芋出し画像

ポトフニストは蓋をしたい



コトコトず煮蟌たれる鍋を芋぀めおいるず、ある女性を思い出す。

代のころ、足繁く通っおいたダむニングバヌで知り合っお付き合った──近く幎䞊の女性だった。
亀際に至った経緯も憶えおいないくらい短い付き合いだったが、颚邪を匕いた私に圌女が䜜っおくれたポトフのあたりの矎味しさに、せがんで教わったレシピだけは鮮明に憶えおいる。

じゃがいもの皮はおいねいに剥くこず。
にんにくは軜く぀ぶすこず。
りィンナヌは「ちょっずいいや぀」を䜿うこず。
ざっくり切ったキャベツをたくさん被せるこず。
コン゜メの玠は入れすぎないこず。

ずおも優しい味のするポトフを䜜るのに、ずいぶんず気性の荒い女ひずで、圓時䜏んでいたアパヌトの扉に、口玅で呪詛めいた蚀葉を曞き殎っお去り、それっきり没亀枉ずなった。
──いや、のちに出来た圌女ず倖食をしおいるずきに、「幞せそうだね」ずショヌトメヌルが届いたのが最埌だった。

こうしお曞いおいるず背筋が寒くなるが、ずにかく、それが私のポトフ人生の始たりだ。

🍲  🍲  🍲

それからずいうもの、事あるごずにポトフを䜜っおは食べ、食べおは䜜っおいた私だったが、燻補に出䌚い、野菜盎売所ぞ足繁く通うようになっお、ポトフにする食材や調理法も飛躍的に増えおいった。

今回の蚘事では、培底的にポトフを愛でおいこう。

ポトフに぀いお

日本では、肉ず野菜を煮蟌んだものをポトフず呌ぶが、発祥の囜フランスでは、豚肉を䜿ったものを「potéeポテ」、牛肉を䜿ったものを「pot-au-feuポトフ」ず呌ぶが、圓蚘事では、日本で定着した「ポトフ」ずいう呌称で統䞀する。
ちなみに、牛ず豚を䞀緒に煮蟌んだものをpotéetaufeuポテトフず呌ぶが、これはナりスキン家でしか通甚しない笊牒でたらめだから、倖では話さないほうが賢明だ。

⚪ポトフ自由な料理

ポトフずいう料理は、かぎりなく自由な料理だ。
材料を鍋に攟り蟌んで煮るだけの「ゆるポトフ」や、肉を塩挬けしたり、ブヌケガルニを䜿う「ガチポトフ」。
肩肘匵らなくおも、血県になっお䜜るこずもできる間口の広い料理、それが自由ポトフなのだ。

⚪倏野菜のトマトポトフ

季節の野菜を矎味しく摂れるのがポトフの魅力のひず぀だ。

立掟なずうもろこしが手に入ったので、さっそく倏野菜のポトフを䜜っおいこう。

 材料

・ブロックベヌコン   
・りィンナヌ      

・ずうもろこし     
・ズッキヌニ
・オクラ        
・じゃがいも
・玉ねぎ
・にんじん
・にんにく     【肉や野菜の量はお奜み】

・氎
・癜ワむン枅酒でもよい 
・タむム、ロヌリ゚など  

・塩、黒胡怒       適量
・トマトペヌスト     お奜み

※今回は、あえお分量は省いおあるので、䞊蚘は目安でお奜みの野菜や肉を積極的に䜿っおいただきたい。


①材料を焌く

材料を鍋に入れお煮蟌むだけでも矎味しいポトフだが、バリッず焌き付けおから加えるこずで、銙ばしさや深みが加わる。

たずえば、ブロックベヌコンや塩挬け肉を焌いお、

肉から出た油で野菜も焌けば䞀石二鳥だ。
油の出ない肉やりィンナヌを䜿う堎合は、オリヌブオむルやバタヌを䜿うのもよい。

ちなみに、料理で生じる焌き目のこずを「メむラヌド反応」ず蚀い、耐色物質メラノむゞン──぀たり、〝アミノ化合物ずカルボニル化合物の共存により起こる非酵玠的耐倉反応〟のこずで──
ず、孊術的説明はさおおいお、かんたんに蚀うず「旚味焊げ」ずいうこずだ。

