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たかがスモモ。

    うちの実家には、大きなスモモの木があった。

    スモモの木は、春になると桜のような花を咲かせる。その花が散ると出てくる葉っぱは、桜とは違って、シソのような赤紫の葉っぱである。

    子供の頃、よくこの木に登った。好んで登ったのではなく、父に登らされたのである。木の上の方に成っているスモモの方が虫食いが少なく、よく日に当たるせいか大きく実っているから、体の小さな私に取ってこい、というのである。

    途中まではスイスイ行けるが、枝分かれの先はかなり怖い。なにせ、揺れる。枝がしなる。怖くて先になど進めなくなり、その場に止まって動けなくなる。それでも先へ進めという父が、木の下から見上げている。結局、私はそのまま樹上で泣き出した。

    たかがスモモである。

    あのあと、私は木から降りることもできなくなって、また泣いた。登る時は上だけを見るが、降りる時は下を見る。かなり高く登り過ぎて、降り方が分からないのだ。足をかける枝を踏み外したり、足を滑らせたりしたら、頭から落ちるだろう。恐怖が先に立ち、身動きができなくなる。

    どうやって降りたのかは、もう忘れてしまった。私はあれから長い時間を過ごしている。

    あれは危なかった、そういうことは自分にしかわからない。誰になにを言われても、自分を守れるのは自分だけ。誰かにとって大事なことでも、自分には大したことではないことに、体を張る必要などない。断れない人間ほど、危ない枝へ行かされる。

    たかがスモモで、頭から落ちてたまるか。



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    このエッセイは、連載小説『虹の架け橋』に登場する木崎アサの視点で書いています。 小説本編はTALES版(ブラッシュアップ版)またはnote版(パイロット版)でお読みいただけます。


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    【作品に関する注釈】

    本作のストーリー、キャラクター設定、および掲載しているイラストの著作権は著者に帰属します。

    掲載イラストは、著者の作成したプロンプトおよびプロットに基づき、AI生成技術を用いて制作・構成したものです。

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    連載小説「虹の架け橋」執筆中。第1章はTALES掲載版で「創作大賞2026/お仕事小説部門」中間選考を通過。現在、第2章を鋭意執筆中。noteには、登場人物・木崎アサの作中エッセイを掲載。また、月イチ連作ホラーにチャレンジ。TALESとカクヨムにて同時公開中です。

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