メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

広報PR衝動を人々の蚘憶ぞ届ける知性──倧宮゚リヌが遺した「共鳎」のPR論野性ず知性の還流論 #3


    圌女のいない䞖界で、
    圌女の知性を考える

    倧宮゚リヌさんが突然いなくなったこの䞖界を、私は今も少し窮屈に感じおいたす。

    䞀心䞍乱に、時に躊躇しながら、それでいお軜々ず専門の境界を跚いでいく。圌女の衚珟には、豪快さず繊现さ、初期衝動ず葛藀が、矛盟を抱えたたた同居しおいたした。

    広告、映像、脚本、舞台、文章、そしお絵画ぞ。掻動領域の広さだけを芋れば「倚才なクリ゚むタヌ」ずいう蚀葉で敎理できるのかもしれたせん。しかし圌女の動きを远うず、噚甚に職胜を䜿い分けおいたずいうよりは、自分の䞭に生たれた感芚にふさわしい「噚」を、その郜床探し盎しおいたように思えたす。

    蚀葉だけでは取りこがすものがあるなら、空間を立ち䞊げる。ストヌリヌだけでは掬いきれないものがあるなら、色や圢ぞず跳躍する。衚珟の枠組みをはじめから決めおかからず、ただ名前のない衝動に導かれるようにしお動いおいく。

    しかし、衝動を剥き出しのたた提瀺しおも、他者の心に届くずは限りたせん。かずいっお分かりやすく敎えすぎれば、今床は衝動そのものの茪郭が倱われおしたう。

    衚珟の野性を損なうこずなく、いかにしお人々ぞ開いおいくか。
    倧宮゚リヌさんの仕事、ずりわけ2012幎に開催された個展「思いを䌝えるずいうこず」展には、この問いに察するひず぀の実践的な解答がありたした。



    1. 衚珟の圢匏を固定しなかった人

    1-1. 「倚才」ずいう蚀葉では芋えないもの

    倧宮゚リヌさんは、映画監督、挔出家、脚本家、コピヌラむタヌ、䜜家など、倚岐にわたる領域を暪断しお掻動しおきたした。そんな䞭、2012幎に枋谷PARCO MUSEUMで開催された「思いを䌝えるずいうこず」展は、圌女にずっお初ずなる「造圢ず蚀葉のむンスタレヌション」の詊みでした。

    この肩曞の倚さは「噚甚な人」ずいう評䟡に収められがちですが、圌女の本質は、衚珟の噚を増やすこず以䞊に、特定の圢匏ぞ自分を瞛り付けなかった点にありたす。

    蚀葉は意味を明確にし、文脈を共有できる匷さがある反面、口にした途端に消えおしたう埮现な感情もありたす。絵や空間には意味を決め぀けず、受け手の身䜓感芚に委ねる䜙癜がある䞀方で、曖昧なたた通り過ぎられる危うさも抱えおいたす。

    圌女はその双方の性質を理解したうえで、䌝えたい感情の揺らぎに応じお衚珟の噚を自圚に組み替えおいきたした。圌女の越境は、単なる自己挔出ではなく、自らの感性に察する忠実さから立ち珟れた必然であったように思いたす。


    1-2. 衚珟圢匏より先に、感芚がある

    本シリヌズ「野性ず知性の還流論」で蚀う「野性」ずは、論理や分類が远い぀く前に、環境や内面の埮现な倉化を察知する感芚のこずです。

    倧宮゚リヌさんの創䜜の原点にも、この察知する力がありたした。寂しさ、䞍安、うれしさ、誰かに䜕かを届けたいずいう衝動。そうした情動は、最初から敎然ずした文章ずしお立ち䞊がるわけではありたせん。それは、䜕を感じおいるのか自分でも蚀葉にできず、萜ち着かない身䜓の違和感ずしお先に蚪れたす。

    圌女の知性は、その揺れを急いで蚀葉や圢匏ぞず収めおしたおうずはしたせん。揺れた状態のたた、他者が觊るこずのできる圢を暡玢しおいた。぀たり、野性を手なずけおから倖に出すのではなく、野性ずずもに倖ぞ螏み出すための適切な圢匏を考え続けおいたのです。



    2. 豪快さの奥にあった、揺れる身䜓

    2-1. 䞍安を抱えたたた、人前に立぀

    倧胆で、なりふり構わず衚珟ぞず飛び蟌んでいく、圌女の姿だけを芋れば、他人の芖線など意に介さない豪胆な女性に芋えたかもしれたせん。

    しかし実際の圌女は、舞台に立぀盎前たで、い぀も匷い䞍安に晒される人でもありたした。今から玄10幎前、ある倧阪梅田でのむベント開挔前、圌女は私にこう挏らしたこずがありたす。

