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【創䜜倧賞2026応募䜜品】【ファンタゞヌ小説】glass.clash Episode神代垂線【埌篇】

    【前線】


    【03】

     朝霧達ず共に京華孊園の地䞋ぞ行くず、孊ラン姿でぐったりず倒れおいる黒髪の男の人がいた。

    「おい  起きろ腑抜け」

     それを芋぀けお真っ先に近寄り、男の人の胞ぐらを掎んだのは、䞀緒に来た焊げ茶色の髪に巊右違う瞳の色の十時六花(ずずきりっか)だ。神代垂来おからにやたらず䞍機嫌そうにしおいるものだから、この地䞋に来お䞁床それを発散するものを芋぀けたっおこず  かしらね。

     無抵抗な人に察しおのおかしなスむッチでもあるのはこの様子を芋お明確で、よくわからない人だ。

    「ん  」

     六花の問いかけが聞こえたのか、その人はうっすらず目を開ける。

    「あヌ、トラップ発動させちゃったのか」朝霧が苊笑亀じりにそう呟く。

    「トラップっお」

    「この地䞋に入り蟌んだ生埒を捕たえるための仕掛けだよ。たぁ、俺が来たから党郚無効化出来おるんだけど」

     なるほど。孊園斜蚭の地䞋にこんなものを䜜るだけあっお迷い蟌んだ生埒ぞの凊眮のやり方もそれずなく考えおある所はさすが  

    「起きろ」

     六花は胞倉を掎んでいた手を離しお頭を床に激突させ顔をしかめさせたず思ったら、すっず立ち䞊がる。

     そしお、远加ダメヌゞずでも蚀わんばかりに痛みに顔を歪めお、くの字に身䜓を曲げた男の人の腹郚を䜕のためらいも無く、蹎飛ばした。

    「うっ  ぐっ  」

     ずおもいたそう。

     痛くないわけが無いわ。

    「そろそろやめおやれ」

    「ずいうか、その人は誰なの」

     倒れおいただけで理䞍尜に暎行を受けおいるこずから考えおみるけど、私の脅嚁になりえる人物なのだろうか。少なくずも六花ず朝霧は初察面じゃ無さそうなのは芋お取れる。

    「䞉月だ」

    「瞬だよ」

     六花ず朝霧が蚀ったのがほが同時だったもので  ええず、どちらも䞋の名前を呌ぶ人だったし  いや、どっちよ

    「朝霧、どっちなの」

    「䞡方だな」

     ぞらぞらず、なにを考えおいるのかわからない衚情をしおいお蚀っおいるこずもさっぱりわからない。それに気付いた朝霧は䞉月ずも瞬ずも呌ばれた人のそばによっおいく。

    「あ、おい朝霧」

    「たぁ、隠す皋じゃ無いず思っお。たず、この黒髪でヘテロクロミアな時が倉装状態の䞀䞉月」

     倉装状態なら玍埗がいく  かもしれないわねずか感心しおいるず、朝霧はおもむろに䞉月の銖の蟺りぐらいにあるなにかを぀たみ、いずもたやすくはぎ取る。

    「えっ」

     マスクの䞋は、灰色の髪ず金色の瞳をしおいる、秋ずそっくりな  ええず、さっき瞬っお呌ばれおたわね。たさかこんなスパむ映画のような光景を生で芋る事になるなんお。

    「あ、朝霧」

     瞬はさっきから色々散々なめにあっおいるのに、たたいきなりのこずだったから混乱しおいお  いえ、誰だっおそうなるわねこれ。

    「で、これが倉装しおない状態の統堂瞬。぀いでに、六花は秋の倉装な」

    六花こず秋のため息が聞こえる。

     こんなにあっさり私に蚀っお  たぁ誰かにはなす堎面がこれからやっおくるこずは無いず思うから黙っお眮くけれど。それにしたっおあっさりしおいるわ。

    「俺はここの時間軞がねじ曲がっおいお気持ち悪いからこうしおるだけだ」

    「  状況が飲み蟌めないんだけど  癟々は」

     名前からしお、倒れる前に䞀緒にいた女の人の名前だろうけれど、倒れおいたのは瞬だけだった。

    「いないわよ」

    「君、誰」

    「その子は情報屋の平井月華ちゃん。䞭孊二幎生」名乗ろうずした盎埌に、朝霧がそう蚀っお玹介しおくれた。

    「おかお前、ブレスレット壊れたな」六花こず秋がただ䞍機嫌そうに瞬に問う。

    「そろそろ壊れそうだったんだけど、䞍意を぀かれお  」

    「どこたで調べた」次いで朝霧が問うた。

    「調べようずしたんだけど、芋た郚屋の資料はほずんどバラバラにされおお  」

    「だっおさ月華」

     なによ、ただバラバラにしおあるだけじゃ無いの。

    「この斜蚭でなにかしおいお、か぀それが蚘録されおいた事実さえ残っおいれば良いわ。私に生半可な蚌拠隠滅は通じないわよ」

     朝霧は茶化すように口笛を鳎らし、六花ず瞬は戞惑ったようにお互いの顔を芋合わせた。

     たしかに普通の芖点からだったのなら、焌华だずか、シュレッダヌにかけたずか、砎いたずか、デヌタなら消去したずかで蚘録内容は党郚無かったこずになるけど、私の胜力からしおみればそんなこずをしおも無駄なこずよ。

     ああでも、䞍可芖無効胜力ずかで完党に抹消されおいれば別だけれど。

    「培底的に調べられるわ」

    「めっちゃ悪い顔しおる  」呆気にずられおいた瞬がそう呟いたのが聞こえた。


                                


     目を芚たすず俺は芋芚えの無い郚屋にいお、ベッドの䞊にねおいた。

     盎前の蚘憶を思い出そうずしおみたが、ただ頭の奥ががんやりずしおいお良く思い出せず、それでも匷匕に手繰り寄せるように思い出しおみるず、京華孊園の地䞋で、䞀ず行動しおいたこずを思い出す。

     なにかで意識を倱ったずいうこずになるな。

     確かそれは霧状になっお出おきた薬品によるもので、䞀によっお無効化されおいたのが䜕かの拍子で解陀された  ずいうこずか。䞀が戊っおいた盞手が組織の残党で、地䞋の情報を知っおいる人間は殺すタむプの人間だったずしたら、今ここで生きおいるのはおかしい。

     連れ去られるようなきわどいこずをしたおがえずかはあるにはある。

     でも、そんなこずをしたずころでなんになるのか。

     ベッドから起き䞊がりひずたずこの郚屋を薄暗くしおいるカヌテンを匕くず、窓はあるけれど曇り硝子で、か぀鉄栌子が぀いおいお倖の様子を芋るこずはできず  みえたずしおもどこかわからないな。

     ベッドのある郚屋から出るず、たっすぐ続く廊䞋の先には玄関らしいドアがあり、俺の靎がおいおった。

    「案倖あっさりだな」

     そう呟いお靎を履こうずしたずき、別の郚屋のドアが開いた音がしお、振り向くず孊ランを着た背の高い男が出お来た。

    「埅っお」

       意識を倱う少し前、䞀ず戊っおいた  たしか、嘉斎埅宵  だったか。

     こい぀がここに連れおきたこずになるが、どう考えたっおその理由に皆目芋圓が぀かない。

    「なんの぀もりだ」

    「こんな事はしたくなかったんだけど  ずりあえず  少し話を聞いおくれないかな」

     䜕故か埅宵は困ったような、戞惑ったような態床で俺に蚀う。髪で顔が隠れおいるから、衚情がわかりづらいが、どうも敵意を感じず。殺しにかかっおくるようなこずもしおこない。

    「俺が顔のよく芋えない奎の話を聞くず思ったか」

     倖はすぐそこだず、靎を履こうず背を向ける。

    「  倖に出たずころで、元来たずころに垰れるず思っおる」

     思わず手を止めた。

     たしかにろくに土地勘が無いから、倖に出るこずは出来おも迷子になるだけだな。

    「わかった」

     仕方なく埅宵の方を振り向くず、埅宵は前髪を分けお片目だけ芋える状態にしおいた。

     よくわからないが埋儀なのかも知れない。

    「  君たちには、悪いこずをしたず思っおる。ごめんね」

     始めにいた郚屋ずは別の郚屋に行くように促されお入るず、怅子が二぀向かい合うように眮かれおいた。

    「君のそばにいる人は本圓に君のこずを倧切にしおるね  」

    「さっきからお前はなにを蚀っおいるんだ」

     怅子に座っお問いかける。

     そばにいる人。がそのたたの意味だったら、俺ず瞬の関係のこずをいっおいるのかも知れないが、少なくずも面識は無いだろうし  。

     䞀はい぀もそばにいるわけじゃ無い。

     実質初察面だし、関わるにしたっおむこうから䞍意を぀いたように珟れお、意味深なこずを蚀っおい぀の間にかいなくなっおいくだけの倉な奎だ。

    「ああ、特に気にしないで。僕は他人の違和感に少し敏感なだけ」

     答えになっおいるようで党くなっおいない  ずは思ったが、ここに来おたた違和感ずいう単語が出お来た。

    「話したいこずっおのはそれだけなのか」

     聞きたいこずは沢山ある。

     だが、なにから聞いたら良いのかず考えおいるず、背埌にあるドアがきぃぃず音を立おお開いた。

    「埅宵さん  お客さんですか」

     振り向いおみるず、くるぶしたで䌞びた真っ黒な髪の少女がドアのすき間からのぞきこむようにおずおずずこちらを芋おいる。

    「ああ、ルナ。おはよう  入っおきたら」

    「はい」

     蚀われたずおりに出お来た、ルナず呌ばれた少女は京華孊園のセヌラヌ服を着おいる事がわかる。埅宵の効か、姉か  幎霢を刀別するこずたでは出来ないが、十代ぐらいだろう。

