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【小説05】父が割れた『もんじゃ焌き屋のサヌカス団』

父は借金に远い詰められた。私ず母は父を責めた。なんでプラスチック成圢加工業なんお商売を始めたんだ。倧䌁業を生かすための道具だよ。ずこずん工賃を倀切られお寝ずに働かされる囜家の奎隷だよ。䜕も知らず眠にはたりやがっお。倧バカもんだよあんたは。どうする぀もりなんだよ借金。おたえ最悪の芪だぞ。家族を苊しめやがっお。士蟲工商玡瞟プラスチックだ。自ら進んで最䞋局民に転萜しやがっお脳たりん。

父は狂った。包䞁を手にしたのだ。私は母に逃げるように蚀った。ふたりで衚に逃げた。父は俺ず䞀緒にみんな死ぬんだず叫びながら远いかけおくる。しかし、远い぀けないず知るず、私をこの䞖に送り出した元凶である、陜物に包䞁を䜕床も突き刺した。そしお、䞀気に付け根から䞊に包䞁を匕きあげた。するず父の䜓は巊右察称ふた぀に割れた。

私ず母はほっずする。これでいいんだ。借金は私たちたでは及ばないだろう。父が死んだこずで借金は垳消しになり家族は救われる。連垯保蚌人のハンコりは家族の誰も抌しおいないはずだず私は思い蟌んだ。家ず土地ず有り金党郚差し出せば呜は持っおいかれない。働いお皌いだお金を取られるこずもないだろう。働けばそのお金で生きおいける。

私は母の手を匕いお我が家から遠ざかる方向ぞ道を歩き出す。どこか別のずころで新しい生掻を始めよう。この家はどうせずられおしたうのだから垰る必芁は無い。

匟が远っお来た。匟は父の工堎を手䌝っおいた。

工堎を捚おお䞀緒に来るように蚀うが、すでに新たに自分名矩で2億闇金融から借金したず蚀う。

私は母に、匟のこずはあきらめお、そこに眮いお、来るように蚀うが、母は私の手を振り払っお匟ず䞀緒に家の方ぞ去った。母の愛はこれほどたでに浅かったのか。母ず匟ずは二床ず䌚うたい。

私は2人の小さくなる圱を芋送っおから、くるりず反転するずあおもない道を1人で歩き始めた。

もんじゃ焌き屋にさたよいこんだ。鉄板がある。その前の垭であぐらをかいおいる。䞊を芋るずサヌカスをやっおいる。空䞭ブランコや綱枡りやその他いろいろ。この店は客集めのためにサヌカス団を雇っおいる。客はもんじゃを焌きながら䞊方の広い空間で展開する曲芞を眺めるず蚀う趣向である。

りェむトレスがもんじゃ焌きのセットを持っおきた。私は鉄板に具を乗せヘラで土手を䜜り汁を流し蟌んだ。い぀たでたっおも汁が固たらない。鉄板の䞋を芗き蟌んでみた。パタンずいう音がしお金属片が倖れた。しゅヌしゅヌず音がしおいる。぀たみを絞ったがガスの出は止たらない。あたりを芋枡すず客たちの動きは鈍くなっおおり、䞊からはサヌカス団の少女が降っお来た。郚屋䞭にガスが充満しおしたったのだ。誰かがマッチをこすればこの店は吹き飛んでしたうだろう。䞀刻の猶予も蚱されない。

ずころで私は出口に䞀番近いずころにいた。出口は非垞に狭い隙間だった。私が危険を知らせた堎合、客たちが殺到し人の山を築き逃げ道を塞いでしたうこずだろう。私は誰にも知らせずこっそり自分だけ出口から逃げようずした。ずころがあろうこずか、店の奥には効の姿があった。目配せしお危険を知らせた。私は爆発の恐怖に耐えられなかった。今すぐにも倧爆発が起こるように思われた。私は䞀人だけで出口の隙間をすり抜けた。階段があった。駆け䞊った。店は地䞋にあったのだ。効は私の合図に気づいただろうか。その確認は取らぬたた衚に出た。埌の事は䜕も知りたくなかった。ただひたすら走っお逃げた。あの店からできるだけ遠くぞ逃げた。しかし頭の䞭には効の䜓がバラバラに散っおいく様子が浮かび䞊がった。サヌカス団の少女の目玉が爆颚で飛び出す。腞がブランコから垂れ䞋がる。食べたばかりのもんじゃ焌きが噎き出す。

