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冬の立山連峰を芋たい〜プロロヌグ〜


     私にずっお最も叀い"å±±"の蚘憶は、3歳頃に家族で赎いた犏島の吟劻連峰にある䞀切経山である。登山道は矎しい湿原の朚道から始たり、やがお暹朚のない掻火山の険しい山肌ずなる。山頂からは「魔女の瞳」ず呌ばれる圢容しがたい矎しい青色の火口湖が䞀望できた。小孊生の兄2人は、䞡芪ず私を眮いお育ち盛りの健脚ですたこらさっさず先に行っおしたったが山頂で我々を埅っおいお、䞀緒に湖を眺めた。たぶん初倏の頃だったず思う。雲はあったが晎れおいお、日差しが暑く眩しく、ずおも颚が匷かった。我々の他にも登山者はたくさんいお賑わっおいたず思う。3歳の私は埀路で匵り切っおしたったせいかすっかり疲れお眠くなっおしたい、埩路は䞡芪が亀互におんぶしお降りおくれたそうだ。迷惑をかけた。それからほが毎幎、同じく犏島の癟名山である安達倪良山に、山開きの頃に家族で登るのが恒䟋行事ずなっおいた。安達倪良山は途䞭たでゎンドラリフトで䞊がるこずができ、いかにも登山ずいう堎面は比范的少なく、子䟛から倧人たで、非垞に登りやすい掻火山である。登りやすいのに、森林限界を越えた先の景芳は他に類を芋ない絶景であり、幌少の私の心に、少なからず䜕らかの圱響を䞎えたず思う。
     幌少期からそのような経隓をしおきたので、私は家族で登山するのは圓たり前のこずだず思い蟌んでいたのだが、地元を離れお様々な土地や境遇の人間ず出䌚っおみるず、みんなあたり登山の経隓はないこずがわかった。登山よりも、スキヌやキャンプ等の話をよく聞いた。逆に私はりィンタヌスポヌツはからっきしである。「山に登っおどうするの疲れるだけじゃん」ずよく蚀われた。そんなの、空気や音や景色を楜しむに決たっおいる。私がどんなに熱匁しおも玍埗しおくれる人は少なかったが、誰しも䞀床でも䜓隓すれば少しくらいは感動するはずだ。若さの勢いで無理矢理にでも仲間たちを登山に匕っ匵っおいけばよかったかもしれないず、今になっお思う。
     犏島には磐梯吟劻スカむラむンずいう山岳芳光道路もある。幟重にも連なるヘアピンカヌブを登りきるず、およそ日本ずは思えないような、たるでアむスランドの火山地垯のような荒涌ずした景色が珟れ、吟劻小富士や浄土平、冒頭に述べた䞀切経山など、芋どころしかない。秋の玅葉の頃などは特に矎しい。磐梯吟劻スカむラむンは冬季は雪のため閉鎖されおいるが、い぀も4月末には開通する。このゎヌルデンりィヌクに東北地方に甚のある方は、是非蚪れおみおほしい。

     私が䞭孊生になった頃、歳の離れた長兄は遠く離れた東海地方で瀟䌚人ずなり、スバルのフォレスタヌを所有しおいた。次兄は高校生だった。ゎヌルデンりィヌクに長兄が車で垰省した折、兄効3人でドラむブに出かけた。どうしお䞡芪を眮いおいったのかは芚えおいない。仕事だったのかもしれない。ドラむブコヌスの詳现は蚘憶にないけれど、猪苗代湖を1呚したような気がする。猪苗代湖ずいうのは、犏島県の真ん䞭にある、日本で4番目に倧きい湖である。
     雲ひず぀ない快晎で、玠晎らしい倩気の日だった。猪苗代湖の南偎、湖南町のあたりだったず思うが、北西の方向を芋るず、たわりの青黒っぜい山々ずは明らかに違う、真っ癜い屏颚のような矎しい山塊が、猪苗代湖越しに遠くに芋えた。5月初旬の倏のような日差しず真っ青な空、それず察照的に未だ真冬の様盞で真っ癜な雪を湛えた巚倧な山容に、私は息をのみ、目が離せなくなっおしたった。䞀目惚れである。あの癜い山は䜕ずいう山なのか兄たちに蚊ねるず、「たぶん飯豊山だ」ず返っおきた。この時から私は飯豊山、飯豊連峰の虜になっおしたった。20幎以䞊経った今もよく芚えおいるほど、衝撃的な光景だったのだ。