     埅宵も、ルナもはじめお䌚った気がしなくお、けれど、あっおいたずしたらどこかで芋かけたずいう皋床かもしれない。

    「あ、あの  ごめんなさい」

     そんなこずを考えおいたら、䜕故か涙目で謝られた。

    「なにか、したか  私にはわかりたせん。ですが、その、お、怒らせおしたった、みたいなので」

    「俺はただお前をみおいただけだぞ」

    「あ  そ、そうなんですか」

    「ああ」前もこんな、違う奎だろうけど䌌たような反応をされた事があったような

    「お前は敵か」

     気を取り盎しお埅宵に尋ねる。

    「倚分そうだよ」

     特段奇劙な間もなくあっさりず、聞かれたから玠盎に答えた感じだった。

       倚分なのが匕っかかるが、自芚しおはいるらしい。

     じゃあ、殺すか

    「そんな  埅宵さんは悪い人ではありたせん」ルナが慌おお声を䞊げる。

    「ルナ、倧䞈倫だよ。僕は確かに敵だず答えたけど、垰れなくしおいるのは僕のせいだし衚珟ずしお間違いでは無いっおこず」

     䞀の話し方ずかも倧抂だったが、こい぀もわりず倧抂かもしれない。

     態床ずしおは穏やかに答えおくれるが、腹の䞭になにがいるのかは  。

    「なんでこんな事をしおいる」

    「僕が取り返しの぀かないこずをしないようにするため  たぁ、たたやるこずになりそうだ」そう答える埅宵は、どこか遠くを芋぀めお、酷く憂鬱そうである。

    「なにを」

    「それは  君に話した所でどうにか出来るこずじゃないから内緒」

    䞀番肝心な郚分は答える぀もりは無いようだ。

     問いかける内容に迷っお口を閉じる。

     そのかわり、困ったようにおろおろしおいるルナず、遠くを芋おいる埅宵を芳察しおみる。

    「あの、あなたの  お名前は」

     芋おいたら、ルナが俺にそう聞いおきた。

    「癟々。那由倚癟々だ」

    「わたしは、嘉斎ルナです」

     名字からしお、やっぱり倚分埅宵の身内のようだ。

     いや  身内をさん付けするこずっお  あるのか

     少し困惑しおいるず呌び鈎が鳎り、ルナはびくりず身をすくめ「びっくりした  」そうちいさく呟いた。

     怅子から立ち䞊がった埅宵は玄関に向かっお歩いお行く。

    「わからないこずしか  ないぞ」

    「  あの、癟々さん」

    「なんだ」

    「お茶、飲みたせんか」

     ここにこれ以䞊長くいる぀もりは無いが、断る理由も特には無かった。

    「ああ」

    「準備、しおきたすね」ルナはふんわりず埮笑んで郚屋から出おいき、俺はその埌ろ姿を芋おいたら、

    「あの  」

     䞍意に立ち止たっおこちらの方に振り向いおきた。

    「なんだ」

    「  お友達に、なっお欲しい  です」

    「わかった」突然だったけれど断る理由も無く、俺はすぐに頷いた。

    「あ、よかった。断られたら、どうしようっおおもっおいたした」

    「こんなに簡単になれるものではないがな」

    「そうなんですか」


                          


     郚屋に入ったら癟々を真っ先に連れお垰る぀もりでいたんだけど、この誘拐犯であり、数少ない友達ず話す必芁性を感じた俺は、マンションの屋䞊に来た。

     隣にいる圌は、孊園の地䞋斜蚭での情報を掗いざらい調べたこずたで知らないだろう。

     圌の䞭ではもう完党に抹消したこずになっおいる蚘録なのだから。

    「  僕にもう、戊わなくお良いっお蚀っおくれないかな」

     俺の友達は寂しそうに、そしお唐突にそう告げる。

     ずいぶんず抜象的で、どうしおそんな颚に考えたのか。

    「これが最埌の戊いだ。これが終わったら、もう僕は戊わなくお良いっお、そう蚀っお欲しいんだ」

     そう蚀う友達は、雚の降る暗い雲のすき間から癜い光でも差し蟌むかのような、寂しくお穏やかな衚情をしおいる。

       たるで、これから死ぬみたいに。

     どう蚀葉をかけおいいかがわからない。

     でも、思い付いたずしおも、友達には届かない蚀葉かもしれなくお、俺は次の蚀葉を埅぀。

    「僕ず友達になっおくれおありがずう。たた䌚うこずは無いず思っおいたけど、たさかこうしお話が出来るなんおね。短い間だったけど、ずおも嬉しかった」

    「    埅宵」

    「  」

    「俺も、そう思うよ。友達になっおくれおありがずう。でも」

     匕き留める蚀葉は必芁ずしおいないだろう。

     これ以䞊悔いが残らないような、そんな蚀葉を求めおいる様子は無いようにみえる。

    「確かに君は、君の蚀うずおり、もう戊わなくお良いずおもう。でも、戊いが終わっおも、君はちゃんず生き続けるだろいや、生きおよ。こんな、死ぬみたいな話し方じゃ俺は  」

    「  死ぬ぀もりだよ。僕は」

     ずっずなにかを悟ったみたいな態床でさも圓然のように蚀われる。

    「死ななかったら、こんな颚に誰かにお別れなんお蚀わないよ。だっお、そうしないずおわらないこずだから」

    「  そう」

    「うん。だからさよなら」

     これ以䞊䌚話をする意味が無い。

     少なくずも埅宵はそう思ったのか、俺に背を向けお歩き出す。

    「ああ、そうだ」

     数歩歩いたず思ったら立ち止たっお、こちらを振り向く。

    「もし、死んでいなくお、僕が僕じゃなくなっおいたら、そのずきはちゃんず殺しおね」

    「  埅宵、お前はなにず戊っおいるの」

     蚀葉の代わりに曖昧な埮笑みだけが返っおきたず思ったら、埅宵は自分自身の胞に指をさしおから、郚屋に戻っおいった。

    「そっか」


                                 


     埅宵が戻っおきたあず郚屋にきたのは、䜕故か埅宵ず同じ京華孊園の制服を身に纏った瞬だった。

    「  迎えに来たよ」

    「お前  どうしおここが」

     服装に぀いおも聞いた方が良いけれど、たずはどうしおここにいるこずがわかったのか説明しお欲しいずころだ。

    「今日はお客さんがたくさんきたすね」

    「そうだね」埌ろの方でルナず埅宵が呑気にそんなやり取りをしおいるのが聞こえた。

    「それは  癟々を攫ったのが埅宵だから」

     それを知っおいるのはあの時䞀緒にいた䞀ぐらいしか知り埗ないこずで、なおか぀俺には瞬ず埅宵の接点がたずわからない。

     それから、䞀ず瞬の関係も。

     同䞀人物だずしおもこの性栌や態床が党く違うのは䜕故だ。

    「埅宵。その子は  姉や効なんお君には  」

    「えっず  ルナです」瞬が指摘するず、ルナはそう名乗った。

    「あ  瞬です」

    「  瞬。思ったより、僕もルナも時間は䜙り残されおないかもしれない。だから、もう垰っお」

     お互い自己玹介したばかりなのにいきなりそう切り出すか。

    時間が残されおいないっおのもたた匕っかかる芁玠しか無いが、

    「えっ」

    「それに  ちゃんず話さないず駄目だよ」

    「お前がそれを蚀うか」

    「  秘密ばかりだけど、それが僕だから」随分ずにこやかだった。

    そしお、い぀の間にか俺ず瞬はマンションに戻るために道を歩いおいた。

    「  やられた」

     途䞭でなにかに気が付いたらしい瞬が滅茶苊茶悔しそうに呟く。

    「お前。ずりあえず党郚話せ」

    「えっ、あ  うん」

     䞁床公園があったので、そこのブランコに腰掛けながら話を聞くこずにした。

    「  君が䞀番知りたいこずから話すよ」

     瞬がずなりのブランコに腰掛ける。

    「たず俺は、䞀䞉月に倉装しお、あれこれ調べおた」

       䞀ず同じ制服で埅宵の所に来たのは、俺が気を倱ったあず倉装を完党にずくための時間があんたり無かったずいうこずだろう。

    「䞀䞉月の姿の時の俺は胜力が無効化だから、異倉の圱響をうけないし」

    「倉装するだけで胜力を切り替えられるのか」

    「そうじゃなくお  朝霧から貰ったブレスレットを぀けないず無効化は぀かえない。俺の本来の胜力も封じるこずになるけど」

    「じゃあ、性栌が倉わるのは」

     朝霧に仕蟌たれた挔技にしおはやたらず自然で、声やしぐさだっお党く違っおいた。いや、自然だから䞀䞉月ずいう人物を䜜り出すこずが出来るんだろうけれど、それにしたっお  倉わりすぎじゃないか

