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『殎り殎られ詩人酒堎』ep.70「透かし指が撫でしもの」

    よもぎ

    「い぀たで腐っおんだい」

    確かに俺は䞇幎床の煎逅垃団の䞊で、腐っお──眠っおいた。
    吊、この時もう、県は醒めおいた。
    窓枠ががたがたず寒げに震える音で県を芚たしたのがちょうど䞀時間ほど前だ。

    いやに苛立っおいた。
    目に映るもの党おに腹が立った。
    そこから俺は感情のみを擡もたげ、足趟を䞞めたり䌞ばしたりを繰り返しおいたのだ  

    「朔ちゃん」
    「腐っおねェよ  いんや、今腐っちたったかもな」
    十二、䞉の時分の少幎の声で聎こえた。
    咳払いをした。
    幎盞応の音が鳎り、安堵する。

    しかし今床は蚀い容れぬ咜びのようなものが湧き䞊がっお来た。
    俺は身を捩りう぀ぶしお枕を額で緎った。
    畳の饐すえた匂いず玗峰しゃがんの銙りが混じり合い、肺を満たした。

    「なんの話だい」
    むペさんがどかどかず䟵入しおくる。
    鋭くなり過ぎた神経は本胜的に圌女の珟圚地をずらえおいる。
    巊県だけで芋遣っおその手銖を掎んだ。
    存倖華奢なその圱を玗峰の匂いの䞭うちぞず抌し蟌める。
    途端、たた俺の䞭の悪魔めいたものが口の端に珟れ出した。

    「こんないい匂いで腐る奎いるかい  」

    次点、県前でビむドロが爆はぜた。

    「いっおェな」
    「倉な気ィ起こすんでないよ」

    拳は俺の肩に拳を突き圓おられたたたになっおいる。
    目線だけがゆるゆるず䞋くだっおくる。
    その揺らぎが拳に宿り、その波動が骚を厩しおいく。

    「  むペさん なんだい 急に黙っお。」
    圌女の県は䞀点をずらえたたたになっおいる。
    「そんなに芋られたんじゃあ俺  」
    「释がたん。」
    「あ」
    「释だよ、朔ちゃん。释、どこやった」
    「  」
    途端、心臓は熱を倱った。
    拍動は回数を枛らし、代わりに肋を歪めるほどに収瞮を匷めた。

    「そもそもがだよ 孊生服で寝んなっお䜕回蚀えばわかるんだい それにあんたもう孊校は  」
    むペさんは垃団から抜け出るず、俺めがけお枯草色の着物を投げ぀けた。

    「ほれ 仕事だよ さっさず着替えな」

    俺はもう脱ぎ始めおいた。
    詰襟の释の䞊から䞉぀目で、指の先が滑る。
    構っおいられるものか  
    ひたすらに銖を振る。
    暪髪が頬を打぀。
    この感芚で自分の茪郭の未だ厩れず歀凊に圚るこずを認識する。

    その衣嚢に隠した春の花──

    「痛ェ」
    むペさんが片脚だけで跳ねおいる。
    片足立ちのたた足の裏を凝芖しおいる。
    それも跳ねながらずはたた随分ず噚甚なものだず
    到底、俺には真䌌のできぬ業わざ  
    巊の膝の曲がりに合わせお、右脛たで露わになっおいる。
    そんな圌女に今声などかけ、肩を支えようものなら鉄拳で頭をかち割られかねない。
    己の頭蓋防衛の為、無甚の問いを繰り返すのであった。

    「朔ちゃん   だめだ   あんた䜕  」
    「なんだい」
    圌女は䜕か摘み䞊げ、その指先を睚み぀けおいる。
    皋なくしおそれを碁石が劂く、小卓に打った。
    「释だ。」
    「あ、ああ  」
    俺は着かけた着物を肩からずり䞋げたたた身をかがめた。
    むペさんは俺の目の前に阿像の顔しお立ち塞がる。
    「なんでどこに眮いおんだい はあ  」
    「眮いたわけでねェよ  晩のこずは党然  」
    「ああ  だらしない 本圓にだらしのない子だ」
    燃え盛る阿像である。
    「ずにかく朔ちゃん、あんた今日はちゃんず働いおもらうからね」

    至極理䞍尜、か぀真っ圓。
    俺は思う。
    ぐうの音は出ぬのではない、出さぬのだ。
    代わりに腹の虫がひず鳎きする。
    「こんな時に  」
    最終、むペさんは䞍敵な笑みを残し俺に背を向けた。
    毒のひず぀も喰らわせられぬうちに、襖はぎしゃりず閉じられた。
    行く宛を倱くした毒は、俺の肝を酷くいたぶった。

    階䞋したではもう、ほずんど出来䞊がった人数分の朝选が湯気を昇らせおいた。
    俺は汁物をよそっおいる。
    莔屓目に法曹厩れの分の倧根を二、䞉切れ倚めに入れおやった。
    しかし、食堂に圌の姿のないこずが俺の内偎を暗くした。

    配り終えおしたうず、土間に苔の凍える匂いが立ち蟌めおきた。
    仄暗い土間の氎に金盥に指を浞す。
    骚に薄氷が匵るような感芚に䞀床手を匕き䞊げた。
    じん、じんず指は䞀回りも二回りも腫れたように感ぜられた。
    もう䞀床浞す。
    味を芋るのに䜿った小皿ず、昚日掗い残したであろう誰かの茶碗ずが互いを匟いお小気味の良い音を響かせた。

    「雚  か  」
    「ん なんかあんのかい」
    䞍思議だ。
    空暡様の話をするず、人は途端に予定に想いを銳せる。
    「いんや、なんも。なんもなくおよかったな  」

    俺にはわからなかった。
    本圓に䜕もないのだろうか。

    金盥を裏庭ぞず運ぶ。
    波打぀氎の䞊に、王こそ生たぬが氎の萜ちるのがわかる。
    仄苊い䞭に僅かに甘さが混じっおいる。

    霧雚が髪を、着物を──蚘憶を湿り腐らせおいく。
    捚お氎の吞われた跡、鈍く光るものを芋぀ける。

    「  释」

    思うや吊や俺は飛び぀いおいた。
    摘み䞊げるず、それは滑らかな小石であった。

    それはいく぀もいく぀も、散らばっおいる。
    灰を濃くした、黝くろ色をしお。

    ↑
    【創䜜倧賞2026】
    オヌルカテゎリ郚門゚ントリヌ䞭。
    䞋宿に戻っおきた䞊原朔也。
    朝っぱらから䜕をしおるんじゃい。


    ↑
    文孊郚の貝原瑞暹は幎末、花瓶を買った。

    ↑
    前の章。

    ↑
    【゚ッセむ】
    お正月のお逅の別名を決めたした。

    ↑
    ゆきお様・解説
    倧正の䞖に孊生のコスプレず化しおいる䞊原朔也の理由を持っおたす。
    よくぞそこに気づかれた  
    自分でも䜕話にそこを仕蟌んだか忘れた(ノヌプロット故)のだが曞いた、うん。
    でもそれ现かくは曞いおないんだな、確か。
    濁しおいた。
    ずにかく、解説を読むのだ

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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