    「今日、出たくない。怖くお誰の目も芋られぞんねん。だから、ずっず目の前に座っずいおなぁ」

    圌女の倧胆な衚珟は、恐怖を克服した結果ずしお生たれおいたのではありたせん。他者の芖線にさらされ、傷぀くリスクを自芚しながらも、みずからの内にあるものを差し出そうずする緊匵感の䞭で生たれおいたした。

    衚珟ずは圌女にずっお、自己の匷さを誇瀺する手段ではなく、恐怖を抱えたたた人の前に立぀ための歩み寄りだったのです。


    2-2. 野性は、勇敢さずは違う

    野性ずいう蚀葉には、恐れを知らない行動力を連想させる響きがありたす。しかし本皿で扱う野性は、ずっず繊现で傷぀きやすい性質のものです。

    堎の空気のわずかな倉化を敏感に拟い䞊げる。盞手の蚀葉に滲む寂しさ、やるせなさ、埮かな怒りや祈るような気持ちを察知する。自分の䞭に生じた䞍快感を無芖できない。そうした過敏な感性は、創造の原動力ずなる䞀方で、本人を絶えず揺さぶり続けたす。

    圌女の豪快さず繊现さは、同じ感床の衚裏ずしお存圚するものでした。敏感に感じすぎおしたうからこそ、倧胆に身䜓を動かさずにはいられない。その感性が、怯えず創䜜の双方を駆動させおいたのだず思いたす。



    3. 「思いを䌝えるずいうこず展」──鑑賞ではなく、通過儀瀌ずしおの䜓隓展瀺

    3-1. 感情を身䜓でたどる回路

    2012幎の「思いを䌝えるずいうこず」展は、䜜者の蚀葉や造圢をただ鑑賞する堎ではありたせんでした。

    䌚堎は、思いを打ち明ける際に生じる「心现さ」「高揚感」「切なさ」「感動」ずいった状態を、来堎者が身䜓感芚ずしお再䜓隓できるように蚭蚈。各䜜品には曞き䞋ろしの物語や音楜が玐づけられ、五感を通過しおいく構成が取られおいたした。

    展瀺は「心の箱」に始たり、「心现い平均台」「ドアず鍵」「届かなかった思い」「孀独の電話ボックス」「蚀葉のプレパラヌト」「離陞」を経お、「䞀日の終わり」ぞず至りたす。

    この順路は単なるテヌマ別の分類ではなく、自分の感情ず向き合い、おが぀かない足堎を進み、閉ざされた扉の前に立぀ずいう䞀連の感情のプロセスです。やがお他者の孀独や未投凜の思いに觊れ、最埌に再び日垞ぞ足を螏み出す。展瀺党䜓が、感情の機埮を䜓感するストヌリヌずしお組み䞊げられおいたした。


    3-2. 「心现い平均台」が身䜓に教えるもの

    象城的な展瀺のひず぀に「心现い平均台」がありたした。

    感謝や謝眪、本音を誰かに䌝える時、人は特有の心现さを芚えたす。その感芚を现い平均台ずしお空間に蚭眮し、来堎者自身に枡らせる。呚囲の芖線を感じながら、頌りない足堎を前進する構造です。

    「思いを䌝えるのは怖い」ず文章で説明されれば、知識ずしお理解しお終わりです。しかし揺れる平均台の䞊に立ち、足元を意識した瞬間、蚀葉を発する際のリスクや䞍安が、リアルな身䜓感芚ずしお立ち珟れおきたす。

    圌女は、蚀葉の解説ずしお装眮を眮くのではなく、身䜓の経隓を通しお蚀葉の意味を捉え盎す仕掛けを眮いたのです。


    3-3. 個人の思いから、他者の蚘憶ぞ

    展瀺の前半で向き合うのは自らの内面ですが、その䜓隓は内省的なベクトルにずどたりたせん。順路が進むに぀れお、その仕掛けは他者の存圚ぞず意識が開かれおいきたす。

    「届かなかった思い」では、䌝えられなかった倚くの人々のメッセヌゞに觊れ、「孀独の電話ボックス」では誰かの受話噚越しの声を聞く。他者の蚀えなかった蚘憶に觊れた瞬間、自分の䞭に抑圧しおいた蚀葉が揺さぶられ、䜓隓の䞻語が「䜜者の思い」から「自分自身の蚘憶」ぞず移行しおいきたす。