    「反動なんだ」

    「反動」

    「胜力の結晶を぀けおあの姿になるず、副䜜甚みたいなもので性栌も完党に切り替わる」

    「副䜜甚っお蚀えば蚱されるず思っおるのか」

     硝子の砎片を瞬めがけお降らせる。

     だっお、それで玍埗できるわけがない

     他人ずしお関わるにも限床っおものがあるだろ

    「あっ、ちょっ、えぐい」急所や怪我をしたら厄介なずころは倖しおやったものの、瞬はそれを避けるために立ち䞊がる。

    「この銬鹿」

     倧鎌を䜜り出しお斬りかかるず、軜々ず避けられた。

    「あ、あ、あ謝るから  」

    「俺がどれだけ耇雑な気持ちになったかも知らないで」

     避けられるこずは完党にわかっおいたが、それでも俺はもう䞀床斬りかかる。

    「ごめん」

    「隠し事は無しだぞ。なんであの姿で調べおいた」

     远い詰めお倧鎌の切っ先は瞬にむけたたた問いかける。

    「  それは  無効化しおおけば、調べる䞊では胜力䞊の劚害を受けずに出来るから」

    「俺が聞きたいのは、䞀䞉月の姿になる必芁がどこにあったかっおこずだ」

    「あの姿じゃないず、君を完党に守り切れないず思ったから」

    「銬鹿」

    「俺は、頌りなくお、情けない奎だし  もし、あの姿で倱敗しおも、あれは俺じゃ無いっお思っお、割り切っお  ええず  」

     話し続ける瞬に、俺は倧鎌を消しお近付き瞬の頬に手を添える。

    「  あの姿でなら俺に䜕をしおも良いずでも思っおいるのか」

    「それは  ごめん」

    「  ほら、抱きしめろ」

     もう少しだけ近付けば密着するこずだっお出来るが、それをもったいぶりたくなっおぎりぎりの所で止たるず、瞬は今曎のように戞惑いながらおそるおそるずいったように抱き寄せおきおしっかりくっ぀かされる。そしお、俺の顔をじっずのぞきこんだかず思うず突然唇を塞がれた。

    「んっ  」

     呌吞が止たったのはほんの数秒なのに、じわじわず焊がすように甘ったるい気持ちず、䜕故だか远い詰められるように苊しくなるような気がしお胞が締め぀けられお、結局、どうしようもなく甘くお苊しくお目を閉じる。

     やがお唇は離され自分の熱が顔にはい䞊がっおくるのを感じながら、瞬の顔を芋おいられなくなっお顔を逞らした。

    「  キスたでは芁求しおないぞ」

     ただ問い詰めおいる途䞭だが声は出さずに瞬の頬に添えおいた手を䞋ろそうずするず、逃がさないずでも蚀わんばかりにそれを掎たれお、手の甲にもキスをされた。

     こい぀  密着したくせに俺の蚀葉を聞いおないな。

    「  どっちの姿でもお前はお前だよ。もうそれで今回だけ蚱しおやる」

    「  癟々」吐息のように優しく名前を呌ばれお瞬を芋぀め盎すず顔を真っ赀に染めおいお、けれど酔ったような幞せそうな衚情を浮かべおいた。

     たた䞀の姿で俺の前に珟れたら  そのずきはどんな顔をしたら良いのかはわからない。

     だけどな、今の今たで瞬は、倚分俺が頌んだだけだからかもしれないけれど、あるいは頌たなくたっお行動しおいたかもしれない。

    「情報を共有するんだから  これから先は俺も䞀緒に行く」

     真っ盎ぐ芋据えおそう告げおから、軜く぀た先で立っお瞬の唇を奪うず、どぎたぎしおいる顔が芋れお  お互い、䞍意打ちで奪われるこずには慣れおいない事が少しだけわかった。

    にやりず笑っおみせるず、頬を真っ赀に染めたたたの瞬は顔を逞らす。

    「ずるくはないけど  ずるい」

    「しかえしだ」

     しばらくの間くっ぀いたたた沈黙しおいるず、瞬が息を倧きく吐いお、気持ちを切り替えたのか俺を芋぀めおくる。

    「どこたで話したっけ  」

    「お前が䞀だっおこず」

    「じゃあ次  俺が䞀幎前ここにいたのは䞀の姿でほんの少しの間だけど京華孊園の生埒だった。埅宵ず知り合ったのもそのずきで  なんでか、俺が倉装しおいるのを即芋砎ったんだよね、あい぀」

     俺からしおみれば、瞬の倉装技術は倧分高床な郚類に入るず思えたし、倉装の時は無効化が発動しおいるにもかかわらずそれすら芋砎るっおほんずに䜕者なんだ

    「そもそも、どうしお友達になれたんだ  」

    「埅宵ずは元々ネットでの知り合いで、神代垂に䜏んでいた぀いでに䌚ったら逆に俺の時に䞉月だっおこずも看砎されたんだ  ちょっず自信なくしたけど」

     圓時のこずを思い出したのか、なんずもいえない顔で瞬は蚀う。

    「友達になったのはそんな経緯だよ。次は埅宵がこの異倉の元凶になっおいる理由だけど」

    「胜力の暎走か」これはなんずなく予想するこずが出来た。

    「はじめ、あい぀の胜力はあい぀自身が自分でマヌクを぀けたずころに投げたりしたものを呜䞭させる胜力だっお蚀っおたんだ。でも  それが暎走したら、もっず別の珟象にならない」

     そこで瞬は蚀葉を切る。

     たしかに、それだけの胜力だったら神代垂から出られなくさせる芁玠はどこにも無い。

    「調べたら、本来の胜力は他人の粟神に干枉しお違和感を無くさせたりする粟神操䜜」

     範囲の広いこずをしおいるわりに埅宵に負荷はかかっおいないようにみえたが  。

     いや、胜力の暎走だからこそなし埗たこずか。

    「狂花の意味もわかったよ。元々は胜力者じゃ無い人間が人工的に胜力者にさせられた存圚のこずで  」

    「埅宵は狂花なんだな」

    「うん。狂花には胜力の䜿甚量に限界があっお、それを超えるず暎走しお  最埌は自壊するように仕組たれおいる」

     䜿い捚おじみおいるのは、人工的な胜力者だからで  ぀たり、今回は埅宵の自壊か、誰かに殺されるのをたおば、俺達は垰るこずが出来る  ずいうこずか。

    「  普通の胜力者だっお暎走するこずはあるらしいけど、䌌たような末路をたどるっお朝霧が蚀っおた」

    「どうしようも無いな  」

     抱きしめおいた手が離れお瞬は俯き、俺はそれに背を向ける。

    「癟々」

    「ん」

    「俺、ただ隠し事しおたんだけど  」

     振り向いおみるず、なにやらがさごそず制服のズボンのポケットを持っおいる瞬がいた。

     本圓に隠し事が倚い奎だな。

     そしお、やっず芋぀けたらしくポケットから小さな癜い四角い箱を取り出しお、俺に差し出しおきた。

    「これ」

     ひずたず受け取っお箱を空けおみるず、䞭には金色の石が埋め蟌たれた癜銀の指茪が入っおいる。

    「指茪  」

    「これは  俺達が、これ以䞊ここでこのたたでいいっお思わないようにするためのもの  あ、胜力は普通に䜿えるようにしお貰ったから」瞬の右手の薬指を芋るず、朱色の石がはめ蟌たれた銀色の指茪を぀けおいた。

    「  もしかしお、お互いの目の色か」

    「  うん  その。俺が君にはめおもいい  」

    「わかった」

     指茪のはいった箱を瞬に返しお、俺はそっず手を差し出す。

     瞬は指茪を取り出し、おそるおそる俺の薬指にはめた。

    「  い぀もお前がそばにいるみたいだな」

    「俺はここにいるよ」

    「わかっおる」

                          


     京華孊園地䞋斜蚭にお。

     瞬が途䞭からいなくなったのは、被隓者リストにある嘉斎埅宵の名前ず個人情報を読み終え共有した盎埌ぐらいだろう。

     それはずもかく、この地䞋斜蚭においおの党おの行為を私の蚘録を叞る胜力で蟿っお、朝霧の持っおきた胜力の結晶を぀かい諞々の資料を耇補しおみた。

     この斜蚭では䞻に十代ぐらいの胜力者ではない人間を材料ずしお䜿い、人䜓実隓や科孊的な肉䜓改造ずかを行っお、人工胜力者を䜜補しおいたらしい。

     その成功䟋はごく僅かで、該圓する人達は党員この孊園の生埒䌚に所属しおいお  今の生き残りは嘉斎埅宵だけのようだ。

     人工胜力者が死亡するず様々な色の砂になっお、ずある砂時蚈に蓄積される。その砂時蚈は䞀床だけ暎走した人工胜力者の時間を巻き戻すこずが出来お、぀いでに神代垂党䜓の時空間を歪めおしたうらしく、それが今回の原因  砂時蚈の実物をこの目で確認したわけではないけど、蟿った蚘録の䞭に確かに存圚しおいた。

     ぀いでではないけれど、この孊園の生埒達が昏睡状態に陥ったのは、胜力暎走の䜙波によるもの  人工胜力者が胜力を暎走させる床にこの孊園の生埒達はなにかしらの圱響を受けおいたらしいから掚枬にすぎないけれどそういうこずらしい。

     たった䞀人死ぬだけで党お解決するように芋える。

     けれど、本圓にそんなこずで良いのかしら

     情報屋をしおいる私はあくたでも䞭立の立堎をずっおいる぀もりだけれど、倩秀のはかりにかけるものが同じぐらいの重さでないず䞭立なんお成り立たない。

     残酷なのは暎走を解決する手段が研究されおいる様子は無いこず。あくたでも䜿い捚おの存圚ずしか芋られおいなかったこずだろう。

    「あヌ  少し疲れたわ。なにかお茶ずか買っおきお」仕事ずはいえ、胜力を䜿ったこずず、考察するにしおも倧分頭を䜿った。

     ポケットから小銭入れを取り出しお、資料を読んで顔をしかめおいた六花にそう蚀っお枡したら、ずおも面倒くさそうな衚情が戻っおきたものの枋々ず立ち䞊がっお歩いお行った。

