
初対面で『この人失敗だ』と思った男と結婚した話⑤
告白を、断った。
それなのにある日、天から降ってきたのは
「あ、私この人と結婚するんだろうな」
という、身に覚えのない直感だった。
前回の話はこちらから⇩
断ったくせに、毎日
告白を断った。
それなのに私たちは、相変わらず毎日のように連絡を取り合っていた。
我ながら、どういう関係なんだと思う。
でも不思議なことに、あの直感の日を境に、
私の中で確実に何かが変わっていた。
意識していなかったはずなのに、少しずつ、
彼を「異性」として見はじめている。
そして一度そのフィルターがかかると、
今まで素通りしていた彼のいいところが、どんどん目に入ってくるようになった。
連絡はマメ。
私が一度話したことを、ちゃんと覚えている。
そして、私のささやかな夢をなぜか全力で叶えようとしてくる。
そんな中、次のデートが決まった。
今度は、ドライブ。
運転席で豹変しない男
ドライブデートには、ひとつ有名な怖い話がある。
「運転中に性格が豹変する男」だ。
割り込まれた瞬間に舌打ちをしたり、
急にハンドルを握る手が荒くなったり。
正直、少しだけ身構えていた。
ここで豹変されたら、せっかく見えはじめた彼のいいところが、全部吹き飛んでしまう。
結果。
彼は、豹変しなかった。
それどころか、いつもより優しいくらいだった。
強引な車に割り込まれても「危ないなあ」と笑って流し、
信号で止まるたびに「眠くない?」と気にかけてくる。
助手席で私は、こっそり胸をなでおろした。
この人、ハンドルを握っても彼のままだ。
海ほたるの、リベンジマッチ
ドライブの帰り、私たちは海ほたるPAに寄った。
そこで、見つけてしまった。
UFOキャッチャーのケースの中にいる、かわいい犬のぬいぐるみを。
ここで思い出してほしい。
彼はこれまで、私の好みじゃないぬいぐるみばかりを取ってはプレゼントしようとして、
私に拒否され続けてきた男だ。
水族館でも断られ、鬼滅のぬいぐるみ3体も断られた。
でも、今回は違う。
ケースの中にいるのは、私が心から欲しいと思えるぬいぐるみ。
「あれ、かわいい」
私がつぶやくと、彼は何も言わずに両替機へ向かった。
アームが動く。
つかむ。
落ちない。
そして——
取った。
彼は、取ったのだ。
「はい」と、ちょっと得意げに差し出された犬のぬいぐるみ。
UFOキャッチャーで取ったぬいぐるみを、プレゼントしてもらう。
私のささやかな夢が、この日ようやく叶った瞬間だった。
夜の公園で
日が暮れるまで遊んで、私たちは公園のベンチに座った。
夜の公園は静かで、隣には彼と、腕の中には犬のぬいぐるみ。
もう、私の中で答えは出ていた。
この人と、付き合おう。
でも、告白を断ったのは私だ。
いまさら自分から「付き合ってください」と言うのは、なんだか違う気がした。
だから私は、こう言った。
「もう一回言ってくれたら、つぎは良い返事がもらえるかもよ」
我ながら、ずるい言い方だと思う。
断っておいて、もう一度言わせようとしている。
でも、これが私の精一杯だった。
察した彼は一瞬驚いた顔をして、
それから姿勢を正して、まっすぐ私を見た。
「ぼくと付き合ってください」
「はい」
こうして私たちは、紆余曲折を経て付き合うことになったのだ。
初対面で「この人失敗だ」と思った、あの男と。
婚活は、頑張る量より方向で決まります。結婚まで辿り着いた私が気づいたことを、包み隠さず書きました。
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