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天七代の全容:地の十一が明かす王権の継承|ホツマツタヱを暗号文として読む #06

    前回は、「別天津神」を手がかりに、天七代の裏側にある先住王族側の構造を見てきました。
    そこから、タカミムスビとカンミムスビという二つの先住王族の存在が、女王血統の継承において重要な意味を持っていたことが見えてきました。

    しかし、天七代の全体像をつかむためには、なお解かなければならない問題が残っています。
    ミカサフミの「九代の星」と「地の十一」、そして古事記の別天津神にも記されるアシカイヒコチや「トコタチの御代はミホ神」という一節です。

    今回は、この「地の十一」を手がかりに、先住王族側と舟運王族側の人物配置を整理し、その継承の流れをたどることで、天七代の全容を復元していきます。

    「九代の星と地の十一」の周辺

    まず、渡来王族側に九人の男王がおり、先住王族側に十一人の人物がいることを示す、ミカサフミの一節を再掲しておきます。

    天地も 開けて神も 陰陽も分け 日も月も成り 九代の星 アメトコタチと 地の十一も アシカイヒコチ トコタチの 御代はミホ神(ミ45)

    この一節について、前半部はこれまで次のように読んできました。
    すなわち、渡来王族は、ミナカヌシの系譜を保ちながら、女王制・三大王連立制の連合を成立させ、先住王族タカミムスビ(日)・カンミムスビ(月)と並立的に結びついた。そして、渡来王族の系譜に属する男王は、総計九人となる、という理解です。

    問題は、中間部の「九代の星 アメトコタチと 地の十一も アシカイヒコチ」です。
    ここは解釈の難しい箇所ですが、本稿ではひとまず、次のように読んでみます。

    すなわち、「九代の星」に属する九人の中には、アメトコタチ、すなわち天君系と鏡臣系が含まれている。
    それに対して「地の十一」は、先住王族側の十一人を指し、そこにはアシカイヒコチ、すなわち舟運王族が含まれている、という読みです。

    さらに、後半部の「トコタチの御代」は、「クニトコタチの三代=オモタルの代」であり、「ミホ神」は、ここでは「水炎神」と読むことで、舟運王族の宗像を示す可能性があると考えています。

    以下、これらの読みがどこまで本文と整合するかを、順に見ていきます。

    アシカイヒコチという名と舟運王族

    アシカイヒコチが舟運王族を指すという解釈の根拠は、その語構成にあります。

    アシを「足」、カイを「櫂」と読んだうえで、ヒコ(男)とチ(道=系譜)を合わせると、「足の代わりに櫂で進む男王の系譜」と読むことができるからです。

    この「アシカイ」を、「足で歩く代わりに櫂で進む」という象徴的な表現とみるなら、そこには舟運王族の性格がよく表れています。

    私の中核仮説では、舟運王族はこの王権連合の周辺的存在ではありません。むしろ、王権の維持に不可欠な移動と軍事の両面を担う、きわめて重要な集団です。

    女王制王権においては、王たちは結婚のために広域移動する必要がありました。その移動を担ったのが、職能集団としての舟運王族です。そこには当然、護衛の役割も含まれていたはずです。
    その意味で、連立王権は、その移動力と軍事力を舟運王族に大きく依存していたと考えられます。

    その一方で、王権連合は、舟運王族の男王がみずから女王と結婚して大王位に就くことには、強い制約をかけていたとみられます。
    輸送と軍事を担う勢力が、そのまま王権中枢を兼ねることを避けようとしたためです。

    しかし舟運王族は、新たな女王候補を擁立することで次第に影響力を強め、ついには舟運王族自身によるクーデターに至ります。
    いわゆる「国譲り神話」の実行者であるタケミカツチとフツヌシを、住吉と宗像という二大舟運王族の男王とみれば、国譲りの実相は、舟運王族による政変として読み直すことができます。

    古事記の暗号「案山子」

    「アシカイヒコチ」の「アシ」を、「足で歩く代わりに」と解釈する発想は、唐突な思いつきではありません。

    ホツマツタヱには、天孫降臨神話のサルタヒコの登場場面に、「面は案山子(かかち)」という描写があります。サルタヒコは、アマノコヤネの渡来を支えた舟運王族です。

    これに対して古事記は、その「案山子」という表現を、スクナヒコナ渡来の場面に登場するクエヒコの説明へ移し替えています。
    そのうえで、クエヒコが案山子である理由を、
    「足で歩きはしないが、ことごとく天下の事を知っている神」
    と説明します。