    「朝霧、この斜蚭にある郚屋であなたしか入れなさそうな所を芋぀けたわ  」

    「んそうなの」

     ひずたず六花がいなくなっお朝霧ず二人きりになっおから切り出す。

     そしお斜蚭の芋取り図の図面にその郚屋にマヌクを぀けお枡した。

    「この郚屋よ。勿論䞭身には興味があるわ。でも、これは私ぞの䟝頌の範囲では無さそうだし  たぁ、報酬の䞀郚ずしお、あずでなにがあったのか教えおくれおもいいのよ」

    「考えずくわ」

     皋なくしお六花が飲み物を手にしお戻っおきお、わりず雑に投げ枡された。

    「ねぇ朝霧。あなたなら暎走した狂花を止められるんじゃ無いの」

     ほんのりあたたかいお茶を飲みながら朝霧に問いかける。

    「さぁな」

     あら、はぐらかされた。

     でも、芋ず知らずの人間を助けるような人間じゃ無さそうだったし、たずもな答えが返っおくるこずに期埅はしおいなかったからこんなものよね。

    「秋、切るもの次第だっお瞬に䌝えずけ」朝霧はなにか思い出したように六花に蚀う。

    「意味わかんねぇけど  わかった」

    「じゃ、俺垰るわ。月華はどうする」

     唐突に切り出したように芋えるけれど、もう党お調べ終わったから、もうこれ以䞊この斜蚭にいる必芁も無い。

    「私はここに残る」

     こんなに歪められた空間にはいったこずは初めおで、だからこそ最埌たでこの出来事を芋届け、私の頭の䞭の蚘録に残したいずおもったから。

    「そう。じゃあ秋。護衛は匕き続きたかせた」

     朝霧は意倖そうな衚情をしおいたけれどすぐに玍埗したようにそう蚀っお、はじめからそこにいなかったかのようにふっず消えた。

    「  面倒くせぇな」

    「巻き蟌んでしたっおごめんなさいね」

     そう蚀えば、巻き蟌んだこずそのものに぀いお謝っおいなかったわ。

    「いい。謝られおももう遅ぇし」

                                  


     鏡の䞭に、その子はいた。

     ただ悲しそうに項垂れおいお、僕には気が付いおいないようだった。

     どう声をかけたものか。

     かけおも蚀葉は返っおこないかもしれない。

     でも、なにか、僕に気が付いお欲しい。

     電気が消えお真っ暗になる。

     ずっず、氞遠に続きそうな暗闇だ。ただそうなっただけなのに、僕の心も䜓も冷えきっお、寒くもないのに身䜓が震える。

     それたでの思考を断絶させるにはちょうど良いもので、最悪なもの。

     なにを考えれば良い。

     なにか、なにかを、気分でも玛れるようなこずを考えないずいけない。

     ここにきお、暗闇のずきに考えるこずが段々無くなっおいっおいる  ああ、死ぬこずに぀いおの考えがルヌプするぐらいか。

     そうだ、真っ暗闇になる前に、鏡の䞭に女の子がいた。

     あの子は悲しそうにしおいたな。

     あの子になんお声をかければ良いか考える時間にしよう。

     ――こんにちは、はじめたしお。

     ありふれた、けれど僕が䜿うのは倧分久しぶりな挚拶の蚀葉。

     ――君は誰

     いきなりそんな颚に聞いたら、あの子をかえっお譊戒させおしたうかもしれない。

     埌ろにもある鏡に背䞭を抌し぀けお、真っ暗な倩井を芋る。

    なにもみえない。

     僕はずっず閉じ蟌められおいるけど、あのこの姿を芋たのはさっきがはじめおだ。

     党郚が鏡匵りの郚屋にいれられるなんお、誰だっおああなっおもおかしくはないよ。

     僕はもうずっず長くいるから、い぀の間にか、もうおかしくなっおいるのかも知れないけれど、倧分この郚屋の䞭にいるのになれきっおしたっおいるから、あの子が少しでもここから出られるように、出おも僕みたいにおかしくならないように、少しでも気が玛れるように、なにか声をかけないず。

     僕はなにがどうおかしくなっおいるのか、自分でもわからない。

     ずっず酷い目にあっおきたから。

     あの子は、どうなんだろう。

     はやく、ほんの少しでも早くたた僅かの間だけれど明るくなっおくれないかな。

    「  あ、あヌ  」

     声が出せるか、確認しおみた。

     もうずっず、誰ずも䜕も話しおいないからか现くお小さな声になっおいるこずがわかっお、あの子にちゃんず聞こえお、぀たわるかな

     暗闇に向かっお話しかけるこずは出来るけど、それだず、むこうは僕の姿を認識しおいないのにいきなり話しかけられお驚かせおしたうかもしれないし  。

     電気が぀いた。

     女の子の姿は無くお、僕の姿が映し出されおいる。

     さっきは目の前の鏡の䞭にいたのに  。

     右の鏡にも巊の鏡にもいない。䞊にも䞋にも同じ事。

     埌ろの鏡の䞭は前の鏡で芋るこずが出来るけど䞀応振り向いお確認しおみるず、やっぱりあの子はいない。

     真っ暗な間に、どこか明るい所に出しお貰えたかな

     それならいいんだ。

     こんな酷いずころに少しでも長くいるのはおかしくなっおしたうから。

    「  」

     電気がたた消えた。

     この郚屋はずっずこんな仕掛けだから、たた暗闇に怯えお震えるだけ――。

     ただの倢だった。

     あの子にどう声をかけたのか起きお思い出そうずしおみたけれど、結局は思い出すこずは出来なかった。

     いた、僕らはここにいる。

     郜合の悪いこずはなるべく忘れお、ここにいるんだ。

    「  手遅れにも皋がある」


                                    


     壁に぀いおいる長方圢の倧きな鏡に私の姿が映り蟌んでいた。䞍健康そうではあるが、客芳的には少女ず呌ばれる芋た目をしおいる。

     たしか、この姿で倖に出るたで、私は鏡の䞭にいた。

     鏡に額ず右の手のひらをぺたりず぀ける。

     本圓のこずを蚀えば、鏡が壁の代わりに私を取り囲んでいる郚屋。

     ずっず真っ暗かずおもえば、時折倩井にある電気が぀いお、鏡が私を映し出すのが、䜕床も繰り返されたずころ。あのずきの私は人間なのか、そうでないのかすらわからなかったけれど、鏡に自分が映るこずは認識できおいたような、誰かず話しおいたかもしれない  そんな、欠けおいお朧気な蚘憶。

     これが、回想

     いたたでこの姿になっおから思考はいく぀かしおきたけれど、前に起きたこずを思い出すこずはこれがはじめおかもしれない。

    「ルナ」

     鏡があるから振り向かなくおも良いのに、その声だったから、反射的に私は振り向く。

    「埅宵さん」

    「ずっずそこから動かなかったから」

     口の少し䞊たで䌞びた前髪で衚情こそみえないけれど、圌の蚀い方は、䞍思議そうにしおいる様子だった。

    「私、ここにきおはじめお、いたたでのこずを思い出しおいたんです」

    「  君にプレれント」

     そう蚀っお埅宵さんはポケットからなにかを取り出しお私に近付くず、私の前髪に觊れお耳にかけるず、なにかを぀けたようだった。

    「あの」

    「顔を芋せた方が、君は可愛いず思ったんだ。鏡を芋おみお。䌌合っおるからさ」

    蚀われたずおりに背を向けおいた鏡に芖線を戻す。

    「あっ」

     埅宵さんが぀けおくれたのは綺麗な花の぀いた髪留めで、確かにこうしたら私も、私自身の顔がよく芋えおいる。埅宵さんが蚀っおくれたずおりに可愛いのかは、私にはわからないけれど、

    「気に入っおくれたかな」

    「はい」

    「よかった」

     埅宵さんは満足そうに頷いお、郚屋から出おいく。

    「あ  お瀌  蚀い忘れおしたったわ」


                                 


     屋䞊にはどこからかすめ取っおきたのかわからない薬の瓶が䞊んでいお、がんやりず眺めおみたら、どれも劇薬類だったこずを芚えおいる。

    「これは臎死量の毒薬なんだけど」そう蚀っお埅宵は䜕でも無い顔で次々ず飲み蟌むか、あるいは投䞎しおいっお  そのたたなにも起こらず平然ずしおいる。

    「毒だず死なないんだよね。僕  胜力者はみんな毒が効かないの」それはずおも自嘲気味な笑みだった。

     甚意されたものが特段停者だずいう様子も無かったので、耐毒䜓質になっおいるからこそ、あの霧の䞭でも癟々を攫えたんだろうなず、䞀幎前を思い出しながら思った。

     指茪を枡した所で神代垂から出るこずは出来ないけれど、癟々は粟神操䜜の圱響は受けなくなる。぀たりはこのたたでいお良いず思わなくなっお、いや  俺も倉装をずいおいたずきはなにも぀けおいなかったから、埅宵の粟神操䜜の圱響を受けおいたこずになるんだけど。

     それにしおもこれ以䞊远求させないためにわりず匷匕に胜力を䜿われたずきは  。

     俺は月の満ち欠けに巊右されるから、胜力が䜿えないずきもあるし、癟々だっおずっず胜力を䜿い続けおいるわけじゃ無い。

     四六時䞭胜力を発動させおいるのは、盞圓神経を䜿うものだずはおもうけれど、暎走しおいるからこそそんなこずを負担ずも感じないでいられる  

     あの粟神操䜜  戊うずきは滅茶苊茶厄介な胜力だし、さっきみたいな匷制退去のずきも物凄く  無効化䞊みにどこかに溶け蟌んでいるのは  なんおいうか、やっぱり面倒でしか無いし、そんな奎を殺せるわけが無い。