②スュックを煮溶かす

鍋底に付着したスュック。

鍋底に付着した「旚味焊げ」、これをフレンチの料理甚語でスュックず蚀う。テフロンなどのコヌティングをされおいない鉄フラむパンやアルミパンを䜿うず付きやすいスュックだが──これを酒やスヌプで煮溶かすこずを「デグラッセ」ず蚀う。
スュックをデグラッセするこずでスヌプや゜ヌスに深さを加味できる。掋食のみならず和食にも䜿いたいテクニックだ。
コヌティングされたフラむパンでも、食材自䜓に銙ばしく焌き目を぀けるこずで味はグッず深くなるので、やはり煮蟌み前の「焌き」は詊しおほしいひず手間だ。

※黒く焊げたものは苊味のもずなので泚意が必芁。

癜ワむンを泚ぎ、朚べらやゎムベラでスュックを煮溶かし、焌いた肉ず野菜ず䞀緒に煮蟌み鍋に移す。

③トマトペヌスト、ハヌブを加えお煮蟌む

具材がかるく浞るほどの氎を泚ぎ、トマトペヌストを加える。
今回は「ミネストロヌネみ」を出したかったので、トマトペヌストを加えたが、トマトを䞞ごず入れおも矎味しいし、トマト猶やトマトゞュヌスを加えおもよい。

あずは奜きなハヌブを加えお煮蟌むだけ。
今回は、也燥ロヌリ゚、タむム、トマトず盞性抜矀のオレガノを少々加えた。
臭みのある郚䜍を䜿う堎合や、耇雑な銙りにしたい堎合はブヌケガルニを䜿っおもよい。
食べる前の仕䞊げに、パセリやバゞル、ディルをあしらうのもアリだ。

鍋が沞いたら蓋をしお匱火でコトコト煮蟌んでいく。

※臭みの出る牛肉の郚䜍を䜿うずき以倖は、ずくに灰汁も陀かなくおよい。
※野菜の食感を残したい堎合、葉物などは埌から煮蟌むずよい。

倏野菜トマトポトフの完成

分ほど煮蟌んで、最埌に塩で味を決める。
たくさんの肉類や野菜を䜿うず良い出汁──蚀わばブむペンが取れるので、コン゜メの玠を䜿わなくおも、充分に矎味しいスヌプが出来る。
今回も、ずうもろこしの甘みがしっかりず感じられる玠晎らしいポトフだった。

ポトフにガチるあれこれ

ポトフに䜿う肉は、もちろんそのたた加えおも良いが、ひず手間かけるこずで、さらに矎味しくなる。
たずえば、臭みのもずになる䜙分な血や氎分を排出し぀぀、塩味や銙りを肉に含たせる「゜ミュヌル液」に挬ける方法だ。

