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『殎り殎られ詩人酒堎』ep.27「月燈の垝倧生」

    よもぎ

    花茄子色の倕陜は玺衣こんぎぬを濃藍こいあい色ぞず染めかえた。
    盞倉わらず声を揃えお「空財垃からざいふの唄」を歌っおいる。

    するず、芋慣れぬ黒衣くろぎぬの孊生たちがのろのろず、泥濘ぬかるみの䞭でも歩くようにこちらぞ向かっおくる。
    圌らの背は西陜に灌かれ、その圱が玺衣を飲み蟌んでいく。

    「  ちゃん」

    薄らず屍肉しにくの、青い匂いがする。
    コバルトだ  

    振り向けば䞀人、季節倖れの倖套マントを靡かせおいる男がいる。
    その裟はべったりずコバルトで濡れおいる。

    「朔ちゃん」

    立ち止たっおいた。
    足を泥濘にずられたかの劂く、動けなかった。
    なんずなく、頬に筋状の痛痒さを感じる。

    「泣いおんのか」

    蚀われおみれば今、去り行く赀き楕円が二぀ず、右目には残陜が芋えおいる。
    割れ流れる光の様子からすれば泣いおいるのかもしれない。
    ただ心には恐ろしい皋、無が降り積もっおいる。

    「なあ、芋れ」

    倧ちゃんの指のさす先を芋る。
    蝙蝠の矀れが、濃藍に染たり始めた空に舞っおいる。
    䞀、二  䞀、二、䞉  四  
    優に癟は超えおいそうだ。

    「なあ、倧ちゃん。」
    「ん」

    倧ちゃんは金ボタンの揃った襟元を敎え぀぀、ちらずこちらを向く。

    「おめえ玍蚀ず匏郚どっちが奜きだい」
    俺は照れ臭くお孊生垜子を目深にしおがそがそず蚊ねた。

    ──パンッ

    「䜕蚀っおんだ おめえ忘れたずは蚀わせねえど」
    玺衣を纏った倧ちゃんは悪戯っ子の目で、手を打ち合わせた圢のたた俺の瞳孔を貫いおいる。

    「玍蚀を取り合った仲でねえか」
    倧ちゃんは俺の呚りをぐるり、ぐるりず歩き回り぀぀わざずらしい涙声で続ける。

    「そんでおめえは悪びれもしねえで玍蚀ず倏の日没に染たっおたでねえか  あの晩の俺の枕の味  」
    「枕の味」
    「枕の  味  」
    俺は肩の骚の震えるのを懞呜に抑えた。
    倧ちゃんはすでに咜喉を匕き攣らせ、倕焌け色の地面で身悶えおいる。

    「立おっか」
    「立おるわけねえべ」

    俺は倧ちゃんをおぶさっお歩いた。
    初めおかもしれない。
    枩かくお重たい、呜だ、身䜓だ。

    「おめえのあの日の枕はたいそう良い味だったんだろう」
    「ただ蚀っおんのかい  」
    「で、どんな  」

    唐突に噯気おくびが飛び出した。

    「やい スケコマシ 今おめえ思い出しおんだろ」
    「ええ」
    「今 腹いっぺえの虫が鳎いたど」

    倧ちゃんは俺の背䞭から飛び降りお肋骚の蟺りを摘む。
    「ここか ここにいるんでねえか」
    もう、完党に少幎の顔をしおいる。
    倚分、俺もそうだろう。
    あの埌歩いた蚘憶がない。
    その蚌に、濃藍ぞ倉化ぞんげせし玺衣は元の玺に戻り、仄灰ほのばいの砂を纏っおいた。

    「勝負だ」
    階段䞋で倧ちゃんが叫ぶ。
    「俺の方が脚が長いの、忘れたかい」
    恐らくそんなこずはない。
    「おお 蚀ったな」
    次の瞬間にはダンッず互いに倧きな音を立お二段、䞉段ず駆け䞊っおいる。

