俺のなすべきことは、祖国を守ることだ。

     俺はゆっくりと名乗った。
    「俺の名前はヤン。反王室グループに所属している」

    * *

     大混乱、騒乱状態だ。
     ティリーはレイターに手を引かれながら歩いていた。

     あたりには焦げ臭いにおいが立ち込めている。
     学生たちが「革命だ!」と叫んでいた。

     二ノ丸駅が見えた。
     けれど、すでに、駅はシャッターが閉まり閉鎖されていた。

     道にはデモの参加者や、帰宅するビジネスマンがあふれかえり、タクシーも入ってこられない。
     ライナーが動くところまで徒歩で移動するしかない。

     とりあえず、大通りを空港の方角へ向かって歩く。 
     わたしとレイターの後ろにフレッド先輩が続いている。

     状況はどんどんと悪化していた。 
     

     三ノ丸では高級ブティックが襲われていた。
     いたるところで店のガラスが割られ、火が出ている。道にはエアカーがひっくり返っていた。略奪、放火・・・。
     これはもう抗議活動じゃない。

    「金を出せ」
     突然、銃を持った男が飛び出してきた。

    「キャー」
     わたしはレイターの後ろに隠れた。
     レイターが瞬間的に腰を落とし、がれきを拾って投げつける。

    投げるがれき

     ガチャン。

     男の手に命中し男が銃を落とした。

    「こっちだ」
     レイターに引かれて細い路地へと入る。大通りより静かだった。

     フレッド先輩が怒った声で聞いた。
    「おい、レイター。君、銃を持ってないのか?」

    n75フレッド怒る逆

    「持ってねぇよ」
    「なぜこんな大事な時に忘れてくるんだ君は。大変なことになるとわかっていたんじゃないのか」
     フレッド先輩が責めている。

    「違います、わたしが」
     説明しようとするわたしの声をレイターが遮った。
    「文句は怪我してから言えっつうの」

     レイターは銃を忘れたんじゃない。わたしのせいだ。       (27)へ続く

    ・第一話からの連載をまとめたマガジン 
    ・イラスト集のマガジン


    あなたへのおすすめ