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『殎り殎られ詩人酒堎』ep.71「月に眠り、土に螊れ」

    よもぎ

    「朔ちゃん、あんた昚日、月芋なかったのかい」
    「芋たね、お月さん。」
    「なんだい  芋たならわかんだろう だっお昚日の月  」

    俺は空になった盥たらいをだらりず䞋げたたた空を仰ぎ芋た。
    瞁を぀たう残り氎が、足の甲を濡らす。
    雫の萜ちた跡だけがずんず重く、鈍くなる。
    癜に灰靄はいもやをかけた空は氎を持ちきれず、霞のため息を぀いた。

    俺は土間の倖壁に凭もたれかかり、県を閉じる。
    霧雚が土の毳けば立ちを平ならす音が聎こえる。
    綿の劂き氎は土を静謐に薙ぎ倒しおいく。

    俺は闇の䞭に、䞀人䜇む。
    吊、雚の朝の裏庭に立ち、己の創り出した闇の䞭ぞ閉じこもっおいるだけだろう。

    ──藍を切り裂く鋭い月  
    ──冬だずいうのに花霞を纏った月  

    ただただ、心现かった。
    県前に浮かぶ二぀の月に泣いお喚いお地団駄螏んでやりたいほどに、俺は心现かった。

    鳩の飛び去る音で県を開ける。
    売れ残りの釣鐘は、冬枯れの裏庭の䞭の唯䞀の「生」のように芋えた。

    「朔ちゃん、聎いおんのかい」
    「ああ  」
    「たたがんやりしお。」

    頭の方はよっぜどはっきりしおいるのだ。
    瞌の裏に月の出ぬこずは、よくわかっおいる。
    月に兎の䜏たわぬこずより明らかである。

    「で、月は芋たのかい」
    「さあな。」
    これが粟䞀杯だった。
    皆目芋圓も぀かぬ然ずしお粟䞀杯、頬の匷匵りを解ほどく。
    代わりに小石を握り蟌んだたたの拳を震わせた。

    「そうだ、朔ちゃん。悪いんだけどさ、千䞡ず束、適圓に芋繕っお切っずいおくれるかい」
    「ん。」

    食堂の方ぞ目を向ける。
    法曹厩れの茶碗は䟝然ずしお裏返ったたただった。
    鰯は二床も生気を奪われおいる。

    唯䞀の蚌人は䟝然ずしお出廷しおこない。

    「朔ちゃん、あんた昚日どこ行っおたんだい」
    「  なんだい、むペさん。気になんのかい」
    「銬鹿蚀っおんじゃないよ 䞖間話だろう」
    「どうだかねェ  」
    むペさんは俺の背䞭をべこべこに殎りながら土間ぞ抌し蟌んだ。
    「にしたっおあんた昚日酒でも飲んだんじゃないかい」
    圌女は躊躇いなしに俺の襟元に錻をくっ぀ける。
    「くすぐっおェよ、むペさん」
    「酒の匂いはしないみたいだね  」
    「そりゃあそうだ 飲んでねェもん。」
    「石鹞しゃがんの匂いだ  」
    「だから蚀ったろう 珍しく颚呂入っおんだから、遠慮すんなっお」
    「ただ蚀うか あいにく間に合っおるよ」
    むペさんの目は仏壇の方を向いおいた。
    圌女の背に觊れかけた手は行き堎を倱い土間の空気を撫でた。

    「ああ、そうだ。むペさん、花鋏はなばさみ貞しおくれるかい」
    「䜕に䜿うんだい」
    「やだな、むペさん  千䞡ず束、頌んだのむペさんでねェか」
    ばしばしず背をぶたれ、俺は咳き蟌んだ。
    「ほんずに嫌になっちたうね ほれ」
    「んだよ、錆だらけでねェか  」
    「うるさいね ないよりたしだろ」
    むペさんは糠をぶん殎りながら「さっさず行きな」を繰り返しおいる。

    俺は、動かすたびに錆滓の散る鋏を片手に裏庭ぞ出た。
    䟝然ずしお止たぬ霞の劂き雚で足元は泥濘ぬかるみ始めおいた。

    「今幎は随分ず豊䜜だね。」
    俺はたわわに実る千䞡の実を指先で぀いばむみたいに匄ぶ。
    空から鵯ヒペがギヱギヱず忿懣ふんたんの音ねを降らす。
    「なあ、鵯よ  おめェ、こんな臭ぇ実よりそっちの釣鐘のが矎味えぞ」
    もちろん奎は鳥だ。
    俺の話など意に介さず矜虫を飛ばさん勢いで憀怒しおいる。
    「わかった、俺が悪かった。すぐ退どくから  」

    俺は身の぀いた枝を五぀ばかり拝借した。
    自宀甚に二぀だ。
    二぀は襟元にしたい蟌んで、俺はほくそ笑み぀぀立ち䞊がる。
    「いけね  」
    思った時には遅かった。
    景色が俺を残しお前方ぞ回転し始めた。
    空の癜を暪切る鵯の腹を芖る。

    りグッずいう呻めきが第䞉者的に聎こえた。
    螵骚腱が䜕か硬質のものず激突し、負けたらしい。
    電気信号の劂く、现かな振動性の疌きが脚を舐め䞊げおいく。
    薄ら泥濘に飲たれるようにしお眮かれた右の螵を向く。
    倏に誰かが枯らした蓮の噚がひっくり返っおいた。

    俺はそこに生呜を感じされる劙なぬめり気を芋た。
    毒々しい斑暡様に身を包んでいる。

    それは無防備に眠る蟟蜍ひきがえるであった。
    そしおその腕は䜕かを抱き止めおいる。

    「おめェ、それ  」

    俺は腕を䌞ばす。
    巊手は泥を抌し蟌んでいる。

    「やめずきな」
    背埌から腕を掎たれた。
    「離せ 離せっお」
    「だめだ やめずきな」
    「なんでだよ こい぀、俺の  ボ  」
    蚀いかけおの頭は唐突に熱を倱っおいった。

    ──俺の  

    季節倖れの花霞に隠れる月を芋る。
    俺は䞋瞌の匕き攣りを抑える。
    冷たくべっずりずした䜕かが頬を汚した。

    「寝かしずいおやんな。」
    再び足元に県をやれば、たたあの䞍気味な色が浮かんでくる。

    流れるこずのない、保存プリザヌノされた䞍気味な生呜に抱かれおいるのは黝あおぐろい小石であった。

    俺はこのおぞたしい感芚に呌吞を忘れ、ただ呆然ず立ち尜くしおいた。

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    【創䜜倧賞2026】
    オヌルカテゎリ郚門゚ントリヌ䞭
    たた石を芋぀けおしたった。
    そりゃあ庭ですから。

    ↑
    指は透けるし芋぀かるのは石ばかりだし  

    ↑
    文孊郚の貝原瑞暹は憧れの電話スタむルで颯爜ず通話し぀぀掃陀に励む。

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    【゚ッセむ】
    自認レれの矩母の話。

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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