     それからずいうもの、私は「雪山を芋る」こずが倧奜きになっおしたい、党囜各地の様々な山を知った。䞻にNHKBSで倜䞭にナレヌションなしBGMのみで山の空撮映像だけが流れるような番組で。実際に芋お感動した山もたくさんある。䞭でも特に奜きなのは鳥海山である。海沿いの独立峰で頂䞊は雲に芆われお芋えないこずも少なくないが、党容が芋えるず果おしなく続いおいるような裟野は富士山のそれにも䌌おいお広倧で矎しい。あらゆる均敎がずれおいお芞術的だず思う。火山は芞術である。岩手県の岩手山なんかも、空気が少し霞んでいるような日には、たるで盛岡垂に「富士山の頂䞊付近だけが突然顔を出した」ように芋えお、少しドキッずする。畏怖や恐怖の類で、ゎゞラずか超倧型巚人を目の圓たりにした時に感じるんだろうなずいうようなドキッだ。浅間山も、高厎垂あたりから芋るず、黒い峰々の隙間に応然ずひずりだけ真っ癜な顔を出しおいたりしお、初めお芋た時は二床芋した。景芳の違和感がすごかったのだ。
     でもやっぱり、飯豊連峰のあの真っ癜な、屏颚のような、立ちはだかる壁のような䜇たいに、私はずっず倢䞭だった。考えおみるず私は独立峰よりも連峰が奜きなのかもしれない。磐梯山よりも吟劻連峰や安達倪良連峰のほうが奜きだし、富士山ももちろん玠晎らしいず思うけど、日本アルプスのほうがゟッずするような魅力を感じる。
     そう、日本アルプスである。

     私が初めお立山連峰ずいうものを認識したのはい぀だったのか、きっかけは䜕なのか、もはや定かではない。おそらくやはりNHKBSの倜䞭の番組だず思う。少し鬱みたいになっお明け方たで眠れなかったりした時、目的もなくテレビを぀けるず矎しい山々の映像がクラシックず共に流れおいお、1人でがんやり眺めおいた。綺麗な映像が目に入っおくるだけで䜕も考えずに枈むから楜だった。あたりに矎しいので涙を流した時もあったず思う。今になっお考えるずかなり病んでいたな。倧䞈倫か私。
     私の倧奜きな飯豊連峰を暪にめちゃめちゃ延ばしたみたいなのが、富山垂や富山湟から芋える立山連峰である。巷で芋られる写真や映像はどれもよく晎れおいお真っ癜な山肌が眩しく光り茝き、䞀皮の宗教画のようでもあるが、そのように完璧なコンディションが揃うのは1幎を通しおみおも決しお倚くはないずいう。日本海偎の気候を考えれば䞍思議ではない。秋田ず山圢に跚る鳥海山も、私が珟地に赎いお党貌をはっきり芋られた確率は30%以䞋だず思う。飯豊連峰だっお、猪苗代湖から初めお芋お䞀目惚れしたあの日以䞊に綺麗に芋られたこずなどない。だがそこがいい。なかなか簡単には目にするこずが叶わないのがたたらない。
     ずにかく立山連峰に぀いおは、「死ぬたでに行っおみたい堎所、芋おみたい景色」ずしおずっず心の䞭にあった。立山黒郚アルペンルヌトや黒郚ダムにも絶察に行きたいず垞々思っおいた。最近調べお驚いたのだが、立山黒郚アルペンルヌトの片道料金が某デ◯ズニヌランド䞊みで気絶しおしたった。でも絶察に某ディ◯ニヌランドよりも埗られるものが豊富だず思う。い぀か絶察に行きたい。テレビ等で立山黒郚アルペンルヌトの特集を芋るたび矚たしいず思っおいたが、これからは「ここに映っおいる人たち、みんなあの料金を支払ったんだな 」などずいうおかしな気持ちで芋るこずになるだろう。
     前述したように、倩候に巊右される非垞に繊现な景芳だし、芋に行くず蚀っおも私の居䜏地ず富山は盎線距離で玄250kmも離れおいるので、頻繁にチャレンゞするこずも出来ない。冬堎の癜い矎しい姿を拝むには、䜕日も滞圚しお綺麗に芋えるたで粘るしかないのではないか。行ったからには綺麗な姿を目に焌き付けお垰りたいし。しかしなかなか長期䌑暇も取れない職皮に身を眮いおいた私は、い぀になったら叶えられる倢なのかず半ば諊めながら生掻しおいた。倢芋ながら5幎、10幎が過ぎた。


     そしお2025幎12月、私は長期䌑暇を取るこずずなった。適応障害により䌑職を申し枡されたのである。このこずに関しおは、前回の蚘事を読んで頂くずありがたい。もちろん読んで頂かなくおも倧䞈倫です。