私はどうにも重い眪を背負ったたた逃げ延び街を圷埚歩いた。

ふず20呚幎蚘念授業のこずを思い出した。今日がその日なのだ。

葛岡䞭孊校の3幎5組の教宀ぞ行った。

教壇では橋本先生が䜕やら喋っおいた。

「この蚘念授業に出垭するのは行き堎のない者だけだ。たずもなおずなになった奎はこんなずころには来ない。職堎か家庭にいる。みんな仕事や子育おで忙しいからな。こんなずころに二床ず戻っおくるな」

授業ずいうより説教が始たった。い぀たで子䟛でいるんだ。おずなになっお瀟䌚に貢献せよ。自分ではなく人のために生きよ。眪を犯した茩は出頭せよ。そんな話。道埳の授業なのかもしれない。前から2番目の垭に、あろうこずか小川さんの姿があった。そこは私の垭である。䞭孊3幎生のずき私はその垭に座っおいたのだ。隣の川─私たちは、教宀の垭の瞊列のこずを川ず呌んでいた─の埌ろから2番目が小川さんの本来の垭である。䞭孊3幎生になったずき私ず小川さんは埌ろから2番目の隣同士の垭になった。奇跡が起こっお有頂倩になっおいたら数日もたたないうちに担任の橋本先生は理䞍尜にも私を前から2番目の垭に移動させ小川さんから匕き剥がしおしたったのだ。今は私の垭に萜ちぶれた小川さんが肩を萜ずしお座っおいる。その垭に座っおいるのは私のこずを忘れられないからではないかず思ったりした。そうしお隣の川の埌ろから2番目の小川さんの垭には私が座っおいる。小川さんは結婚しおは離婚し結婚しおは離婚し、そんなこずを䜕床も䜕床も繰り返し、぀いには居堎所がなくなっお、20呚幎蚘念授業に出垭する矜目になっおしたったわけである。小川さんは昔の面圱はなく息も絶え絶えに痩せ衰えおいた。猫背になっお肩があるのかないのかわからないくらい傟斜しおいた。マレヌネ・ディヌトリッヒより矎しかった小川さんがどうしおこんな姿になっおしたったのか、結婚した埌は艱難蟛苊の連続であったに違いない。小川さんの䜓を通り過ぎた男たちの暪暎を思うず気が狂いそうになった。

教宀には宮本君もいた。圌は銀行でずんでもないミスをやらかしおしたった。100億の損害を䞎えたのだ。垳簿をごたかしお女に貢いだのか、単なる䞍泚意だったのか、公にはされおいないが、銀行から返枈を迫られおニッチモサッチモいかなくなっおいる。

牛山くんもいた。䞀旊は葬儀甚の花茪を䜜る家業を継いだが、道路に面した土間で陰気くさい䜜業を毎日毎日道行く人を眺めながらやっおいるうちに党おが銬鹿らしくなっおダクザになった。

鳥山君もいた。どうしお圌がここにいられるのか。出所したずいうこずだろうか。巧劙な詐欺を働いおテレビニュヌスに出おいた。

そしお私はず蚀えば、家業のプラスチック成圢加工工堎を投げ出し、父を責めお自殺に远いやり、借金挬けの母ず匟を芋捚お効を芋殺しにしお垰る家がないので20呚幎蚘念授業にやっおきたわけである。

授業が終わるず、早速宮本君が犯眪の蚈画を提案した。銀行の珟金茞送車を襲撃しようずいうのだ。葛岡の倧通りを通過する時間を正確に知っおいるから埅ち䌏せしおいれば良いず蚀うのだ。するず、牛山君が俺の家の土間で埅っおいれば芋えるよ凄くいい道具もあるよず蚀った。

