
【第1章第5話】「むかし、むかしは終わっていない」 ー 不死と記憶の物語 ー
昔書いてた小説。途中でやめてたんでAIの力を借りてまた始めていこうと思います!
第1章:桃太郎を迎えに― むかしむかしの、その続き ―
第5話「5秒間の時間旅行」
▼第1章 第1話から読む
「むかし、むかしは終わっていなかった」
装置の前で、おじいさんはペンダントを見つめていた。
編み込まれた紐。
歪な結び目。
淡く紫色に光る石が、わずかに光を反射する。
「……まだ持ってたのね」
おばあさんの声。
おばあさんの首にも同じペンダントが光る。
「まあな」
短く答える。
ペンダントを力強く握る。
ざらついた感触が、やけに現実的だった。
「あいつにやったやつだ」
視線は遠くに向く。
「鬼退治に行くって聞かなくてな」
苦笑。
「せめてこれくらいはって……」
――無事で帰ってこい。
あのときの言葉は、もう曖昧だ。
だが、感情だけは残っている。
おじいさんは一度だけ目を閉じた。
そして開く。
おばあさんを見る。
「……わしが行く」
静かに言う。
おばあさんは何も言わない。
少しの沈黙。
「……勝手ね」
「いつもだろ」
それで終わりだった。
「では早速――」
博士がおじいさんの腕を掴む。
「え、ちょっとまだ――」
ぐい、と強引に引っ張る。
「おい待て、まだ何も聞いてねえ」
「大丈夫です! 説明は乗ってからでもできます!」
「できるか!」
そのまま装置へ。
半ば押し込まれるように座らされる。
「ちょ、ほんとに待て!」
「はいはい大丈夫です!」
外から勝手に操作が始まる。
「おい!」
完全に置いていかれている。
「……くそ」
小さく舌打ちする。
心の準備なんて、できていない。
当たり前だ。
だが――
もう逃げられない。
「……はあ」
深く息を吐く。
「やるしかねえか」
「では説明を続けます!」
博士の声が外から響く。
おじいさんは装置の中で顔をしかめる。
「聞いてねえよ……」
「えーと、まず思い出の品をそちらに!」
装置の中央のスロットが開く。
「そこに入れてください!」
「……これか」
ペンダントを見つめる。
一瞬だけ迷う。
そして――
「……頼むぞ」
小さく呟き、差し込んだ。
カチ、と音がする。
装置が低く唸り始める。
「いいですね! それが起点になります!」
「適当だなほんと……」
「適当ではありません! 最先端です!」
声だけは自信満々だ。
「次に!」
博士は構わず続ける。
「到着後は必ずそのペンダントを回収してください!」
「は?」
「帰還時に装置へ干渉する可能性があります!」
「面倒くせえな」
「重要です!」
間髪入れずに続く。
「それと、時間の流れですが!」
光が徐々に強くなる。
「過去でどれだけ過ごしても、こちらでは5秒後に帰還します!」
「5秒か……」
ぼそりと呟く。
「そりゃ助かるな」
本音だった。
「では次に!」
博士の声が少しだけ真剣になる。
「歴史への干渉についてですが――」
装置の振動が強くなる。
空気がわずかに歪む。
「基本的に過去は変えてはいけません!」
「ふーん……」
聞いているようで聞いていない。
「特に今回!」
博士の声が一段上がる。
「桃太郎が鬼退治を行う前に接触すると――」
光がさらに強くなる。
視界が白く染まり始める。
「必ず鬼退治後の――」
言葉が、途中で揺らぐ。
音が歪む。
「――連れて――」
聞こえない。
おじいさんは目を細める。
そして、小さく呟いた。
「……まあ、どうにかなるだろ」
完全な楽観ではない。
ただの開き直りだった。
光が弾ける。
音が消える。
世界が引き剥がされる。
おじいさんは装置と共に消えた。
残されたのは、何もない空間。
さっきまでそこにあったはずの装置も、音も、光も。
すべてが消えている。
おばあさんは、その場所を見つめていた。
微動だにしない。
ただ、静かに。
まるで――
最初から何もなかったかのような空間を。
「帰還まで5秒!」
助手の声。
「5……」
誰も動かない。
「4……」
博士がわずかに息を飲む。
「3……」
おばあさんは視線を外さない。
「2……」
空気が張り詰める。
「1……」
沈黙。
何も起きない。
光も、音も、反応もない。
完全な静寂。
助手は視線を装置があった場所に向けたまま言う。
「……帰還反応、ありません」
(第1章・完)
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