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【完結枈】溶けたバニラず方䜍磁針「虹行きの切笊」ep.8

    よもぎ

    「乗っおいきたせんか」
    「华䞋。」

    倜空を瞊暪無尜に這い回る、いか぀い遊具に目を茝かせおいるこの五歳児みたいな人間を、いかに無事に家たで送り届けるか。
    それが俺の䜿呜だ。

    「では、戊慄迷宮、、、、  」
    「もっずだめ。」
    「けち。」

      そう、かもしれないな。
    誰かの手から離れたらしい銀色の颚船が、䞊ぞ䞊ぞず昇っおいく。
    「あ。」
    誰の声だったのだろう。
    俺か、それずも颚船の持ち䞻か、それずも──
    届きもしないのに、空ぞず手が䌞びおいた。
    ヘリりムガスで匵り詰めた颚船は、加速床的に空を目指す。
    ゞェットコヌスタヌが攟぀光がレヌルに沿っお曲線を描いた。
    人々の熱を垯びた絶叫が、光の軌道を走り抜ける。
    匷すぎる光で、颚船を芋倱った。

    「あれ  どこ  」

    ずいぶん長いこず䞊を向いおいたせいだろうか。
    頭を取り囲むようにズキズキずした痛みが现い螺旋状にたずわり぀いおきた。

    地面に目線を萜ずす。
    空の星が党郚萜ちおきたかの劂く、キラキラしおしたっお平衡感芚がいかれた。
    よろめいた埌、甘い匂いを嗅いだ気がする。
    バニラアむス  いや、もう少しさっぱりしおいるような。

    「ここですよ。」

    声に揺り起こされるようにしお、県を開けた。
      ずいうこずは、俺は眠っおいたのか

    「おはようございたす。」

    蟺りはただ暗い。
    長く続いた高熱から芚めた時のような感芚に、しばらく茫然ず目の前の景色を眺めおいた。
    さらさらず葉擊れの音が聞こえる。
    音ずは裏腹に、生ぬるい粘着質の颚だ。
    それでいお頬や額、銖筋  
    そこに圓たる颚は冷えお、心地よかった。

    身䜓を䌞ばそうずした時、ようやく自分が地面に座り蟌んでいるこずに気づいた。
    尻の䞋には、レゲボンのマフラヌタオルが敷かれおいる。
    「いや、これ  」

    空から声が降っお来る。
    ゞェットコヌスタヌだ  
    䞊を向くのはなんずなく怖くお、う぀むいおいた。

    「ふぞは  」
    ふぞは  
    出した぀もりの音ず、実際耳に届いた蚀葉がずれる。
    䞍芚にも俺はぷっず噎き出しおいた。
    目の端で、青い色ががやけおいる。
    頬がひんやりずしお、心地がいい。
    すぐ目の前で、癜石が笑っおいる。
    「ははぞほ」
    瞊開きの口では、どうにも思い通りの蚀葉は出おこない。
    「離せよ  」
    「ふん」
    「うん。」
    「はぞお」
    「やめろ。」
    もどかしさがどうにも可笑しくお、やめどころを倱っおいた。

    「怋。」
    怋。
    「あれ」
    蚀えおしたった。
    「なんでしょう」
    目の前からしおいたはずの声は暪に移動しおいる。
    なんずなくきたり悪い気がしお、そこらじゅうを芋枡した。
    埌ろには、ヒヌロヌショヌのポスタヌが貌られおいる。
    「これっお  」

    正面に向き盎った俺は、頬をシャツの袖で拭った。
    ぱきっずいう音の埌、隣から差し出されたのはポカリスりェットだった。

    ──ありがずう。
    玠盎にそう蚀えたなら。

    「ぬるっ」
    口に含んだ途端、蚘憶が吹き飛ぶほど甘く感じた。
    確かめるようにもう䞀床、頬が砎裂しそうなほどに泚ぎ蟌んだ。
    どうにも枩床を感じない。
    突発的に叫んだあの蚀葉も、我ながら嘘臭い。

    「それ、君の䜓枩ですからね。」
    癜石は䜕食わぬ顔で俺のず同じペットボトルを傟けおいる。
    二぀の青いラベルを幟床も幟床も芋比べた。
    俺は銖を傟げたり、頭を掻いたり、倩を仰いだり、どうにも萜ち着かなかった。
    奎の喉が䞊がり䞋がりするのを盗むように芋た。
    俺の知っおいるポカリじゃないだなんだず散々に隒いだ。
    最埌の䞀滎たで飲み干した癜石は、ご䞁寧に手を合わせ「ごちそうさたでした」などずやっおいる。
    もう䞀口、恐る恐る口に運ぶ。
    「甘  」
    ふふっず笑う癜石の暪顔をゞェットコヌスタヌの軌道が撫でた。
    俺はキャップを閉め立ち䞊がる。
    レゲボンのタオルがしわくちゃになっおいる。

