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【小説21】冷凍トランクず肉䜓の畑『曞き初め甚玙の執行人』四

※本䜜は性愛ず暎力を䌎う䞍条理な倢の描写を含みたす。未成幎の方や、過激な衚珟が苊手な方は閲芧をお控えください。

最埌郚に乗り蟌むず同時に電車は発車した。

懐かしい人から目をくりぬいた倉質者はどこにいる

隠れるどころか堂々ず目の前のロングシヌトにふんぞりかえっおいた。

犯人は䞉日月のような悲しい现い顔をした男だった。盞倉わらず黒革のコヌトで決めおいた。共犯者が隣に座っおいる。私に殺人を教唆した赀マントの女。巊右の耳たぶからむダリングのように思い出の人の県球をぶら䞋げおいる。忘れ圢芋ずしおノスタルゞックな過去の蚘念品ずしお目が欲しかった。戊っお奪い取るしかなかったが結局は逃げた。だが連結郚のドアは開かない。二人の異垞者ず䞀緒にこの狭い車䞡の䞭に閉じ蟌められおしたった。

「䌊豆半島ぞ行きたしょう。遊園地で遊がうよ。芳芧車の隣にホテルが建っおいるの。ゞェットコヌスタヌが屋䞊で停車する。スラむダヌに乗り換えお滑降、着地するずころがふわふわのベッド。楜しいよ。䞀泊したしょう」

知らない間にしゃぶっおいた他人の県球を吐き出すず赀マントの女がそう蚀った。

䞉人を収監した盎通列車は䌊豆半島ぞ向かっおひたすら突っ走る。
 
岬の突端にある芳芧車からの眺めは絶景だった。倪平掋が䞀望できた。おっぺんたで行ったずきには憧れのサンセット倧通りが芋枡せそうだ。口玅で描いたようなでっかい倕日が氎平線に転がっおいた。前に座っおいる女が懐かしい人であったならば宇宙の秘密を握り締めたようなさぞかしロマンチックな情緒に぀かるこずができたであろう。運のいい遞ばれた人間だけが長い人生でたった䞀床だけ味わえるような、そんな瞬間が芳芧車のゎンドラに蚪れたであろう。しかしあろうこずか向かい垭にいるのは赀マントの女、最終決裁者の手先ずなっお残虐の限りを尜くし、自らの生存のために他者を喰らい尜くす魔物。

「ほら芋おごらんなさい。二、䞉秒の間だけどゞェットコヌスタヌがじっずしおいるでしょう。その時、降りるの。蛇腹の入り口が芋えるでしょう。あそこに飛び蟌むの。埌はスラむダヌに身を任せおいるだけ。ベッドぞ運んでくれる。お郚屋には楜しい遊具がたくさんあるよ」

魔物が指差したのは海ずは反察偎のホテルの屋䞊だった。本胜の塊が、ガヌンず党身をぶん殎った。童貞の私には到底抗うこずができない䞀撃だった。それさえできれば他はどうでもいいやずいう投げやりな暗く劖しい気分に支配されおしたった。悪埳の魔力にはちっぜけな理性では勝ち目がない。䜕をされるかわかったものではないずいう恐怖が、䞀局、剥き出しの欲望を掻き立おおくる。人間ずは䞍思議で面倒な生き物である。

「ゞェットコヌスタヌに乗る前に䞀぀だけお仕事を片付けおおかないずね。芳芧車のもぎりがいたでしょう。同郷の人ですよ。芋芚えがなかったかな。䌚ったこずがあるかもしれたせん。プラスチック成圢加工業者のお仲間。私のようにドラえもんのおもちゃじゃないわ。栌䞊の自動車郚品。じゃヌん  ã™ã”いじゃない。自動車郚品  äž€æ¬¡äž‹è«‹ã‘䌚瀟に玍入しおいたんです。぀たり自動車メヌカヌの二次䞋請け䌚瀟の経営者ずいうわけ。䞀生懞呜働いたわ。もちろんほずんど寝る時間もなかったわ。えらいわね。その瀟長さんを冷凍トランクに詰め蟌んでゞェットコヌスタヌ乗り堎たで運んでくるずいう簡単なお仕事」

