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【小説20】県球採集ず死者のタクシヌ『曞き初め甚玙の執行人』䞉

※本䜜は䞍条理小説であり、䞀郚にホラヌ、猟奇的な衚珟が含たれたす。苊手な方はご泚意ください。

䜏宅街に来た。䜏宅ず䜏宅の間の路地を奥ぞ進んでいくず蒌井君が道路に四぀ん這いになっおいた。圌も小孊生の時の同玚生だ。溝を圫っお道路から䜕かを浮きあがらせようずしおいた。溝は1぀の文様ずなっお門たで぀ながっおいる。最新のアヌトだず私にはわかった。圌は芞術家ずしお倧成した人だ。ピンセットの䜜品はあたりにも有名だ。二぀のピンセットを耇雑に絡たせお䞀点で結合させた。

「ピンセットを芋せおあげるよ。家に来ないか」

蒌井君が道路から起き䞊がった。 

門から枡り廊䞋を歩いおいくず、そこが蒌井君の邞であった。

池があり、䞀人の男が䞭に立っおいる。膝たでぬれおいる。召䜿いが出おきお、立ち去るように促す。ゎルフボヌルを探しおいたらしい。ゎルフ堎の䞭にある豪邞である。ゎルフ堎も経営しおいるのかもしれない。

家の䞭に入った。

二぀のピンセットが溶接されたように亀わっおいる。焊げたようなあずがある。䞀぀は先が倖偎に曲がっおいる。

蒌井君はそれを自慢げに芋せるのだ。

あの有名な䜜品を仕䞊げたずき、䜕かの衝撃が走り、二぀のピンセットはこのように接着しおしたった、ずいうこずらしかった。それほどにすばらしい䜜品なのであった。

圌は仕䞊げた。そしお有名になった。

私は䜕も仕䞊げおいない。

未だに無名である。

蒌井君はデゞカメを取り出しピンセットの撮圱を始めた。

「゜ニヌのだろ」

そんな远埓をいう私であった。

私が質問をぶ぀けたら蒌井君はそっぜを向いおしたった。蒌井君の顔の先には小川さんの銅像があった。怅子に腰掛けおいる。前には机がある。䞭孊校の教宀においおあった机。

蒌井君ず、小川さんの銅像が顔を近づけ話し蟌んでいるのを無芖しお私はずんずん進んでいった。

ドアを開けお䞭にはいるず巊手に机が眮いおある。九぀がきれいに䞉列づ぀䞊べられおいる。䞭倮の机の䞊には袋に包たれた风がおいおある。むいおなめる。

蒌井君の姉さんがはいっおくる。机のたえを小走りで通り抜けながら、愛人の歎史 ず気勢を䞊げおいる。ドアの付いおいない出入り口から奥の郚屋に行った。぀たり、その郚屋が愛人たちの居た郚屋なのだ。蒌井君はここで愛人を飌育しおいた。

口に含んだ风が溶け始める。薄いビニヌルのような膜が口䞭に広がる。喉をふさぎ呌吞ができなくなる。手を突っ蟌んではがそうずする。舌の先たで匵り付いおいる。なかなかはがれない。

蒌井君の庭ずいうかゎルフ堎ずいうかどちらずも蚀える緑の芝生の呚りを䞀戞建おの䜏宅矀が取り囲んでいる。䞭倮の長い距離を枡り切っお再び䜏宅街に出るず䜏宅ず䜏宅の間に吹き抜けの屋根だけのタクシヌ䌚瀟があった。車が出払っお䞀台もない。䞀枚の板だけの長怅子が眮いおあった。老婆が二人座っおいる。お花さんず時蚈屋のおばあさんだ。母は東京の音楜専門孊校を卒業するず高校の音楜教垫になった。 母があちこちの神様を蚪ね歩くようになったのも、今なら玍埗できる。母にずっおは、父芪も倫も砎産者である。母の父――私の祖父は、軍に薬を玍入するこずで財を成した人であった。敗戊埌、祖父は远い詰められおいった。母が結婚を急いだのも、その砎産の圱があったのではないか。もし砎産しおいなければ、もっず䞊等な人ず結婚したようにも思えるのだ。そのほうがよかった。そうすれば私は生たれなかった。最終決裁者に远われるこずもなかった。母が昌間はピアノを教え、倜は射出成圢機に付いお、芞術家ず工員を兌務するこずもなかっただろう。寝ずに働いお、挙句の果おが、借金取りに远われるこずになっおしたった。芞術ずは瞁のない平凡な囜鉄職員である父ず結婚を決めた母はすぐに私を生んだ。お産の䌑暇が終わるず私をお花さんに預けお高校教垫を続けた。お昌になるずお花さんが私をおぶっお職員宀にやっおきた。私は乳にむしゃぶり぀きゲップが出おもすい続けるのであった。幞せを満喫しおいたこずであろう。母は高校教垫で終わる぀もりはなかった。孊校が䌑みの日には田舎から䞊野の芞術倧孊たで出かけおいった。有名な教授が䞻催する研究䌚に参加するためだった。そこで頭角を珟し䞀段䞊のステヌゞで脚光を济びる぀もりであった。母が䞊京する日、父も私をおぶっおあずから䞊京した。䌑み時間に䞊野公園のベンチで埅ち合わせる。私は乳にむしゃぶり぀き倧きなため息が出るたで吞い続けるのであった。矎しい家族の肖像である。この光景を誰かが写真に収めおおいおくれたら、そしお私がそれを眺めるこずができたら父ず母を眮き去りにしお逃亡を図るこずもなかったかもしれない。赀マントの女の蚀いなりに父ず母を救うために殺人を犯したかもしれない。この写真を前にしおはみすみす最終決裁者の逌食になるのをだたっおみおいるわけにはいかなかったであろう。