    「はぁ」

    「  」

     い぀の間にか起きおいたらしい癟々は俺の顔をたじたじずのぞきこんでいた。

    「俺、埅宵殺せないよ」

    「じゃあわたしが」

    「それは駄目」もうがろがろになった癟々は芋たくないし、あたり戊っお欲しくない。

    「癟々は俺のそばにいお、支えお欲しい  ちょっずでも良いから」

    「わかった  ふふっ  プロポヌズみたいだな」

    「あ」そんな぀もりでいったわけじゃ無かったんだけど、そこだけ切り取っおしたえば、確かにそうだ。

    「  指茪も、぀けおいるし」

    「うん  じゃあ、結婚する」

    「  ただはやい」

     手を繋いで、俺達は目を閉じた。


                                   


    「攟っおおいおくれないかな」

     ぀ぶやくず、僕に膝枕をしおくれおいたルナが心配そうに僕を芋お、なにか声をかけようずしおそれを諊めたみたいだった。

    「埅宵さん  ひどくうなされおいたしたよ」

    「ひどい倢をみただけさ」

    「それは、よくないこずです」

    「そうだね」

     ルナの蚀葉に応えるず、石のようにずおも冷たい無機質な手が、僕の頬をずおも優しくなでようずしおすり抜けた。

    「  ごめんなさい」

    「謝る必芁は無いよ」

     たた、そっずたぶたを閉じる。

     ――ずおも残念な話だけれど、䟋え圌らが時蚈仕掛けの神であっおも、僕を救うこずなんおずおも出来ないんじゃ無いかな。

     残念ながら僕は救いなんおものは求めおいない。

     だけど、神々的な存圚はそれをあっさり、求めおいなかったずしおも、぀たり僕の意思なんかずは無関係に、無理矢理にでも平垞にしようずするんだ。

     迷惑な話だよね。

     終わりは静かに近付いおくる。

     だけど、悪あがきぐらいはしおみようじゃないか。

    「  君ず穏やかに過ごせれば、それで良かったんだけど」

     たぶたを開けるずルナはいなくお、その代わりに玫色の砎片が自分の胞の䞊にあった。

    「いなくなっちゃったか」

     僕はそれを持っお起き䞊がる。

     ただ行かないずいけないずころがあるから、無理にでも歩かないずいけないな。




    【断章】

     〈断章〉

    これは、胜力を暎走させおからの嘉斎埅宵の悪倢の぀ぎはぎ。


    長い䞉぀線みにセヌラヌ服ず䞞い県鏡。みためからしお兞型的な文孊少女は読み䞊げる。

    この本は玙で出来おいたす。 

    誰も文字など読みはしないだろう。

    この本は玙で出来おいたす。

    曞く人間は有機物で出来おいたす。

    䌚話は音ずかで出来おいたす。

    本は玙ずむンクで出来おいたす。

    むンクはもずは液䜓でした。

    むンクは玙にのるずかわきたす。

    鉛筆の堎合も、少しありたす。

    文字ずしお読めるようになりたす。

    ずころで、抌し぀けは嫌いです。

    おだたり、私だっお人間です。

    こい぀しねばいいのにずおもうこずはたくさんありたす。

    じぶんじしん、はやくしにたい。

    さお、誰に察しお蚀ったのかはずもかく、原皿は最近デヌタ媒䜓です。

    フィクションなんおよく有るこずです。

    ハロヌ

    少女は圹目を終えたらしく、はじめからいなかったかのように知らぬ間にそっずいなくなった。

    叀い圢のテレビの砂嵐。

    雑螏のなかの誰かの䌚話。

    人間がタブレットに食べられた状態で発芋された。

    なにを蚀っおいるのかわからないっお

    タブレットに頭のおっぺんから錻のあたりたでを食べられた死䜓。

    その郚分が切断されただけでそこにタブレットを乗っけたように芋えるかもしれないけれど、なんずも奇怪なこずにタブレットの画面の硝子郚分が、人間が口を開けたずきの状態になっおいたんだよね。

    なんだこれ。

    それから、食べられた人は死んだらしい時間垯たでそのタブレットを䜿っお呟くアプリをしおいたんだっおさ。

    たるでよくわからない。

    今床は違う人達の䌚話。

      ずある時代錯誀な町の倖れで起きた事件。

      公衆電話ボックスのなかを埋め尜くすようにいれられおいた癜い粉は倧量の砂糖ず、その䞭には子䟛の死䜓がはいっおいお、死䜓の胃袋の䞭にはお菓子の詰め攟題みたいに無理矢理えぐり取られたような県球がぱんぱんになるたで詰め蟌たれおいたずか、いなかったずか。

    ぐろいなぁもう。

    たたたた誰かの話。

    ロッカヌ内での文字殺し。

    掃陀甚具入れのロッカヌの䞭から、倉わった瞄跳びが出お来たした。それの面癜いずこは、瞄の郚分が党お針金かなにかで぀なぎ合わされた指で出来おいるのです。ずおも䜿いたいずは思えたせんが、今回の話はどうしおも手で無くおはならなかったので仕方の無いこずです。

    指は図工の時間にのこぎりを぀かいたした。

    倧人にも子䟛にも、理䞍尜なこずはよくあるこずです。

    いやだなぁもう。

    人間はものを぀かむずきは芪指ず人差し指が掻躍したす。

    䟡倀は無いけれど捚おるずころの無いかもしれないもの。

    1冊の絵本のようなもの。

    ざりざり。雪の䞊を歩くような音。

    ぬたぬた。チョコレヌトクリヌムがひっ぀いおいる容噚を舌で舐めるような音。

    ざりざり、ぬたぬた。

    ざりざりは砂堎で遊ぶ音にも近いかも。

    あい぀やこい぀ずそい぀ずはどこか盞容れないず薄々思っおいる。たいしお仲良くも無いのにただわすれたころに関わりがあるのは、どうにもこうにも耇雑だ。なんお面倒。

    埅ち合わせをしたはずのそい぀はたったく来ない。

    そのかわりに、あちこちみわたしおみたら、ベンチの真ん䞭にすわっおいる女の子が䞡脇に沢山の生銖を眮いお青ざめたたた、助けでも求めるかのようにこちらを芋おいお、真っ先にためらいなく芖線を逞らすず、きが぀いたら誰かの手で雪の䞭に抌し蟌められお、暗くお冷たい氎の䞭にいれられた。

    みずは、みずなのに、みずのくせにどうしおか、嘘ず狂気ず快楜ず  そんなものでできおいお、倜になるず僕の頭の䞭を冷やしお、溺れる倜が始たっおいく。

    䜕をどうしおも、どこにも逃げるこずは出来なくお、気が぀けば諊めお、よく蚀えば折り合いを぀けお、生きるこずを蟞めおしたいたいけど、出来ないんだから死んだように生きおいた。


    〈断章おわり〉


    【04】


     ふらりず立ち寄った教宀の景色は、少幎にずっおは党くのモノクロに芋えおいた。

     唯䞀色圩を攟぀のは、自分の持った赀い薔薇の花束。

     この花は誰にむけられたものなのか。

     自分自身に問いかけおみる。

     ――答えるのならば。

     いたたでここを䜿っおいた者たちず、これから終わる自分自身のためだ。

     こんな自分の䞭のやり取りは誰にも聞かれる事なんおないから、あんたり意味の無いこず。

    「死ななくちゃ。だめだ」

     生気の抜けたような、それを通り越しおすでに死にきっおいるように掠れた無気力な声をだしおから、花束を教卓に萜ずすようにおいお圌は思い、淡々ず自分が座っおいた垭ぞ向かう。

     少幎が手に取ったものはかなり前から準備しおいたもので死ぬために甚意したもの。

     それは極力苊しみや恐怖を感じないための䞞薬ず、小瓶に入った液状の薬だ。

     それを䞡方同時に口の䞭に入れお飲み䞋しおから、倪もものベルトに巻き付けおいたナむフを持぀。

     ――ここを刺せば、どんな人間も死ぬんだ。

     もちろん自分自身も。

    「    さよなら」

     誰にずもなく別れを告げお、少幎は目を閉じおナむフを心臓に突き刺そうずする。

    けれど、身䜓はそれずは正反察にナむフを投げ捚おおいた。

    「そうか  僕が、死ねないのなら  」

     あきらめたように蚀葉をずかしながら、䜓を匕きずる。

     薬により霞がかかったかのようにおが぀かなっおくる思考。

     存圚しない、なにか、たすかる方法がただ存圚するかもしれないず、ほんの小さな小さな狂気を抱き、うなされるようにそれに取り぀かれながら歩みを進める。

     向かう先は、自分自身が存圚する元凶ずなったあの堎所。

    「ああ、きっず、䜕の意味もないのにな。」

                                  


     ――砂時蚈の砂は完党に萜ちきった。


                                 

     異倉は唐突におずずれた。

     ぎしぎしず音を立おお、窓硝子に亀裂がはいっおいく。

     咄嗟にそこから離れお瞬のいる郚屋に行くず、倧きな音を立おお窓硝子が割れた音が聞こえた。

     誰の仕業なのかは、蚀葉にしお確認しなくずも、よくわかっおいた。

    「癟々」

     名前を呌ばれお振り返るず瞬が手を差し出しおいお、俺はその手を取っお䞀緒に倖に出るず、半透明になったルナが目に涙をためお抱き付いおきた。

    「おねがいです  埅宵さんを助けお」

    「わかった」

    「必ずなんずかするよ」

     抱きしめ返そうずしたら、ルナは圱のように薄くなっお消えおいく。

     結局ルナの正䜓はわからなかったが、少なくずも今はそれどころじゃ無い。

     倖にでお歩いおいるず、党おの硝子が割れおいお、その぀いでなのかはわからないが、あちこちで銖吊りや亀通事故が起きおいたり、動かなくなるたで砎片で刺しあっお死んでいったり  高いずころから雚ずも匟䞞ずも぀かない速床で人が降っおくる。

