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小説『ワンダリングノート・ファンタジー』(1)いつもの公園で

    〜あらすじ〜

    近所の公園で不思議な絵本を見つけた学生トムは、禁断のページをめくり、突如「絵本の世界」に紛れ込んでしまう。そこで彼は、行方不明だった同級生であり幼馴染のレナと再会した。二人は偶然にもその世界の秘密に触れ、謎の男に追われることとなり、記憶を奪われた二人は舞台が一転「鏡の世界」へと足を踏み入れた。並行世界で自身の記憶を取り戻す過程で、トムは時空を超えた恐るべき事実を知ることになる。

    *この物語はnoteで連載中の英語教材と連動する、パラレル異世界ファンタジーです。

    〜『note #創作大賞2024 CREATIVE AWARD』応募作品〜
    全70話(約10万文字)


    Chapter 1


    「ふう⋯⋯今日のテストは散々だったな」

     学校の帰り道、トムはひどく落ち込んだ様子で、いつになく足取りも重かった。疲れ切った彼の肩は垂れ、頬は痩けていた。

    「大丈夫よ、たかがテストじゃない? また次に頑張ればいいのよ!」

     隣を歩くレナが励ます。彼女の声は明るく、彼の沈んだ気持ちを少しでも晴らそうとするかのようだった。心配性のトムとは正反対の性格が、二人の関係にとって心地良いバランスを保っていた。

    「小説家を目指している僕にとって、国語であの点数は⋯⋯あり得ないだろ。まずい、これはまずいぞ」

    「でも、美術の作品はすごいじゃない。あの独創的な⋯⋯プッ⋯⋯牛のお面の⋯⋯」

    「あれはただの思い付きさ。漫画に出てくるキャラクターが、あんな姿だったら面白いんじゃないかなって」

    「その発想力は私には真似できないから、少し尊敬しちゃう。少しだけ、ね?」

     トムは、さらに深いため息をついた。彼の心には不安と迷いが渦巻いていた。

    「はあ、なんでこう上手くいかないんだ世の中は。君が羨ましいよ」

    「羨ましいって、何が?」

     レナが食いつく。

    「君の物言いは、時々ビックリするくらい核心を突いてくる。洞察力や表現力も⋯⋯君の方が、小説家に向いてるのかもな」

     思い切り首を振りながら、レナは言う。

    「私はファッションデザイナーになりたいの! 前から言ってるでしょ? 私の方こそ、あなたのユニークなセンスを分けてもらいたいわ」

    「はあ⋯⋯上手くいかないもんだ」

    「ねえ⋯⋯今日も寄ってく? あの公園」

     レナの歩幅が少し遅れ、俯き加減で囁く。

    「ん〜、今日はやめておくよ。そんな気分じゃないんだ」

    「そんな気分じゃないからこそ、行くべきよ。人生は楽しまなくっちゃ。『楽しいは正義』だー!!」

    「君のそういうところ、人生とか⋯⋯スケールがデカいというか、なんというか」

     レナの元気溢れる励ましに、トムの表情は和らいだ。彼女の明るさが少しずつ、彼の心に特別な灯をともし始めていた。


    ***


     いつもの公園、いつものベンチ。トムは学校帰りの寄り道として、ここで小説のアイデアを練るのが日課だった。とても広い公園で、巨大な噴水やメリーゴーランドのような、他にはない遊具まで揃っていた。ただ彼は、そういったモノには興味がなく、ただただひたすらに脳内物質がすり減るまで「構想のページ」をめくるのだった。