「欲が深かったんだね。無理をしすぎおしたった。肺浞最になっおしたったんだよ。日赀病院に1幎ず半幎、入院した。赀ちゃんにう぀るから離れおいないずダメだず蚀われたんだ。それで仕方なく時蚈屋のおばあさんに預けた。1幎半ぶりの再䌚の日、障子の圱からチラチラ顔をのぞかせるんだよ。こっちを芋おは隠れおたたこっちを芋る。そのうちよちよち歩いおきお膝の䞊にぎょこんず乗った。䞍思議だねえ。芪子の絆っお。遺䌝の力かねえ。䞀幎半も䌚っおいなかったのに母芪だずわかったんだよ」

「どうせ寂しがっお寝付けないだろうからい぀でも来おおくれっおお母さんには蚀ったけど。悲しいねえ。あんなに可愛がっおあげたのに䞀床も来なかったよ。私に䌚いたがっおギャヌギャヌ泣きわめいおいるかず思っおいたのに。やっず来おくれたんだね。ずっず埅っおいたよ」

少し怒ったようにすねおいる時蚈屋のおばあさんであった。隣のお花さんも同意らしくうんうんず頷いおいる。

その時同玚生の橋谷君がタクシヌ乗り堎に入っおきた。謎を解き明かしおくれた恩人である。

小川さんを初めお芋たのは小孊校の四幎生の時であった。ちょうどその前埌の頃であったず思う。校庭の隅で橋谷君がポケットに手を入れおニダニダしながら歩み寄っおきた。友達ずいうわけではなかった。話したり遊んだりする間柄ではなかった。私が䞀人でいるずき向こうから近づいおきおひず蚀ふた蚀なにか蚀っおたた去っお行く。い぀もそれだけのこずなのだ。同玚生だがクラスが別だった。圌に぀いおはほずんど䜕も知らない。私ず圌の共通点はかけっこが速いずいう事だけだった。そのせいで圌は私に芪近感を持っおいたのだろうか。

「男ず女は倜になるず内緒でハメッコをするんだよ」

倧人びた様子でう぀むき加枛にはにかんだ様子で蚀葉を発した。

すごく真実味があった。

「写真があるから芋せおあげるよ」

そういうなり立ち去った。

これを境に母に質問するのはやめた。倩才科孊者が疑問を持ったずきに自らに問いかけるような深刻な顔で母に聞いたものである。

「お母さんにそっくりねっお蚀われるけれど、おかしいよね。䞀緒にいるだけで䌌おいくず蚀うのは倉だず思う」

真理を発芋した科孊者のようなしたり顔で母を困らせたものである。

マラ゜ン倧䌚が橋谷君をみた最埌だった。坂はランナヌで埋め尜くされ進むこずができなかった。抌し分けお远い抜こうずするずたわりじゅうからランニングシャツやパンツを぀かたれいくら足を螏ん匵っおみおもくたびれるだけなのである。そこで私も前を走っおいた橋谷君の腕にしがみ付いお楜に走れるようにした。するず圌は私に協力しおすいすいず運んで行っおくれた。私はなにもせず呚りのみんなを远い抜くこずができお順䜍がどんどん䞊がっおゆく。今床は私が圌に恩をかえす番だ。私は橋谷君のからだをほずんど球䜓に䞞めおしたった。その球を片腕で持ち䞊げるず前方の人䞊みに向けお投げた。䞞くなった圌は飛んでいった。ずころがマラ゜ンランナヌの頭に圓たるず跳ね返りマラ゜ンコヌスからそれお原野の䞋り坂を転げ萜ちおいく。所々岩が出おいおそれに圓たるず圌は宙高く舞うのだった。私は原野を駆け䞋り圌を远いかけた。いくら速く走っおも球䜓の圌にかなうわけがない。橋谷君は遠く離れお小さくなるばかりなのだ。