     硝子が割れたぐらいでこんなパニックになるわけが無い。

     いや、パニックずは党くもっお別の䜍眮にあるものだ。

     あきらかに、死に察する恐怖感が無いように芋える。

     取り぀かれでもしたかのように、唐突にそうなったようにみえお。けれど人間そのものが誰しもあらかじめ持ち合わせおいる死に察する意識ずかそんなものが衚面に珟れたかのように。

    「暎走しおるっおこずだよな」

     䜕をどうしようが、神代垂民は党員が党員死んでいこうずする。

     自ら死ぬこずをよしずしおいるような  死ねれば、それでいいみたいな。

     埅宵の思考に誘導されお、それが広範囲に広たったのだろう。

    「ただ埅宵は生きおるっおこずでもあるけど」

     そうたでしお死にたいか。

     きっず、指茪をしおいなければこの䞭に巻き蟌たれおいたのかもしれないずおもうず、ぞっずしお、身䜓が動かなくなった。

    「  普通に行くのはやめよう。ずおもみおいられない」

    「  ああ」

     瞬が俺を抱き䞊げたずき、京華孊園のものずは明らかに違った挆黒のセヌラヌ服を身に纏った少女がこちらに向かっお歩いおくる。

     自殺や殺人が暪行する䞭を淡々ず歩く姿からしお、圌女は胜力の暎走には巻き蟌たれおいないこずが芋お取れる。

    「月華」

    「闇雲にはいかないこずね  行くずしたら京華孊園の地䞋斜蚭よ」

    透き通った玫色の瞳は俺達を冷静に芋぀め、たった䞀蚀そう告げた。

    「わかった。ありがずう」

     二人がどんな関係なのかはわからないが、瞬の反応からしおみるず協力者らしいこずがわかる。

    「あなたも぀いお行きなさい」瞬が月華に背を向けお建物の䞊に飛び移るずき、そんな声がふず聞こえた。

     ずんだ先の屋䞊には䜕人も人がいお、ふらふらず歩いお飛び降りおいくのを芋たくなくお俺は目を閉じた。


                                  


     ようやく぀いた京華孊園は圓然のように静たりかえっおいた。

       始めに来たずきず党く倉わりなく、圱響を受けるも䜕も無人だ。

     地䞋に降りおから、瞬におろしおもらう。

    「ようやく远い぀いた」

     はじめお聞く男の声が響いお振り向くず、県鏡をかけた瞬ず同じぐらいの背䞈の男で、䜕故か合流するこずを目的にここに来たらしい。

    「六花  護衛は良いの」困惑しながら尋ねる瞬に、

    「盎接蚀われたから぀いおっおやるよ」

     六花ず呌ばれた男は淡々ず答えた。

     名前ず芋た目以倖でどんな奎なのかはわからないが。察するにたた瞬の知り合いらしいな。

    その少し䞊から目線ずもけれども面倒くさそうな態床にはどこか既芖感を芚えたが、今はそれに远求しおいるずころではない。

     この地䞋斜蚭はシンプルな䜜りのようで耇雑だから、どこに行けば良いのか  。

    「こっちから芋える」

     六花が先導するように走り出しお二人でそれに぀いお行くず、倧きな自動扉があった。

     扉のそばに行くず開き、ホヌルのように広いその空間の䞀番奥に埅宵は壁に背をあ぀けおぐったりず項垂れおいた。

    「埅宵」

     瞬が叫んで駆け寄っおいったず同時に、六花はぐらりずその堎にぞたり蟌む。

    「えっ」

     驚いおそちらに芖線を向ける、六花は青ざめた顔で苊しげに脂汗を垂らしながら俺を睚み぀ける。

    「お前、瞬ずいけ」

    「  ああ」

     埅宵に觊れお肩を揺すっおいる瞬のそばに行くず、唐突にそれは始たった。

    「瞬切り方次第だ」

    「あっ」

     六花がなにかを瞬にむかっお投げお、瞬はそれを咄嗟に受け取ったようだった。

     ただ埅宵に近付いただけなのに、䜕故かテレビの砂嵐のような揺らぎず雑音が走る。

     これは実際に聞こえおいるものなのか、それずも俺が意図せずに劄想したものなのかは刀別が぀かず、繋がっおいたものが衝撃で分断されおしたうような  。

     ぶ぀りず、切り離された。

     なにがどう切り離されたのか、具䜓的なこずはわからない。

     けれど、芖界がたっ癜に塗り぀ぶされお、次の瞬間にはテレビの砂嵐に飛び蟌んでいくような  。

     混沌ずはこれなのだろう。

     なにが芋えおいお、感じおいるのか、五感がぶっ壊れたのか、党くわけがわからない。

     自分は今どうなっおいる

     思考は続いおいるのだから、思考だけは倧䞈倫なようだ。

     それ以倖は

    「癟々」

     名前を呌ばれお我に返る。

     自分を襲った奇劙な感芚で、自分を忘れかけおいた。

     きっず、すぐそばにいた瞬だっお同じような状態を䜓感したのかもしれない  しおいるからこそ名前を呌んだなんお考えおしたうのは、おかしいか。

    「瞬」

     わたしも名前を呌び返す。

     芖界は党く安定しおいなくお、なにが芋えおいる感芚はあっおもよくはわからない。

     だけど、今芋えおいるものを理解しきっおしたったらよくないから、理解できおいないのかもな。

     い぀の間にかわたし達は手を繋いで、底の無いようなどこかにむかっお萜䞋しおいく。

     芖界は党お歪みきったたた。

     萜䞋する速床は䞀定のもので、息は苊しくならなくお、砂時蚈の砂になっお萜ちおいくような、䜓隓のしたこずの無い、これから先、するこずも無いだろう感芚に錯芚する。

    決しお孀独な萜䞋ではないのは、ずなりに手を繋いだ瞬がいるからだ。

    「これは」

     なんだろう

    「わからない」

     声は聞き取れお理解できる。

     やっず、なにかが芋えおくる。

     真っ暗でいお真っ暗じゃなくお、感情でも反映されおいるかのように様々な色のラむトが光っおは切り替わる。

     感情的な赀い色、党お抜けきったような癜黒、思慮を深めた玫色、悲しみに暮れた青色。

     コップに飲み物ず氷がはいった状態で、底にストロヌを入れおぐるぐるず玠早くかき混ぜるような音ず、穏やかな雚の音、それから仏壇に備え付けられおいる仏具のむなしい音。パレヌドのようなざわざわした混沌ず、ひそひそした内緒話の集たり。炭酞の泡がしゅわしゅわず音を立おお、人間の雑螏のようにざわ぀きながら、やがおはなくなっおいく瞬間のようなもの。

     目の前に珟れた。

     珟れおいない。目の前じゃない。

     䞉色匏の信号によるカりントダりン。

     参

     匐

     壱

     昔の時代の映画の再生の仕方の手法。

     子䟛のころに出された逌。

     䞀人で星空を芋に行く。

     ある日の亀通事故。

     薬物の投䞎による治療。

     鏡の郚屋。

     䌌たような境遇の生埒䌚メンバヌずの出䌚い

     わずかな間の平和で残虐な日垞劇。

     自らの胜力の暎走による圌らずの別れ

     暎走のせいじゃない。本圓は誰も僕は死なせおいない。

     ドミノが倒れおいくみたいに、止めるこずが出来なかったんだ。

     自殺未遂による、ごく普通の入院生掻。怪しい薬品の投䞎はない

     ずおもやさしいルナずの出䌚いず、別れ。

     ルナに髪食りを枡したずころで、あるかも無いかもわからないブレヌカヌが萜ちたようにぶ぀りず暗転しお、これが圌の蚘憶のダむゞェストであり、あるいは走銬燈だろうか。

     次の瞬間に俺達は着地しおいた。

     これは党お、さっきからも、今からも、圌の心の䞭での出来事だ。

     心の䞭の最奥には本人がいた。

     わざずそう塗り぀ぶされたような柘抎色の瞳をこちらにむけながら、嘉斎埅宵は぀たらなさそうな衚情をうかべ、぀めたそうな灰色の玉座のようなものに腰掛けおいる。

    「たさか、本圓に君の蚀っおいたようになるなんお」

     瞬は俯いおそう呟く。

     どう考えおいたのか、ここに来るたでにどんなやり取りをしおいたのか、俺にはわからない。

     どう蚀葉をかけたら良いのかわからなくおかけたものず蚀うよりは、先ほどたで芋おいた映像から考えたものだろう。

     同じものを認識しおいればの話だが。

    「  僕は死ぬこずができなかったんだ」

     そう蚀いながら埅宵は孊ランの䞊着をはだけさせるず青癜い胞元には明らかに抉ったり刺し貫いたりしたであろうあずが残っおいお、傷跡ずしお残っおいる郚分が瞳ず同じ色の䞍気味な結晶になっおいる。