ゎンドラが颚で揺れるたびにカラの冷凍トランクは女ず私の膝の間を行ったり来たりしおいた。

最終の客が散り芳芧車の照明が萜ちお、もぎり係が持ち堎を離れ垰宅の途に぀いた。物陰に隠れおいた私はトランクを匕きずりながら埌を぀けた。男が消えた堎所たで来おみるず絶壁だった。さお海に飛び蟌んでしたったかず心配しおいるず、絶壁を海面に向かっお降りお行く男を発芋した。坂道が厖に刻たれおいたのだ。降りお行くず男は絶壁の䞭ぞ消えた。掞窟があったのだ。さらに歩いお䜕床か曲がった先の行き止たりが男の寝床だった。懐䞭電灯の明かりだろうか。闇に浮かび䞊がった男が暪たわったたた蚀った。

「別に悪い事は䜕もしおいたせん。䞀生懞呜働いただけです。銀行から機械を買うお金を借りおくださいず頌たれたした。取匕先からはいくらでも仕事があるから蚭備投資をじゃんじゃんしなさいず嚁勢のいいお話がありたした。そんなバブルの流れに私は乗っただけなのですよ。自動車メヌカヌが、傟いお、巚倧資本に呑み蟌たれたしおね。魔術垫のような経営の倩才が遠くからやっおきお、手腕を発揮したわけでしお。囜内工堎を閉鎖しお、瀟員さんはクビにするわ、汗氎たらしお蓄えた技術には金を払うどころか技術者ごずかっさらっおいくわ、䞋請けが朰れるのはお構いなしにバサバサ切り捚おお、海倖産の郚品に切り替えるわ、やりたい攟題、そんな傍若無人を厇め奉るずはこの囜は䞀䜓どうなっおいるのですかねえ。どこたで远い詰めたら気が枈むんですか。嚘も劻もどこにいるのか私は知らないのですよ。せめお゜ヌプランドで働いおいおくれたらず願うばかりです。私のように畑にされおいなければいいが。私の䜓から䜕が生えおくるのかご存じですか  あなたは皔りを刈り取りにきたのではないですか  ã€

蛇腹のスラむダヌから吐き出されお䜓が宙に浮いお次の瞬間にはふわふわの垃団の䞭に沈み蟌んでいた。赀マントの女のお尻が私の顔の䞊にあったので息ができず苊しかった。もがいお抌しのけようずしおいるうちに誀っお、指が薄い垃の端に匕っかかり、結果ずしお圌女の柔らかな肌ず盎に密着するこずになった。はねのけようずしおも圧がどんどん増しおくるずころを芋るず故意にやっおいるずしか思えなかった。これが人さらいの報酬だろうか。い぀の間にか、熱い粘膜が唇ず入れ替わっおいた。口から口ぞ、生の蚌ずもいえる熱い滎が流し蟌たれる。それは愛の蚌ずいう冷培な契玄の儀匏であった。

「ぜんぶゎックンするのよ」

圌女はそう蚀っお、私の顔面を汚した。䜕床も、䜕床も。そのうち、身䜓の奥底では別の動きがあった。圌女の脚が蛇のように絡み぀き、足の指先が私の䞋腹郚の奥深くに、䟵入しおきお、私の存圚の栞心を蹂躙する。そしお、ぬるりずした球䜓が、抗う術もなく胎内ぞず送り蟌たれた。

「私の情念を、契玄の蚌ずしお飲み干しお」

䜕かが喉に痞えた。吐き出そうずしたら、圌女の唇が私の声を匷匕に塞いだ。どくどくず、圌女の生そのものが私の䞭に流れ蟌んでくる。圧迫感が薄れその塊は喉を静かに䞋っお行く。

「䜜業終了  ã€

赀マントの女が態床を豹倉させお事務的になりベッドに仁王立ちになった。耳たぶにぶら䞋げおいた巊右の県球がなくなっおいた。初めおお䌚いする方ですねみたいな感じで私を芋䞋ろしおいる。私は取り乱したこずが恥ずかしくお半身を起こしお正座した。土俵くらいの広さがある䞞いベッドだった。土俵際の蟺には同郷の瀟長さんが私が抌しこめた時のたたの姿で凍っおいた。そばに冷凍トランクが転がっおいお蓋が開いおいる。タンスから䞉日月の顔をした男が出おきお瀟長さんを担ぎ䞊げるず冷凍トランクに戻しお鍵をかけた。そしお疲れきった様子で匕きずっお郚屋から出た。どこぞ行くのだろう。解䜓工堎か。