     ここで、私ず同居しおいる婚玄者に぀いお、圌を今埌「Kくん」ず呌称する。
     Kくんの仕事はいわゆるカレンダヌ通りの勀務圢態で、12月27日から9連䌑だった。私の仕事はずいうず、カレンダヌを無芖した勀務が倚く、祝日やゎヌルデンりィヌク、幎末幎始やお盆など、䞖間䞀般的に連䌑や長期䌑暇ず呌ばれる期間に䞖間ず同じように䌑めたこずはなかった。本圓ならこの幎末もお正月も出勀の予定だったが、䌑職ずなっおしたい、実質お䌑みである。そこでKくんが提案しおきた。

     「こんなふうに2人䞀緒に長く䌑めるのも珍しいから、どこか遠くにでも行っおみようか」

     圓時の私が毎日家で泣いおいるだけだったから、Kくんも気が滅入っおいたのだず思う。自分のためにも私のためにも、気晎らしの旅行を提案しおくれたのだ。それがクリスマスの週の月曜か火曜だった。私は「䌑職䞭の身で旅行などけしからん」「収入も枛るし旅費も高いし珟実的ではない」などず理性的で぀たらない反論をした。するずKくんは
    「うるせヌッ俺がどっか行きたいの」
    「そうやっお暗い顔で毎日泣きながら幎越す぀もりか」
    「耐えられん蚱さん俺たで倉になるわ」
    「治るもんも治らなくなるだろうが」
    「ずにかくどっかには行くから、候補を考えおおきなさい」
    などず暎君のように捲し立おお、私がたた䜕か぀たらないこずを蚀い出す間も䞎えず、颯爜ず出勀しおいった。荒療治である。

     さお、ここで私の頭に真っ先に浮かんだのは、もうお分かりの通り、立山連峰であった。

     時は12月䞋旬、1幎のうちで最も矎しく芋えるずされる時期である。富山ず立山の倩気予報を芋るず、12月27日の昌たでは雪予報だが、午埌からは晎れ、翌28日は完党な晎れ予報ずなっおいた。29日も午前䞭は晎れるがだんだん悪くなり、それ以降はずっず悪倩候のようだった。立山の颚予報も芋おみた。平地の倩候が良くおも、肝心の山の䞊が匷颚では雲がかかっお芋えなくなっおしたうかもしれない。27日は10m以䞊の匷颚のようだが、28日は5m皋床に萜ち着くようだった。これで空気が也燥しおいれば、完璧なのではないか私は生たれお初めお気象予報の奥深さを実感した。それに党く未知の新しい蚈画を真剣に考えるこずで、最近すっかり薄暗く萜ち蟌んでいた心に、久しぶりに少しだけ陜が差しおきたような気がした。

     立山に行くなら、チャンスは28日しかない。䞀皮の賭けになるけど、成功の確率は䜎くない。問題は、どうやっお行っお垰っおくるか。幎末で新幹線も飛行機もめちゃくちゃ高いし、ホテルだっおそう。公共亀通機関を䜿うなら、綿密な蚈画を立おないず 。私は少し完璧䞻矩的で難しく考えすぎるきらいがあるので、1人でうんうん悩んだ。悩みながら、垰宅しおさっそく「どこ行くか考えた」ず聞いおきたKくんに恐る恐る「た、立山 」ず答えた。
    「たおやたたおやたっお䜕どこ山」
    「富山にある山」
    「ぞえ〜富山か。  富山遠くないあれっ富山っおどこだっけ」
    「胜登半島の付け根」
    「胜登半島」
     胜登半島はわかったらしい。遠さもなんずなく察したようだ。芋たこずがないような顔をしおいた。その反応を芋お、やっぱり無謀だよね ず少ししょんがりしながら続けた。
    「立山連峰っおいう綺麗な山があるの。知らない」
    「知らね〜」
     私ず違っお圌は山などに党く興味がない。スマホでネットに転がっおいる写真を芋せた。
    「ぞえ〜すごいね。綺麗なずこだな。これが富山から芋えんの」
    「倩気が良ければね」
     その、倩気が良くお綺麗に芋える日が1幎を通しおかなり皀であるこず、そのチャンスが今床の28日だけかもしれないこず、私が死ぬたでに䞀床は行っお芋おみたいずずっず思っおいたこず、公共亀通機関で行った堎合の料金、宿泊地や移動手段の懞念など、行きたいけどちょっずかなり無謀だよねずいう気持ちを蟌めお説明した。
     するずKくんは私の心配など䜕も理解しおいないような明るい衚情で蚀い攟った。

    「よし、車で行こう」


     12月末の豪雪地垯、真冬の日本海、盎線距離250km、30䜙幎の人生においお未螏の地。
     果たしお我々は、冬の立山連峰を無事に拝むこずが出来るのか


    ぀づく

     
     
    䞻に旅行蚘、身の䞊話、過去の話、䜜品の感想など、自分に圱響を䞎えたものずそれに぀いお考えたこず等を、思い぀いたたた奜き勝手に文章化したす。

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