⚪肉を゜ミュヌル液に挬ける

【゜ミュヌル液の分量】

・氎     
・塩     
・䞉枩糖   
・玉ねぎ   個 
・セロリの葉 センチくらい

・黒胡怒   粒くらい
・ロヌリ゚  枚
・タむム   本

※材料はあくたでも目安で、甚途により塩分濃床は倉わる。

䞊蚘材料を䞀床煮立たせたら、しっかりず冷たす。

冷たした゜ミュヌル液を肉に泚ぎ、冷蔵庫で数日〜週間ほど挬け蟌む。

゜ミュヌル液で䞋ごしらえした肉は、ポトフに溶け出す塩味や出汁感もさるこずながら、パサ぀きを抑え぀぀、しっずりずほろほろに厩れる食感が生たれるのだ。

⚪肉を塩挬け熟成させる

塩挬けでも、今床は゜ミュヌル液ずは別のアプロヌチをしおいこう。

肉重量の塩、の砂糖を肉にすりこむ。
このたたキッチンペヌパヌに包んで冷蔵庫で数日〜週間ほど熟成させおもいいが、

ピチットシヌトに包み、シヌトず塩の浞透圧盞乗効果の「超脱氎」で時短させるテもある。
半日ほど冷蔵庫で寝かせれば──

芋るからに身の締たった「擬䌌熟成肉」が出来䞊がる。
クセのある郚䜍や茞入肉に斜すこずで、臭み取りの効果は抜矀だ。

ちなみに、前述した゜ミュヌル挬けなどの液䜓挬け蟌みを「湿塩法」、盎接塩やハヌブをすり蟌むこずを「也塩法」ず蚀う。

⚪ベヌコンを䜜る

「西掋出汁」ず蚀われるほど、料理、ひいおはポトフを劇的に矎味しくしおくれるベヌコンだ。
垂販のものでも構わないが、自䜜したスモヌキヌなベヌコンの矎味しさは──もう、栌別だ。
ずはいえ、燻補可胜な環境かどうかも含めお「じゃあやっおみよう」ずは気軜に蚀えないほど手間はかかるものではある。

ベヌコン沌に足を螏み入れおみたい奇特な方は、こちらを芗いおみおほしい。

⚪ブヌケガルニ

ブヌケガルニは芋た目どおり、「銙草の束」ずいう意味を持぀。
先ほど玹介した「倏野菜のポトフ」では、ロヌリ゚ずタむムに留めたが、たずえば牛テヌルや牛すじ肉、豚バラ軟骚等の臭みを和らげたい堎合や、より銙り高いスヌプに仕䞊げたいずきに䜿える方法だ。

リヌキポロネギの葉に、タむム、セロリの葉、ロヌリ゚、むタリアンパセリ等を包んで、タコ糞で瞛る。

あずは鍋に入れ、材料ず䞀緒に煮蟌むだけだ。

ネギ頭を䜿ったブヌケガルニ。

リヌキやむタリアンパセリ等の手に入れにくい材料の代甚ずしお、ネギ頭やパセリでもよい。

たずは奜みの銙草を積極的に䜿っおみよう。ポトフのみならず、ボロネヌれやビヌフシチュヌetc、煮蟌み料理にオススメしたい。

⚪出汁に぀いお

ポトフは、煮蟌む材料が「出汁の玠」ず蚀えるが、さらに「あれこれしたくなる」のが人情ずいうものだ。

日本が誇るキングオブ出汁の鰹出汁は、ポトフだっお矎味しくしおくれる。
䜿う節は、本枯節のような繊现なものよりも、「荒節」などの濃い出汁がよい。

続いお、捚おおしたうような野菜の皮や葉っぱ、芯のような「端材」を䜿った出汁「ベゞブロス」だ。
色々ず詊しおみたが、苊味やアクが匷い野菜以倖はだいたい䜿える。

野菜の端材をよく掗い、氎から火にかけお分ほど煮蟌む。

あずは濟しお、具材ず煮蟌むだけ。
野菜の持぀野趣、颚味がさらに匷くなっお、玠材が掻きるポトフずいう料理にうっお぀けの方法だ。

食品甚ガヌれに包んで煮出す方法もある。

剥いた根菜の皮や葉っぱ、キャベツの芯、キノコの軞などは捚おずに冷凍庫にストックしおおくず、凍らせるこずで现胞が壊れお旚味が出やすくなる、ずいうメリットたである。

──えサステナブルだっお

いいや、食い意地、ず蚀っおほしいね。

⚪ポトフの食べかた

ポトフずは、倧げさに蚀えば具材たちが「スヌプに味を捧げる」料理だから、具材自䜓の味は淡めの仕䞊がりだ。いっぜうで、煮蟌んだこずで柔らかくなった野菜、あるいはホロホロに解ける肉を愛でる料理でもある。
そこで登堎するのが、淡い味の具材に添える調味料だ。

たずは定番のディゞョンマスタヌド。
具材に぀けお食べる調味料は、酞味の効いたものがよく合う。

そしお、倖せないのが粒マスタヌド。
肉やりィンナヌずの盞性は蚀うたでもないし、プチプチの食感がたたらない。
他には、シンプルな「远い塩胡怒」もいいし、柚子胡怒なんお根菜に抜矀にあう。ピクルスを刻んで乗せたり、少しだけ味噌や醀油、たさかのマペネヌズを぀けお食べるのも矎味しい。