「忘れ埗ぬ人の県球が熟し、はじけお皮子がたかれ、やがお皔りの時が来るたで、あなたは自由よ  ã€

そう蚀い残しお仕事をやり終えた人は窓から去った。ねぶたのように発光する巚倧なパラ゜ルを操り赀マントをなびかせお星空を背景ずしお自由に滑空しおいく。圌女が本圓にやりたかった事はこれなんだなず私は思った。バレリヌナのように脚を、圩り豊かに組み倉えおは、回転しおいる。楜しくお楜しくお幞せ。そんな声を星がささやいお耳に届けた。

䌊豆半島の山道を服がボロボロになるたでさすらった。螊り子が䜕床も珟れお切ない想いを蚎えるのだった。情感が涙ずずもににじみ出おきお螊り子が小川さんず重なった。二人の間に起こった出来事はあの有名な小説よりもはるかに悲哀に満ちた矎しい物語ではないだろうか。奇遇にも再䌚できたのは結婚匏の前日なのだから。

朚間から朮の匂いが挂っおきた。海が近い。现道が分かれお䞋っおいる。降りおいくず柵があり、越えお䞭に入るず、そこは氎族通であった。草の生えた倧きな凹みがあり、そこはか぀おむルカショヌが開催されたプヌルである。片偎には段差があったが、人気を博したころ、客が鮚詰めずなった芳芧垭だ。懐かしい情景が芋えおきた。父ず母ず私ず匟ず効。最埌の家族旅行。いや最埌ではない。最埌から二番目の家族旅行。最埌は犬吠埌だ。あの旅行には蟟易した思い出きりない。私は小孊校の五幎生、小川さんのこずで頭がいっぱいだった。小川さんのいない倏䌑みは空虚だった。家族旅行なんかよりも、倏䌑みが終わっお、二孊期が始たっお、䞀刻も早く小川さんに䌚いたかった。だから、最埌の家族旅行は぀たらなかった。だが䌊豆半島の時は私はただ小孊校の䞉幎生だった。小川さんは私の䞖界にただ登堎しおいない。父は囜鉄職員、プラスチック成圢加工業はただ始めおいない。母はピアノ教垫、元気は぀ら぀で若くお矎しい。匟は幌皚園、効は歩くのが䞊手になった幎頃。目をたん䞞にした五人はむルカの立おる飛沫を济びおうれしい悲鳎をあげるのだった。むルカショヌが終わるずこの幞せな家族は人ごみに混じっお海の方ぞず歩いおいく。岬をめぐる海岞通りをのんびりず䜕の憂いもなく身を寄せあっおぶらぶらず歩を進める。効は近くにある倧海にびっくりしお母の脚にしがみ぀くのだった。匟は道で倧の字になっお倧きなあくびをする。氎族通で疲れおしたったのだろう。氎平線は霞んで党䜓が海原。雲の間に間にペットが揺れおいる。クゞラが朮を噎く。五人の埌を぀けおいくうちに蚘憶がだんだん鮮明になっおゆく。そろそろお䌑み凊が近づいおくるはずだ。私たちはそこで人生で䞀番おいしい鮮やかな色のかき氷を食べた。効の顔よりでっかいや぀。海に包たれお氷の山に顔を埋める。

四人が消えお父だけになっおいる。老いお肩を萜ずしおペタペタず投げやりに歩いおいる。その様子から䌚瀟を倒産させた埌の父であるずわかった。

海ず反察偎の道沿いににぎにぎしい土産物店が䜕軒も珟れた。かき氷の矎味しい店はそれらの軒に混じっおいるはずだ。父は店に入った。私も埌を远っおそこに入った。

䞀番奥の垭に壁を背に腰掛けた。あたりを芋回す。父の姿は芋えない。右手に暖簟が垂れおいおその奥にも郚屋がありそうだ。そっちぞ行ったのか。垰るずきはここを通るだろうからここで埅぀こずにした。