「それはちがう」

ずお花さんが云った。

最埌に䌚ったのはマラ゜ン倧䌚ではなくガ゜リンスタンドなのだずいう。䞭孊を卒業しおただ䜕ヶ月も経っおいない頃の事だ。枝分かれした二぀の道に挟たれた现長い䞉角地垯にあるガ゜リンスタンド。既に思い出にふける少幎になり果おおいた私は高校を䌑んで䞭孊時代の通孊路で無気力に自転車を今にも倒れそうなくらいゆっくりずこいでいた。ガ゜リンスタンドに立っおいた少幎がポケットに手を入れお近づいおくる。橋谷君だ。

「ここで働いおいるんだ。お金がたたったらバむクを買っお山や海や知らない街ぞ行く。葛岡から出お遠くぞひずりで行く。それが俺の倢さ」

それだけ蚀うず背を向けおガ゜リンスタンドに戻った。そこが橋谷君の仕事堎だった。橋谷君は高校ぞは進孊せず通孊路にあったガ゜リンスタンドに就職したのだ。

お花さんが蚀った。それから半幎ぐらい経っおバむクは買えた。最初の旅で山道を走っおいた。急カヌブのずころでトラックにあたっお厖に転げ萜ちお死んだ。茂ちゃんの同玚生で䞀番先に逝った子なんだよ。

橋谷君が戻っおきたタクシヌに乗り蟌んだ。今の逃亡生掻から助け出しおくれるのは橋谷君きりいない、どこでもいいから䞀緒に連れお行っおもらおうず思った。車内に転がり蟌んだが片足だけが倖に出おいる。二人の老婆が必死で食らい぀いおいる。

「だめだよ。だめだよ。乗っおはいけないよ。そこは私たちの垭なんだから」

狭い車内に無理矢理割り蟌んできお私を地面に蹎萜ずすずドアを閉めおしたった。

䞉人の客を乗せたタクシヌは走り去った。

ひずり取り残された寂しさに包たれお私は別の同玚生を探し求め再び䜏宅街をさたよい歩くのだった。同玚生が芋぀かったら庭の犬小屋に犬ず䞀緒に䜏たわせおもらおう。犬小屋に隠れおいれば最終決裁者にも芋぀からないだろう。䞀日䞀回汁かけご飯を恵んでもらえればそれで充分だ。

䜏宅ず䜏宅の間に亀番があった。立お札には尋ね人が告知されおいる。二人の嚘を残したたた行方䞍明ずなった䞻婊である。写真ががやけお人盞はわからなかったが蚘憶の底で懐かしさず悲しみがうごめいおいる。私より䞍幞な人生を歩んでいる同玚生は誰だろう。思い出そうずしおいるず立お札の䞋に棺桶が眮いおあるのに気づいた。恐る恐る蓋を開けおみた。目がない。県窩から溢れ出た血の赀い雫が涙のように顔面を汚しおいた。

県球を採集したのは誰だ

怒りが突き䞊がっおきたずき無人の通りを圱が暪切った。そこたで行っお通りを芋通すず再び圱が暪切った。そんなこずを繰り返しお圱を远っおいるうちにい぀しか䜏宅街を抜けお建物の立っおいない道に出おいた。線路脇の道ぞず通じおいる䞀本道。

目玉泥棒  

圱は電車に乗っお逃げる぀もりだ。その前に捕たえなければ。

線路脇の道を走っおいた。

はるか前方に停たっおいる電車に圱は吞い蟌たれた。

぀づく

─蚘憶の平面に倢ず珟実ず劄想が滲んでいたす。私の人生のシミが以䞋の目次に蚘しおありたす。
■これたでに公開した小説目次
https://note.com/yudedako28/n/n4faf4d679541
■これたでに公開した日蚘目次https://note.com/yudedako28/n/n3290177d4910
■これたでに公開した手玙目次
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【読者の皆様ぞ】
「茹蛞倢皿」に曞かれたこずは、1998幎から2001幎にかけお曞かれた日蚘も含めお、すべお架空の地名や人名を甚いお再構成した私小説的蚘録である。

いいなず思ったら応揎しよう