    この描写は、「足で歩く代わりに」という、別の移動様式をもつ存在を思わせるものであり、やはり舟運王族を連想させます。

    古事記は、サルタヒコの描写をクエヒコの描写に移し替えることで、両者が深層では同一人物であることを伝えようとしています。そしてその対応関係が見えれば、スクナヒコナもまた、アマノコヤネの隠れた別名として浮かび上がってきます。

    それだけではありません。
    古事記は、この移し替えによって、ホツマツタヱの「案山子」という描写そのものに、サルタヒコの属性を伝えるための重要な手がかりがあることを、あらためて際立たせていると考えられるのです。

    「地の十一」:先住王族側の王の数

    ホツマツタヱの暗号では、あるリストに含まれる人物の総数を、何らかの形であらかじめ示しておくことで、深層における人物比定を可能にするという戦略がよく用いられます。

    私の中核仮説に含まれる、前編の登場人物総数――表層263人、深層120人――についても、ホツマツタヱにはその数を示唆する直接的・間接的な記述があります。
    つまり、ある人物リストが「閉じられている」こと自体が、暗号解読の重要な鍵になるのです。

    ミカサフミの「地の十一」も、そのような閉じられた人物リストの総数とみることができます。
    そこで、その総数を踏まえたうえで、先住王族・舟運王族側に属する人物を整理すると、次のようになります。

    ※黒丸数字は女王、〔 〕は明記される属性、( )は初出のアヤと頁番号
    ※「★」は「アマテルの十二后」の父親として記されていることを示す

    ❶スヒチ=初代女王(2-7)
    ❷イククイ=二代女王(2-16)
    ❸カシコネ=三代女王(2-17)
    ❹イサナミ=四代女王(2-27)
    ❺ココリ姫=五代女王(5-13)
    ❻サシミメ=六代女王〔民の女〕(7-2)
    ⑦トヨウケ=タカミムスビ〔五代〕(2-25)
    ⑧ヤソキネ=カンミムスビ〔六代、オオミヤ姫らの父★〕(4-45)
    ⑨クラキネ=カンミムスビ傍系〔モチコらの父★〕(6-3)
    ⑩カナヤマヒコ=宗像〔ウリフ姫の父★〕(6-9)
    ⑪カナサキ=住吉〔ハヤアキツ姫の父★〕(1-2/6-5)

    この整理に従えば、「地の十一」は、六人の女王と五人の男王から成ることになります。

    「アマテルの十二后」:「地の十一」との呼応

    このうち男王五人の比定について、その妥当性を見ていきます。

    まず確認しておきたいのは、「地の十一」が天七代の時代に属するリストだということです。
    そこに含まれるのは、「七代目」(実際には四代目)のイサナギ・イサナミの代までの人物であり、アマテル以後の世代はここには入りません。

    ホツマツタヱには、アマテルには、遅れて召した一人を含めて十三人の后がいたとして、「十二后(そふきさき)」の名で十三人の女性リストが掲げられています。
    もちろん、このうち実際にアマテルの后であったのは、先頭のモチコと五番目のセオリツ姫だけです。
    この十三人のリスト自体も別の暗号として機能しているのですが、ここではその点には立ち入りません。

    この十三人のうち、父親の名が記されているのは八人です。
    姉妹をまとめて数え直すと、その父親は五人になります。
    アマテルの后の父親は、イサナギ・イサナミと同世代か、それ以上ですから、天七代の男王の候補となります。

    ただし、その五人をそのまま天七代の男王とみることはできません。
    というのも、セオリツ姫は、アマテルが初婚から三十九穂(25年)後に再婚した相手だからです。
    この王権の世代サイクルの通例が最短で二十九穂(15年)であることを踏まえると、その父サクラウチは、他の父親たちより一世代後、すなわちアマテルとほぼ同世代に位置づくことになります。

    すると、「アマテルの十二后」に記された父親のうち、天七代の人物として数えるべきなのは四人ということになります。
    そして、そこへイサナミの父、すなわちアマテルから見れば祖父世代にあたるトヨウケを加えると、ちょうど「地の十一」における男王五人がそろいます。