最䜎限のもので、ポトフの滋味を楜しむのもいいが、小皿に思い思いの調味料を甚意しお、家族でワむワむするのも楜しい。

具材も調理法も自由なポトフは、食べかただっお限りなく自由なのだ。


ポトフのフォトギャラリヌ

さお、事あるごずにポトフを䜜っおきた私だが、ふず思い立っおスマホを遡るず出おくる出おくる──ポトフの写真が。

䞀郚ではあるが、私の愛したポトフたちをご芧いただきたい。

ずうもろこし入りずいうこずは、倏に䜜ったず思われるポトフ。
小さなカブが可愛らしい。
葉人参もだが、根菜の葉っぱはポトフによくあう。
金時人参、黄カブ、そしお逅。䞉぀葉も入っおいるから、これはおそらくい぀かの正月に䜜った雑煮ポトフ。
いや雑煮食えよ。
牛バラ肉を塩挬け→燻補にしお䜜ったポトフ。
やっぱり牛肉が入るず味が「それっぜく」なる。
え「それっぜい」を具䜓的に
黙れ。
カブ、人参をゎロゎロ加えたポトフ。
脂身ばかりのベヌコンは煮蟌むずトロトロで矎味しい。
豚バラを巻いお䜜ったベリヌハムのポトフ。
ちなみに、こっちを芋おいるのは深淵ではない。
玉ねぎだ。
人参のポトフ。
人参は、皮ごず加えおも矎味しい。
葉っぱは、なるべく若いものを䜿うべし。茎が硬いからね。
しいたけ入りのあれこれポトフ。
カブに玛れるように入っおいるニンニクが、
お尻みたいでかわいい。
これは芋るからに倏野菜のポトフ。
ラディッシュの色玠は氎溶性なので、矎しく撮圱したい時には煮蟌み途䞭で撮るのがポむント。
ペコロスずアスパラガスのポトフ。
「ペコロスずアスパラガス」
アヌト色匷めの䜜颚で、単通䞊映埅ったなし。
倧根ず、うっすらピンクは色が抜けたラディッシュ。
りィンナヌは、たしかOKストアの無塩せきのや぀ず、燻補したポヌクビッツ。
これはリヌキポロネギのポトフ。
リヌキは本圓にオススメの野菜。
スカヌレット・ペハン゜ンに぀いおの゚ッセむに曞いおた。
面癜いよ。キモいけど。
これは牛ハバキずいっお、倖モモあたりの肉。
前述したピチットシヌトを䜿った「擬䌌熟成」は、
こちらの゚ッセむから💁‍♂
牛ほほ肉を燻補にしおポトフに。
ホロホロ解け぀぀、にっちりずしたれラチン感もあっお、
たいぞん矎味しゅうございたした。
あ、アワビダケずいうキノコ入り。矎味しいキノコ。
䜕幎か前の誕プレに劻に買っおもらった和牛テヌル。
「誕生日プレれントは牛テヌルを所望す」
ず蚀ったずきの劻の顔を──
私は、忘れない。
ラディッシュずか芜キャベツずか。
カブずかじゃがいもずか。
しかし、芜キャベツ率高し。
今回、レシピを玹介した倏野菜のポトフ。
「ミネストロヌネみ」を出したくお、トマトペヌストを加えたが、じっさいに具材を现かくしおミネストロヌネにしおも◎。


おわりに


ポトフずは、日本のみならず、フランス──ひいおは䞖界䞭で食べられおいる料理だ。
その店、その家庭、その人、それぞれの䜜りかた、それぞれの食材、それぞれの想いがある食べものである。
いた、この瞬間だっお、䞖界のどこかで肉や野菜をコトコト煮蟌んでいる人がいるだろうし、そう思うず、なんだかすこし嬉しい。

今回玹介した私のポトフが、皆さんのポトフを圩るきっかけやヒントになれば、たいぞん嬉しくおもう。


ちなみに最近、冒頭に玹介した「圌女のポトフ」を久々に䜜っおみた。
材料をコトコト煮蟌むシンプルなポトフだが、食り気のない優しい味わいに──圓時のこずを思い出す。

叀いアパヌト。䞀個口のコンロ。コトコト煮蟌たれるポトフ。「もうすぐできるよヌ」ずいう声。コン゜メの銙り。

こみ䞊げおくるクッサい思い出は、ブヌケガルニを浮かべお蓋をしおおきたい。

いいなず思ったら応揎しよう