    4. 思いを説明せず、思いに出䌚わせる

    4-1. 蚘憶を起動する装眮

    「思いを䌝える」ずいうタむトルから、䜜者メッセヌゞを受け取る䞀方通行の展芧䌚を想像するず、珟堎で起きおいるこずの質を芋萜ずしたす。

    「心の箱」の觊感や「孀独の電話ボックス」の声の響きは、受け手自身の経隓によっお受け取り方が倉わりたす。倧宮゚リヌさんは、特定の正解を提瀺しお理解させるのではなく、来堎者それぞれの䞭で意味が立ち䞊がるための「条件」を敎えたのです。

    この展瀺は、䜜者の思いを人々が鑑賞するための堎ではなく、来堎者が自分自身の「䌝えたい思い」ず再䌚するための装眮だったず蚀えたす。


    4-2. 展芧䌚を通過するずいう儀匏

    この䞀連の䜓隓は、心理的な通過儀瀌ずしおも読み解けたす。

    感情に觊れ、䞍安定な足堎を枡り、届かなかった思いを知ったうえで「離陞」ぞず向かう。そこで埗られるのは、䌝えるための小手先の技術ではありたせん。
    それは、䌝える怖さを抱えたたた、それでも倖の䞖界ぞ向かおうずする意識倉容を促す通過儀瀌であり、自分を少し肯定する勇気を持たせおくれる通過儀瀌なのです。

    䌚堎を出た埌に実際に連絡を取ったかどうかは重芁ではなく、䜓隓者の内偎に「䌝えたいこずがあった」ずいう衝動の火を灯す。そこには、䜓隓者の行動の手前にある倧切な感情を呌び芚たす蚭蚈が斜されおいたした。



    5. 衚珟を完成させず、他者に委ねる知性

    5-1. 制埡を手攟す勇気

    䜜品を他者ぞ開攟すれば、䜜者の意図ず受け手の解釈にズレが生じたす。個人的な衝動から䜜ったものが、䜜者の想像もしない他者の蚘憶ず結び぀くこずもある。

    倧宮゚リヌさんはそのズレを排陀せず、むしろ歓迎したした。正解ぞず誘導する説明を付け足す代わりに、箱、平均台、扉、電話ボックスずいった䜙癜のある装眮を配眮し、受け手が自分の感情を持ち蟌めるようにしたのです。

    これは衚珟の攟棄ではなく、他者の関䞎によっお初めお完結するよう䜓隓を粟緻に蚭蚈するPRの知性そのものです。


    5-2. 源内ずの察比──瀟䌚ぞの開き方の違い

    前号で取り䞊げた平賀源内も、境界を越えお未知のものを持ち蟌んだ人物でした。

    源内が倖の䞖界から知識や技術を運び蟌み、人々が驚き語り合う「瀟䌚的なむベント」ぞ仕立おたのに察し、倧宮゚リヌさんは内なる感情を、他者の内偎で再駆動する「䜓隓」ぞず萜ずし蟌みたした。

    専門性を越える野性は共通しながらも、源内が倖的な文脈蚭蚈を通じお接点を䜜ったずすれば、圌女は個人的な衝動ず他者の蚘憶が共鳎する内的な堎を構築したず蚀えたす。



    6. 野性を知性で芆わない

    6-1. 敎理が奪うもの

    PRの実務では、぀ねに、耇雑な状況を敎理し、䌝わりやすい蚀葉ぞ萜ずし蟌む䜜業が求められたす。

    しかし、過床な敎理は時に毒ずなりたす。矛盟を削ぎ萜ずし、誀解を防ぐクリヌンな文章に敎えるほど、最初にあった切り立った情熱が倱われおいく。批刀を避ける代わりに、誰の蚘憶にも残らない蚀葉になっおしたう珟象です。

    「思いを䌝えるずいうこず」展では、䞍安や孀立感を抂念ずしお凊理せず、身䜓で觊れられる装眮ぞず眮き換えたした。感情の揺れを抌し殺すのではなく、揺れたたたで届くための「堎」ずいう噚を蚭蚈したのです。


    6-2. 共鳎の条件を぀くる

    こうした知性を「野性を䌝わりやすい意味ぞ倉える翻蚳力」ず定矩するだけでは、圌女の仕事の説明ずしおは䞍十分です。

    翻蚳が特定の意味を別の圢匏ぞ移す䜜業だずすれば、圌女の珟堎で起きおいたのは意味の移送ではなく「共鳎」でした。圌女の衚珟に觊れるこずで、受け手の偎に固有の蚘憶が立ち䞊がっおくる。

    野性を分かりやすい蚀葉で芆い隠すのではなく、自らの野性を開くこずで他者の野性を揺さぶる環境を蚭蚈するこず。
    これこそが圌女の提瀺した知性の姿だったのです。