    少なくともここでは、人数の一致だけでなく、世代の位置づけまでが整合しています。
    ホツマツタヱの数字や人物リストの使い方から見て、この一致を偶然とみるのは難しいと思われます。

    「花と穂の時に祀りて」

    次は、女王の比定です。

    イサナミの代に、三人の女王が立て続けに擁立されたことは、まず「黄泉の国神話」に次のように記されています。

    イサナミは 有馬に納む 花と穂の 時に祀りて ココリ姫 輩に告ぐる

    (5-12)

    ここで「花」は、スヒチ(桃の花)と同系統のカンミムスビのココリ姫、「穂」は「炎(ほ)」で宗像カナヤマヒコの娘サシミメを指すと考えられます。
    だとすると、ここには、イサナミの女王即位がココリ姫とサシミメの擁立とほぼ同時期だったことが示されていることになります。

    表層の「輩に告ぐる」は、深層では「輩に継ぐる」と読み替えることができるように思われます。
    その場合、正統女王の血統にあるココリ姫が、本来は女王位継承権を持たない舟運王族のサシミメに王位を譲ったことを示す表現として理解できます。

    そう考えると、前半の「有馬に納む」も、表層では埋葬地の表現でありながら、深層では「即位からごく短期間のうちに次の女王が立った」ことを示す可能性があります。

    なお、暗号継承者による編纂と考えられる万葉集には、3-460に「草枕客有間尒」があり、通説では「草枕旅なるほどに」と読まれますが、「旅のあり間に」と読む余地もあります。なにしろ、この長歌には地名としての「有馬山」も登場するのです。「あり間」の意味を伝える暗号が歌の中にあることを知らせる目印とも見えます。こうした、暗号の所在を知らせる目印が歌の内部に重ねて置かれる書き方自体、暗号継承をうかがわせるものとして注目されます。

    「左の目を洗い昼に祈り、右の目を洗い月に祈る」

    この三女王の相次ぐ擁立は、イサナギが男子誕生を祈る場面にも、別の形で記されています。

    池水に 左たの目を洗い 昼に祈り 右かの目を洗い 月に祈り イシコリドメが 真澄鏡ますかがみ 鋳造いつくり進む

    (4-14)

    まず表層の語を隠語として読むと、「昼」は九州中央部、「月」は、「夜」が四国西部を指すことを踏まえれば、四国出自の王族を示すものと読むことができます。

    その上で、「目」が「女(め)」と同音であることに着目すると、九州の女王はタカミムスビ、四国の女王はカンミムスビですから、「左(た)の目」を「タカミムスビの女(め)」、「右(か)の目」を「カンミムスビの女」と読む可能性が見えてきます。

    「池水」を舟運王族の女子、「洗う」を「押しのける」のような意味だとみなせば、前半部は、ひとまず次のように読めます。

    「舟運王族の女王サシミメが、九州のタカミムスビの女王イサナミと、四国のカンミムスビの女王ココリ姫を押しのけて擁立された。」

    後半部の「真澄鏡(ますかがみ)」の「ます」は、前回取り上げた「万升民よろますたみ」の「升(ます)」で、中国地方西部に移ったカンミムスビのこと、「鏡」は鏡臣で、「万升民」の「万」、すなわち、二代大王・鏡臣のツノクイの系譜のことです。
    そう考えると、「真澄鏡」は、「万升民が蠢いて(4-9)」という叙述と対応する表現として理解できます。
    そして、この王権連合では、女王が男王に大王位を与えるので、鏡臣サクナギを擁立した女王ココリ姫を、鏡を鋳造する職人に喩えて、イシコリドメという別名で記したのでしょう。
    イシコリドメとココリ姫に「コリ」が共通することも、その読みを支える手がかりになります。

    ここで重要なのは、この三人の女王の擁立が、それぞれ夫の三大王擁立を意味していることです。
    イサナミの即位が夫イサナギの天君即位を意味することは明らかです。
    そのうえで、ここにイシコリドメによる真澄鏡の鋳造だけが記されているのは、暗に、サシミメの夫クラキネが剣臣に擁立されたことを知らせている可能性があります。