    「お待たせ。トムはツナサンドよね? いつも同じで、よく飽きないわね」

     近くの売店から戻ってきたレナが、トムの隣に座る。

    「君だって、いつもおにぎりを食べてるじゃないか。まあ、中の具は違うけど」

     やれやれといった表情で、トムがツナサンドをかじる。

    「そうよ。全57種類を制覇するんだから」

    「ふうん⋯⋯シークレットは何があるのかな?」

    「シークレット?」

    「いや、その、よくオマケなんかであるじゃないか。スペシャルなヤツ、そうだな、たとえば板ガムが入ってるとか? いや、それじゃ面白くないか」

    「あはは。トムって、いつもそんなことばっかり考えてるんだね。納得納得。私も見習わなくちゃ」

     やさしい風が、レナの髪を撫でる。美しいブロンドの輝きが、ツナサンドを越えてトムの目を奪う。いつもの公園のベンチは一変し、トムは何かに心を乱されているようだった。

    「⋯⋯僕はそろそろ帰るよ。今日は疲れちゃったんだ。君は、もうちょっとここにいるかい?」

    「え? 今来たばかりじゃない。トムだって、まだ牛乳も飲んでないし⋯⋯」

    「き⋯⋯今日はその、お腹の調子が悪いんだ。それに、小説のアイデアも練らなきゃならないし⋯⋯」

     レナは俯いて、静かに、そしてトムに聞こえないように呟く。

    "How important is it? As important as I am to you?"

    「え? 今なんて言ったの?」

    「冗談よ。それよりその牛乳、私が買ったんだから、私のものよ?」

    「え? 君がおごってくれるって言ったんじゃないか。僕がお風呂上がりに、牛乳瓶に細いストローを入れてゆっくり飲むのが日課なくらい、大好きなのを知ってるくせに!」

     トムの言葉には、テストの疲労から来る苛立ちが滲み出ていた。

    「気が変わったの! それに、私が英語で送ったメールだって⋯⋯まだ読んでくれてないじゃない」

    「君が英語を好きなのはわかるけど、僕には興味がないんだ。いちいち翻訳してまで読んでられないよ!」

    「何それ!? あーそう⋯⋯。もういい、わかりました」

     レナは立ち上がり、トムから牛乳瓶を奪って言い放つ。

    「ばかトム!!」

     レナが顔を隠し、トムの側を走り抜ける際に、彼は苦い「にわか雨」を頬に浴びた。

    「にわか雨⋯⋯か。クソっ、こんな表現⋯⋯」

     空を眺め、トムは小さく呟いた。去り際のレナの涙が、稚拙な小説家の心を深く痛め、言葉にできないほどの切なさを感じていた。


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    それはどれくらい大切なの? 私と同じくらい?