    7. PRは、他者の内偎に䜕を起動できるか

    7-1. 理解の先にある関係性

    䌁業のPRは、䌝えたいメッセヌゞを正確に読解しおもらう発想に偏りがちです。

    しかし、メッセヌゞが正しく䌝わったからずいっお、深い゚ンゲヌゞメントが生たれるずは限りたせん。䞀方向的な理解を超えおコミュニケヌションを深化させるには、受け手が自分の経隓や課題ぞず匕き寄せお考える䜙癜が必芁です。

    䌁業が答えを提瀺し、瀟䌚がそれを消費する関係を超え、受け手の偎が自身の違和感や願いを重ねられる「堎」をどう蚭蚈するか。珟代の広報PRにも同様の芖座が問われおいたす。


    7-2. 参加の真矩

    近幎、共創やコミュニティずいった蚀葉が倚甚されたすが、むベントぞの参加やアンケヌト回答ずいった倖的な行動だけで、本質的な゚ンゲヌゞメントが高たったずは蚀えたせん。

    真の関䞎は、受け手の内偎で「自分ならどう考えるか」ずいう問いが生たれた瞬間に始たりたす。行動を倖から匷制するのではなく、思考ず感情が動き出す手前の条件を敎えるこず。それが結果ずしお匷固な関係性を生み出すのです。



    8. 野性ず知性の䌎奏者

    倧宮゚リヌさんは、私にずっお「野性ず知性の䌎奏者」のような存圚でした。

    䞍安や衝動を消し去っおから衚珟するのではなく、揺れたたた人の前に持ち出し、蚀葉、物語、空間、絵画ぞず圢を倉えながら、盞手の感情を揺り動かしおいく。その姿は、野性ず知性が拮抗しながら進む二重奏のようでした。

    圌女が遺したのは、矎しく敎えられたメッセヌゞだけではありたせん。自分の内なる感情ぞず降りおいき、蚀えなかった蚀葉に觊れ、再び倖の䞖界ぞず螏み出すための䜓隓そのものだったです。

    知性によっお野性を抌し蟌めるのではなく、知性を甚いお他者の野性を拓いおいく。その静かな埪環は、圌女が去ったあずも、䜜品に觊れた私たちの内偎で今もなお続いおいたす。



    远悌 倧宮゚リヌさん

    最埌になりたしたが、倧宮゚リヌさんの持぀「PRの知性」を今回初めお蚀葉にしおみたした。生前は存圚があたりに近く、その茪郭を捉えるこずができなかったのかも知れたせん。圌女がこの䞖界に遺した知性を、いた䞀床正圓に評䟡したい。もう盎接は䌝えられないその思いに背䞭を抌されお、本皿を曞いおいたす。

    ゚リヌちゃんのこずだから、そちらの䞖界で今でも倉幻自圚に暎れおいるこずでしょうね。でも、今は少しだけ、ゆっくり䌑んでいおください。

    あなたが吹かせた颚は、今もなお圢を倉えながら、倚くの人々の心を揺るがせ続けおいたす。
    少し窮屈に感じるようになっおしたったこの䞖界においお、もし叶うならば、い぀かたた別の圢で、あなたが吹かせる新しい颚が届くこずを楜しみにしおいたす。




    9. 次回予告混沌は、瀟䌚に手枡せるのか

    次回、「野性ず知性の還流論」第4号で蚪ねるのは、街の看板、捚おられた印刷物、写真、音、蚘憶の断片を拟い䞊げ、巚倧な画面や空間ぞず線み盎しおきた衚珟者です。

    䞀芋するず秩序を欠いた「混沌」は、どのような蚭蚈を経お、他者が觊れられる䜜品ぞず倉わるのでしょうか。過剰な゚ネルギヌを敎理しお脱臭するのではなく、混沌の匷床を保ったたた瀟䌚ぞ手枡す知性に぀いお考えたす。

    今回も最埌たでご芧いただき、ありがずうございたした。


    本シリヌズ「PRの野性を再起動する」ならびに「番倖線野性ず知性の還流論」党皿はこちらからご芧いただけたす。


    この蚘事が参加しおいる募集

     
     
    PR芖点のコンサルティングを通じお、䌁業・団䜓の日垞的な支揎をはじめ、経営改革や垂堎創造、危機管理、IPO、PMI等のコミュニケヌションにも参画。 京郜を拠点に遞曲家ずしおも掻動しおいたす。 ビゞネス・思想・文化を暪断し、PRや経営に資する関係蚭蚈をテヌマに投皿䞭。

    あなたぞのおすすめ