    三大王連立の継承順が「天君→鏡臣→剣臣」であることを前提にすれば、構造の一部だけを示して残りを補完させるこうした記し方は、ホツマ暗号の典型的な手法のひとつとみることができます。

    ヤソキネとクラキネの事績のすり替え

    イサナミの結婚後、ココリ姫の結婚を受けて、イサナミの父トヨウケが剣臣を継承するために再婚したことは、前回すでに述べました。

    そのトヨウケは、「タカミムスビの五代神」と記されます(2-25)。
    また、トヨウケの再婚によって生まれた男子タカキネは「七代」とされ、その間にあたる「六代」は「カンミムスビのヤソキネ」と記されています(4-45、6-2、10-4)。

    しかし、この「六代ヤソキネ」には、いくつか不自然な点があります。

    第一に、ヤソキネの結婚そのものは本文に記されません。
    その一方で、サシミメと結婚したクラキネについては、「イサナギは祀れど弟のクラキネは祀らず(7-17)」と記され、即位に至らなかった人物として強く印象づけられています。

    第二に、ヤソキネはアマテルの十二后選定の責任者として記されるにもかかわらず、十二后のリストの先頭に置かれるのは、クラキネの二人の娘です。

    第三に、ヤソキネの娘と記される二人の女子は、実際にはかなり後の世代に属するとみられます。

    これらを合わせて考えると、ココリ姫の弟ヤソキネと、オモタルの弟クラキネの事績は、本文上で一部すり替えられているとみるほうが自然です。

    五代トヨウケ・六代ヤソキネ

    ここで、六代ヤソキネをクラキネに置き換えて、⑤トヨウケ、⑥クラキネ、⑦タカキネと並べ直してみると、これが、先住王族の継承順ではなく、本当は剣臣の継承順であることが見えてきます。

    この場合、「タカミムスビの五代神」は、タカミムスビの系譜に属するトヨウケが、ミナカヌシの系譜の五代目を継承したことを意味すると読めます。
    トヨウケがミナカヌシ系譜の継承者を名乗りうるのは、その祖母がミナカヌシの娘だからです。

    そして、六代の「カンミムスビのヤソキネ」が、もし本来クラキネであったとすれば、この人物もまたミナカヌシの継承者を名乗ることが可能になります。
    クラキネは、カンミムスビの傍系であると同時に、ミナカヌシの傍系でもあるからです。
    逆に、ヤソキネにはミナカヌシの系譜との接点がありません。

    この点から見ても、六代ヤソキネの位置には、実際にはクラキネが入っていたと考えるほうが整合的です。

    なお、オモタルとクラキネが兄弟であること、また二人の母がカンミムスビの血を引く女子であることについては、別の機会にあらためて検討したいと思います。

    天七代の系図

    以上で、「九代の星」と「地の十一」に対応する二十人の人物比定は、おおむね出そろいました。
    系図に示すと、次のようになります。

    ※紫は「九代の星」、赤は「地の十一」の女王、黒は「地の十一」の男王を示す。
    ※薄字の「無名男子/無名女子」は、系譜上の存在は要請されるが、本文では固有名が記されない人物を示す。
    ※「*」は同一人物を示す。

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    天七代(九代の星・地の十一)の系図

    この系図からあらためて見えてくることが三つあります。
    一つ目は、タカミムスビとカンミムスビに共通する「ミムスビ」の意味。二つ目は、「トコタチの三代は水炎神」の意味。そして三つ目は、「天七代」の「七」という数字の意味です。

    ミムスビの意味

    この系図から見えてくるのは、イサナミとココリ姫の女王位の正統性の違いと共通性です。
    ココリ姫の正統性は、スヒチと同系統の血統に属することにあります。
    それに対してイサナミの正統性は、ミナカヌシの女子の血を引くことにあります。
    そして、どちらの場合にも、その女系の血統を継承したのは男系の系譜でした。

    そこから「ミムスビ」の意味が浮かび上がってきます。
    スヒチ兄妹が「桃雛木・桃雛実(2-9)」と記されるように、女王は「実」、男王はその実が成る「木」に喩えられています。
    だとすれば、女王の血統を継承する男王の系譜を、「実を結ぶ木」という意味で「ミムスビ」と呼んだと考えることができるのです。