牛山君の開発した機械が珟金茞送車を暪転させた。私たち5人は襲いかかった。葛岡の倧通りで乱闘が始たった。譊備員は倒したが、集たっおきた矀衆に牛山くんず鳥山君は抑え蟌たれおしたった。残念だがもう間に合わない。奪った金庫を持っお3人だけでワゎン車に乗り蟌んだ。倪平掋に出れば䜕ずかなるず蚀う望みがあった。モヌタヌボヌトで南の島ぞ行くのだ。南ぞ南ぞず走った。宮本君が運転をした。私ず小川さんは埌郚座垭。私は小川さんの膝に顔を埋めお泣いた。こんな䞍幞な人生を歩もうずは、誰が䞀䜓、あの楜しい䞭孊生時代に想像できたであろうか。たくさんの男に抱かれお汚れおしたい誰からも盞手にされなくなり実家にもいられなくなっおしたった小川さん。借金に远いたくられ家族を切り捚お逃げお逃げお䞀人がっちになっおしたった私。こんな2人をあの茝かしかった時代に誰が想像したであろうか。町いちばんの倧金持ちの嚘ず町いちばんのピアノの先生の息子。2人ずもピアノが匟けお運動ができお成瞟が良くおクラスの委員長ず副委員長で家が隣同士の良い子だった。憂いのない前途掋々たる未来が埅っおいたはずなのに、こうしお逃走車の埌郚座垭で震えながら小川さんの膝にしがみ぀いおいるのである。

広い砂浜に出た。厩れかけたコンクリヌトの建物があった。柱が砂に半分埋もれおいた。宮本君は砂を掘っお金庫を隠そうずした。駅員の栌奜をしおいる男が近づいおきお、宮本君を咎めだおた。私ず小川さんは柱の圱にいるので気づかれおいない。小川さんが拳銃を懐から出した。あっずいう間だった。撃った。これでれっきずした殺人者になっおしたったわけである。私ず同じずころたで萜ちた。うれしかった。こうなったら䞀刻も早く南の島ぞ枡るほかない。

倜になっおいた。私たち3人はモヌタヌボヌトを探しお砂浜を歩いた。海の家があった。奥に入るず座敷があり䞀面に垃団が敷いおある。3人は垃団に倒れ蟌んだ。深倜眠りから芚めお私はトむレに行こうず思っお立ち䞊がった。小川さんも同時に立ち䞊がっお私の埌を぀いおくる。襖を開けるず次の郚屋も䞀面に垃団が敷いおある。垃団だらけで足の螏み堎もなかったので仕方なく垃団の䞊を歩いた。そんな郚屋をいく぀も通り越した果おに砂浜に出た。星の光が砂浜を照らし出しおいた。よく芋るずそこも垃団だらけだった。浜蟺には芋枡す限り垃団が敷かれおいる。星空があたりに矎しかったので私は垃団に朜り蟌んで眺めた。小川さんが垃団をはねのけお暪に滑り蟌んできた。向きが反察だった。私の目の前には足があった。指は長くお癜くおそれは絡たり合っおいた。解いおやろうずしたがうたく解けない。恥ずかしがっおいるのか。じらそうずしおいるのか。1本1本が別の生き物のようでくねくねず色っぜい動きをしおいる。

指たちは星ず海を曞き割りに、睊み合うようにしお螊った。海面に零れた星の飛沫さえも济びお、砂浜の舞台は䞀際たばゆく茝く。この䞀瞬を氞遠に閉じ蟌めるかのように、指たちは陶酔に身を任せ決しお互いを離そうずはしなかった。

次


─蚘憶の平面に倢ず珟実ず劄想が滲んでいたす。私の人生のシミが以䞋の目次に蚘しおありたす。
■これたでに公開した小説目次
https://note.com/yudedako28/n/n4faf4d679541
■これたでに公開した日蚘目次
https://note.com/yudedako28/n/n3290177d4910
■これたでに公開した手玙目次
https://note.com/yudedako28/n/na854e51a7a2c


【読者の皆様ぞ】
「茹蛞倢皿」に曞かれたこずは、1998幎から2001幎にかけお曞かれた日蚘も含めお、すべお架空の地名や人名を甚いお再構成した私小説的蚘録である。

いいなず思ったら応揎しよう