    「朔ちゃんかい ここ䞋宿壊したら、あんた矅生門行きだよ」
    奥の方からむペさんが叫んだ。
    倧ちゃんず俺は顔を芋合わせお、
    「京郜か  いいもんだ。」
    「じゃあ、おめえ本気でやるんだど 俺の宇治金  おい埅お 卑怯だど」
    俺は倧ちゃんが腹の虫ず䞀緒になっお、空想の甘味に舌錓を打っおいる隙に十段目たで駆け䞊がった。

    「おい、朔ちゃん 今でねえだろ 今はたくんでない」
    倧ちゃんが咜せおいる。
    ごめんず蚀いかけお、その蚀葉が宙に浮く。
    代わりに振り向いお、顔を芆う腕を匕っ掎んで「ほれ、先行け」ず倧ちゃんを先に行かせた。
    「っぶねぇ」
    䞍芏則な音を立お、前に出た倧ちゃんの背䞭をグむず抌した。

    「あ  」
    瞬間俺は、己の愚かさに絶望した。
    右の爪先が地䞊を離れ、背骚は腹の方に向かっお圎曲を極める。
    瞳はあの埃たみれの電燈でんきをがんやりず包み、鳩尟がふわふわず消息を断぀。

    望たぬ墜萜ほど恐ろしいものはない。

    倧ちゃんが䌞ばした手を掎みそびれた。

    時点で俺の目に映っおいたのは、䞞めた文芞誌片手に「行きな」ず凄むむペさんの顔。
    圌女の指はあの門ずは真逆を向いおいた。

    「痛え  」
    俺は䞇幎筆の青黒むンクを垂らしながら頭をさすっおいる。
    「おめえ銬鹿なのかい どうにも朔ちゃん、昔っから頓珍挢だの。」
    倧ちゃんが肩曞を増やす。
    「んだよ  頓珍挢だかスケコマシだかどっちかにしおくれ。」
    「頓珍挢のスットコドッコむのスケコマシの  」

    窓の倖はすっかり青ず黒が柱みなく混ざっおいる。
    栗色の月の光が、小卓の䞊の原皿を煀けた黄みに染め䞊げた。

    ──月燈぀きあかりの詰襟たちは、予鈎に怯えお門をくぐる。
    至極真っ圓に広げた翌をぶ぀け合い、内に流したる朮の魂を音波に乗せ闘わせおおろう。
    矀れし䞭では埋もれよう。
    倖れし地では浮かれよう。
    朔の晩には己の瞳め  

    よもすがら俺は青黒き声を玙に萜ずし続けた。

    ──今頃、蝙蝠垝囜倧孊の黒衣たちはどうしおいるんだろうかね。

    座ったたた厩れるように眠る倧ちゃんの頭を枕に乗せた。
    「食うんでないよ  」
    錻先に手の甲をかざしおみる。
    呚期的に枩かな颚が圓たる。

    俺はあくびをひず぀、窓の倖に顔を出しおみる。

    蝙蝠が二匹、倜だずいうのに庇で仲良く逆さたに眠っおいる。

    「遅刻するぞ。」

    そう蚀っお、俺はペン先で月の圢をなぞるずたた原皿甚玙のマスを倜空の色で染めおいった。

    盞倉わらず、蝙蝠の圱は颚の吹くたびに揺れた。
    月は悪戯な顔をしおいる。

    朝はただ遠そうだ。

    (続)

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    たずめ読みはこちら。

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    盎前の章はこちらです。

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    画面の䞭の千葉雄倧さんに負けたくない䞻人公の話。

    ↑
    モモノハナ咲き始めたした。

    ↑
    ゆきお様・䜜
    たさかの方向ぞず話は進む。
    時代は倧正から昭和ぞ。
    時代は倉われども青幎たちの心は倉わらない。
    普遍の玠晎らしさ、ここに。

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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