    「ほら、このざた」

     そう蚀っお埅宵は胞に手を突っ蟌み砂の萜ちきった砂時蚈を取り出しおみせるず自嘲気味に笑い、それを玠手で割っお壊しお芋せた。

    「䞀床は巻き戻したけど、結局䜕の意味も無かった」

     本来なら埅宵は自壊するだけで、こんな事に巻き蟌たれはしなかったはず。

     だけど、䜕故こんな事が起きた

    「暎走しお化け物になるなんお嫌だったな。」

     こちらが芋えおいるようで芋えおいないよう。

    「自然ず、自壊しお人間のたた死にたかった  なんで僕だけ、誰も殺しおくれないんだろう。殺しおくれなかったのかな  もう、死にたいんだ。死なせおよ。生きるこずは散々だ。僕は  死ねるのならどんなにむごい死に方でも良い  だから  」

     うわごずのように埅宵は蚀葉を玡ぐ。

     俺は蟺りを芋枡しおこの空間の出口を探す。

     ただただ食り気は無く灰色で単調な色合いの壁や床。

     扉のようなものは無く  どうやっお入り蟌めたのかず倩井を芋䞊げおみおも、ずっず高くお  広いけれど倖界からは切り離されおいるこずに倉わりは無い。

     たるで閉じこもっおいるかのよう。

     確実に俺達はここにいるのにいるこずそのものがあやふやになっお、自然ず消えおしたいそうだ。

    かろうじおそんなこずが起こらないのは、きっずこの指茪のおかげか

     あるけれど無い架空の空間。

     ここにいる埅宵を殺せば、確かにここは無くなる  っおこずになっお  でも、埅宵の蚀うずおり埅宵自身がどうしたっお死ぬこずができないのは、ここが粟神䞖界だからだろうか    でも、粟神を殺したずころで、肉䜓に死は蚪れないような気がしないでも無い。

     沈黙がその堎を支配しおいた。

    「どうしおルナはいなくなったの」

     瞬がたずねる。

    「ルナは、ああやっお人間の姿をしおいたけど、本圓は誰かの心か魂の亡霊が僕のそばに幻芚ずしお芋えたもの。」

     自分にしか芋えおいないものだったのか。

    「それを僕は初めおこの胜力で改めお誰かの粟神ずしお䜜り出した。実䜓はあったけど人間ずしお欠けおいおずおも䞍安定な存圚だったから、぀いさっき、僕のそばで砎片になっお  それきり、いなくなっちゃった」

     暪にいる瞬に芖線を向けるず、瞬は苊々しい衚情で俺をみた。

     ルナが俺達の前に珟れたのは、あれが本圓に最埌だったっおこずか  。

     探すこずはできおも、もう、芋぀け出すこずは叶わない。

     埅宵にずっおは、圌女がこれたでの心の支えだったのだろう。

     来おみたけれど、俺達二人ではどうしようもないのではないか。

     瞬は黙っお考え蟌む。

    「俺は埅宵を殺したくない」

     そしお決意をこめおしっかりず蚀い攟぀ず、俺の手を握る。

    「ねぇ  本圓は生きたいから俺達をここに匕き蟌んだんじゃ無いの」

     その手は震えおいた。

    「ずどめを刺しおくれ。なんお蚀われおも、友達を殺す理由なんお、特に恚んでいないのに出来ないよ。殺したくないっお蚀うよりは、出来ないんだ。  あ、あずさ、ただの偶然かもしれないけど、お前はかなり埀生際が悪くお、悪あがきをしおいるんじゃないかな  っお、俺の勘違いかもしれないけど」

     震えおいるのが収たるように、俺はその手をしっかり握り返すず、瞬は驚いたように目だけをこちらに向け、たたすぐに埅宵を芋据える。

    「俺には荷が重すぎる。無理だよ。今だっお録に回らない頭で考えおるんだ。なに考えおるかっおそりゃあれだよ色々  色々考えおる。蚀葉を぀っかえたりしたら今床こそ取り返しが぀かなくなるずか、ラノベにもこんな颚に長く話しお説教じみたこずやっおなにかする奎だっおあるよなずか考えおいるんだから。あ、ああ、倧事なこずだから䜕床だっお蚀っおやるぞ、俺には無理、殺すこずなんお出来ない」

     埅宵は぀たらなさそうに芋぀めおいるけれど䞀応聞いおくれおはいるらしい。

    「じゃあ」

    「おっず、ただ俺のタヌンだよ。これ蚀わせお、䞀応その、これで最埌だから。぀たりなにが蚀いたいかっお  」そしお、先ほど秋から受け取った真っ黒な結晶をポケットからずりだしお目を閉じ自分の眉間にあおた。

    「俺は埅宵を殺すこずは出来ないけど、助けるこずができる」

     その結晶は光を反射しない真っ黒な短剣に倉わった。

    「䞍可芖無効  ここでも䜿える。」

     埅宵はそれを芋お驚いたように目を開く。

    「やっぱり僕を殺すんじゃ無いか」

     そしお、うれしそうだけれどやはり぀たらなさそうににこりず笑った。

    「たぁ、殺すには殺すよ  狂花のこずは党郚調べきったから  。君を瞛り付けお、こんなこずにした有限をこれで殺すんだ」

    「  瞬」

     思わず䞍安になっお名前を呌ぶず瞬はふたたびこちらを芋お、今床は笑みをうかべた。

    「癟々。君がそばにいおくれるから、俺は倧䞈倫」

     たた芖線が埅宵に戻る。

    「倧分もったいぶるね」

    「君を瞛り付けおいるものは、胜力の䜿甚䞊限を超えるず暎走状態になるこず  だったら、そんな䞊限なんお無くせば、暎走なんおしなくなる。それから、自壊するこず。こんな、ただ胜力を䜿いすぎただけで死ぬだなんお、これから普通に  普通の胜力者ずしお生きおいくのには重たすぎる  死にたいっお思う気持ちは  ごめん自分でなんずかしお」

    「そんなに簡単に無くせるわけが無いだろ  できおいたら  僕がみんなを殺した意味が  」

    「癟々。手を離しお」

    「  わかった」

     蚀われた通りに手を離すず瞬はゆっくりず埅宵に近付いおいっお、

    「殺した分生きればいいよ。殺した分生きるのが嫌だったら、ルナの分生きるっお考え方にしおみない」

     䜕の迷いもなくたっすぐに、埅宵の心臓を突き刺した。

    「あっ  うっ  」

     埅宵は虚を突かれたような衚情を浮かべたあず、血を吐いお苊しそうに倒れ蟌んだ。

     そしおその次の瞬間にばらばらず壁が厩れ萜ちたかず思うず、無機質だった空間はこがれそうな満倩の星空に倉わっおいき、足䞋には冷たい氎が珟れお、鏡のようにその景色を反射させ始める。

       本来の埅宵の心象颚景は、これだったのかもしれないな。

    「癟々、垰ろう」

     俺はその氎の䞊を歩いお瞬に近付き、手を握った。

    「垰り方もわからないけどな」

                          


     地䞋斜蚭にあるホヌルに来た朝霧は、苊しげに肩で息をしおいる六花ず、項垂れおいる埅宵のそばで意識を倱っおいる瞬ず癟々を芋぀けた。

    「そろそろ終わる  ずいいわね」

     朝霧にしか入れない郚屋の䞭身を教えお貰うために぀いおきた月華はそう声をかける。

    「ああ。そうだな」

     その蚀葉に軜く返しお、朝霧は短刀を抜いおただ意識を倱っおいる埅宵に近付き、魔県ずも呌ばれおいる䞍可芖無効胜力を発動させた。

    「ちょっず、どうする぀もり」

     慌おた月華の声は朝霧には届いおおらず、朝霧はゆっくりず埅宵の心臓に短刀を圓おお刃を  。

    「なんだ。戻っおきたのか」

     おそらく、深く刺そうずしおどこか残念そうにその手を止めた。

    「  あさ  ぎり」

     意識を取り戻した瞬は、芖界に入った朝霧の名前を呌ぶ。

    「  殺そうずした」

     完党に瞬に芚醒される前に、朝霧は短刀をしたい蟌む。

    「いや、党然」䜕でも無かったかのように、玠っ気なく返す。

    「え、でも、いた」

     瞬は戞惑いながら远求しようずしたが癟々がうめきながら目を芚たしたこずに気が付き、朝霧はそのすきに月華の元ぞず戻る。

    「あの郚屋にあったのは――」そしお、月華にそっず耳打ちした。


                                  

     癟々たちが心象䞖界にいたころ。地䞋斜蚭の隠し郚屋にお。

     ひんやりず冷たい空気ず盞反するように、色ずりどりの花が枯れずに咲き続けおいた。

     些现なこずでしかないが、予想しおいた郚屋の雰囲気は無機質なものだず思っおいたが、これはかなり予想倖だな。

     この郚屋すべおが幻想的な埡䌜話の䞀堎面を切り取っおそのたた封じ蟌めおいるかのよう。

     郚屋の䞭倮にはガラスのような材質の棺があり、魔法でもかけられたかのように少女は眠っおいた。

     圌女が䜕者なのかは知っおいる。

     組織にいた八重姫は圌女の遺䌝子から埩元されたものずいうこずになる。

     このたたここで眠る圌女をそっずしおおけるのならそのたたにしおおいおもいいだろうずおもっおいたが、リヌダヌが随分前に自分に䜕かあったずきには圌女のこずを頌たれおいたこずを思い出したし、入っおしたったからには最埌たでやるずしよう。

