
【第1章第1話】「むかし、むかしは終わっていない」 ー 不死と記憶の物語 ー
昔書いてた小説。途中でやめてたんでAIの力を借りてまた始めていこうと思います!
第1章:桃太郎を迎えに― むかしむかしの、その続き ―
むかし、むかし。
あるところに。
動物と言葉を交わし、鬼を討った男の子がいた。
また、あるところでは。
月のように美しい娘が、竹の中から誕生していた。
人々はそれを昔話として語り継いだ。
そして今も。
とあるところで。
その2人を育てたおじいさんとおばあさんは、ひっそりと生き続けていた。
ただ一つ、知らなかった。
かつて終わったはずの物語が、まだ終わっていなかったことを。
そして今、“昔話”と呼ばれた者たちが、再び現代へと集められようとしていた。
ーー
ー
第1話「むかし、むかしは終わっていなかった」
「なあ、ばあさん。これ、見てみろ」
リビングのソファにだらしなく寝転びながら、おじいさんは一冊の絵本をひらひらと振った。
古びた表紙。子ども向けに丸く描かれた、桃から生まれた少年の絵。
タイトルは――桃太郎。
「またそれ? もう何回見てるのよ」
キッチンからおばあさんの声が飛ぶ。包丁の音がリズムよく響いていた。
「いやあ、懐かしくてなぁ。こんな顔してたか? あいつ」
「してないわよ。もっと生意気だった」
間髪入れずに返ってくる。
おじいさんは「ははっ」と笑いながら、ページをめくった。
犬、猿、雉。お供たちと並ぶ桃太郎。鬼ヶ島へ向かう勇ましい姿。
「ずいぶん美化されてるな」
「当たり前でしょ。あんなのそのまま描いたら、子ども泣くわよ」
おばあさんがエプロンで手を拭きながら、リビングに顔を出す。
ぱっと見れば、どう見ても四十代前半。肌は張り、髪も艶やかだ。
――ただしそれは、長年の“努力”の結果だった。
「ほら、ご飯できたわよ」
「おう」
テーブルには、普通の家庭料理が並ぶ。焼き魚、味噌汁、白米。
何の変哲もない、現代日本の食卓。
ただひとつ違うのは――
それを囲む二人が、何百年も生きているということくらいだった。
「今日もパチンコ行ってきたの?」
味噌汁をすすりながら、おばあさんがちらりと睨む。
「ちょっとな」
「“ちょっと”でその顔?」
「負けた」
「でしょうね」
ため息。
おじいさんは悪びれもなく笑う。
「いやあ、最近の台は難しくてな。昔のほうがよかった」
「昔って、いつの話よ」
「江戸あたり」
「バカ言ってないでちゃんと働きなさい」
「働いてどうする。金はあるだろ」
それもそうだった。
この家も、貯金も、全部“時間”で積み上げてきたものだ。
働く必要なんて、とっくになくなっている。
だからこそ――
「……暇なのよね、結局」
ぽつりと、おばあさんが言った。
一瞬だけ、空気が止まる。
おじいさんは箸を置き、天井を見上げた。
「まあなあ」
軽い調子で言ったが、その声には少しだけ重さが混じる。
「長く生きすぎると、やることがなくなる」
「あなたはやることあるでしょ。女と酒とギャンブル」
「それは“暇つぶし”だ」
「最低ね」
ぴしゃり。
だが、完全に否定もしない。
それが二人の長い関係だった。
食後。
おじいさんは再びソファに寝転び、絵本を手に取った。
「なあ」
「なに?」
「もしさ」
ページをめくりながら、何気なく言う。
「もう一回、ああいうのが来たらどうする?」
「……ああいうの?」
「鬼とか、姫とか」
少しの沈黙。
おばあさんは視線を逸らし、窓の外を見た。
ネオンの光。車の音。スマホの通知音。
完全に現代の景色。
「来ないわよ、もう」
「そうかね」
「そうよ」
言い切った。
だが、その直後――
ピンポーン。
インターホンが鳴った。
こんな時間に?
おばあさんが眉をひそめる。
「宅配?」
「頼んでないぞ」
おじいさんはゆっくりと立ち上がった。
妙に、胸がざわつく。
モニターを確認する。
そこに映っていたのは――
黒いスーツの男たち。
三人。
無表情。
「……誰だ」
ぼそりと呟く。
すると、そのうちの一人が顔を上げ、カメラをまっすぐ見た。
そして、静かに口を開く。
『――確認しました』
「は?」
『音声。対象個体。“桃太郎育成記録”と一致』
一瞬、思考が止まる。
後ろで、おばあさんの声。
「誰なの?」
おじいさんは答えなかった。
代わりに、玄関へ行きゆっくりとドアノブに手をかける。
――嫌な予感がする。
昔、何度も感じた感覚。
「……ばあさん」
「なに?」
「どうやら」
ドアを開けながら、低く言った。
「“むかしむかし”は、まだ終わってなかったらしい」
ドアの向こう。
スーツの男が一歩前に出る。
無機質な声で告げた。
「お迎えに参りました」
「――誰をだ?」
男は、迷いなく答える。
「あなた方です」
(つづく)
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