    第2話:https://note.com/wondall_eng/n/nad6e0827d554

    第3話:https://note.com/wondall_eng/n/n0096096e5ae5

    第4話:https://note.com/wondall_eng/n/n2c138db99f47

    第5話:https://note.com/wondall_eng/n/nea54398052ed

    第6話:https://note.com/wondall_eng/n/n94c3eded294b

    第7話:https://note.com/wondall_eng/n/nb4e2578abb03

    第8話:https://note.com/wondall_eng/n/n678bc7e62019

    第9話:https://note.com/wondall_eng/n/n0cbb62cfdcd3

    第10話:https://note.com/wondall_eng/n/nc62f978b9daa

    第11話:https://note.com/wondall_eng/n/n425c8bf3a61c

    第12話:https://note.com/wondall_eng/n/n0f99130ca12d

    第13話:https://note.com/wondall_eng/n/ncdbdc804f0e8

    第14話:https://note.com/wondall_eng/n/n58774d456f89

    第15話:https://note.com/wondall_eng/n/nbd6af6e66755

    第16話:https://note.com/wondall_eng/n/nefb552fb222d

    第17話:https://note.com/wondall_eng/n/n2fdce21d1ec3

    第18話:https://note.com/wondall_eng/n/n273f01a4407f

    第19話:https://note.com/wondall_eng/n/n04907d7528da

    第20話:https://note.com/wondall_eng/n/nfe1720b000b7

    第21話:https://note.com/wondall_eng/n/n544a979d87df

    第22話:https://note.com/wondall_eng/n/n4eb050d5ac9e

    第23話:https://note.com/wondall_eng/n/n2e1b6e503541

    第24話:https://note.com/wondall_eng/n/nc0b2f998e090

    第25話:https://note.com/wondall_eng/n/nc56618d7bc00

    第26話:https://note.com/wondall_eng/n/n8e6c73d26e50

    第27話:https://note.com/wondall_eng/n/nc3e09bbf6597

    第28話:https://note.com/wondall_eng/n/ned0f664f7a6d

    第29話:https://note.com/wondall_eng/n/ncf67ff9182fe

    第30話:https://note.com/wondall_eng/n/naa9fb6701c32

    第31話:https://note.com/wondall_eng/n/naf0937340c1f

    第32話:https://note.com/wondall_eng/n/n418747088986

    第33話:https://note.com/wondall_eng/n/n6ed8bc4d975e

    第34話:https://note.com/wondall_eng/n/n05a76cb7c0fd

    第35話:https://note.com/wondall_eng/n/n803544947584

    第36話:https://note.com/wondall_eng/n/n05e159f4d442

    第37話:https://note.com/wondall_eng/n/n45b94098b949

    第38話:https://note.com/wondall_eng/n/ne46686a4e2a0

    第39話:https://note.com/wondall_eng/n/ne4c213c81b15

    第40話:https://note.com/wondall_eng/n/ne3222f23b387

    第41話:https://note.com/wondall_eng/n/n630538fef1f0

    第42話:https://note.com/wondall_eng/n/n30be44f2ada3

    第43話:https://note.com/wondall_eng/n/n0592c787e410

    第44話:https://note.com/wondall_eng/n/na479d5cf6287

    第45話:https://note.com/wondall_eng/n/neb963cb5943a

    第46話:https://note.com/wondall_eng/n/n6b383a5331d3

    第47話:https://note.com/wondall_eng/n/n2b673ef42f63

    第48話:https://note.com/wondall_eng/n/naa731f5b40e0

    第49話:https://note.com/wondall_eng/n/nf8b5f5288da4

    第50話:https://note.com/wondall_eng/n/n5fa59ec845f1

    第51話:https://note.com/wondall_eng/n/n37e38ca19b69

    第52話:https://note.com/wondall_eng/n/na08b106067f9

    第53話:https://note.com/wondall_eng/n/n24250d06f3cf

    第54話:https://note.com/wondall_eng/n/n98adf502f028

    第55話:https://note.com/wondall_eng/n/n3e9f4a47af47

    第56話:https://note.com/wondall_eng/n/nedd89b50129a

    第57話:https://note.com/wondall_eng/n/n8f84d05a5b00

    第58話:https://note.com/wondall_eng/n/ne79ff7aed2f2

    第59話:https://note.com/wondall_eng/n/n9d0c5335dc20

    第60話:https://note.com/wondall_eng/n/n34ed896a1601

    第61話:https://note.com/wondall_eng/n/n756271ead96d

    第62話:https://note.com/wondall_eng/n/nac951d7ed3f7

    第63話:https://note.com/wondall_eng/n/nb687ebea9253

    第64話:https://note.com/wondall_eng/n/n664bf6738963

    第65話:https://note.com/wondall_eng/n/n77d9f9cee995

    第66話:https://note.com/wondall_eng/n/n2765413b7872

    第67話:https://note.com/wondall_eng/n/n4563d240eac0

    第68話:https://note.com/wondall_eng/n/n9bedda1f1342

    第69話:https://note.com/wondall_eng/n/n538717c03229

    第70話:https://note.com/wondall_eng/n/ne3302a95039c



     
     
     
    AIクリエイター。物語、3D、動画、ミニゲーム、Web制作を横断しながら、AI時代の個人制作を実験中。 Wandering Note Fantasyシリーズを制作し、Sketchfab、X、Carrdでオリジナル作品を公開しています。

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