    すっかり人のはけたステヌゞの方を芋遣る。
    「ああ  」
    ぀い、声が挏れた。
    物販テントがちょうど解䜓されたずころだった。

    癜石は俺の手からタオルをさらうず、歩き始めた。

    「銭湯でも寄っおいきたすか。」
    「寄らねえよ」

    タオルのはためきは遠ざかっおいく。

    俺はポケットの䞭で携垯を開いた。
    すぐに閉じた。
    「怋、ちょっず急ぐぞ。」
    街路灯䞉本分先、声を匵った。

    頭の埌ろで手を組み、俺の方を向いたたた歩く癜石は銖を傟けた。
    「だから  急ぐ  」
    喉が掠れお声が途切れた。

    「なら井䞊、 駅たで競争したせんか」
    「は」

    たた圢成倖科医の手を煩わせる぀もりか
    今床は䜕針瞫う぀もりだ。
    止めねば  
    奎はくるり、ず俺に背を向けた。

    「埅お 埅おっお」
    そしおたたくるり、ず身を返しおこちらを芋た。

    「もうちょっず、近く歩けよ。」

    空はもう黒かった。
    星の呚りだけが、青くがやけおいる。

    列車がゆるゆるずホヌムに入っお来た。
    車䜓を芆う、ベタ塗りの青い富士山にはおどけた目や口が描かれおいる。
    傑䜜ですね、ずかなんずか蚀っおなかなか乗り蟌たない癜石を無理矢理車内に抌し蟌んで、怅子に座らせた。

    昌間の混雑が嘘のように列車の䞭はがらんずしおいた。
    癜シャツにネクタむを締めた人や、小排萜た杖を膝の間に立おる人、残りは俺たち同様、冷めきらぬ熱に朊朧ずする矀れの䞀郚。

    走行音だけが鈍く響いおいる。

    隙間だらけの座垭にから車窓を眺めた。
    窓の倖にはほずんど光がないらしく、ガラスには車内灯に照らされた乗客の姿ばかりが映し出されおいる。
    俺は隣に座る男の䞀挙手䞀投足を向かいの窓で芳察した。
    デニムのポケットに手を突っ蟌んで、䜕やら床を芗き蟌んでいるらしい。
    その手前に䞋がる吊り革が、ゆらゆらず揺れおいる。
    催眠術の劂く。
    錻が぀ん、ず痛んであくびがでた。

    「井䞊。」
    肩を叩かれた。
    ず蚘されたむダホンが差し出されおいる。
    「聎きたせんか」
    癜石は真四角の銀の犿げたプレむダヌをかしゃかしゃず振った。
    俺は頷くだけ頷いお、鞄からiPodを取り出しお癜石に持たせた。

    「こっちで聎けば」
    奎の耳に、のむダホンを突っ蟌んだ。
    「ランダムでいい」
    癜石が頷くか頷かないかのうちに、再生ボタンを抌しおいた。

    右耳に泚がれる走行音ず、巊耳に泚がれる音楜は頭の䞭で結ばれおはほどけ、ほどけおは結ばれお、そんなこずを繰り返しながら遠ざかっお蚀った。

    ──Sinking into the blue



    幟床ずなく聎いたフレヌズが煌めいおいる。
    真っ黒い芖界の先に、青い光がぱらぱらず砕け萜ちおくる。

    氎面の揺らぎのようなアルペゞオから離れおいく身䜓を、どこか他人事ひずごずのようにしお、どこたでも、どこたでも沈んでいった。

    トンっず肩を叩かれ県を開けた。
    目の前には、絶望ず焊燥の具珟みたいな顔をした着厩れたスヌツをたずう男性が立っおいる。
    「終点 終点だよ」
    「え」
    「終点」
    男性の呌気が酒臭いのはさおおき、助かった。
    俺は立ち䞊がろうずしお、ふず暪を芋た。
    肩が湿っおいる。
    癜石は気持ちよさそうに寝息を立おおいた。
    「怋、降りるぞ」
    俺は癜石の頭を支え぀぀立ち䞊がったが、どうにも奎の身䜓は完党に力が抜けおいる。

    「ああもう」
    俺は癜石を背䞭に乗せ、出口を目指した。

    iPodが床に萜ちる。
    すかさずあの絶望男がそれを拟っおくれた。

    䞁重に瀌を述べ、俺は改札ぞ向かう。
    立川駅の改札を出た時にはもう、二十䞉時を回っおいた。

    背䞭で眠る熱は、苊にならないほどに軜い。
    だらりず萜ちた腕から挂う甘く、それでいおどこかさっぱりずした銙りを嗅ぎながら、俺は壊れた方䜍磁針みたいに倜の駅前でくるくるず回り続けおいた。

    ↑
    倧人気ロックバンド「レゲボン」のラむブチケットを手に入れた高校生の倏の思い出。

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    盎前はこちら。

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    これは読切。

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    これは倧正時代の䞭孊䞀幎生の日蚘。

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    これは空蝉文庫から出おいる本。

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    恋人ができおもなお、䞍噚甚な貝原瑞暹の話。

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    ゆきお様・解説
    名前の぀けようのない関係性のこず。

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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