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『悲劇でなく、喜劇を。』#23 last song 悲劇でなく、喜劇を。



    春はいつも、少し残酷だ。


    桜が咲き、真新しいランドセルが光る。

    「おめでとう」が飛び交うその季節に、
    私は何度も立ち止まった。



    双子は、それぞれの道を歩き始めた。



    長男は支援学校へ。
    次男は地域の学校の特別支援学級へ。


    これでよかったのか。


    あふれそうな言葉を飲み込みながら、
    私は問い続けていた。

    精一杯の笑顔を貼り付けて、
    幸せいっぱいの、一年生の母の顔をした。


    時間は待ってくれない。
    不安を抱えたまま、誇ってみせた。
    けれど心の奥は、ずっと震えていた。



    あの頃の私は、
    自分の人生を悲劇にしてしまいそうだった。


    いや、きっと今も。
    気を抜けば、簡単にそちらへ傾く。

    恐怖は消えていない。
    これから先に何があるのかも、分からない。


    それでも。
    そのたびに私は、選び直したい。



    可哀想。
    大変そう。
    あなたは選ばれた人だね。



    そんな言葉を向けられるたび、
    私は小さく首を振った。


    逃げたいんだよ。
    逃げられない。
    ただきっと、
    逃げたらもっと後悔する。


    欲しかったのは、
    同情でも、称賛でもない。


    「どうあるか」を選ぶ言葉だった。


    「SPY×FAMILY」という物語と、
    「喜劇」という歌が、


    私の中にその言葉を落とした。


    悲劇でなく、喜劇を。


    転ぶことは避けられない。
    けれど、転んだまま終わるかどうかは、
    私が決められる。


    泣きながらでもいい。
    泥だらけでもいい。
    立ち上がるとき、
    何かひとつでも掴んでいけばいい。



    傷も、怒りも、迷いも、
    抱えたままでいい。


    三人の母として。
    ひとりの人間として。


    揺れながらも、
    それでも私は、選び続けたい。


    私は、
    悲劇を喜劇に変える。




     
     
    自閉症・重度知的障害の双子と三男と歩む日々。 3人の息子と日々を乗りこなす。 絶望の底から見つけた「フツウノクラシ」を綴っています。 消えたくなる夜に、一人じゃないよという灯が届きますように。 深い夜を越え、凪の朝を待つ──夜凪より。

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