    「トコタチの三代は水炎神」

    本稿の冒頭で、この一句は「オモタルの代は宗像」と読める可能性があると述べました。

    系図にするとはっきり見えてきますが、イサナギの代の人物であるはずの「アマテルの十二后」の父親たちの中で、宗像カナヤマヒコだけがオモタルの代の人物なのです。

    カナヤマヒコは、「アマテルの十二后」に、ウリフ姫ナカコの父として記されます。
    このウリフ姫は、クラキネの娘ハヤコが産んだ三つ子の中子タナコの別名であり、セオリツ姫と同世代の女子です。
    母のハヤコがサシミメの娘ですから、カナヤマヒコは本来、タナコの曾祖父にあたることになります。

    これもただの偽装ではないと考えます。

    次の一節は、新しい女王の血統は、大王位継承権をもつ男王との結婚により認められることを知らせているとみます。「民」とは大王位継承権のない諸王、「君」は大王位継承権のある男王のことです。

    母は民の女 進めてぞ 君の妻なり 御恵み

    (7-12)

    「民」とは大王位継承権のない諸王、「君」は大王位継承権のある男王のことです。「御恵み」とは、サシミメが女王として認められ、さらにその女系子孫が女王の血統として認められることを指しているものと考えます。

    つまり、サシミメの女王擁立のように、新たな女王の血統の始まりには、父と夫という二人の男王が関わることになります。

    そこで、ホツマツタヱは、「アマテルの十二后」に、モチコ・ハヤコの父親としてサシミメの夫クラキネを、タナコの父親としてサシミメの父カナヤマヒコを記したのではないでしょうか。

    このように見ると、ミカサフミのこの一句は、「アマテルの十二后」において、本来は曾祖父にあたるカナヤマヒコが父として記されていることを読み解かせるための、補助的な暗号として挿入されたのではないかと考えられます。

    構造暗号としての天七代

    天七代は、ミナカヌシ四代と女王の系譜四代を直列化したものでした。
    そして、ミナカヌシ四代の最後に位置するオモタルが、三代女王カシコネの夫として両系列を接続しているため、全体としては七代になる、という仕掛けがありました。

    しかし、この「七」という数字は、直列化の結果としてたまたま得られたものではない可能性があります。

    というのも、系図を見ればわかるように、天七代の裏側まで含めた全体構造において、王権連合を構成する系譜は、渡来王族3、先住王族2、舟運王族2の、合計七系譜だからです。

    つまり、「四代」と「四代」を接続したら結果として「七代」になった、というよりも、初めから「七」という構造数を示すために、「4+4→7」という偽装が設計されたのではないか、と考えることができるのです。

    このように見ると、古事記の別天津神が、造化三神とその外側という二段構えをとっている理由も、もう少し見えてきます。

    造化三神はそれぞれ一系譜ずつを示し、その外側に置かれたアシカイヒコチとアメトコタチは、どちらも二系譜ずつを表している。
    つまり、表層の「五」は、「3+(2+2)」という配置によって、深層の「七」を読ませる仕掛けになっています。

    古事記は、ホツマツタヱの天七代における「七」という数が、単なる直列化の結果ではなく、構造そのものを伝えるために選ばれた数であることを、別の形で補おうとしたのかもしれません。

    おわりに

    ここまで見てきたように、「地の十一」は、単なる人数表示ではなく、六人の女王と五人の男王から成る、先住王族・舟運王族側の閉じられた人物リストとして読むことができます。

    そのうち男王五人は、「アマテルの十二后」に記された父親たちと世代的に対応しており、女王六人についても、イサナミの代に三人の女王が相次いで擁立されたことを示す叙述から、その内訳を復元することができます。

    さらに、ヤソキネとクラキネの事績にはすり替えがあるとみることで、トヨウケ・クラキネ・タカキネという剣臣継承の流れも見えてきます。

    これでようやく「天七代」の全容に手が届いたといえるでしょう。

    そして次に現れるのが、記紀では「三貴子」として知られる場面です。

    次回からは、この新たな局面に入り、ホツマツタヱの「一姫三男」という表現が何を隠し、何を伝えようとしているのかを見ていくことにします。


     
     
    ホツマツタヱを暗号文として読む立場から、隠語・数字・系譜・地理を手がかりに、神話の表層の奥にある深層構造の復元を進めています。

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