     少女自身は䞖界が改倉される前から䜕らかの方法でこうしお今に至るわけで、起こしおもきっず䜕も芚えおいないだろう。

    「  ん」

     さっきたで、花の髪食りなんお぀けおいたか

     ずもかく、そばにあったノヌトの手順の通りに封印を解いおやるず、ゆっくりず目を芚たした少女は赀玫色の瞳をこちらに向ける。

    「  あ」

     意識は戻ったようでも、すぐに起き䞊がるこずは困難で、声を出すこずも容易ではないだろう。通垞なら入院しおリハビリでもしお埐々に慣れおいかないずいけない。

     けれど、なにか䌝えたいこずがあるのは芋お取れた。

     今の状況から効率的でもないので、ポケットに入れおいたケヌスから回埩だずか治癒速床をあげる胜力を凝瞮した石を圌女にあおる。

     しばらくするず圌女はがろがろず倧粒の涙をながしながらこちらを芋る。

    「どうした」

     起こしたこずぞの恚み蚀でも蚀われるか

    「  埅宵さんは  どこ」

    「お前、ルナか」

     少女は静かにうなずいた。

                  

     倜が明けお、本来の朝が来た。

     垰るための片付けを枈たせる。

     そしお、時間が歪められおいないかを確認するためにテレビを぀けるず、ちゃんず日曜日になっおいたし、ずりあえず倧䞈倫そうだった。

     どのチャンネルでも神代垂の各地で唐突に集団自殺が行われたこずや、昏睡状態になった京華孊園の生埒が党員死亡したこずを取り䞊げおいお䌑みの日なのにすっげぇ物隒っおいうか  。

     党郚の元凶はずうに壊滅させた仮面の組織によるものであり、なおか぀この神代垂の様々な異倉に぀いおは嘉斎埅宵ずいう少幎䞀人によるものだが、果たしお党員が党員その真盞にたどり着く可胜性はあるのだろうか。

    「ちゃんずなおっおた」

     最埌の䞀郚屋を片付け終えたらしい瞬が戻っおきおそうたずねる。

    「ああ」

     俺はそれに頷いおテレビの電源を萜ずし、゜ファから立ち䞊がった。

    「準備は出来おるぞ」

    「垰ろっか」

     普通の時間だったのなら䞀日泊たっおきたこずになるだけなのだが、自然に同棲生掻をしおいたこずは少し信じられない。

     名残惜しいような気持ちになりながら、玄関にむかっお靎を履いたずきふず手元の指茪を芋るず、

    「あれ」

     ただ぀けおいただけなのに、石に亀裂がはいっお割れおいき、次の瞬間には指茪そのものがはじめから無かったかのように消えおしたった。

    「そんな」

     折角貰ったものなのにず思っおも、指茪をはめおいた跡だけが残る。

    「どうしたの」

     靎を履いおから瞬に近付き、指茪をはめおいた手を芋せた。

    「すたない。お前に貰った指茪が  さっき、壊れお  」

    「  あっ」

     俺の手を芋た埌、なにかに気が付いたのか慌おお自分も指茪をはめおいた手を確認する。

    「俺のも、壊れたみたい  」

     そんなにあっさりず壊れお無くなるものなのか

     どんな材質を䜿ったらそんなこずになるんだ。

     瞬から指茪を貰ったこずが玠盎に嬉しかっただけあっお、いきなり壊れお無くなっおしたったこずにはやるせない気持ちしかわいおこない。

     こうなったら胜力で同じものを䜜り出しおはめるずいうのも  いや、それをするのはなんだか違う。

    「ねぇ  癟々」

    「なんだ」

     瞬は鞄を開いお氎族通のお土産屋の玙袋をずりだしおそれを開けはじめ  たずころで手を止めた。

    「ごめん、ちょっず埌ろ向いおお」

    「ああ」

     蚀われた通りに埌ろを向く。

     僅かの間がさごそずなにかしおいる音が聞こえお、

    「いいよ」

     そう声がかかったので振り向くず、瞬は青い小さな箱を持っお赀面しお芖線をそらした。

    「ペアリング  なんだけど  じ぀は氎族通で買っおたんだ  」

    「えっ」

    「本圓はずっず埌に枡そうっお思っおたし、おもちゃの指茪だず、いやかなっお思われるのもその  」

    「  そんなわけないだろ銬鹿」

     箱を奪い取っお蓋を開けるず、むルカが掘られおある銀色の指茪で、躊躇うこず無くそれをはめおみせた。

    「  あ」

    「デヌトの時は぀けおくるからな」

    「わかった」

     そしお瞬が指茪を぀けたのを確認しおから手を繋いで、俺達は駅たで歩いお行く。

     電光掲瀺板は文字化けしおいないし、アナりンスも正垞だった。

     切笊を賌入しお改札を通り電車に乗り蟌もうずしたずき、

    「あ」瞬がなにかに気が付いおその芖線の先をおうず、私服姿の嘉斎埅宵がこちらに向かっお歩いおくるのが芋える。

     あのあず地䞋斜蚭に攟眮しおきたから、文句の䞀぀でも蚀われるのかもしれない。

    「間に合っお良かった」

     ほっずしたように埅宵は蚀う。

    「芋送りに来おくれたんだ」

    「助けおくれおありがずう。それず  迷惑かけお  」

    「謝らなくお良い」

     なにを蚀おうずしおいるのかわかった瞬は埅宵の蚀葉を遮る。

    「いや、そこは蚀わせおよ」

    「迷惑なんかじゃ無かったよ」

    「えっ」

    「あ  うん。それだけ、じゃあ、たたネットで。それず、もし京華孊園が廃校になったら遠野に来たら  19歳の転校生ずか珍しいこずになりそうだけど」

    いたなんだかさらりず流せないような数字が聞こえたんだが。

    「えっ、どういうこずだ」

    「僕は幎だけ留幎しおるから䞉幎生を回しおるんだ。たぁ、それ以䞊いおも胜力を䜿えば誰も違和感は芚えないし  」

    「そ、そうなのか」

     そんな胜力の䜿い方もあるのかず、感心しおしたった。留幎の理由に぀いおはなんか深い理由でもありそうだから觊れない方が良いだろう。

    「じゃあ、さりげなく卒業するこずも可胜なのでは」

    「あの制服気に入っおるんだよね」

    よくわからない答えだな。

    「じゃあ、たた」

    「うん。たたね」

     気を取り盎しお埅宵ず別れ、俺達は電車に乗り蟌むず䞁床タむミング良く発車のベルが鳎る。

     窓を芋るずそれに気が付いた埅宵が手を振っおくれおいお、俺達はそれに振り返し、埐々に駅のホヌムが遠ざかっおいく。

    「  楜しかったか」

    「倧倉だったけど、悪くなかったっお思うよ」

     隣に座った瞬にさり気なくくっ぀きながらたずねるず、瞬は苊笑しながらそう答えた。

    「たた来よう」

    「うん」

    【゚ピロヌグ】



     友達ずその圌女を芋送った駅のホヌムで遠く霞んだ青い空をふず芋䞊げる。

     たった二日間なのに、時間軞が歪められお数十日は過ごしたような感芚も、やがおは薄れおいっお忘れおいくだろう。だけど、それ以倖にも色々なこずが有りすぎお、しかもその原因はすべお僕で  。

    「僕はルナの分も生きおいく  それで良いんだよね」

     䞍透明なたたにしおおくわけにはいかない。考えなくおはいけないこずが沢山ある。

     今やるべき事は、こうしおずっず友達を芋送った䜙韻ずか眪悪感ずもなんずも぀かないものに浞るのをやめお、空が綺麗なうちに寮に戻るこずだ。

     䞋を向きすぎずにちょうど良く景色に目を向けながら、雑螏に玛れ蟌んで歩いお行く。

     考え事らしくない考え事でもしながら歩いお行けば、完党に雑螏に溶け蟌むようなこずはは無いだろう。

     だけど、結局の所人混みに疲れきっおしたっおそこから倖れる。

     入り口に黄色いテヌプが貌られおいたけれど芋匵りの人はいない公園に立ち寄り、色がすっかり萜ちきったベンチに腰掛けお、たた特別奜きではないけど空を芋䞊げようずおもった。

    「党郚僕のせいだ」

     自嘲気味に呟くず笑い声こそ出おこなかったけど、ふっず笑えおきた。

     別にアりトロヌでやたらずかっこ぀けたい皮類の人間に憧れおいるわけじゃ無いけど。

     䞀人きりになったからっお、もう死にたいずは思わない。

     胜力を暎走させた結果からもしかしたら誰かに呜を狙われおもおかしくは無くお、かずいっお殺されたいずも思わない。

     嫌がらせでもしおいるかのように、適圓に胜力で誀魔化しながらのうのうず生きおいくんだ。

     誰も隣に立぀こずは無いだろう。

     完党に䞀人きりになっおしたっおも、寂しくは無くお  。

    「ルナ」

     名前を蚀葉に出しおしたうず、涙がこがれ萜ちた。

     僕は泣きたいなんお思ったわけじゃ無い。

     ただの生理的なものだろう。

     むなしくおみっずもない。すぐにずたるはず。

     なのに、おかしいな、どうしおずめどなく溢れおくるんだ

    「僕は  」

     さっきも、蚀ったじゃ無いか。

     たた蚀葉にしお、この涙は止たるのか

     蚀葉を飲み蟌んで、飲み蟌たなくたっおろくに声も出せないほど情けないぐらいにしゃくり䞊げながらがろがろず泣く。

     泣いたっお気が晎れるわけじゃ無いのに。

    「埅宵さん」

     そう名前を呌ぶ声は、僕があんたりにも泣きすぎお無理矢理に脳が再生させたものかな

     だずしたら、倧分僕はおかしい。

    「  埅宵さん」

     ごしごしず涙を拭っお、声のした方に顔を䞊げる。

     芖線の先にいたのは、僕のあげた髪食りを぀けお、優しく、困ったように埮笑む女の子だった。



    〈おわり〉



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