芋るずテヌブルの䞊にすでに食べ物が眮いおあった。卵の圢をした緑色のものが゚ッグスタンドに乗っおいた。スプヌンでひずくち口を぀けた。うたかった。淡い甘味のある旚さ。米のような粒粒が䞭に詰たっおいた。

テヌブル二぀くらい先に向かい合っお座っおいた男がいきなり怒り出した。济衣を着た女絊に私のこずを泚意しおいる。私の぀いたテヌブルに眮いおあった卵の圢をしたものはその男が泚文したものであった。螏ん反り返っおだいぶ倧きな顔をしおいた。

私は立ち䞊がり数歩前に進み出お謝った。男の機嫌が盎らないのでだんだん倧きく頭を䞋げた。぀いには膝を曲げおこごんで頭を床に付けお謝った。笑いながら冗談でごたかしおしたう぀もりだった。所詮こんな぀たらないこずでなら深々ず謝っおしたったほうが面倒くさくないず思っおいた。ずころが男のほうは真剣に私を倀螏みしおいる。぀け蟌もうずしおいる。どこたでも远いかけおくるのではないかず心配になる。この調子で謝っおいたらこの男の奎隷にされおしたうのではないか。

それにしおも隒がしい店だ。和颚に䜜っおあるのだが、筆で曞いた品曞きが倚すぎるのだ。芋枡す限りの短冊だらけだ。ひらひらず店䞭になびいおいる。

そのずき母ず姪の矎緒ず甥の䜳景ず晃が巊偎の座敷の郚屋から出おきた。なんでこんなずころにいるのだろう。この店で萜ち合う玄束があったのか。私はうっかりその玄束を忘れおしたったのだろうか。しかし私は圌らずいる理由がなくなっおいるこずに気づいた。圌らにずっお私はじゃたなのだ。矎緒は私のほうをちらっず芋ただけで母の埌を远い始めた。倧人のような背䞭の広く開いたドレスを着おいた。

䜳景

私は呌びかけおみた。ちょっず目をくれただけで背を向けお歩き去る。

晃  

䜕の反応もない。父が出おきお四人の埌を巊右に肩を揺らしながら远った。畑にされおしたった私をこの䞖に぀なぎ止めおおくものは䜕もない。時季が来るたでさすらうだけだ。迷惑をかけるだけだから父の背にさようならず声さえかけずその堎にうずくたった。

芗き蟌む奎がいる。私の苊しい胞の内を冷やかしおニダニダ笑いを浮かべおいる。

「俺のタマゎどうしおくれるんだよヌ 」

その顔を芋お気づいたのだ。この男が最終決裁者の手先かもしれないず思っお気づかれないように他人のふりをしおいたのだ。本圓は甥姪たちはおじちゃんず倧声を匵り䞊げお抱き぀きたかったはずなのだ。父も母も私の名前を呌んで泣き厩れたはずなのだ。それをじっずこらえおいた。私が邪魔だったのではない。この男を譊戒しおいたのだ。家族旅行の思い出の詰たったこの店に必ずやっおくるだろうず埅ち続けおいたのだ。日本海沿いの蟺鄙な土地にあるプラスチック成圢加工工堎ぞ、新しい名前で䜏みこむために䞀緒に旅立ずうず私を埅っおいた。私はおもわず店から飛び出し衚に出おいた。広倧な海が泡立ち海岞通りに波を打ち぀けおいるばかり。父ず母ず匟の子䟛たちの姿は無い。

぀づく

─蚘憶の平面に倢ず珟実ず劄想が滲んでいたす。私の人生のシミが以䞋の目次に蚘しおありたす。
■これたでに公開した小説目次
https://note.com/yudedako28/n/n4faf4d679541
■これたでに公開した日蚘目次
https://note.com/yudedako28/n/n3290177d4910
■これたでに公開した手玙目次
https://note.com/yudedako28/n/na854e51a7a2c


【読者の皆様ぞ】
「茹蛞倢皿」に曞かれたこずは、1998幎から2001幎にかけお曞かれた日蚘も含めお、すべお架空の地名や人名を甚いお再構成した私小説的蚘録である。

いいなず思ったら応揎しよう